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レベルイーター  作者: 亜掛千夜
第四編 躍進

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第480話 パンダ(モドキ)と素材選び

 シロクマ──愛衣命名:しろ

 なんだか大食いが得意そうな人の苗字みたいだなと思ったものの、今までの法則性からしてそうなるのは予想できていたので、すんなりとその名に決まった。

 あまり凝った名前を付けても、竜郎自身その全てを覚えきれるわけがないのだからしょうがない。

 接するときに愛情を持って接すればいいのだ。


 ということでひとまずシロクマの白太には《強化改造牧場》内で休憩して貰いながら、辺りに散らばった爪型の虹色水晶は全て回収してから、当初の目的だったパンダ作りへと入っていく。



「まずはこの等級6の魔卵を《強化改造牧場》にセットしてっと」



 シミュレーターを起動して黄金水晶の生えたクマを表示させる。



「亜種としては虹色水晶以外はオールカラーいけるみたいだな。とりあえず改造で水晶は取るか」

「じゃないと抱っこしたとき痛いしね」



 本来ならそこがこの魔物の売りになってくるのだが、竜郎は完全に邪魔だとばかりに背中に生えた水晶を改造で取り払う。

 そしてパンダの、あの特徴ある色彩へと変えようとしたところで手が止まる。



「あれ? 目の所と前足は黒かったのは覚えているが、ほかはどんな模様だったっけか」

「私、写真持ってるよ~」

「おっ、さんきゅー」



 愛衣がスマホに入っていたパンダのイラストや写真をいくつか見せてくれる。

 それを見ながら体毛は白をベースに目元、前足から背中、耳、両足を黒ときて、すっかりとパンダ柄へと変わっていった。

 しかし──。



「尻尾は白だった……よな?」

「え? 黒じゃなかったっけ?」

「「え?」」



 スマホの画像フォルダに入っていたパンダ画像を全て確認するが、お尻が映っている写真は一枚も無かった。

 そこで二人でじゃんけんして白か黒か決めた所、愛衣が勝ったので尻尾の色は黒となった。

 本当のパンダの尻尾は白なのだが……。



「よし、あとは大人パンダか子パンダか──」

「子パンダがいー! 大きいのもいいけど、やっぱり子パンダの破壊力はやばいからね!!」

「なら豆太の時みたいに永遠の子供スタイルにしてっと。こんなもんか」

「「たのしみー」」



 見たことのない皆は出来てからのお楽しみという事で、改造には携わらずに側で見守っている。

 彩人と彩花も、どんなモフモフ生物が出てくるのかと背中の翼をパタパタ動かし、落ち着かない様子でキラキラした目を向けて来る。

 

 なので竜郎は期待に応えるべく、出来るだけ素早く強化をほどこしスキルを選定していると、その中に元のクマが持っていた《岩吐き》の派生版らしき物を発見した。



「おっ、これは何だかお得そうな匂いがするな」

「どれどれ?」

「これなんだが──」



 それは黄金水晶を口から飛ばす《黄金水晶吐き》というスキル。

 けれど稀少かつ習得難易度が高いスキルらしく、付与の為の容量をかなり消費するようだ。

 なのでこれを取得させてしまうと、《ひっかく》など基本的であって当たり前なスキルしか初期スキルとして付与できなくなる。



「ん~でも戦闘に連れてくわけでもないし、後から何も覚えられなくなるわけじゃないんでしょ?

 だったらいいんじゃない? 金の水晶を産むパンダってのも面白そうじゃん」

「それもそうか。生むんじゃなくて吐くってのが気になるが……。

 まあ金水晶はまだ沢山あるけど、利用価値は高いしいいか」



 宝石としての価値もさることながら、武器や防具などの素材としても優れている。

 白太の虹色水晶の方が恐らく価値は高いのだろうが、それでもいくらでも生み出せる環境があるのなら確保しておいた方がいいだろう。

 今後食品などの商品を生み出して商人の真似事をしたりする時に、虹色水晶よりは出しやすい黄金水晶を持っていれば交渉事にも使えるはずだ。


 そうして《黄金水晶吐き》を付与して、あとは簡単な《ひっかく》《かみつく》《嗅覚》などを覚えさせて孵化に入る。



「今回は普通にやってね!」

「……あ、ああ。今回は普通にやるよ」

「その間が怪しぃなぁ~」

「さすがに今回ばかりは自重するって。せっかく白黒の位置とかも調べたんだから、それが変わっても嫌だしな」



 一瞬また何か手を加えてみようかと頭をかすめたものの、愛衣に釘を刺されたので今回は神力も使わずにそのままのスタイルで生み出す事に決める。


 特に何も考える事も無く魔力を一気に注いでいき、等級6に相応しい魔力量を吸収して孵化が終わった。



「ではっ、俺達の世界でも大人気の動物、パンダさんの登場だー!」



 勿体ぶったように口上を述べると、竜郎は全員の目の前に子パンダ(モドキ)を呼びだした。



「や~ん、コロコロしてて可愛い~!」

「ピュィーー♪」「ヒヒン!」「なかなか愛嬌があって可愛いっすね~」

「「もふもふ~!」」

「可愛いな……」

「か、可愛いわね……。ただクマに模様が付いただけなのに、なんでこんなに抱きしめたくなるのかしら」



 砂浜の上に仰向けで寝転がり、竜郎に向けて四本の短い手足をバタつかせる体長40センチくらいの子パンダの姿に、異世界の感性を持つレーラやイシュタルも無意識的に足がそちらへと向いていく。



「普通に子グマも可愛いんだけどな。なんかこの白黒ボディが上手く嵌ってるというかなんというか」

「ねーねー、抱っこしていい? いいよね?」

「ああ、いいぞ」

「「ボクもボクも~」」

「順番に抱っこさせてあげるから、待っててくれな?」

「「はーーい」」



 愛衣が誰よりも早く寝転がるパンダを掬い上げると、胸に抱いてぎゅ~っと抱きしめた。

 竜郎に敵じゃないと事前に言われていたので、パンダも怯えることなく受け入れる。

 素直に返事をした彩人と彩花も順番だと言われたので、愛衣の後ろに並んだ。



「わ、私にも触らせてもらえるかしら?」

「私もだっ」



 愛衣の腕の中で大人しく抱かれる子パンダに手を伸ばし、二人は初めはちょいちょいと、段々と大胆にお腹や頭を撫でていく。

 その表情を見れば目じりは完全に下がり口元はにやけ、完全に二人もパンダの魔力に囚われてしまったようだ。



「さすがパンダ……。クリアエルフや真竜の女性まで虜にするか……。

 こりゃ動物園──いや、この場合魔物園か。

 そんなのでも開ければ大繁盛しそうだな」

「ん~、こういう子ならいいかもだけど、蒼太とかワニワニ隊とかシュベ太に清子さんなんかを見せたら大パニックになりそう」

「まあ、現実的に考えてたら管理やら何やら大変そうだし、変な客も来そうだから面倒そうではあるな」



 竜種や子供に○○が出るわよ! と言うのにも使われるような魔物の上位種。

 さらに魔王種候補なんかを安全に見られるのなら、それこそ繁盛しそうだとは思いつつも、不特定多数の人間を受け入れるのは準備や何やら面倒だと考えた。

 いつか暇になったらやってもいいかもしれないが、それは今ではないだろう。


 そうして順番で彩花、彩人がパンダを抱っこしていき、レーラやイシュタルなんかもその次に抱っこしていた。

 そんな姿を見ていた竜郎は、いっそのこともっと一杯いても可愛いかもなと思い始める。


 その案を皆に伝えると満場一致で賛成可決。

 取りあえず合計10匹もいればいいだろうと、残り9個分の魔卵を複製し取り出す。

 先と同じように改造し、雌雄の比率も半々になるよう調整して孵化させていく。


 すると10匹の尻尾が黒い子パンダ(モドキ)が入り乱れる楽園が、そこに出来あがった。


 竜郎が歩き出すと10匹の子パンダが、小さく短い四足を一斉に動かし追いかけて来る様は非常に愛らしい。

 我慢していた竜郎もそれには胸をときめかせ、一番近くにいた2匹を同時に持ち上げ抱っこした。



「なんだこのクソ可愛い生物は……。

 愛衣の次に可愛い生物かもしれない……」

「キャンキャン!」

「おおっ、すまんすまん。豆太も同じくらい可愛いぞ!

 ……俺のせいで随分でっかくなっちゃったけど」



 僕は僕は?と竜郎の背中に頭を押し付けてきた巨大な子供の柴犬にしか見えない豆太に、竜郎は子パンダをおろして謝りながら、その大きな頭を抱きしめモフモフした。


 一種のふれあい動物園の様相を見せ始めていると、休憩がてら様子を見に来た奈々とリアも加わり、シャチ太も呼んでマスコットモンスターたちを全員愛でた。


 その間にも竜郎は愛衣と身を寄せ合い、隣同士で砂浜に胡坐をかいて子パンダを膝に乗せて考える。

 今日のメインは爺やとも連携の取れる、システムがインストールされた人型の眷属を生み出す事。



(さらに天魔族創造とジャンヌと奈々のスキルによる重複スキル実験も兼ねているから、そっちの素材は大前提として確保しておく必要がある。

 となると……人間の形に近い素材を使った方が良さそうだな)



 また人型で生まれる事を望むのなら、より確率を上げるために《怪人族創造》を混ぜるのがいいだろう。

 他に色々と混ぜてしまうと鬼武者幽霊──武蔵のように、人前に出しにくい存在が生まれてきてしまいそうだから却下する。



(という事で今回のスキルは俺の《天魔族創造》と《怪人族創造》。

 それにジャンヌの《天族創造》と奈々の《魔族創造》を混ぜるってので決まりだな)



 方向性が決まった所で今度はどんな素材をそれぞれ用意していくか。

 竜郎の天魔族創造とジャンヌと奈々のスキルは二重で行使する予定なので、素材も一緒くたでいいのかもしれないが、どうせやるなら素材の数をケチるよりもそれぞれのマックス値で望みたい。


 となると竜郎の天魔族創造で10個。ジャンヌの天族創造で10個。奈々の魔族創造で10個の計30個の素材をそこだけで使う。

 またさらに怪人族創造で10個消費するとなると、今回用意しないといけない素材の数は計40個。

 今までの傾向から言って、その全ての質も最高品質の物を用意すれば人前に出しやすい容姿かどうかはともかく、システムがインストールされるくらいの魔物──人間を生み出す事が出来るはずだ。



「今まで戦った魔物の中で、怪人族に有効そうな素材と言ったらなんだろうか」



 怪人族の素材レシピは人骨・人心臓・人脳・人髪の四種だが、正確には人型をしていれば魔物の骨でも心臓でも脳でも髪でも適応されるので意外と範囲は広い。

 なので直ぐに決めかねた竜郎は皆に意見を募ってみる。


 その中で色々と出てきて、また竜郎なんかの髪を使うのも有りなのではないかという意見まで出た所で、イシュタルがふと思い出したかのように、とある魔物を候補に挙げた。



「そう言えば、あの魔物の素材はどうなんだ?」

「あの魔物っていうとどれだ?」

「ほら、私が初めてタツロウたちと共戦した馬鹿でかい奴だ」

「あー、あのちょいキモミイラねー」

「ちょっとか?」



 愛衣のちょいの基準はおかしいのでは? と思いながら、竜郎はその魔物について考えていく。

 あれは竜大陸で戦った偽神種の魔物であり、骨に薄皮を付けただけのようなまごう事なきミイラの巨人。


 それはアンデッド系ではあったが、人型さえしていればそれでも問題ない事は以前、人型の骨をもっと集めようと魔物船──長門のスキルによって作られた骸骨魔物で実験済みだ。

 素材としての質も極めて高く、現在竜郎が持っている最高峰の人骨素材と言ってもいいだろう。

 しかし──。



「あれは倒した時の攻撃で、かなり破損させたからな……。

 とりあえず復元魔法で出来るだけ修復してみて、その状態を見てから考えてみるか」

「それがいいですね」



 子パンダと戯れて頬がゆるゆるになっていたリアも、その時ばかりは真面目な顔でそう答えていた。


 という事で竜郎は偽神種の巨人ミイラの死骸を、回収できた分すべてを土魔法で作った大きな台の上に乗せた。

 そして《復元魔法》を神竜魔力という最高品質のエネルギーを使って行使する。



「おおっ、これは凄いな! ただ神力を混ぜただけの時と比べると段違いの反応だ」



 いつもの復元魔法では、だいたい復元したい物質の9割は無いと完全に元に戻すのは難しかった。

 それでいうと今回のミイラはほぼ全損。骨粉に至るまで丁寧に集めてはきたが、消滅してしまった部分も多かった。

 なので復元魔法を使ったとしても、4分の1も元には戻せないだろうと踏んでいた。


 しかしどうだろうか。今竜郎の目の前でみるみる内に復元されていく姿を見るに、半分は確実に元に戻せそうだった。

 ただ元からスキルで生贄にして牛にしてしまい、丸ごとなくなっていた下半身部分に関しては無理そうだ。



「このまま全部いけるかっ」



 だが上半身だけなら全部いける──と思った所で復元の効果が落ちていき、結果的にはほぼ全壊状態から半分と少しまでで止まった。



「それでもこれなら素材としては十分じゃないかしら?」

「元から大きい素材ですし、見て何かはっきりと解るようになったのですから、これ以上は高望みというものですの」

「だなぁ。それじゃあ、怪人族創造についてはこいつの素材を使わせてもらおう。

 やっぱり髪の毛よりも骨の方が素材的価値は高そうだからな」



 ということで怪人族創造は偽神種巨人ミイラの上半身半壊未満の素材10個を使うことに決まった。


 となると今度は天族創造と魔族創造、天魔族創造に使う素材という事になるが、こちらに関しては既に竜郎の中で固まっていた。



「大天使の素材を30体用意しようと思ってる。

 天使の死体は聖物質として扱えるし、死霊竜術でアンデッド化させれば邪物質としても使えるから素材的にも問題はないはずだ」

「ありゃりゃ、そうなの? 魔族の素材ならアラクネ天魔とかもあるけど」

「あいつをいれると……その…………性格が悪くなりそうだろ?」



 「あー……」と、よく解っていないイシュタル以外の全員が遠い目をして空を仰いだ。

 だがその竜郎の言は他のメンバーからしたら十分に納得できるもので、今回の素材は大天使30体。偽神種ミイラ10体と決まった。



「それじゃあ準備に取り掛かろうか」

「ヒヒーーン!」「はいですの!」



 竜郎の言葉に頷くや否やジャンヌと奈々は《真体化》。

 竜郎も杖の帰還石を取り換えて新しいもので起動し直すと、今日のメインイベントの下準備に取り掛かっていくのであった。

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