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レベルイーター  作者: 亜掛千夜
第三編 神隠し

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第474話 木っ端微塵

 竜郎は怒りを抱えながらも頭を冷静にしてリアから話も聞き、敵の情報を頭の中に纏めていく。


 攻撃をすれば問答無用で反射され、相手の攻撃を魔法などで防げばその力を剣から吸収されて反射の為の力を蓄える。


 反射の力は盾にくっ付いている全てに適応され、体から伸ばすような攻撃──つまり愛衣の指を切り落とした、先ほどの気力の刃のようなスキルにも付与されているので攻撃で相殺するのは危険。


 また悪魔たちが持っている二本の長、短剣はエネルギーが通っているものなら何でもその力を吸収できるので、竜郎たち自身が傷つけられても魔力や気力、竜力などを奪われる。


 剣を攻撃しても反射対象であるし、反射できなくなっても相手の攻撃を切る事でエネルギーを吸収できるので、破壊する前に反射の力を取り戻す。

 なので実質破壊無効状態だと思っていい。


 吸収され続ける限り永遠に攻撃は届かず反射されてしまうので、うかつに五体の悪魔の攻撃を受けない方がいい。



「なかなか厄介そうではあるが、よくよく考えるとそうでもない気がしてきたな」

「そうなの?」

「ああ。俺の考えた作戦はだな──」



 竜郎は未だ銀砂の仕切りの後ろに隠れているこちらを見つけられずに右往左往している盾の魔物に注意しながら、今回の作戦概要を手早く説明していった。


 そうして皆で作戦を共有した所で、竜郎は月読に属性体による手の平サイズの小さなミニ竜を作って貰い、全員の肩に乗ってもらう。

 それから属性体経由で、若干性能の落ちた《分霊:内通外防球》を発動してもらう。

 こうする事で、弱い攻撃は一切通さず、されどこちらの攻撃はいくらでも撃てる状態となった。


 これで準備完了である。



「じゃあ、それぞれ作戦通りにいこう。3、2、1──散開っ」



 竜郎の掛け声と共に銀砂の仕切りから飛び出した竜郎達。

 当然こちらの存在を捕えた盾の魔物だが、全員が散り散りに姿を現した為にどれを追えばいいのか解らず動きが止まる。

 その間に全員が四方八方から取り囲む様に距離を取り、一斉に攻撃を仕掛けた。


 けれどもその攻撃は非常に小さく弱く、倒せるのはイモムーくらいじゃないかという威力。

 されども手数は異常に多く、雨のように全方位から盾の魔物めがけて降り注ぐ。



「「「「「────!」」」」」



 それがなんだと言わんばかりに、五体の盾から飛び出した上半身だけの悪魔たちが大口を開けて威嚇する。

 こんな攻撃は反射しなくてもダメージにすらならないのだから、いくら撃っても無駄な事。

 そう魔物ながらに思ったのかもしれない。


 だがそんな直接当たってもダメージにならない様な攻撃も、問答無用で反射している事の不味さに気が付いていない。

 なにせ《宝玉の加護》は常時発動型のパッシブスキル。

 自己判断では切る事が出来ず、エネルギーが消費しきるまで永遠に反射し続けるスキルなので、その行為に攻撃の強弱は関係ない。

 確かに弱い攻撃であれば反射に必要な消費エネルギーも少ない。


 けれどちりも積もれば山となる。

 低威力の小さな攻撃であっても、今の竜郎達のように豪雨のように浴びせかけられれば、その消費も馬鹿にならない。


 さらに反射した攻撃も月読の属性体経由で人数分張られた《分霊:内通外防球》により、完全に防げるので、こちらは攻撃が当たってうっとうしい思いもしないで好き勝手に攻撃が出来るのだ。



「「「「「──!」」」」」



 そんなこちらの意図も解らずに、盾は水平を保ったまま空を滑りちりじりになった竜郎達を闇雲に追いかけていく。



「鬼ごっこみたいで楽しいかも!」



 愛衣に向かって突撃してきても、機動力でかなうはずも無くあっさりと逃げられてしまう。



「ピィューーー」



 今度はおちょくるように周囲を飛びながら、細かい散魔弾を撃ってくるカルディナを追いかけ天井まで宙を滑っていく。

 だがいくら剣を振り回しても届きそうで届かない絶妙な距離を正確に保ちながら飛ばれるので、盾の魔物は諦めきれずに側面から円形の刃を伸ばす。

 さらに盾から生える五体の悪魔は、ジグザグした雷形の長剣を思い切り振り、折れ曲がった部分が伸びて鞭のようにカルディナへと襲い掛かる。


 けれどカルディナはそれを解魔法でしっかりと把握していたので、そちらに視線を送ることなく一気に速度を上げて距離を取った。


 むなしくしなった五本の長剣が空を切り、五体の悪魔はいらだたしげに追うのを諦めた。



「「「「「────?」」」」」



 そこでようやく宝珠の蓄えたエネルギーが目減りしている事に気が付く。

 もしこれが知能ある人間ならば直ぐに気が付いていたのだろうが、魔物の中でもそれほど頭がよくないらしい。

 残りはもう既に5分の一ほどになっていた。


 さすがに不味いと思い立った悪魔たちは短剣の方の刃を自分の左手に突き刺した。

 すると左の手の平の中へと短剣は吸い込まれていき、左腕にそれぞれ黒い炎を纏い始めた。

 かと思えば天井にほど近い場所で停止すると、その左腕を前に突き出し溜めの動作に入る。



「黒炎の火炎の放射が来ます! 全て反射が付いているので触らない様に!

 それとあの炎には吸収する剣と同等の効果があるので、障壁などで防ぐとせっかく減らした宝珠のエネルギーが回復します!」



 リアの虎型の機体から響き渡る大きな声で、皆にも情報が伝わっていく。



「なにそれっずるい!」

「躱すしかないって事──来るぞ!」



 その瞬間、黒炎が左腕から真っすぐ放射され、竜郎達を焼き凝ろうと迫って来る。

 全員は事前に何が来るかは解っていたので、細心の注意をしながら部屋の中を走り回って五本の黒炎の柱から逃げていく。


 しかし竜郎たちにもこの攻撃は利点がある事に竜郎は直ぐに気が付いた。

 逃げている間にも竜郎達は細かく小さな攻撃は続けているのだが、黒炎の柱の分まで反射範囲が拡張されているので、今まで以上に宝珠のエネルギー削りの効率がアップしていたのだ。


 黒炎にはエネルギーを吸収する力もあるが、吸収よりも反射が優先されているので、魔法や盾の武術などで受け止めない限り回復する事も無い。


 そんな事とは露知らず、盾から生えている悪魔たちは逃げ回る竜郎達をおかしそうに見て笑っていた。



「ピュィーー!」

「もう直ぐ反射が切れるぞ! 10、9──」



 反射が切れてからも攻撃を続けてしまうと、今度は剣の効果で回復されてしまう。

 なのでタイミングよく一斉に、こちらからの攻撃を止める必要がある。


 そのタイミングあわせるべく、竜郎はカルディナと一緒に解魔法で残量から割り出された残り時間を口にしていく。



「2、1──ストップ!」



 ピタッと竜郎達からの攻撃が止む。

 それと同時に盾の魔物の中央に埋め込まれている宝珠から、完全にエネルギーが無くなり、反射の力が無効化された。


 これでこちらの攻撃が通るようになった。

 そんなおり、今まで後方で《真体化》したジャンヌの背に捕まりながらコッソリ攻撃を仕掛けていた彩人が、天使の翼をはためかせて床に素早く降りた。



「こっちー!」



 天井近くを浮遊している盾の魔物へ、彩人は可愛らしい変声期前の少年の声で叫びながら、右手に聖なる光を輝かせ相手の注意を引き始める。



「「「「「────!」」」」」 



 盾から生えた悪魔たちは不快な聖光を目にし、また宝珠のエネルギーを回復させるべく彩人の方へと突っ込んでいった。


 盾は横に回転し、悪魔たちは左手の黒炎放射を滅茶苦茶にまき散らしながら、長剣を突きだし彩人を屠ろうとする。



「今だ!」



 竜郎はその掛け声とともに、全員の目の前に転移の穴を開く。



「「「「「──ッ!?」」」」」



 悪魔たちの剣が当たる前に彩人はアテナの背中にしがみ付いてた彩花の方へと統合され、転移するかのように盾の魔物の前から掻き消える。

 それと同時に、悪魔たちが生えていない反対、盾の裏側に開いた転移の穴から全員分の攻撃が飛び出してきた。


 本来なら反射の力があるので、そこへ攻撃されてもどうという事はないはずだったのだが、宝珠の加護が切れている今、まともにその攻撃を受けた盾の魔物は砕け散る。


 ゴツンッ──と音を立てて、盾の破片と共に罅割れた宝珠が床へと落ちた。

 けれどまだレベルアップの知らせは届かない。

 盾の破片が宝珠に向かって、じわじわと引き寄せられるように動き始めている。

 となれば答えは一つだ。



「はあっ!」



 竜郎は氷と封印の混合魔法で宝珠を氷漬けにする。

 すると引き寄せられていた盾の破片が動きを止めた。

 それを確認するや否や、竜郎は《レベルイーター》の黒球を準備しながら転移すると、宝珠に向かって吹き当てた。




 --------------------------------

 レベル:754

 スキル:《宝珠の加護》《自動修復》《強吸魔長剣》

     《吸魔短剣・黒炎柱》《空滑浮遊 Lv.16》

     《極斬内円刃 Lv.20》《剣術 Lv.11》

     《切断超強化 Lv.13》《堅牢体 Lv.18》

     《魔王の覇気 Lv.16》

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(外見が盾の癖に《剣術》だと……。しかもそれ関連のスキルが多いし見た目詐欺だな。

 まあ、あの反射能力があれば盾は名乗ってもよさそうではあるが──っと、もう限界か)



 弱っているとはいえレベル754の化物だ。

 まだ全て吸収し終わる前に封印魔法が解かれそうだったので、竜郎は再度かけ直してレベルの吸い出しに集中していく。



 --------------------------------

 レベル:754

 スキル:《宝珠の加護》《自動修復》《強吸魔長剣》

     《吸魔短剣・黒炎柱》《空滑浮遊 Lv.0》

     《極斬内円刃 Lv.0》《剣術 Lv.0》

     《切断超強化 Lv.0》《堅牢体 Lv.0》

     《魔王の覇気 Lv.0》

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 例によって個体レベルだけは残して、スキルレベルは全て自分のSPへと変換させてもらうべく黒球を飲み込んだ。


 何度か吸い出している最中に封印魔法をかけ直したせいで、盾の魔物は解除に慣れ始め封印時間が短くなってきている。

 あと数回も掛ければ、この宝珠本体がむき出しの状態でも2、3秒しか封じる事が出来ない様になるだろう。



「んじゃあ、そうなる前に破壊してしまうとしよう」



 竜郎は杖に極闇魔法で限界まで硬化させた巨大な土ハンマーを生やして振り上げる。



「気合はいってんねー」

「そりゃそうだ。愛衣に傷を負わせたことは忘れてないからな。これで粉々に粉砕してやる」

「ふふっ。それじゃあ、私も気合入れてお返ししようかな」

「おう、やったれやったれ」



 愛衣はくすりと笑いながら竜郎の左頬に軽くキスをすると、竜郎とお揃いとばかりに天装のハンマーかちかち君を取り出し振りかぶる。


 他の皆も魔法や武器を構えて今にも封印が解け、自動修復しようとしてる宝珠を取り囲み──。



「「せーのっ!」」



 竜郎と愛衣の掛け声に合わせて、氷漬けになって封印されている宝珠に向かって一斉に攻撃を浴びせかけて。


 ミシッ──とガラスの塊が押し潰されるような音を上げながら、宝珠は文字通り木っ端微塵となって命を散らしたのであった。

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