表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
レベルイーター  作者: 亜掛千夜
第二編 竜大陸

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

461/634

第459話 イシュタルについて

 この世界での年越しを経験してから、七日の時が流れた。

 その間、竜郎はカルディナ達の体作りの練習や、他の面々と眷属たちのレベリング。

 リアは素材研究、イシュタルの武器の製造、奈々の牙をダーインスレイヴが適応しやすいように微調整と色々こなした。


 結果から言うと竜郎は未だに魔力体生物の神力を使った体は作れず、リアは初代真竜の最古の眷属ニーリナの心臓を未だに持て余している状態で手を出せずにいた。



「まず神竜魔力だと《陰陽玉》として認識しなくなるってのが痛いな。

 そのせいでせっかくスキル化したのに、また一から作り直しなんだから」

「でも一回できれば、また登録できるんでしょ?」

「そうなんだが、その一回がきついんだよな。特に《魔法域超越》を行使してからの難易度がヤバい」



 カルディナ達の新たな体を作るには、極光と極闇のスキルレベル23状態であり、なおかつ大量の神気をそこへ盛り込まなくてはいけない。

 だが今回20レベルでの極光と極闇では安定してきたので《魔法域超越》を試しにやった所、21レベル相当に至った時に、なんと竜郎の持っている杖の魔力頭脳の制御キャパシティをオーバー。

 そこからは《多重思考》を使って自分自身の思考力も嵩増ししたのだが、極細の針に糸を通すような作業を、数百回ノーミスでこなせと言われているのと同じくらい滅茶苦茶な精密さを要求される《陰陽玉》の作成は、とてもじゃないが出来なかったのだ。



「今考えているニーリナさんの心臓を使った新たな魔力頭脳の生成さえ上手くいけば、おそらくそれも出来る様になる……はずなんですが、まだまだ時間がかかりそうなんですよね……。

 ごめんなさい、兄さん」

「いや。リアはよくやってくれてるんだ。謝る必要なんてないさ」

「そうですの。わたくし達も早く神格化した体が欲しいとは思いますが、リアが精一杯やってくれている事はわたくしが一番知ってますの。

 そんな貴女が謝る必要なんてありませんの」



 奈々のその言葉に皆が頷いた。

 ここで毎日頑張ってくれているリアを責める様な奴がいるのなら、全員でタコ殴りにしてもいいとすら思える。



「それに自分で一から全部やりたかったのを、私たちの都合でズルする事になるかもしんないんだから」

「それこそしょうがないですよ」



 愛衣の言うズルとは一体何なのか。

 それは未だに竜郎やリアの目標に何の目途も立たないまま、次の目的地に行く事にしたのに起因している。


 実は次に竜郎達行くのは今より約230年先の未来。


 リアも時間を掛ければニーリナの心臓を扱えるようになる自信はあるが、そうなるまでに最低でも3年はかかってしまいそうだった。

 ニーリナの心臓を使った超大出力の神力を使った魔法や武術の演算に完全に対応できる程の魔力頭脳を生み出す事が出来なければ、竜郎がカルディナ達の新しい体を作れるようになるまで、これまた数年から数十年の時を要しそうな勢いだ。


 そうなると今こなしている過去と未来めぐりが全て終わっても、カルディナ達が神格化して凶禍領域に抗えるようにならなければ、その中での戦闘がかなり苦しい事になることが予想される。

 だがこのまま待っているとなると、アムネリ大森林に再突入するのに最低でも3年後──という事になってしまう。

 それは流石に竜郎や愛衣も待つことは出来ないし、リアもリアで早くシステムの無いただの女の子として暮らしてみたいという欲求もある。


 ということで、230年後の今より進んだ魔道技術をかすめ取って、そこからさらに発展させた技術を作る事が出来れば、おそらく新魔力頭脳の製作期間が大幅に削られるはず。

 リアも今よりもずっと進んだ技術を有しているが、専門的な限られた分野に特化しているだけで、全般的な先進技術はまだまだ。

 だからきっと、それだけ未来の技術を知る事が出来れば、新たな発想、技術に繋がるだろうと結論付けた。

 リアとしては少々不本意だが、今回ばかりは背に腹は変えられない。



「てなわけで俺達は未来技術にかけて、さっさと228年後の世界へと飛ぶことになったんだが、その前にイシュタル」

「ん? なんだ?」

「少し合同訓練みたいなのはしたが、改めてステータスを見せてくれないか?

 どんな動きをするのかちゃんと把握しておきたいから」

「ああ、それもそうだな」



 もう一度、共に戦っていた事もあり、すっかりパーティに入れていた気でいたが、そうしてなかった事をつい昨日の夜に竜郎は思い出したのだ。

 そうしてイシュタルも竜郎達のパーティに加入し、皆にステータスを公開。

 その間、イシュタルはイシュタルで竜郎達のステータスを確認していた。



 --------------------------------

 名前:イシュタル

 クラス:全竜神の曾孫

 レベル:159


 竜力:51804

 神力:8952


 筋 力:16155

 耐久力:12951

 速 力:15956

 魔法力:19270

 魔法抵抗力:18470

 魔法制御力:19170

 ◆取得スキル◆

 《未来同期視》《無限銀砂》《竜族創造【真】》

 《精霊眼》《竜弾》《竜の息吹き Lv.17》

 《竜力収束砲 Lv.12》《神力収束砲 Lv.2》

 《かみつく Lv.14》《ひっかく Lv.12》

 《竜突進 Lv.16》《竜尾閃 Lv.16》

 《竜飛翔 Lv.16》《竜爪襲撃 Lv.14》

 《土魔法 Lv.20》《水魔法 Lv.20》《呪魔法 Lv.20》

 《樹魔法 Lv.11》《火魔法 Lv.1》《氷魔法 Lv.1》

 《生魔法 Lv.1》《解魔法 Lv.1》《光魔法 Lv.1》

 《闇魔法 Lv.1》《雷魔法 Lv.1》《風魔法 Lv.1》

 《投擲 Lv.16》《槍術 Lv.11》《鞭術 Lv.10》

 《突刺穿 Lv.13》《魔法密度上昇 Lv.6》

 《魔法生成上昇 Lv.8》《竜力回復速度上昇 Lv.7》

 《言語強制理解》

 ◆システムスキル◆

 《アイテムボックス+7》《マップ機能+4》


 残存スキルポイント:477

 ◆称号◆

 《銀砂の奏者》《神格者》《精霊眼》

 《土を修めし者》《水を修めし者》

 《呪を修めし者》《樹を修めし者》《土を極めし者》

 《水を極めし者》《呪を極めし者》

 《獣を修めし者》《投擲を修めし者》《槍を修めし者》

 《鞭を修めし者》《竜息之権化》《竜砲之権化》

 《竜突之権化》《竜尾之権化》《竜飛鳳舞》

 《竜爪之権化》《穿者》《越境者》

 --------------------------------



「そうか、イシュタルはこの世界だと全竜神の曾孫ひまごっていう扱いになるのか」

「まあ、腐っても真竜だからな。神の身内くらいにはなっているさ」

「うーん。ステータスも全体的に高いねえ」

「それに魔法が全種ありますの」

「特別感半端ないっすね。けど土、水、呪、樹以外はレベル1っすけど、なんで他のは上げないんすか?」

「ああ、真竜は全属性を最初から覚えていて、適性のある順に20になると、次のスキルが上がるようになっているんだ」



 それから色々と気になる項目も質問していく。

 まず《無限銀砂》。



「これは私のユニークスキルでな、消費一切無しで物理や魔法に耐性を持つ銀の砂を無限に生み出す事が出来るんだ」

「消費が無いんですか!? それはすごいですね……」



 勝手に観るのは悪いかと思って、竜郎と戦っている時も表層しか見ていなかったリアが一際驚きの声を上げた。



「ああ。そして称号の《銀砂の奏者》の効果によって、その銀砂を自由自在に動かす事が出来る。

 私にとっては手足の延長の様な物だな」

「消費無しで便利物質を生み出せるなんて、ずるいわよねぇ。

 それって竜力や神力が無くなったとしても戦えるって事でしょ?」

「まあ、さすがにその両方が無くなると真面まともに立っていられるかは微妙だがな」



 次に《竜弾》について聞いてみると、これは《魔弾》の竜力版で威力はこちらの方が上。

 また《神力収束砲》という何やら物騒なスキルについて聞いてみると、これと《竜弾》は竜郎達と別れた88年の間に覚えたスキルらしい。



「呼んで字の如く、神力を収束して撃ち出す光線攻撃だな。

 とにかく威力はあるが、消費が多すぎて2レベルでも持て余している所だ。

 大人の真竜になれれば、ちゃんと使いこなせるのだろうが」

「そこはおいおいって感じだね」



 他には《穿者》という《突刺穿》のスキルが10になった時に覚えたと言う称号について聞いてみると、こちらは《突刺穿》を使う時にのみだが、物理ステータスが全てプラス100になるとの事。



「そういえば、イシュタルちゃんはカルディナちゃん達みたいに分霊はないの?」

「む? 分霊か。母上は持っているが、私はまだ覚えていないのだ。

 母上曰く、まだ条件を満たせていないからだそうだが、詳しい所は教えてはくれなかった」

「そうなのか。そこは自分で見つけろって事なのかもな」

「で、あろうな」



 後は大体カルディナ達で見たことのある様なスキルや称号の並びだったので、簡単に戦闘の時にどういう風に使っているかなど質問し、イシュタルのステータス確認は終わった。



「それじゃあ、リアに作って貰ったっていう武器について頼む」

「了解した」



 イシュタルも武器というものに興味を示したという事で、リアが短期間で頭を絞り完成させた。

 そうしてイシュタルは、腰にぶら下げているガンホルダーから一丁のマスケット銃を抜いて見せた。


 それはイシュタルが以前人化した際に持っていた玩具ではなく、しっかりとスチームパンクなデザインを残したまま、イシュタル自身の素材なども使ってリアが製作した銃型短杖。



「おおうっ、今の格好と相まって似あってるよ、イシュタルちゃん!」

「だろう! アイなら解ってくれると思っていたぞ」



 二人でイエーイとハイタッチをして、謎の決めポーズをして見せていた。

 しかしそんなノリをまるでスルーして、説明を始めないイシュタルに代わって製作者であるリアが補足していく。



「今回は私の研究の一環でもあった魔力頭脳の小型化、魔力の大幅な省エネ化に成功しました。

 見た目は兄さんのライフル杖よりも小さいですが、帰還石からのエネルギー効率は高く、性能はほぼ同等となっています」

「凄いっすね。どんどんリアっちの技術が上がってるのが目に見えて解るっす」

「ありがとうございます。そしてさらに今回、イシュタルさんは《無限銀砂》という特殊なスキルを持っていたので、そちらへの適応能力を上げるために体の一部を提供して貰いましたので、かなり使いやすくなっているはずです」



 そこまで来てようやくイシュタルは話に戻ってくる。



「そうだそうだ。まさか竜の姿でやっていた時よりも、人の姿で銀砂を操る方が楽だと思う日が来るとは夢にも思っていなかったぞ。

 間違いなくリアは最高の鍛冶師だな。なんなら我が国に欲しい位だ」

「むむむっ。ダメだよ! リアちゃんは私たちの妹なんだからね!」

「はははっ。解っているさ。無理に連れていくようなことなどしないよ、アイ」

「むー絶対だからねー」



 なんだかイシュタルと愛衣こそ姉妹のように仲良くなってんなあ、と密かに思いながら、竜郎は軽く実演してもらうことにした。


 すると引き金を引いて魔力頭脳を起動させると、誰もいない海に向けて銃口を向ける。

 そして《竜弾》に銀砂を混ぜ込んだ銀の弾丸を撃ちこむと、海水が盛大に飛沫を上げて、かなり離れていたここまで風に乗って塩水がパラパラと飛んできた。



「凄い威力ですの。それは《竜弾》を使いながら、銀砂自体も自分で操っていますの?」

「そうだな。そうする事で直線に打ち込むなら純粋に威力を強化できるし、飛んでいる最中に軌道を曲げる事も出来る」

「やっぱりその銀砂は便利よね。ずるいわぁ」



 しみじみとレーラはそう呟いてはいるが、それは一般人からしたら竜郎達全般に当て嵌まるので五十歩百歩である。

 あるいは隣の芝はなんとやらか。


 そうして次に銃を前に突き出すと、今度は銃口から円錐形の銀砂の槍が出てきた。



「こちらもただ銀砂で槍を造るよりも、杖を通して造った方が強度が高い。

 これで近接戦も捗るというものだ」

「もしかして、それにさっきの《竜弾》を使ったりとかはできるっすか?」

「ああ、出来るぞ。ほら──」



 そう言いながらまた海に銃口を向けると、長い円錐形の銀砂がビュンと飛んで行った。



「近接戦をしながら、その槍が飛んでくることも考えないといけないとか、結構厄介だな」

「まあな、それにこんな事も出来るぞ?」



 先ほどは一本の円錐形の槍だったのだが、今度は中心の一本の根元辺りに、その半分ほどの長さの円錐形の槍が何本も巻き付いていた。



「こうすると中心の一本を槍として使いながらも、周りの短槍を飛ばして牽制する事も出来ると言うわけだ。

 どうだ。なかなか便利だろう?」

「確かに」



 竜郎は素直に頷いた。さらに槍だけでなく銀砂はあらゆる形状を取れるので、その応用力は計り知れないだろう。

 こうしてイシュタルの短杖の性能を見せて貰った所で、最後に奈々の眷属ダーインスレイヴと刺突武器の牙が《近体融合》した状態を見せて貰う。



「わたくしの場合、牙は二本ありますの。ですからどちらか片方に入れると思っていたのですけれど、そこは流石リアでしたの」



 そう言って取り出したのは持ち手の頭と頭同士がくっ付いた状態の牙が二本。

 見ようによっては、それに弦を張れば弓にも見えるかもしれない。


 そしてリアが作ったダーインスレイヴ用の鞘から大剣を抜き取ると、牙が二本繋がった状態のまま、奈々は《近体融合》して見せた。


 すると円錐形を湾曲させたような形をしていた牙の武器が形状を変えていき、鋭く尖った波打つような細い黒銀の刃が側面に一列ついていた。



「そしてこうですの!」



 そのまま持ち手同士でくっ付いている部分をパキンと割ると、ワイヤーが伸びて二本を繋いだままダーインスレイヴの融合を保って見せた。



「これは特殊なワイヤーがあるので、前より取り回しはし辛くなりますが、ナナの意志で簡単に外す事も出来ますし、こうする事で二本ともにダーインスレイヴの恩恵を受けさせることが出来ました」

「ワイヤーがあっても、これはこれで色々と応用が出来そうで便利ですから問題はないですの」



 ブンブンと奈々が振り回すさまは確かにワイヤーの有無を感じさせず、こうすることで今まで以上に戦闘能力が上がっている事がうかがえた。



「よし。二人ともありがとう。それじゃあ、準備も整った所でいよいよ出発だ。

 未来への道案内頼んだぜ、イシュタル」

「ああ、任せておけ。お前たちと離れてから、《未来同期視》も訓練していたからな」



 そうして竜郎達は次の目的地に行くべく、皆でカルディナ城へと戻り、地下へと進んでいくのであった。

次回、第460話は4月11日(水)更新です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 面白かったので一気読み中。 [気になる点] イシュタルのステータスで竜郎のパーティー特典のマップ効果が抜けていますよ。 マップ覚えてないのならマップ+4になるのでした?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ