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レベルイーター  作者: 亜掛千夜
第五編 海底遺跡

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第499話 羽取り作戦

 両翼もぎ取り作戦の概要としては、カルディナ、ジャンヌ、麒麟型の機体に乗ったリアで本体を引き付ける。

 その間に右翼は竜郎、愛衣、天照、月読で、左翼は奈々、アテナ、レーラ、イシュタルで切り落とすというもの。

 あとはそれぞれの適性のままに攻撃方法を決めてくれればいい。自分のことは自分が一番わかっているのだから。


 作戦が決まると直ぐに三組に纏まりながら、それぞれの目的に向かって行動を始めた。



「キィィーーーーー!」



 《刃鱗の息吹き》が一番コスパがいいのか多用してくるが、それだけでは倒せないと悟ったのか、リアが絶対に躱せと言っていた《豪殺鮫刃》も織り交ぜてくるようになって来た。


 ただしこちらは溜め時間が2秒ほどある上に、発動時には他の行動が止まる。

 さらに空中で縦に一回転するという大きな動作も必ずしてくるので、それらの動作をちゃんと見ていれば、縦軸方向からずれるだけでいいので躱すのはたやすい。

 ただ一回の回転で頭角、背びれ、尾ひれの3撃が来るので、少しでも油断して当たろうものなら即死は免れない。


 本体引き付け役のカルディナ、ジャンヌ、リアは、その動作だけは見誤らない様に注意しながら、飛行サメの近くで派手な攻撃を仕掛けていく。




 そうしてくれている間に羽取りチームは目立たない様に空へと上がり、右翼と左翼に分かれて行動を開始していく。

 だがやるのならこちらに注目されていない1アタック目で、一気にやらなければ2アタック目にはより警戒されて難しくなる恐れがある。


 なのでここは左右の翼への攻撃をバラバラに行うのではなく、両チームタイミングを合わせて事に当たる必要があるだろう。

 けれどどう見ても相手の耐久力的に一撃で翼をもぎ取る事は出来そうにない。


 ということでまず1撃目で太く頑丈な根元の骨に切れ込みを入れ、間髪入れずに2撃目で完全に切り落とす──という1アタック2ヒットで行く事に決まった。


 ちなみに具体的な行動を記すと──。

 左翼に向かった奈々、アテナ、レーラ、イシュタルのチーム。

 こちらは奈々とレーラが切れ込みを入れた瞬間に、一撃の威力が特に大きいアテナ、イシュタルで落とすという方法を。

 右翼に向かった竜郎、愛衣、天照、月読のチーム。

 こちらは竜郎、月読で切れ込みを、愛衣と天照で切り落としという方法を取る事になっている。


 最初に三方向に分かれた頃はこちらにも気を張っていたサメも、今はカルディナ達のおちょくりによって完全に向こうを注視している。

 決行のタイミングとしてはこれ以上の時は無いだろう。


 1ヒット目を担当している竜郎と月読、奈々とレーラは反対側にいる相手側チームへと視線を送る。

 竜郎は右手を挙げて声を出さずに『用意』の合図を、左右に散った全員が突撃態勢に入る。

 そして右手を下げて『ドン』の合図。一斉に羽取りに取り掛かった。




 まず竜郎の方はと言えば月読の属性体を纏わせた左腕に持ったアマテラスの杖に、竜水晶と闇と氷魔法を合わせて強度をさらに増した闇氷竜水晶を纏わせ、黒く巨大な水晶斧を一瞬で造りだす。


 愛衣は右手に飛翔のガントレットと宝石剣を手に、《体術》と《剣術》の気獣混合奥義《獅子竜剣斬》を発動。

 飛翔のガントレットと宝石剣が混ざり合い、両手と一体化した巨大な剣へと変化していく。

 その剣は白と黒の竜の尾を捩じって絡ませたような持ち手と、獅子が上を向き、その口から赤い刀身が伸びて行くような柄が特徴的だった。

 さらに愛衣はそれに鬼武者の魔王種結晶を入れて、日本刀のような刃に変えて《一発多貫》で10撃分の威力を一度の攻撃に全て込め、槍術の派生スキル《溜め突き》で威力を上げていく。



「──ふっ!」「──!」



 竜郎と月読による重複《打魔法》でさらに威力が増した状態で、《射魔法》も使って初速も上げた。もちろん光魔法での強化も余念がない。

 そんな重く早い水晶斧の一撃は右翼の付け根に的確に激突し、浅くない切れ込みを入れ砕け散った。


 間髪いれず闇氷竜水晶の破片が散っている中、愛衣が飛び込んでいく。



「はあっ!」「──!」



 両手のガントレットと融合した気獣混合奥義の巨大な剣を、愛衣は全身全霊を持ってその切れ込みに突き立てた。

 それと同時に竜郎の右手に竜腕状態で待機していた天照が、《火魔法》《風魔法》《突魔法》《斬魔法》を込めた属性体で作った《炎嵐手裏剣》を《投擲》。


 右翼は一瞬だけそれに耐えたが、竜郎と月読によって出来た切れ込みもあってバキッと音をたてて綺麗に切断され、水晶の花が生い茂る床へと落下していった。




 また奈々たちの方はと言えば──。

 まず奈々はダーインスレイヴを入れた刺突武器を2本構え、それに《竜邪槍》《呪魔法》《氷魔法》《毒魔法》《突魔法》全部乗せていく。


 レーラは《光魔法》で強化した《氷剣乱舞》《氷槍突射》《大氷槌落》という別種スキルを器用に組み合わせ、氷の刃が長い槍のような剣を並べて作った、先のとがった薄さ1ミリの大槌形の氷を作成。


 アテナは《分霊神器:鏡磁模写》となり、5枚から50枚まで出せる様になった鏡を全て取り出し、2枚は自分の飛行用の足場に残し、47枚は周囲に展開。残りの1枚は奈々の背中に磁力で張り付けた。

 これで奈々が移動すると、自動的に1枚の鏡がくっ付いて行く事になる。


 それから《燦然輝雷》によって黄金色になった《雷魔法》に《風魔法》《土魔法》《斬魔法》を混ぜ込んでいき、構えた大鎌へ全部乗せていく。

 それが終わると、竜力路のレールを引いて移動経路も確保。あとはそれにのって突撃するだけだ。


 けれどさらにダメ押しとばかり《乾坤一擲》を発動して、自身の構成魔力半分を代償に十面ダイスを振って6を引き当て、筋力が大アップ。

 鎌の純粋な威力を上げることに成功した。


 イシュタルは銀砂に土魔法を混ぜて強化した細長く螺旋の溝が入った槍を短銃型短杖の前に作り上げると、その柄の部分に細い糸のように造った3本の銀砂を付けてってロープのようにして行く。

 イメージ的には針に糸を通し、その糸の端と端を持ってグルグルと捩じっていくような形だろうか。

 そうして出来上がった状態で、《竜弾》《投擲》《竜力収束砲》《神力収束砲》をいつでも発動できる様にすれば準備完了だ。


 ここまでを竜郎の『用意』の間に済ませると、『ドン』の合図とともに奈々とレーラが先行。

 奈々は先ほど用意してスキルが何重にも乗った牙で《かみつく》。

 レーラは熟練の技術で奈々に合わせて全く同時に、薄っぺらい斧の様な氷の大槌を同じ場所に振り落す。

 それによって竜郎と月読の時同様に浅くない切れ込みが出来上がり、間髪入れずにアテナとイシュタルが攻撃を発動していく。


 イシュタルは銀砂の槍の柄に付けていた3本撚ってロープ状にした銀砂の糸を3方向に思いっきり引っ張るように銀砂を操る。

 すると螺旋の溝が刻まれた銀砂の細槍が猛烈な勢いでコマのように回転を始める。

 そしてそれを《竜弾》《投擲》《竜力収束砲》《神力収束砲》という射出系のスキルで一気に押し出していく。


 アテナは《神体化》化によってできた服──トラさんパーカーと竜装が融合したことにより《竜装》以外のスキル《竜力路》も《虎竜力路》へと変化していた。

 それにより《虎竜力路》は線路を通っている最中に、そこに足を付けたまま滑るのではなく、途中で蹴りこむたびにスピードが上がっていくというおまけがついていた。

 それを無意識に理解していたアテナは、黄金の雷のレールの上を走る様にダンダンと踏み込んでいく。

 すると一歩踏み出すたびに虎の肉球スタンプのようなものがレールの上に押され、その度に雷属性だけでは有りえない速度まで急上昇しながら翼の付け根へと向かっていく。

 満足いく速度に行き着いた所で、虎竜力路に乗る前に足場にし、乗ってきてからは他の47枚の鏡と同じように側に浮遊させていた2枚の鏡の内1枚に向かって、速度とスキルが何重にも乗っている大鎌を振り下ろした。

 同じようにアテナの周囲に散っていた残り48枚の鏡からドッペルゲンガーアテナが飛び出し、一斉に本物のアテナより若干威力が弱まった大鎌で1枚の鏡を同様に切りつけた。


 するとアテナの大鎌とドッペルアテナの大鎌の攻撃が鏡の中に吸い込まれていき、奈々の背中に張り付けて今は翼の根元の切れ込みの入った逆方向──裏側に移動していた1枚から計49の大鎌の攻撃が一つにまとまった状態で飛び出した。


 《分霊神器:鏡磁模写》となった50の鏡はアテナ自身、またはアテナから放たれた攻撃のみ、任意の鏡から飛び出させる──鏡を使った転移のようなことが出来るようになっていた。

 また複数の鏡から同時に放たれた攻撃を1枚の鏡から出すと、その攻撃が全て合算された威力で飛び出すという機能もある。

 今回はそれを利用して、大きな一撃を放ったというわけだ。


 さて、左翼の根元には深い切れ込みが入った状態で、表からはイシュタルの銀砂の回転細槍が、裏側からアテナの大鎌による攻撃が、ややタイミングはズレながらも、ほぼ同時に当たりバキッと音を立てて左翼を支えていた太い骨が折れて下へと落下していった。



「キィイイイイイーーーーー」



 両翼を失った二本足の飛行ザメは、ただ二本足のサメになって腹ばいに落下していく。

 しかしそんな状況だというのに痛がることも怯む事も無く、二本の太い足と尾ひれを上手く使って上手に着地。

 上空に飛んでいる竜郎達を睨み付けながら、大口を開けて《刃鱗の息吹き》を放ってきた。


 だが口を開けるモーションで何をしてくるかなど解っているので、その範囲外へと全員退避していく。



「回避しながら小休憩! カルディナ達は疲れてない様なら引き続きひきつけを頼む!

 あとアテナはこっちに!」

「ガゥ~~」



 アテナの《分霊神器:鏡磁模写》による鏡の転移は、転移させる物体のエネルギー量が大きければ大きいほど消耗も激しい。

 その上で《乾坤一擲》まで使っていた為、アテナは強制的に《幼体化》まで戻ってしまい今はイシュタルに抱っこされている状態だった。


 竜郎は急いでイシュタルからアテナを引き取り、飛翔のガントレットで空を飛び続けている愛衣にお姫様抱っこされた状態で、アテナの減った構成魔力を回復させていく。



「助かったっす~」

「次からはもうちょっと配分を考えてくれよ?」

「えへへ。どれだけ威力が出るが試してみたかったんすよ~。

 でも次からは気を付けるっす」



 《神体化》状態に戻ったアテナは、竜郎と愛衣から離れて回避行動に集中し始めた。

 そうして竜郎も月読のスライム翼を出して愛衣と並走しながら、頭を大きく振るという解りやすいモーションで攻撃してくる《豪殺鮫刃》と、こちらも読みやすい《刃鱗の息吹き》を回避しながら回復に専念する。


 愛衣と手を繋いでいたので、回復も非常に早く再び全力で攻撃できる状態に戻るまでにそう時間はかからなかった。

 他の面々は奈々に回復速度を上昇させる呪魔法をかけてもらい、ドンドン回復が進んでいる。


 そうやってみんなが回復している間に、竜郎は次の行動を考えていく。



「こうやって距離を取ってよく観察できる状態でなら攻撃を躱すのは難しくないんだよな」

「でもこっちも攻撃があんまり効かないんだよね」

「あの鱗と自前の耐久と魔法抵抗のせいでな」



 翼は鱗が生えていなかったので直に皮と骨に攻撃で来た。

 けれど肉体は全身にサメ肌特有の細かな鱗がびっしりと敷き詰められて、ただでさえ頑丈な体をさらに頑強なものにしていた。



「一番いいのは目玉を抉って眼孔から脳を破壊する事かな」

「言ってる事はえぐいけど、今の私たちの火力だとそれが確実かもね。 

 でもそれだと魔卵素材の内一個は壊しちゃうことになるけどいいの?」

「心臓さえ残ってくれていれば出来ない事もないし、今回は脳は諦めるとしよう。

 う~ん。だが目を抉るとしても、まだ難しいな」

「水晶の花が足に絡んでも引き千切ってるしね」



 竜水晶の花畑は二足サメに滅茶苦茶に踏み荒らされて、目から零れ落ちてくる卵から産まれるサメ人間たち対策としても機能しなくなってきていた。

 なのでサメ人間たちがウジャウジャと二足サメの周りを徘徊しているのだが、そちらは飛行能力も遠距離攻撃も持っていないので、空にいる限り無視していい。


 だが二足サメは翼を失ってもかなり移動速度が速く、悠長に目玉を抉っている余裕など与えてくれないだろう。

 となれば次の目的は限られてくる。



「足だな」「足だね」



 飛んで上を取られたくなかったから、翼をもいで飛ぶ機能を奪った。

 なら今度は足を奪って、走る機能を奪えばいい。



「だがネックはサメ肌だが……。愛衣、近寄ってサメ肌の鱗だけを一部分剥ぐことは可能か?」

「鱗を突き破って中の肉をってなら難しそーだけど、鱗だけを剥ぐなら出来ると思うよ」

「ならちょっと確かめたい事があるから協力してくれ」

「オッケー、任せてたつろー」



 竜郎はすぐさま音魔法で拡声して周囲に愛衣が鱗を剥がしやすいように、注意を引いてもらうように全員に声をかけた。

 まだ回復中であるが、空中でおちょくるくらいなら問題ない。


 全員が二足サメの周りに展開し注意を引いている間に、竜郎と愛衣は出来るだけ目立たぬように後ろ側へと回り込む。

 そしてちょうど《刃鱗の息吹き》を吹き出すために大口を開けたタイミングを狙って、背びれの下部分に愛衣が肉薄して獅子纏の宝石剣を魚の鱗を包丁で取る時の様な要領で一部分の鱗を切りとばし、自分は飛翔のガントレットに気力をガンガンと流し込んで一瞬で離脱。


 竜郎は少し離れた位置で解魔法を飛ばしながら、愛衣が離れたタイミングで、光、火、爆発魔法を剥がされ再生を始めた場所へ転移させて攻撃してみた。



「キィーーーーー!」



 多少の痛みがあったのか、《刃鱗の息吹き》を中断して何だと後ろに振り返るサメ。けれど、そこには誰もいない。

 そのまま誰がやったとばかりにキョロキョロするが、竜郎と愛衣は知らん顔。

 結局二足サメは犯人捜しをあきらめ、目の前にいるカルディナ達に集中し始めた。



「鱗が再生前なら中の肉に攻撃できるな。ならさっきより難易度は上がるが、1アタック3ヒット作戦ならいけるか」

「とゆーと?」

「つまり鱗を剥いだ瞬間に肉を削ぎ、肉を削いだ瞬間に骨を断つんだ。

 これなら鱗は再生するが、中の肉は再生しないから足を潰せる」

「水の上を足が沈む前に一歩踏み出せば走れるみたいな理論だね……。

 できるかなあ」

「かなりの連携と火力がいるが、俺達ならいけるはずだ。

 そうなると誰にどう動いてもらおうか……」



 次の一手を決めた竜郎は、今現在の皆の竜力量や魔力を精霊眼で観測しながら作戦を組み立てていくのであった。

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