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レベルイーター  作者: 亜掛千夜
第二章 オブスル大騒動編

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第50話 塩湖の三つ目の顔

 粘液大好き触手星人のレベルを根こそぎ取った後、竜郎は杖を向けてレーザーで頭に風穴を開けて即死させていった。



「こいつらとは、もう二度と会いたくないな」

「魔物って、なんでこんなキモイのばっかなんだろーね」



 まったくだと竜郎が頷き返すと、愛衣の右手にある持ち手だけになった大剣に目がいった。



「そういえば、なんでその剣はそんなことになったんだ? あいつら自体には、そんなスキルは無かったけど」

「あーそれはたぶん、これがただの鉄剣だからだと思うよ」



 鉄の剣なら普通は崩れないのではと、竜郎がクエスチョンマークを頭に浮かべていると、愛衣がすぐに言葉が足らなかったことに気付いて補足しだした。



「えーとね。こっちだと、鉄の武器ってランクが低いんだよね」

「あー言われてみればそうだな、大量生産できてるし」

「うん。簡単に手に入るっていうのも一つの理由なんだけど、一番の理由は気力を纏える量がすっごく低いんだって」

「気力を纏える量が低い……ってことは、さっき気力を剣に纏わせて使って、愛衣の気力量に耐えられずにボロボロッと、そういうことか?」

「だねー。あのくらいなら平気だと思ったんだけど、予想以上に駄目だったよ」



 崩れた大剣の残骸をかき集めながら、残念そうに愛衣はそれを《アイテムボックス》にしまい込んだ。どうやら、そこそこお気に入りの武器だったようだ。



「どっかで、愛衣の全力に耐えられる武器を調達する必要があるな。戦闘中に壊れでもしたら笑えない」

「そうだね。使い捨てじゃ可哀そうだし」



 そう言う愛衣の頭を撫でて慰めながら、竜郎はもう片方の手に持った杖を見た。



(気力でなるなら、魔力でも同じようなことが起きるのかもしれないな。早めにこいつを手に入れられたのは、かなり僥倖だったのかもな)



 そんなことを考え、竜郎は杖を売ってくれた老人と、金だけ置いて去っていった領主の馬鹿息子に感謝の念を送った。


 それから愛衣の機嫌が戻りだしたところで、竜郎は今あるSPを使ってスキルのレベルを上げることにした。



「今回は、何を上げるの?」

「ん~、今あるSPが(114)だから、《闇魔法 Lv.4》と《土魔法 Lv.6》を取って、残りSP(0)でいこうと思ってる」

「闇魔法って、光魔法と同じ強化だよね? 効果がダブっちゃわない?」

「ところが、そうでもないみたいでな。この前買った本によると、どっちも他属性の強化に使えるけど、光魔法は強化が得意で、変質は苦手。闇魔法は強化は苦手だけど、変質は得意。って感じに、違いがあるらしい」

「ふーん? そもそも、変質って何をすることなの?」



 魔法が使えない愛衣にとって、竜郎の言う変質というのが良く理解できなかった。そこで、竜郎は解りやすい例を見せることにした。



「変質っていうのは、本来持つ性質を変えてしまうことでな、例えば火を変質すると、こんなことができる」



 そう言って、竜郎は火魔法に闇魔法を混ぜて、やりたいことをイメージする。すると、手の平から液体化した炎が流れ落ち、地面に焼け跡を残して消えていった。



「今、火が水みたいになってた。これがその変質ってことなんだ」

「ああ、それで今回俺がやりたいのは、闇魔法を使って空を飛ぶときに使うボードの軽量化を図りたいんだ」

「軽量化なんてのもできるんだ?」

「ああ、実際初めてボードを作った時に試しに闇魔法を使ったら、本来の重量を変質して軽くすることができた。そうなれば、風魔法の使用時に魔力の節約にもなるから飛行時間も延びる」

「そういうことね」



 そうして、愛衣もどういう意図なのか解ったところで、竜郎は早速スキルのレベルを上げていった。



 --------------------------------

 名前:タツロウ・ハサミ

 クラス:光魔法師

 レベル:28


 気力:65

 魔力:629


 筋力:90

 耐久力:90

 速力:85

 魔法力:500

 魔法抵抗力:492

 魔法制御力:500


 ◆取得スキル◆

 《レベルイーター》《光魔法 Lv.10》《闇魔法 Lv.4》

 《火魔法 Lv.10》《水魔法 Lv.1》《生魔法 Lv.1》

 《土魔法 Lv.6》《解魔法 Lv.3》《風魔法 Lv.5》

 《魔力質上昇 Lv.2》《魔力回復速度上昇 Lv.2》《集中 Lv.3》

 《全言語理解》


 ◆システムスキル◆

 《マップ機能》《アイテムボックス+3》


 残存スキルポイント:0


 ◆称号◆

 《光を修めし者》《火を修めし者》《打ち破る者》

 《響きあう存在》

 --------------------------------



「よし、ちゃんと取れてるな」

「そうだね。それにしても、スキルも結構充実してきたね」

「そうだな。初期は、《レベルイーター》だけだったし。んじゃ、あとは空飛ぶ道具を作って湖まで飛んでくぞ!」

「おおっ、ついに空を飛べるんだね」

「ああ。それでなんだが、できるだけ良い物を造りたいから、手を繋いでくれないか?」

「もちろん、いいよ!」


 そう言って、愛衣が竜郎の手を握りしめた。すると竜郎はステータス画面を閉じ、称号の発動を確認すると、今日百貨店に行った時に買っておいた鉄のインゴットを取り出した。

 それを一先ず地面に置くと、土魔法に闇魔法を混合してできた魔力を杖に流して、そこからインゴットへと浸透させていく。

 やがて、鉄の塊が前に造ったボードの形に変わっていった。だがよく見ると、以前にはなかった足を固定する金具が、二つくっ付いていた。

 竜郎はそれを持ち上げて、強度と重さを確かめていく。すると、硬さは鉄のままなのに、異様に軽い物質が出来上がっていた。



「よし、これなら大丈夫そうだ」

「えーと、私は前に乗った方がいいよね?」

「ああ。俺が前じゃ、バランス悪そうだしな」



 立ち位置の確認をしながら、二人は片足をボードの上に固定していく。固定し終わると、外れないかをもう一度確認する。そうして問題ないことが解ると、いよいよフライトの時間となった。



「一気に上に上がるから、気を付けてくれよ」

「わかった」



 若干の緊張した声で答える愛衣の体を後ろからギュッと抱きしめて、竜郎は風魔法を使ってボードを宙に押し上げた。



「うおっ」「──ひゃっ」



 二人分の体重を上げるからと少し魔力を込め過ぎたようで、竜郎が思っていた以上に高い位置まで飛び上がっていた。

 しかし二人とも驚いたのは最初だけで、目の前に広がる光景に目を輝かせた。



「すっごーーーーーーーーーーーーい!」

「愛衣、あっちにオブスルが見えるぞ!」

「ほんとだああ!」



 竜郎の指さす方には、月明かりに照らされた美しい白い外壁と、その街並みを一望することができた。

 そうして、その場をクルリと二周旋回して二人乗りの感じを掴むと、ボードの先を湖の方角に向けた。



「よし、これなら湖まで直ぐに行けそうだ。準備はいいかっ?」

「いっけええええーー、たつろーーーーー!」

「りょーかい!」



 テンションマックスな愛衣に笑いを堪えながら、竜郎は風魔法で作った気流に乗せたボードを一気に加速させ、歩く速度の数倍の速さで空を滑り抜けていった。


 木々の上を飛び、道から外れた場所を横切るようにして飛んでいけば、そこへは直ぐにたどり着くことができた。



「なにあれっ!?」

「──あれは、……あの湖なのか?」



 その湖は、遠目から見ても全く違う風景を作り出していた。

 それはまるで鏡が光を反射している時のように、湖面全体が青白く光り輝いていた。

 そのため上空から見下ろすと、湖周辺だけ明るく浮き出ているように見えた。



「すごい…、ここからでも眩しいくらい」

「ああ…。──よし、もっと近くに行ってみよう」

「うん」



 愛衣はその光景に見とれながら、後ろから抱きつくようにして立っている竜郎にそっと体重を乗せた。竜郎はそれに一瞬だけ強く抱きしめて返答すると、湖面の上空近くまで一気にボードを滑らせた。



「近くで見ると、なおさら綺麗だね」

「夕方に見た時は湖の下に溜まった塩が光ってるように見えたけど、こっちは湖自体が光ってる。どういう理屈なんだか……」



 遂に湖の真上に来た二人は、そこで大きくゆっくりと旋回しながら、眼下を眺めていく。そして空からの情景を眺め終わると、今度はゆっくりと地面に下降していった。

 ボフッという音と共に着陸し終わると、竜郎は《アイテムボックス》に鉄のボードをしまい、二人で並んで目の前に広がる湖の縁に歩いて行く。

 やがて直接触れられる位置に来ると、揃ってしゃがみこんで、光り輝く水を手で掬ってみた。



「あれ? 掬っちゃうと光らなくなるんだね」

「みたいだな」



 そうして、その水を湖に戻せば周りに混ざって光を取り戻した。その現象が面白かったのか、愛衣は何度も掬っては戻しを繰り返して遊んでいた。

 竜郎はその間に、湖底に秘密があるのかと手を湖の中に突っ込んで底の部分を少し掘り起こして掬ってみたが、砂と砂利と固まった塩が出てきただけで、特に変わった物は無かった。



「ほんとに不思議な所だな」

「ねー」



 愛衣はそこで水を掬うのを止めて、濡れた手で竜郎の手に指を絡めた。



「こらっ、手を拭いてから繋ぎなさい」

「へへへー」



 特に悪びれもせずに、にへらと笑って竜郎の肩にもたれかかってきた。竜郎はその無邪気な顔に何も言えなくなり、こちらからも体重を少し掛けてお互いにもたれ掛るような姿勢で、不思議な光る湖を二人で眺め続けた。



「そろそろ、ササラ草の採取をするか」

「そうだね」



 二人でのんびりと時間をしばらく過ごし、もう一つの依頼に取り掛かることにしたのだった。

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