表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
レベルイーター  作者: 亜掛千夜
第四編 躍進

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

484/634

第482話 夢見る竜郎

 《天界聖炎》はかなり消耗の激しいスキルの様で、大分疲れた様子を見せていた。

 なので奈々に頼んで呪魔法で回復力を増強して貰おうとしたところで、この天使には便利なスキルがあったじゃないかと思い直す。



「今から火を浴びせるがいいか?」

「放っておいても回復しますわ、主様。主様とて私を創る時に消耗したようですし」

「なに、それぐらい大したことは無いさ。ジッとしててくれよ?」

「はい、主様」



 エーゲリアの眷属アンタレスも持っているというスキル《完全火吸治癒》。

 このスキルのおかげで、怪我をしていない今の天使に竜郎が火を浴びせかけると、その身にぐんぐん吸い込まれていき、精霊眼で観る限りほぼ最初と同じ状態にまで魔力が回復していた。



「実際に回復している所を見ると、余計にそのスキルの便利さが解るな」

「傷を治すだけなら生魔法とかで直ぐに治療できるけど、魔力とかは奈々ちゃんみたいに《竜吸精》とかない限り、回復速度を上げるくらいしか対処法が無いもんね」



 愛衣はそう言いながら自分にもそういうスキルが覚えられるかどうか武神に相談してみようと、心のメモに書き留めておいた。



「そういえば今回の創造はとーさん以外にもジャン姉や奈々姉も加わってたんすけど、天使ちゃん的にはどういう序列になってるんすか?」



 アテナのふとした疑問。

 爺やは創造主であるジャンヌの命令を何よりも優先させる。

 ジャンヌがそう言う事をするのは有りえない話だが、もし爺やがジャンヌに竜郎を攻撃しろと言われたら迷いなくするだろう。

 それだけ創造主の言葉は被創造者にとって重要な重みを持っているのだ。


 そこでいうと今回は三人の親がいるような状況。

 天使の中でどうなっているのか知りたくなるのも当然のことだろう。


 そんな問いを向けられ、皆の視線も集まる中で天使が答えた序列は──。

 竜郎が一位。奈々が二位。ジャンヌが三位。というようになっているようだ。



「タツロウ君が一位なのは主導でやっていた事だし、怪人族創造も関わっていたのだから当然として、ナナちゃんとジャンヌちゃんに順番が生まれたのは何故かしら?」



 貢献度的には奈々もジャンヌも同等だとレーラには思えた。

 他の皆もそう思った様だが、天使の中では明確に奈々の方が優先度が高いのだという。しかし理由までは本人も不明。

 何か創造の過程であったのだろうかと竜郎も、さりげなく愛衣を抱き寄せて考える。

 今後も創造をしていくうえで、出来るだけ解らない事は解明しておきたいのだ。

 ──と、そんな時。竜郎が愛衣を抱きしめるのと同じように、子パンダを抱っこしながら考えていたリアが答えに至った。



「恐らくですが、素材を用意する過程でナナだけ《死霊竜術》で手を加えていたから……ではないでしょうか?」

「ああっ、そういえばわたくしは今回アンデッド化するために大天使に手を加えましたが、ジャンヌお姉様は元から聖物質と同等だったこともあって何もしていませんでしたの」

「ヒヒーーン」



 《幼体化》状態になっていたジャンヌも、砂浜にお尻だけ付けてお座りした状態で納得し、前足をポンと合わせた。

 確かに今回、魔族創造の方では邪物質である必要があったので、その分手間が多かった。

 なので全体的に見て奈々の貢献度は、ジャンヌよりも高いと言っていい。



「そう言う事なら確かに序列が付いても納得できるな。

 まあだから何だって話なんだが、そう言う事もあると覚えておこう」



 すっきりした所で、いよいよ天使の名前について決めていく。



「天使ちゃんは火が使えるんだよね。それに鎧も真っ赤だし」

「それがどうかしたか?」

「火に天使と言えば、誰か有名な天使がいなかったっけ?」

「有名な天使と言えば、大天使とか熾天使とか言われてる四大天使か」

「それかも」



 竜郎は抱きしめている愛衣越しにスマホを取り出し、愛衣の肩から首を出して辞書アプリでうろ覚えな知識を補強していく。



「えーと……しだいてんし……は………………ミカエル・ガブリエル・ラファエル・ウリエルの事と。

 んでこの中で火と関係してそうなのは……………………ミカエルかウリエルかな。

 ミカエルは四大元素で水・風・火・土で現した時に火になるし、ウリエルは四大元素では土になっているが、そもそも名前が神の炎を意味しているらしいし」

「ありゃりゃ、二人も候補がいるんだ。

 でもたぶん私が思い浮かべたのはウリエルの方だと思うな」

「まー四大元素とか言われてもピンとこないけど、神の炎とか言われちゃうとそっちをイメージするよな」

「うんうん。という事でウリエルちゃんと言うのはどうかな?」

「主様がそれでいいとおっしゃるのなら、私はそれで構いませんが?

 何より神の炎というのは気に入りました」

「そうか。本人も気にいってくれたというのなら、ウリエルで決定でいいかな」



 という事で天使はウリエルという名前に決まった。

 そうした所で竜郎は先ほど辞書アプリで調べていた時にたまたま見た情報の中で、天使とは違うのだがワルキューレという存在について考えていた。


 というのもワルキューレとは北欧神話に出てくる半神の女性たちで、武装した美しい女性騎士として描かれることの多い存在だ。

 それでいうと目の前にいるウリエルは天使ではあるが半神格者であり、鎧を纏い槍を持てば立派な女性騎士だ。


 そこで竜郎は考える。

 これ、うちでワルキューレ部隊が作れるんじゃね? と。

 愛衣やイシュタルではないのだが、竜郎の少年心というか中二心を擽られたのだ。



(女性騎士団があるなら男性騎士団も欲しいな。男なら円卓の騎士団とかか?

 いつか立派な剣が似合いそうな男の眷属が生まれたらアーサーと名付けよう。

 そうなるとランスロットやガウェインも欲しくなってくるな。

 夢は広がるばかりだ)



 などなど色々と妄想が膨らんでいく。


 今後竜郎達が有名になる事は未来で確認済みであり、そうなると竜郎印の商品を狙ってくる輩もいるだろう。

 どの時代だろうがどの世界だろうがどの国だろうが、悪人というものは大なり小なり存在するのだから。


 そんな時に商品を市場まで運んでくれる商隊を守ったり、商店や拠点を防衛したりするとなれば当然人手もいる事だろう。それも腕利きの。

 眷属なら間違いなく竜郎を裏切る事も無いので安心できるし、そのワルキューレ部隊や円卓の騎士団を作り、さらにダメ押しとばかりに眷属たちに竜郎の従魔を補佐に付ければ、まさに最強の騎士団が出来あがるだろう。



(だがそれをするのはいいが、今回で複製ポイントをけっこう消費しちゃったからなあ……)



 複製ポイントは一日で1しか増えないので、今回の白太やパンダ作りを除いたウリエル創造だけでも40日分のポイントを消費した事になる。

 その為、複製ポイントは現在79となった。

 まだあるように思えるが、リアの研究や装備品作りにも必要になって来るので、これ以上ポンポン使っていくのは難しい。


 構想は出来てきたが元手が無ければどうしようもない。

 強力な人員を作るには、それだけ稀少な素材を消費しなければならないので、《無限アイテムフィールド》の複製機能なしでそれを成すのは現実的ではないだろう。



(だが待てよ……。《復元魔法》なんて便利なものがあるのなら、《複製魔法》とかは無いんだろうか)



 スキル欄を見た時にはそんなスキルはとんと見かけなかったが、ここは魔法が使える世界であり、実際に複製が出来る機能が存在しているのだから可能性はゼロではないはずだ。



『おーい。魔神さんやーい。ちょっと質問良いですかーい』

『………………ん? 何だい? タツロウ君。

 私で答えられる限りでなら何でも聞いてくれていいよ』



 探しても解らないなら魔法の元締め魔神先生に聞いてみればいい。せっかくホットラインがあるのだから使わないのは損というもの。


 さっそく竜郎は《複製魔法》があるかどうか魔神に聞いてみた。



『うーん。複製は時空とも関係ないからねぇ。魔法には無いんだよ。

 どちらかというとそれは物質神の管轄だしね。

 《アイテムボックス》系も彼のところで管理してるし。ちなみに位は私より一つ上だよ』

『ってことは等級神と同じ位か。でもその物質神なる神様の系統のスキルに物質を複製するスキルとかが有ったりするのか?』

『そういうのは無いね。タツロウ君が使っている複製が、我々神が人に提供できるギリギリのラインだから』



 つまり、ハッキリと言ってしまえばそんな都合のいいスキルはありませんという事らしい。

 竜郎はがっくりしながら愛衣の後頭部に頭をうずめる。

 その時うなじに息がかかったらしく、愛衣はくすぐったそうに身をよじった。



「なあに、たつろー? くすぐったいよー」

「ああ。すまんすまん──」

「──ひゃんっ。急に首筋にチューしないでよーもー」



 後頭部で竜郎の胸をグリグリして抗議してくる愛衣の頭を撫でながら、どうどうと宥め再び魔神との会話に戻っていく。



『それじゃあ無理そうって事なのか。

 いや、突然変な事を聞いて申し訳なかった。それじゃあもう──』

『──いやまてよ』

『ん? どうした? 魔神』



 他に聞きたい事も無く、向こうもする事があるだろうと切り上げようとしたとき、魔神が何かに思い至ったかのようにこちらの言葉を遮った。

 竜郎の疑問符に答えが返ってくる事無く沈黙が続くこと数十秒、ようやく魔神が再び口を開き始めた。



『もしかしたらだけど、タツロウ君のスキルポイントを複製ポイントに変換するようなスキルを作って、取得できるようにしてもらうよう説得する事は出来るかもしれない。

 変換倍率は色々と考えないといけないから要検討だけれど、少しくらい高くたって君ならいくらでも手に入れられるだろ?』

『──まじで!? 確かに俺なら《レベルイーター》があるから、その辺の魔物から取って来れるし集めるのは容易なはずだ。

 けどなんでそれなら説得できるんだ?』

『スキルポイントは知恵ある生物がシステムを経由して我々神に支払う通貨の様な物。

 それが多ければ多いほど、私たちにも恩恵があるんだ』

『恩恵? 業績がよかったから給料が増えるみたいな?』

『近いかもしれないね。支払われたスキルポイントを使って、私たちは世界から恩恵を受ける事が出来る。

 君たちとは存在そのものが全く違うから説明するのは難しいけれど、人間に例えるのなら住む家が豪華になったり高級なものが食べられたり──みたいに生活が豊かになると言えば良いかな』

『つまり神様たちにも俺達で言う家みたいなところがあって、その家を大きくしたりお気に入りの家具を買ったり……みたいな事が出来る様になる。みたいな?』

『そう思ってくれていいだろうね。

 もちろんスキルによって人気不人気があるから、多少はポイントの評価倍率の様な物が違ったり、そもそもスキルにそれほど携わってない神なんかは毎月決まったスキルポイントが配給されたりなんてしてるから、それほど他の神々と差が出るわけじゃないけどね』

『それでいくと……もしかして俺のせい──というか、おかげで魔神は羽振りがいい?』

『ああ、ウハウハさ。だからどんどん魔法関連に使ってくれていいからね!』

『あ、はい』



 竜郎は微妙な気分になった。



『だけどそのせいでやっかみもあってね。

 そこでスキルポイントを複製に変えるっていうギリギリのラインで、物質神にも恩恵を与えられれば分散できるだろ?』

『だろうな……。むしろそっちの方が高くなりそうな気もする』



 魔法はスキルを20レベルまであげたらそれ以上は上げられないので、ある意味SPの支払いに上限があると言ってもいい。

 だが複製ポイント還元は、大げさに言ってしまえば無限だ。

 そうなれば魔神の言う『やっかみ』は、おのずと物質神の方が強くなる可能性すらある。



『私の方でも新しい魔法の開発に勤しんではいるから、完全に上限があるって訳ではないけれどね。

 で、どうだい? まだ出来るかどうか解らないけど、その線なら説得できないレベルではないと思うよ?』

『お願いします!!』

『解った! 吉報を期待してくれ!』



 竜郎は即断した。神々の誰が羽振りが良くなろうが、やっかみを受けようが竜郎にはぶっちゃけ関係ない。

 なら自分に利益がありそうな方を選ぶ方がいいに決まっている。


 竜郎は魔神の最高にご機嫌な返事を耳にしながら、これで自分のワルキューレや円卓の騎士を作る事が出来るかもしれないと、思わず口元をほころばせたのであった。

次回、第483話は5月16日(水)更新です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ