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レベルイーター  作者: 亜掛千夜
第六編 ダンジョンと妖精樹

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第505話 ダンジョンをつくろう

『場所も決まった様じゃな。では、あの場で経験値を得た者達で輪になって並ぶのじゃ』



 あの場には竜郎の眷属である鬼武者幽霊の武蔵や、奈々の眷属であるダーインスレイヴもいたが、この2体はレベル49でキャップ制限に引っかかっていたので取り込めていない。

 なので竜郎、愛衣、カルディナ、ジャンヌ、奈々、リア、アテナ、天照、月読、レーラ、イシュタルの11人が対象者となっている。


 その11人が大きな輪を描くように等間隔に並んでいく。



『準備が出来た様じゃな。ではいくぞ』



 そう等級神が言うと、システムのメニューが自動で立ち上がる。

 そしてメニューにダンジョンという項目が新たに追加されたのが見えると、並んだ11人の体からキラキラとした白色の光の粒子が溢れ出し、それらが輪の中央で混ざり合って球体へと変わっていく。


 そのまま全ての粒子が竜郎達から出終ると、球体は液体のように滴型になりながら地面にポトンと落ちて吸い込まれていった。


 落ちた個所を中心にジワジワと白い光りが広がり始める。

 小さな水たまりが大きくなっていくかの如く広がり、最終的には直径十メートルはありそうなほどの白く発光する湖が出来あがった。


 そしてそれと同時に竜郎たちのシステムが正常に作動し始め、ちゃんとした現在のレベルがアナウンスされていった。


 竜郎は、《『レベル:746』になりました。》と。

 愛衣は、《『レベル:734』になりました。》と。

 カルディナは、《『レベル:320』になりました。》と。

 ジャンヌは、《『レベル:320』になりました。》と。

 奈々は、《『レベル:320』になりました。》と。

 リアは、《『レベル:726』になりました。》と。

 アテナは、《『レベル:320』になりました。》と。

 天照は、《『レベル:314』になりました。》と。

 月読は、《『レベル:314』になりました。》と。

 イシュタルは、《『レベル:323』になりました。》と。



 そしてレーラもここにきてようやくレベルアップし、『レベル:1034』になったようだ。



「まさかこの安定した時代で、こんなにレベルが上がる事があるなんて思いもしなかったわ」



 レーラは年の功とでもいうべきか、そんな風にわりと冷静に受け入れていたが、他のメンバーたちは、その異様な上がり具合に一斉に吹き出し目を丸くしていた。



「予想はしていたが700オーバーか……。凄いな」

「このままいけば1000も夢じゃないね」

「まさか私がこんなレベルになるなんて……」



 などなど、皆が受け入れ始め思い思いの言葉を発していると、先ほど作ったダンジョンの入り口の光が減光していき、よく見なければ解らない程に光は薄まり下の地面が透けて見える状態になってしまった。



「ありゃりゃ、これってちゃんと出来たのかなぁ」

『ちゃんと出来てるよ』

「うひゃっ、だれ!?」



 小さな少女のような声音が、ダンジョン作成に関わっている11人の脳内に響き渡ってきた。



『私は迷宮神よ。今からは等級神に代わって私が説明するから』

「あ、そーなんだ。よろしくー」

『ええ、よろしくね。アイ』



 突然出てきた新たな神様の登場も、おそろしく軽く受け入れた愛衣に竜郎が「ええっ」と驚いている間に話は進んでいく。



『今は何も出来ていない状態だから入り口が出来ただけなの。

 後はあなた達がシステムのメニューに追加されたダンジョンから、色々作成できるようにしておいたから、自由な発想でやってみてちょうだい』

「はーい」



 初回は気になる事が有ったら直ぐに迷宮神が答えられるように見ていてくれるというので、さっそく皆で色々とやってみることにした。


 ダンジョンの項目をタップすると、残り世界力の量がゲームで良く見るHPメーターのように表示されており、他にも規模を示す総トータル値を示す円グラフ、階層、魔物、罠、宝物──などの項目が表示された。



「これは順番とかの決まりなどはあるんですか?」



 と竜郎が聞くと、直ぐに迷宮神から答えが返ってくる。



『まずは階層を作ってから魔物、罠、設置したいのなら宝物っていう順番でやるのが普通かしらね。

 それぞれシミュレーター画面が出てくるから、そこでこんな風な場所がいいと想像してくれれば、その通りに表示されるわ。

 でも特にこれからという決まりは無いから、どんな魔物を出すか決めてからフィールドを整えていくという方法もあるわね。

 その辺りは好きにやってくれてかまわないから』

「解りました」



 本当に自由にやっていいようなので、皆でどうするか話し合っていく。

 まず初めに意見を言ったのはイシュタルだ。



「漠然とどんな場所にするか決めるよりも、どんな魔物を出すかを中心にして考えていった方が進めやすそうな気がするな」

「それは言えてるっすね。他にもこんな罠が仕掛けたいから、こういう所がいいとか言うのもありそうっすけど」

「ですね。皆さんは、その辺にこだわりとかありますか?」



 リアがそう周りに問いかけると竜郎が手を挙げた。



「こういう魔物がいいって言うなら俺にはある」

「そーなの?」

「ああ、せっかく自由に魔物の種類が選べるというんなら、魔物の創造に必要な材料が取りにくい種類にしたいと考えてる」

「それでいうと、幽霊や魔生族の精神体などが入りそうですの。

 外の魔物なら倒してしまうと何も残らず霧散してしまうでしょうが、ダンジョンの魔物なら魔石が残りますし」

「まさにそれだな。同様にスケルトン系や心臓や脳が腐ってるゾンビ系も上げられるかな。

 まあ、スケルトン系は長門のスキルで代替が利くから別にいいんだが。

 それで他の皆はどうだ?」



 竜郎以外の面々は、そこまでこういう魔物がいいという拘りは無いようで、とりあえず魔物のラインは先に竜郎が述べた系統で統一してみようかという話になった。


 幽霊系と所謂スピリットなど言われる魔物が分類される魔生族は、わりと似通った所があるので一緒に置いても、それほどトータル値を圧迫する事も無いだろう。



「となると場所はそういう系統が出そうなところを想像してみればいいのよね。

 んー……深い森の中とかかしら」

「それなら廃村とかも雰囲気が出て良さそうっす」

「お化け屋敷みたいだね! ならでっかい幽霊屋敷とか病院とか学校とかどうかな?」

「お化け屋敷? それはどんな場所なのだ? アイ」



 愛衣のお化け屋敷と言う言葉にイシュタルが興味を持ち始め、竜郎が横で補足説明を加えながらリアやレーラ、イシュタルにも解りやすいように概要を教えていった。



「要するに人を驚かせる施設という事ね。なんだか面白そうじゃない」

「ダンジョンレベル的に魔物や罠での難易度は上げ辛いが、精神面で追いこんでいくというのは有りかもしれないな。

 私の眷属たちに攻略させて、精神を鍛えさせるというのも出来そうだ」

「兄さんたちの世界の建物を再現した場合、何の場所なのか解らないっていうのがどちらに転ぶかは気になりますが、脅かす側に付くというのはワクワクします」


 レーラやイシュタル、リアも概ねの概要を理解し、なんだか乗り気になって来た様子。

 であるならと、今回作るダンジョンのテーマを『お化け屋敷』とし、その路線で階層を作っていく事に満場一致で決まった。



「えーと、ちなみに俺達のダンジョンはいくつ階層を作れるんですか?」

『あなた達のダンジョンはレベル3だけど、規模は2.5ってところなの。

 だから最低8階層作れば入り口を開くことが出来るわ。

 それでそこを踏まえた上でさっきの質問の答えなんだけど、世界力が許す限り基本的に作れる階層の数は無制限。

 だけど実際に攻略者が行けるように設定できるのは、このダンジョンレベルの場合は14階層まで。

 だからそれ以上の数の階層を製作した場合、レベルが上がった時用の予備階層にしたり、設定してみたけど気に入らない階層から入れ替えたり──なんてのになるわ』



 ようするにいくつ作ってもいいけど、一度に使えるのは14階層までだからね。という事らしい。

 それを聞いたリアは、竜郎に続いて質問を迷宮神へと投げかけた。



「入れ替えは簡単にできるんですか?」

『できるけど世界力を必要とするから、あんまり頻繁にやってると月の終わりの査定時にマイナスになって、私から警告が行くから気を付けた方がいいわよ』

「解りました。気を付けます。では、設定している物に後から追加で手を加える事は出来ますか?」

『環境の設定を変えるなり、出てくる魔物や罠を調整するなんて事くらいなら簡単に出来るわ。

 だけど地形を大がかりに変えたり、明らかに前と違う感じにする場合は、誰もその階層にいない時に密かに引っ込めてからじゃないとできないわ。

 あと引っ込める場合にも世界力は要求されるし、引っ込めても最低8階層ある状態でないとダンジョンの蓋が閉じて中の人が閉じ込められちゃうから気を付けてちょうだい』



 他にも細々とした質疑応答を皆で繰り返していき、だいたいのルールを把握した所でさっそく作成に入っていく。



「8階層ないと入り口を開けなくて、14階層まで設定できるなら、ここにいる11人が1人1階層作れば開放できるな」

「やった! 喧嘩しないですむね! それじゃあ作るぞー」



 そう言いながら愛衣は地面に胡坐をかいて座った竜郎の膝の上に座った。

 普通ならここでシステム画面が見難くなるだろうと苦情を申すところだが、竜郎の場合は気にもせずに愛衣を後ろから抱きしめて、ほっぺにキスをすると、その肩越しに顔を出して自分のシステム画面を見つめた。


 互いに自分のシステム画面しか見えないので、画面が重なって見えないということは無いのでそれでいいのだろう。


 他の面々もいつもの光景だと華麗にスルーにして、テーマ『お化け屋敷』にそって、どんな階層にしようか各々思考を巡らせ始めた。


 その途中、リアの発案で全階層で共通する攻略法を決める事でトータル値を減らせないかと意見が出た。

 なのでこのダンジョンでは攻略時に、階層の中で手に入れた鍵を手に入れて次の階層へと進む宝探しならぬ鍵探し方式を採用する事に決まった。


 そうする事で攻略者は何をすればいいのか予測しやすくなるので、攻略難易度が全体的に下がりトータル値も下げる事が出来るからだ。


 共通項目が決まった所で、また竜郎たちは自分たちの階層に集中していく。


 ──ちなみに。ここでは『お化け屋敷・・』と銘打ってはいるが、それは別に屋敷限定というわけではない。

 人を怖がらせたり怯えさせたり、吃驚させたりする階層という概念だけを踏襲するということだ。


 なのでそのまま屋敷を作成し始める者もいれば、突拍子もないお化け屋敷とは言えない様な階層を作成している者もいる。

 ようは細かい事は気にせずに、基本的には自由にやろうという事だろう。


 そうしてどれくらいの時が経っただろうか、周りにいた彩人や彩花、ウリエル達の意見も聞きながら11人はそれぞれが思う『お化け屋敷』を作り終えた。


 ダンジョンのシミュレータ画面は11人で共有する事も出来、さらに攻略者視点で画面の中に入り込んで確かめる事も出来る。

 竜郎たちはそれを利用して、自分の作った階層を保存してからクジで紹介順を決めて、それぞれが作ったダンジョンを軽くシミュレートして行く事にしたのであった。

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