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レベルイーター  作者: 亜掛千夜
第四編 躍進

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第481話 天魔族創造、二重実験

 元々が神聖な存在であった大天使の死体は、何も手を加えないでも聖物質として使えるのでそのままでいい。

 修復して綺麗な状態にした大天使の死体丸々30体を並べ、内10体は《死霊竜術》を使いカルディナ達にも竜力を分けて貰いながら一気にアンデッド化。大天使のゾンビが立ったまま待機する。

 さらに巨大なミイラの半壊に近い状態の上半身を10体用意すると、綺麗に全部を一か所に纏めた。



「これで準備は全部整ったな。後は二重で天魔族創造が上手く働くかという所だけだ」

「これには神竜魔力を使ったりするんですの?」

「ああ、そのつもりだ。ただ神力を使うよりも、エネルギーとしての質が大幅にアップするからな。

 詰まりなく一気に最初から最後までやる必要もあるだろうし」



 というわけで竜郎はまず神力と竜力と魔力を完全に混ぜ合わせたエネルギー、神竜魔力を練り上げていく。

 まだまだ戦闘で不自由なく使えるほど習熟したわけではないが、それでも最初の頃に比べて生成速度がかなり上がっていた。

 そうして十分な量を練り上げた状態を維持したまま、ジャンヌと奈々に視線を送る。


「カルディナ達もサポートをよろしくな」

「ピュィーー」「了解っす」「「──!」」

「それじゃあ、一気にいくぞ」

「ヒヒーーン!」「お任せですの!」



 竜郎の《天魔族創造》と《怪人族創造》の発動と共に、ジャンヌと奈々もほぼ同時に《天族創造》《魔族創造》を発動させる。

 混合魔法と同じような要領で互いのスキルを混ぜ合わせていき、その力を素材に降り注がせていく。


 その途端、計40体の魔物からなる素材がどろりと溶けてスライムのような液体に変わると、それぞれが混ざり合ってやや白みの強い灰色へと変化した。


 ぐっちゃぐっちゃとその灰色物質が粘土をこねる時のような音を響かせて、形を絶えず変え続ける。


 その間にも今までの消費量は何だったのかと言いたくなるほど大量に神竜魔力を吸い取られていき、最初に用意した分はすでになく、竜郎は流し込むのは天照に任せてエネルギーの生成に奔走させられた。



(二重でスキルは起動したみたいだが、消費エネルギー量は2倍どころじゃないぞ!?)



 竜郎だけのスキルで天魔族創造と怪人族創造を行った場合の数百倍は吸い取られているのではないかと思いたくなるほど、異常に吸い取られていく。

 竜郎含め7人体制で望んでいるのでエネルギー量自体はまだ問題ないが、それでもこの勢いで持って行かれると不安にもなってくる。


 しかしそんな焦りも杞憂に終わり、段々と吸収速度が緩やかになってきた。

 その事に胸を撫で下ろしながらも、ラストスパートだと気を引き締めて事に当たる。


 定まっていなかった灰色のスライム状の物体が、やがて竜郎の思惑通り人型を取っていく。

 完全に形が固まると光を放ち始め、やがてそれも収まっていく。



「──初めましてあるじ様」



 そうして現れたのは、背中に天使の六翼を生やし深紅のドレスに身を包んだ女性天魔。

 背丈は165~170センチほどで竜郎とほぼ変わらない。

 絹糸のように細く滑らかな金髪は腰まで伸び、色白で透き通った肌に美しい顔。意志の強そうな青い瞳を嬉しそうに細めて竜郎に向かって会釈していた。



「わお、真っ赤な天使さんだ」

「爪まで紅いですね、姉さん」



 リアが言うように、細く長い指先をよく見ればマニキュアでも塗ったかのようにドレスと同じ深紅に染まっていた。


 全体的に見て線も細く深窓の令嬢と言われても信じてしまいそうなほど、戦闘に向いてはいなさそうだが、それでも爺やの時ほどの神聖さは感じられずとも、白太の時と同じような神々しさをわずかに感じた。



「ちょっとステータスを見させてもらってもいいか?」

「はい、かまいませんわ。主様」



 本人の許可を取ってからパーティに入って貰い、そのステータスを見ていく。



 --------------------------------

 名前:────

 クラス:-

 レベル:1


 気力:550

 魔力:550


 筋力:510

 耐久力:510

 速力:505

 魔法力:510

 魔法抵抗力:510

 魔法制御力:505


 ◆取得スキル◆

 《天界聖炎》《紅爪十使徒》《完全火吸治癒》

 《暴殺強化》《怪力 Lv.5》

 ◆システムスキル◆

 《アイテムボックス+4》《マップ機能+4》

 残存スキルポイント:3

 ◆称号◆

 《半神格者》

 --------------------------------



「あ、まだ名前を決めてなかったね。名前のとこが横線になってる」

「そこも後で決めなきゃな。それでステータスの方なんだが……やっぱり神格関連の奴があったな」



 この天使の称号覧には、しっかりと《半神格者》という文字が表示されていた。



「これのおかげで初期ステータスが馬鹿高いんすね」

「効果は神格者よりも低いですが、それでもオール+500ですからね。

 1レベルでこれというのはかなり恵まれています」



 半神格者という称号のおかげで全体的に恵まれた数値になっている事もさることながら、どう見ても素のスペックも高そうなので、実際には数値以上に筋力や魔法力なども高いだろう。



「ステータス以外にも、なんだか強力そうなスキルが揃ってますの」

「《怪力》は何となく解るが、他のは私も聞いたことが──いや、そう言えば《完全火吸治癒》はアンタレスが持っていたかもしれないな」



 アンタレスとはイシュタルの母エーゲリアの眷属で、深紅の鱗を持つ攻撃特化型の竜。

 ララネストをあげたら牙やら爪やらをホイホイくれたことが記憶に新しいだろうか。

 竜郎は直ぐにその時の記憶が呼び覚まされて、心の中でありがとうと唱えた。



「それで、それはどんなスキルだったんだ?」

「火に関係する攻撃は全部問答無用で無効化し、逆に吸収して傷を癒したりエネルギーを補給したりすることが出来るんだ。

 だからそこの天使にタツロウがレーザーを撃ちこんでも、怪我をするどころか回復をさせる事になる、というわけだな。

 しかも自分の火系統の攻撃にも適応されるから、自身も巻き込むような攻撃をして相手を殺し自分は回復──なんて事も出来たはずだ」

「それはいざという時に便利かもしれないな。こっちもこの子が敵に囲まれてても、遠慮なしで火炎攻撃が出来るって事だし」

「火属性の敵には絶対的に有利なスキルだね。

 それじゃあ、この美人な天使ちゃんに似つかわしくない《暴殺強化》っていうのは何だろね」



 見るからにヤバそうなスキルに目を止めた愛衣に対し、その質問にはレーラが答えてくれた。



「その《暴殺強化》ってスキルは聞いたことがあるわ。

 確か本来は邪系統に属する存在が取得しやすいスキルで、敵を殺すたびに一時的に力が増していくっていうスキルね」

「これは奈々と一緒に魔族創造をやったからだろうな」

「なかなか面白そうなスキルですの。わたくしも頑張ったら覚えられるかもしれないですの」

「奈々姉は思いっきり邪系統に属してるっすからね~」



 そんな事を話しながら、残りの二つに視線をやっていく。

 まずは《紅爪十使徒》から本人が実演で教えてくれるようだ。



「これは私の手の爪に宿っている使徒を呼ぶことが出来るスキルです」

「使徒? 使い魔みたいなものなのかな?」

「その様なモノと思って貰っても構いませんわ。

 そしてそれぞれの指によって違う使徒を呼び出す事が出来るのです」



 そう言いながら右手の人差し指を皆に見えるように出しながら、それで地面を指差した。

 するとその人差し指の紅色が抜けていき、血のような液体が砂浜へとポトリと一滴落ちた。

 その瞬間、紅の滴が落ちた辺りが膨れ上がり、深紅の一メートルはあろうスライムが現れた。



「この子はそれほど戦闘に長けた子ではないですが、とても器用なのです」



 天使がそういうや否やスライムの形状が変わっていき、竜郎と姿形が同じになった。

 かと思えば愛衣の姿になったり、カルディナの姿になったり、地面の砂浜になったりと、まさに千変万化の勢いだ。



「この様に誰にでもどんな物にでも擬態できます。ただし能力はスライムのままなので、本人のように戦ったりすることはできません」

「だが私やタツロウ、リアやレーラのように見破る目がない者にとっては厄介かもしれないな。

 これだけ見分けがつかないくらい完全に擬態されてしまうと、ただ見ただけでは本当に解らないぞ」

「恐れ入ります」



 天使がイシュタルに向かって一礼した。

 その後、スライムに一本だけ紅が抜けた右の人差し指を当てると、再び爪を紅く染めあげながら戻っていった。

 そして順々にどれに何がいるか教えていってくれる。


 右手中指の爪は全身の毛皮が紅い馬。

 サイズは標準的な牡馬くらいで、力がかなり強く蹴りで攻撃したりも出来る。

 また大量の荷物を運ばせたり乗ったりすることも可能。


 右手薬指の爪は紅い狼。

 大きさは大型犬ほどで、機動力と隠密性に長けている。

 格下なら気づかれない様に後ろに回って首をかみ切る──なんて事も出来る。


 右手小指の爪は闇霊。

 普段は深紅の霧のような姿をしているが、闇に完全に混ざり主人の目となって探索する事が出来る。

 また左手小指の爪は右と逆の光霊。

 こちらも闇霊と同じ紅の霧のような姿をしているが、あらゆる光源に完全に混ざり主人の目となって探索する事が出来る。

 闇霊と光霊で、昼夜を使い分けて使うのが良さそうである。

 ただし戦闘能力は、どちらも皆無と言っていいだろう。


 左手人差し指は紅のハチ。

 大きさは五十センチ程とハチにしては巨大。

 けれど分化する事が出来るので、最小1ミリ以下になれば数万匹の蜂になる事も出来る。

 こちらは強力な毒針を持っている。


 左手中指の爪は紅のカメ。

 大きさは一メートル程だが重さは5キロくらいとかなり軽い。

 手足が異様に長く、腕に巻き付いて甲羅を盾の様に使うことが出来る。


 左手薬指は深紅のヘビ。

 長さを十センチから十メートルまで自由に変える事が出来、相手に巻き付いて捕縛する事が得意。

 格下相手ならそのまま絞め殺せる。


 そして残りの右手と左手の親指の二本。

 こちらは少し他の指と趣が違うようだ。


 おもむろに天使は自分の紅いドレスに右手親指を押し当てた。

 すると爪の紅がドレスに吸われていった──かと思えば、そのドレスが深紅のドレスアーマーへと変化した。


 また左手の親指を手の中に収めるように握りこむと、左手から深紅の十字架のような形で刃が付いた二メートルはあろう大槍が現れた。



「この二本は私の武器や防具という扱いですが、実際に生きている使徒でもあります。

 なので私の成長と共に他の使徒ともども強く頑丈になっていくのです」

「宿主と共に成長する装備品ですか──なかなか面白いですね」



 そちらにはリアが一番関心を示しており、時間が出来たら見せてくれと頼んでいた。



「それじゃあ、後は《天界聖炎》ってスキルだな。

 攻撃スキルっぽいし、どうせなら的を用意しよう。

 蒼太ー! また何か捕まえてきてくれー!」

「クュィイイイイロロロロゥゥゥーー」



 白太のとき同様に蒼太に頼むと、また2~3分程度でナマコの様な2メートルほどの大きさをした魔物を三匹、尻尾に巻きつけて戻ってきた。

 それを砂浜に捨てて、また後ろで待機しようとしてくれる蒼太だったが、そこにいると危ないかもしれないと天使が言うので下がって貰う。


 どうせナマコ魔物はそれほど動きが速いわけでもないので、よほどのんびりしない限り逃げられないだろう。



「ではいきます。眩しいと思いますので、目に御注意を──」



 それだけ言うと天使は天へと右手を掲げた。すると上空に金色の丸い扉が現れる。

 かと思えば、その扉がナマコ三匹の方向へ正面が向くように角度を調整し始める。



「開け──天界の扉よ」



 天使がそう呟くと扉が左右に全て開き、その中から眩い聖なる炎が猛烈な勢いでナマコの周辺ごと焼き払う。

 そうして後に残ったのは、三匹のナマコがいた辺りに残った黒い影のみ。

 砂浜は溶けて煮えてしまっている。


 それはとてもじゃないがレベル1の存在が放てる威力ではなかった。



「これは凄まじいな。あいつらもレベル30そこそこはあっただろうに瞬殺だぞ」

「お粗末様でした」



 竜郎の純粋に感心したような声に、天使は少し大技を使ったせいで疲れたような表情をしながらも、主に褒められ少し得意げに微笑んだのであった。

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