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レベルイーター  作者: 亜掛千夜
第三編 神隠し

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第465話 地下迷路探索

 カルディナ先導のもと、竜郎の小さな赤色の光魔法で目立たないよう照らしながら、しばらく金属質な階段をカツカツと音を立てながら下っていく。

 すると300メートルも降りた所で、六方向に分かれる通路に差し掛かった。



「ピュィー」

「そっちか」



 だがもうゴールまでの道順は完全に把握している。

 迷うことなくカルディナは右から二番目の通路に向かって歩き始めた。


 そうやって次の分かれ道も、その次も──と、考え込む素振りも無くズンズン下へと下って行く。

 そんな風に歩いてきて5時間ぐらい過ごしただろうか、道中落とし穴やら攻撃魔法を放ってくる魔道具による罠も、リアのおかげで発動させることも無く進んでこれた。

 そして何度目とも知れない分岐した道を正しく選択して行った先に、開けた空間を発見した。



「何にもないけど……変な扉だけが一個あるね」

「観た所、昇降機の様ですね。あの扉の先に箱型の空間があり、そこから下へと一気に行けるようです」

「あれが罠ということは無いのか?」



 部屋の奥の方にポツンと一つある、横へとスライドして開くタイプの金属扉。

 その横に拳ほどの大きさのボタンが一つ。

 イシュタルからしたら、怪しいとしか思えなかったようだ。

 眉根を寄せてその扉をじっと見つめていた。



「それはないと思いますよ、イシュタルさん。隠し通路も無いですし、下へ行くにはアレしかないみたいですし。

 道は間違ってないんですよね? カルディナさん」

「ピィィー」

「間違ってないそうですの」

「であるのなら、あれが正解なんでしょう。けれど中も確認してみましょうか」

「それがいいかもしれないわね」



 全員で奥まで歩いていき、警戒しながらも竜郎が離れた個所から樹魔法による植物の蔓でボタンを押した。

 すると日本でもおなじみのエレベーターの様に扉がガシャンと開いた。



「中にも罠の類はなさそうですね。少し入ってみます」

「ならわたくしが護衛として付きますの」



 《真体化》している大人奈々に引率されるように、リアが昇降機の中へと入っていく。

 そして上から下までぐるりと見て、天井や床の一部を鍛冶術で綺麗に剥がして外に出て、昇降機の箱の外までしっかりと点検していったが、やはり問題は見られなかった。



「それにこれ、最近も使われているような形跡が有りますね。

 やはりここには誰かが住んでいる様です。

 ただその人物がこの施設を作ったのだとしたら、上の都市とは比べものにならない位、高い技術力を持っている事になると思います」

「そうなんですの?」

「ええ。昇降機の魔道具に刻まれた魔法式と魔方陣だけでも、製作者の知識の深さが伝わってきますから」

「その人物はリアちゃんよりも技術力が高いと言えるかしら?」



 そんなレーラの問いかけに、リアは少しだけ考え込むような素振りを見せてから首を横に振って否定した。



「それは……いえないと思います。確かにこの昇降機を作った人物は、この未来においても技術レベルは先に進んでいるとは思います。

 けれど私の魔力頭脳や、複属性魔道具のレベルにはまだ追いつけてはいません。

 ですが……」

「何かしら?」



 不意に言葉を濁したリアに、レーラが首を傾げて先を促した。



「ですが、それはこの昇降機や周りの施設を観る限りです。

 そしてこの施設も昇降機も、作られてからかなりの年月が過ぎています。

 また《万象解識眼》を持っている私ですらまだ理論の纏まっていない転移魔法を、魔道具で再現しているとしたら……。

 それは特定の分野においては、私を越えていると言ってもいいでしょう」

「言われてみれば俺が使う転移魔法とかと違って、人の考え方というのか、思考の残滓と言うのか、人間が魔法を使うと必ずある個人の癖みたいなものがない魔法構成だった様な気がするな。

 だからこそ人為的ではなく自然現象の類も疑っていたんだが、魔道具か……それならあの反応も頷けるな。

 まあ、そうはいってもカケラみたいな残滓から読み取った情報からの推測だから、絶対そうだとは言い切れないが」

「だがその可能性もあるという事だな。

 もしこれだけのことを起こせる人間がいたのなら、そいつの顔を見てみたいものだ」

「人間だったら、ろくでもない奴なのは確かっすけどね」



 そんなアテナの意見に、全員が同意した。


 そうして昇降機について調べ終わった竜郎達は、まず誰から行くかという話になった。

 というのも、この昇降機。ここにいる人数を一辺に運ぶのは難しい。

 それは重量的な問題もあるし、大きさ的にも入れて5人がせいぜいだろう。

 カルディナ達を竜郎の中に戻せばギリギリ収まらない事も無いだろうが、それだと降りた瞬間に何か起こった時、直ぐに動きづらい。


 そんなわけで順番を決めているのだが、何が起こるか解らない未知の部分にのこのこと少人数で行くのも危険だ。

 さらに解魔法対策が施設全域に施されており、カルディナの分霊で覗き見るのも難しい。


 さてどうするのが一番安全に探索が出来るだろうかと皆、頭を悩ませていた。

 そんな時、ここまで静かに後ろをついてきていた彩人と彩花が手を挙げた。



「どうした? 二人とも」

「「ボク達のどっちかが先に一人で行けば安全じゃない?」」



 そんな二人の全く同じ言葉に、竜郎は一番戦闘能力として不安な子達が一体何をと一瞬思ったものの、よくよく考えればこの二人──というより彩にはこういう時にうってつけのスキルがある事を思い出した。

 ちなみに、彩は女の子の状態でもボクっ子である。



「え? 一人だけって──ああ、そうか、《分体不滅》」

「「そうそう、それなら安全でしょー」」



 《性質分離融合・極》という一人の存在を二人に分けるスキルにより、彩はステータスがほぼ半分になる代わりに彩人と彩花というもう一人の自分を作りだせる。

 そして竜郎の言った《分体不滅》は、そんな分離した二人のどちらか片方が消滅、もしくは死んだりしても、片方が生きているのなら一人の状態に戻るだけという、ある意味、不死身のスキル。

 さらに二人いても厳密に言えば存在は一人なので、どちらか一方が見た事、感じた事は双方に共有される。


 となれば、このスキルを利用して彩人か彩花のどちらかが昇降機で下に行き、もし竜郎達でも気が付かず、致死性のある罠が仕掛けられていたとしても分体が一時的に消えるだけ。

 転移を利用した何かがあり強制的にどこかに飛ばされても、分体は何処にいても引っ張り戻せるので実質無効化。

 そして安全なら安全で残った方が大丈夫な旨を伝えてくれるだけでいいので、何の問題も無い。



「じゃあ、いってくるねー」

「ああ、頼んだ」



 そう言うわけで、より物理ステータスが高く、瞬発的に動ける彩花の方が先に昇降機に一人で乗った。

 そして中にある一つしかないボタンを押すと金属の扉が閉まり、下へと降りていった。



「ながいな。もう十分ぐらい経つが」

「まだ降りてるよー」



 どれだけ深い所まで降りるんだと思っていると、ようやく下に到着したようだ。

 竜郎の横にいた彩人が口を開いた。



「ついたー。扉が開くよ」

「様子はどうだ?」

「んーと、ここと同じくらいの広さの部屋で、先へ進む通路が一本あるだけで他には何にも無いみたい」

「罠の類はないっすか?」

「ないみたいだよー、アテねぇ」



 どこぞの首都みたいな呼び方だな──とどうでもいい事を竜郎は考えながら、それからもう少し下にいる彩花に探索を頼んで情報を送ってもらう。


 一通り見回った結果、下の昇降機がある部屋には特に何もないようなので、今度はこれまでと違い分岐の無い一本道の通路を進んでもらう。

 彩花がとことこ一人で通路を進んでいくと、これまでと比べて一際大きな空間が広がっているのが見えてきた。


 歩む速度を緩めつつ、慎重に彩花はその広く四角い部屋の手前から顔だけ出して覗き見る。



(あれはー……ゴーレム? なんか強そーかも)



 大部屋の壁側面一杯に複数のゴーレムが微動だにせずに並んでいた。

 それぞれ大きさは五メートル程で、煉瓦のような長方形の金属を積み上げて無理やり人の形に似せたような角ばったゴーレム達。

 動かなくてもかなりの魔力を蓄積しており、動けないわけではないと彩花はすぐに見抜いた。


 そんな状況を彩花を通して知った彩人が竜郎達へと伝えた。



「ゴーレムか。施設を守るガーディアンみたいな感じで、管理者がテイムしているんだろうか」

「もしかしたらですが、これだけの技術力を持った人間だとしたら、魔物ではなく魔道具のゴーレムかもしれませんね。

 私も魔力頭脳を搭載すれば自立行動可能なゴーレムを作ることは可能ですし、その代替えとなる何かを作る事が出来るのなら製造は難しくない気がします。

 もしそうなら鹵獲して調べてみたいですね」

「でもさ、調べるのは良いけど、そいつらと戦う必要があるっぽい?」

「タツロウが言うようにガーディアンの様な役割をしているのなら、侵入者である我々を攻撃してくる可能性が高いからな」

「まあ、沢山あるようだし、多少強くても二、三体くらいなら綺麗な状態で鹵獲できるでしょうね」

「ねーねー。それで、ボクはどうすればいーい?」



 話し込んでいると彩人が竜郎の服の袖を引っ張って見上げてきた。

 このまま彩花を突っ込ませてゴーレムの反応を見ておきたい気もするが、ゴーレムの動きと連動して昇降機が動かなくなる──なんて事も想定されるので、一先ず全員降りる事にした。


 なので彩花には一旦引き返してもらい、下の昇降機の出入り口付近でゴーレムが動きだしたりしないか警戒していてもらう。

 彩人は連絡員として最後まで上の昇降機入り口付近で待機。

 そして竜郎達が三組に分かれて地下へと降りていくのを見守った後、《性質分離融合・極》による効果で、一瞬にして彩花と融合し彩になって合流した。



「これで全員揃ったな。それじゃあ、先へと進もうか」

「れっつごー!」



 少し小さな声での愛衣の号令に従い、一本しかない通路を進み始める。



「あれがくだんのゴーレムですか。やはり魔物ではなく、魔道具の一種ですね。

 どんなコアで動いているのか楽しみです」

「実力的にはどんなもんの奴らかは解るっすか?」

「蓄積されている魔力量だけをみればレベル100~110相当くらいはありそうですが、体を動かすために必要な分などを加味すると、レベル80相当の魔物の戦闘能力だと思って貰えればいいかと」

「わたくし達からしたら大したことはないですが、上に住んでいる住民からしたらとんでもない戦力ですの。

 ここの主は戦争でもするつもりなんですの?」

「もしくはそれだけの戦力で守らなければいけないと思う程、後ろめたい事をしているとか──かしらね」



 その意味ありげなレーラの言葉に、一瞬その場が静まり返る。

 もしそうであったのなら、転移で連れてこられた人間たちは真面まともな扱いは受けていないだろう。

 だが現状では全て憶測でしかないので、ひとまずは目の前の事を片付けていく事にする。



「リア。何体欲しい?」

「贅沢をいえば5体。出来れば3体。最低でも1体は欲しいです」

「じゃあ、お姉ちゃん頑張って5体捕まえっちゃおっかな!」

「じゃあお兄ちゃんも、もう5体捕まえちゃおうかな!」

「十体もいりませんってば!」



 急に張り切りだした二人を諌めながら、リアはあのゴーレム達の欠点を述べていく。



「耐久力は高く、ある程度の傷や手足が千切れたくらいなら自動的に修復します。

 ですがどうやらコアが人間で言う脳のある位置にあるらしく、そこを破壊すれば機能は停止します。

 また鹵獲の件ですが、手足を出来るだけ綺麗に──つまり破損が少ない状態で切断すると、修復ではなく再連結を試みようとする設計になっています。

 なので切断面を氷や土などで覆ってしまえば、融合できずに延々と連結作業を繰り返す事になると思われます。

 なので一瞬で綺麗に四肢を切り取り、何かで覆ってくれれば大丈夫です。

 ああでも頭は切り離さないでください。首にはコアと繋がる重要な神経回路があるはずなので。

 後は私が鍛冶術で干渉してコアをきれいに取り除きます」

「それじゃあ、愛衣が切断、俺が表面を凍らせる。っていう感じで回れば5体くらいは直ぐに確保できそうだな」

「それじゃあ、他のゴーレムは我々で破壊してしまっても問題ないな?」

「はい、それで構いません。イシュタルさん」



 そうして方針が決まった所で、それぞれどちらに突っ込んでいくか決めておく。

 下手に暴れられる前に一気に近づいて無力化すれば、侵入を悟られずに済むかもしれないからだ。


 気合を入れて完全武装。竜郎は鬼武者幽霊──武蔵を憑依させ、リアは機体に乗り込みスピードタイプの麒麟型に変形させた。

 だが今回は速攻で決める為、力不足の彩人と彩花はみんなの後ろをついていきながら他に何かいないか周辺警戒に当たる事となった。



「それじゃあ一気に殲滅だ。作戦──開始」



 竜郎の小さな号令と共に、皆が音も無く通路の影から飛び出すと、壁際に整列するゴーレムへと突っ込んでいくのであった。

昨日から風邪をこじらせてしまい、咳と頭痛で執筆活動が出来ない状態です。

薬を飲んだら落ち着いてきたので長引くことはなさそうですが、まだ辛いので明日、明後日は休載させていただきます(泣

ただ一日で回復できたなら明後日には再開するかもしれません。


風邪なんて久しぶりにひきました……。

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