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レベルイーター  作者: 亜掛千夜
第三編 神隠し

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第475話 後片付け

 大天使でレベル781。巨人ミイラでレベル809。と続き、その前2体よりは低いものの盾の魔物もレベル754と竜郎や愛衣よりもずっと高いレベルだった。

 その為、この場のほとんどの者にレベルアップのアナウンスが流れた。


 竜郎は、《『レベル:382』になりました。》と。

 愛衣は、《『レベル:350』になりました。》と。

 カルディナは、《『レベル:164』になりました。》と。

 ジャンヌは、《『レベル:164』になりました。》と。

 奈々は、《『レベル:164』になりました。》と。

 リアは、《『レベル:337』になりました。》と。

 アテナは、《『レベル:164』になりました。》と。

 天照は、《『レベル:155』になりました。》と。

 月読は、《『レベル:155』になりました。》と。

 イシュタルは、《『レベル:169』になりました。》と。


 また奈々の刺突武器に宿っていたダーインスレイヴは、一気にレベルキャップの49へ。

 レーラは例によってレベルアップはせず、彩人と彩花──というより彩はレベル50の壁を越えることは無かったので49で据え置きだ。

 けれどその代りに《魔王種殺し》の称号はしっかりと取得できたので、結果的にはプラスだろう。

 他の面々も魔王種殺しの+値が増え、リアはレベル300台に乗ったので越境者の+値も増えていた。


 竜郎は後で食べる……または飲むために、粉々になった宝珠の残骸を瓶へと詰めていく。



「今回の戦いでは彩のレベルは上がらなかったか。

 超格上相手の経験値だから行けるかもと思ったんだがな」

「「ざんねーん」」



 悪魔と天使の子供形態である二人は揃って口を尖らせた。



「そういえば爺やは今なんレベルなのかな?」

「ヒヒーーン。ヒヒーーン、ヒヒン」

「さっき会った時はレベル56だったそうっすよ」

「いつの間に50の壁を越えたんだ……?」



 城の管理を任せている印象が強い為、竜郎は疑問に思ったのだが、どうやらその瞬間に彩人と彩花は立ち会っていたらしい。

 互いに互いの言葉を継ぐように、交互に話してくれた。



「えっとね。蒼太とワニワニ隊の魔物とねー」

「戦闘訓練してたんだ」

「それで爺や対蒼太たちで戦いあってたんだけどー」

「その時壁を越えたみたいなの」



 どうやら仕事合間に蒼太たちと特訓し、超えてしまったようだ。

 それを聞いたイシュタルは、何故か懐かしむような顔をしていた。



「ほう。私と似たようなものだな」

「そうなのか? イシュタル」

「ああ、私の時は母上が相手をしてくれたんだ。

 というより、我が国ではたいてい親が子供を一歩押し上げる為に戦う事が多いんだがな。

 当時はかなり痛い目に合ったが、超えた時の爽快感は堪らなかった」

「なんだか私たちで言うグラグラの乳歯を、お母さんに抜いてもらった的な感覚みたいだね」

「かもしれないな。随分アグレッシブなやり方だが……」



 そんな話をしている間に一通り盾の魔物の残骸を余すことなく集め終ると、これからについて軽く話し合っていく。

 まずはこの地下施設をどうするかについてから。



「正直破壊した方がいいと思うわ。管理者がいないままに放っておくには危険だもの」

「それがいいかもしれないっすね。なら目ぼしいモノは全部貰ってってもいいかもしれないっすね」

「そうだな。とくにあの魔法液生成装置。あんなものが表に出たら、最悪それを巡って戦争が起きかねない。

 私だって欲しい位なのだから」

「それは……言えてますね。あれだけを表にポンと出されても、4つの複属性魔法で躓いている研究者たちが解明するまでに数百年から、へたしたら千年単位の時間をようするかもしれないです。

 そうなればアレの存在を他国が知れば何としてでも、それこそ奪ってでも欲しいと思うでしょうね」



 地球であっても無限にエネルギー資源が生成できる機械があり、それは複製不可能で世界に一つしかないとなれば、過激な国ならば直ぐにでも奪おうと動きだすはず。

 また世界力の消費を手伝わせているのだから、各国にリアが作って売りつければどうかという話も出たが、その場合開発者に目が向くだけだろう。

 なんにしても厄介事が起きる可能性が高い。



「ということで、あれはうちだけで回収して使うとするか。

 中古品だが一から作らなくても済むから経済的だな」

「さすがたつろー、貧乏性だねぇ」

「やりくり上手と言ってくれ。それじゃあ次は──」



 今回の事件について皇帝や総理大臣になんと説明するかについて。


 もう当事者は誰も残っていないところに、皇帝一族の血筋はとうの昔に滅んでおり、今はもと孤児の子孫を国の象徴として扱っているんですよ~などと、竜郎達から爆弾を落とすような事はしたくない。

 黙っていても上手く回っているのだから、そこは胸の内に秘めておくことにした。

 確かめる手段はもう残っていないだろうし、無いとは思うがその話自体が嘘なのかもしれないのだから余計な事はしない方が皆の為だろう。

 それにゴタゴタに付き合わされるのも面倒だ。


 また首謀者ベルケルプの名を出すかどうかについて。

 彼はおとぎ話にも出てくるような、超が付くほど有名なクリアエルフだ。

 そのような人物がこれほどの犯罪を犯したとなると、下手をするとクリアエルフ全般に向ける感情が変わってしまうこともあり得る。

 こちらも当人は死んでしまったのだから、ここは他のクリアエルフの為に黙っておくことにした。


 何か尋常ならざる存在によって人々が攫われて殺されていた。

 そんな感じで話しを皆で考えていき説明に困らない様にしておいた。


 それからも色々と細かな事も打ち合わせていき行動を開始する。



「おーい。彩人、彩花。起きろー」

「「……ん?」」



 話を聞いていてもつまらなかったようで、竜郎が先ほど召喚した豆太にもたれ掛って寝ていた二人を起こし、まずは演算装置のある部屋まで移動していく。



「ふっ!」



 魔道具部分は研究資料として竜郎が《無限アイテムフィールド》にしまいこみ、魔力頭脳は丁寧に取り出して回収。

 最後に残った脳を使ったコア達はリアを筆頭に破壊していき、意識だけが捕らわれた人々を解放していった。



「この奥にもまだ部屋があるようですけれど、何の部屋なんですの?」

「取りあえず行ってみよう。危険な物があった場合は破壊、もしくは回収する必要があるだろうからな」



 ここまで扉などなかったというのに、おそらくこの施設の規模的にも最深部と思われる部屋だけには魔法、物理に対してもかなりの耐久性を持つ素材で作られた重厚な扉が設置されていた。

 何か大事なものがある可能性は高いだろう。


 《万象解識眼》や解魔法で慎重に罠などを確認しつつ扉を調べていく。



「魔法と物理、両方の鍵がかかっているな。面倒だし破壊するか」

「中に何があるか解らないので慎重にお願いしますね、兄さん」

「ああ、心得てるよ」



 竜郎は天照を構えて杖の先端を扉の縁に押し当てる。

 そして高威力の火と光の玉を生じさせて、それでなぞって焼き切っていく。



「ピィュー!」

「毒かっ──奈々!」

「了解ですの!」



 扉に小さな穴が生じると、そこから致死性ではないが強力な神経麻痺を引き起こす、極めて危険な毒の反応をカルディナが察知した。

 すぐさま奈々の《解毒魔法》で中和していき、念のため残っていても大丈夫なように全員にその毒に対しての解毒魔法を呪魔法で奈々が付与していった。



「これでひとまず安心だな。それじゃあ進もう」



 慎重に解魔法で調べながら、再び扉を焼き切っていく。

 魔法抵抗の高い素材ではあったのにもかかわらず、さすがに竜郎の魔法に抗う事は出来ずに、バターのように溶けて溝が深くなっていく。

 最後の右隅を完全に溶かして向こう側まで貫通させると、それはもう扉ではなくただの四角い物体と成り果てた。


 こうなってしまえば鍵など関係ない。竜郎は《無限アイテムフィールド》に収納して取り払った。



「行こう」



 竜郎の言葉に全員が頷き返し、扉の先にも少しだけ続く通路を進んでいけば──そこには転移の魔方陣が床に刻まれた小部屋があった。

 神経毒は小部屋のいたる所に設置された魔道具から発生しており、急いでそちらの動作を止めていった。



「この魔法陣は飛ばす側ではなく、受け取る側の陣の様ですね」

「ということは、もしかしてここが攫ってきた者達が送られていた場所という事か?」

「そうだと思います、イシュタルさん。それにしても──」



 そう言いながらリアは天井に視線を送ると、そこには音楽室の壁のような小さな穴が無数に開いていた。



「まさか魔方陣にはこんな作り方もあったなんて……」

「何を言っていますの?」



 床の魔方陣を見て言うのならまだしも、ただ穴の開いた天井を見てそう呟くリアに奈々は怪訝な顔をする。



「ああいえ、実はあの穴の先は立体魔方陣になっているみたいなんです」

「りったいまほーじん? それってなあに? リアちゃん」

「それはですね、姉さん。実は──」



 リアが言うにはこの部屋はアドラリム国の首都マロンのど真ん中に位置する部屋らしく、あの点の所の穴の先から管が一見ぐちゃぐちゃと張り巡らさられるようにして地表近くまで伸びていて、その管の配置によって立体的な魔方陣を描いているのだという。


 本来魔方陣とは平面に刻むものであり、3次元的にしようとするどころか考えようともしなかったらしい。

 それは現状平面の中に収めるだけで一杯一杯というのが、この時代の技術者のレベルだからである。


 けれどベルケルプほどの技術者になってくると、平面だけでは纏めきれない大量の情報を、一つの魔方陣に刻みたいと考えるようになった。


 リアも今の2次元魔方陣の限界を感じており、何かいい方法がないかと考えていた所で3次元に空間を拡張するというアイデアを見せられ、まさに目から鱗状態だったようだ。



「むしろなぜもっと早くその可能性に至れなかったのかと、悔しい位ですよ。

 まあ、そんな素晴らしい技術を使って作られたのが、細かな条件設定と誰にもばれない様に見られない様に、多種多様な偽装や幻覚、刷り込みなどを織り交ぜられた誘拐転移装置というのはアレですが……」

「そうね……。情熱の向ける方向が違っていたらと、私も思うわ……」



 もしもそれを彼が正の方向に使っていたら、どんな素晴らしい事に使っていたのだろうかとレーラは少しやるせなくなった。



「ならリアがいい方向に使えばいいんですの。

 その為に全ての研究資料も貰ったのではないんですの?」

「…………ええ、ええ。その通りです、ナナ。

 そうとなれば早くこれを使った実験をしてみたいです!」

「ふふっ、なら早く済ませてお家に帰んなきゃね」

「はい!」



 元気よく頷くリアを微笑ましそうに皆が見守りながら、竜郎達は魔方陣を切り取って回収。

 毒魔道具も回収。上の魔方陣は後で施設ごと潰すつもりなので一時保留。

 それから目ぼしいものを回収し、ベルケルプが捕まった振りをしていた部屋に遺棄されていた少女の死体を出来るだけ綺麗に復元してから回収。

 魔法液生成装置やその他色々なもの──そのまま消し去ってしまうにはもったいない物を竜郎が「ああ、もったいない、もったいない」といいながら回収。


 そうして竜郎達は来た道をそのまま戻るのではなく、部屋に穴をあけて土魔法で穴を掘り、地上の入り口のあった小さな森まで一気に進みようやく地上に戻ってきた。


 光属の日だったので日中も夜闇に包まれていたのだが、時間的にも暗くなっておかしくない頃合い。

 静けさが広がる小さな森の中で、竜郎は出来るだけ地上に影響が出ない様にカルディナ、アテナと一緒に土魔法を全力で行使。

 施設を土で押し潰し、ぐちゃぐちゃの残骸に丸めてから少しずつ地上に出しては切り取り《無限アイテムフィールド》に収納していく。

 これも素材になるのだから、この時代にも最先端技術ですら届かないとんでも技術の痕跡をいっさい残さないよう証拠隠滅もかねて貰っていこうという腹だ。


 数十分かけて巨大な地下施設の残骸を余すところなく引っ張り上げ終わる。



「よし、これで施設があったことすら全部解らなくなったはずだ」

「そんじゃ、皇帝さん家に行こっか。やきもきしてるだろーしさ」



 皇居屋上で別れてからかなり時間も過ぎている。

 しかも何処で何が起こっているかも一切知らせていないので、向こうは気が気でないだろう。

 愛衣の言葉に皆が苦笑すると、急いで皇居まで飛んで行く事にしたのであった。

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