表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
レベルイーター  作者: 亜掛千夜
第二編 竜大陸

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

455/634

第453話 後半戦開始

「なんか……おっきすぎじゃない……?」



 黒渦が形を取りだしたところまでは良かったのだが、まだ完全に発生していない状態にもかかわらず、ぐんぐんその身を膨らませていく。

 その大きさは既に80メートルを越しており、未だにその膨張の勢いは衰えない。



「止まったか」

「全長100メートルくらいですかね」



 膨張が止んだ時には、リアが言った通りに目測で100メートルに届くほどの巨大な肉体を持つ、人型の魔物だった。

 足の親指の厚みだけで、既に竜郎よりも大きい。《真体化》しているジャンヌでも膝丈よりも下だ。

 そして、ぼやけた容貌もはっきりし始めた。



「ミイラのお釈迦様って感じかな」

「鞭とか持ってる時点で、ちょっと釈迦とはいいがたいがな」



 よく大仏が着ているような、右肩を出して一枚の大きな布で上半身半分と下半身を隠すようなスタイル。

 布色は黒紫で、体はミイラのように痩せ細って乾燥していた。

 はるか高い場所にある口の綺麗に並んだ白い歯とは対照的に、目は真っ黒で何も見えず、絶えず霧状の黒い何かを発していた。

 そして何より目を引いたのは、その巨大な手に握られた蛇のような鱗が生えた長大な黒紫色の鞭。

 それを地面にだらりと垂らし、足元にいた竜郎達へと顔を向けてきた。



「カウンター系のスキルは無いみたいです!

 なので直ぐに攻撃しても構わないですが、純粋にステータスは高めなので気を付けてくださいね!」



 取りあえず反射やアテナの持つ《極避反刃》のような、即時発動型のカウンタースキルは無い事だけは確かめたリアが叫んで知らせていると、巨人ミイラは鞭の持っていない左手の平をこちらに向けてきた。



「オーーン」

「ヒヒーーン!」



 その瞬間、手の平から掌底の形をした真っ黒いエネルギー物質だけが飛んできた。

 それに対しジャンヌは前に出ると、《聖竜連鉄槌》というジャンヌの拳の形をした聖なる隕石を落として粉砕していく。


 その間に竜郎達も目の前の巨大な足に攻撃を仕掛けていく。



「足と言ったら小指だよね!」

「んじゃあ、俺は爪の間でも」

「あたしもそれやるっす!」



 愛衣は全力で巨人ミイラの左足の小指の先を、天装のハンマー──カチカチ君と《徒手万装》で作ったハンマーの二刀流で、《硬質突破》《重量増加》《一発多貫》による打撃で文字通り粉砕。

 竜郎は針のように細く尖らせたレーザーを天照と月読と一緒に放ち、親指の爪と皮膚の間に突き刺していく。

 それに遅れてアテナも大鎌を振り上げ、右足の指の爪を剥いでいく。



「オ"オオオオオォォッォォオ"ォオ"オオオォォォォオ"ッ!!」

「お前たち……それはエグすぎるだろ……」



 顔を壮絶に歪めながらも痛みをこらえるに必死な巨人ミイラを前にして、実戦経験の乏しいイシュタルは引いていた。



「敵に情けは無用よ、イシュタル」

「そうですの!」



 だがレーラと奈々は、敵の嫌がる事を率先するのは当たり前だとばかりに飛び出していく。


 レーラは《氷瞬歩》で空気中に作った薄い氷を蹴りながら右(すね)の辺りまでいき、《大氷槌落》──氷の巨大ハンマーを叩き付けた。


 奈々も負けじと急加速を行使しながら、その対称側の左脛までいくと、ほぼ同時に脛に向かって氷と《竜邪槍・咢》を混ぜた強烈な《かみつく》をお見舞い。

 さらにオマケだとばかりに、骨を食い破って刺さった刺突武器──牙の先端から全力で激痛を誘発する猛毒が付与された《竜邪槍・棘》を展開し、内側から痛みを与えていく。



「オオオオーーーンッ」

「ピューーー!」「ヒヒーーン!」



 その痛みに耐えきれずに膝を突こうとした瞬間、カルディナとジャンヌが飛び出して、左右の膝の皿を魔弾の砲撃の連打と、ハルバートの全力スイングで互いに一つずつひびを入れることに成功。


 そのまま巨人ミイラが膝を付いた瞬間、巨体の全体重が罅割れた膝の皿にかかり、自重で粉砕してしまった。



「オ"オオオォォォォオ"ッ!!」



 痛みで戦闘どころじゃないのか巨体を寝そべらせ、そのまま我武者羅にバタついて、右手の鞭を振り回し、腕もバンバン地面に叩き付け、周囲の地形を変えていく。

 口からは唾液を撒き散らしており、その痛がりようは尋常ではなかった。



「ちょっと痛がり過ぎてる気もするが、今が好機だ。腰骨をへし折るぞ!」



 足を壊した次は、体を支える中心点の破壊を目指す。

 竜郎のその言葉にイシュタル以外の全員がすぐさま反応し、暴れる際の攻撃に注意しながら腰骨の一点に向かって、それぞれ全力攻撃を仕掛けていった。



「くっ」



 連携が出来ていないイシュタルも、そこでようやく銀砂の巨槍を作りだし投擲した。

 だがそれが着弾する前に、巨人ミイラの腰骨は竜郎達の手によって破壊されていた。



「あの子はもう……」



 その様子を遠くから見守っていたエーゲリアは、少しイシュタルを甘やかしすぎていたかもしれないと反省していた。


 とはいえ、相手は腰骨を粉砕されたことによって重傷。

 普通の人間なら一生立って歩けない体だ。

 そしてその痛みで口からダラダラと涎と泡が零れ出し、全身を痙攣させて大人しくなった。



「案外あっさりと決着がついたね」

「ああ、今のうちにレベルイーターでスキルレベルを──」

「皆さん! まだ終わりじゃないです!」



 《レベルイーター》を使うべく愛衣と共に近寄ろうと竜郎が足に力を込めた瞬間、リアから警告が飛んできた。

 この状態で何が出来るんだと一様に怪訝な顔を取りながらも、全員がまた巨人ミイラから距離を取る。


 するとドロッとボロボロになった下半身が黒く液状化したかと思えば、十メートルほどの黒い粒が大量に出来あがった。

 それに竜郎は何だか良く解らないが、危なそうなので今のうちに焼き払ってしまおうと天照の杖を構えたが、またリアから待ったがかかった。



「それを攻撃して行けません!

 あれは《生贄の牛》というスキルで作られた物らしく、自分の体の一部を代償に牛の魔物を作りだし、その牛が死んだ数だけ自身が強化されるというものです!

 あそこから生まれようとしている牛を全部倒してしまうと、私たちじゃ手におえない位ヤバい存在になってしまいます!」

「あっぶね。なんだよ、それ」



 リアは急いで観たのでそこまでしか情報を得ていなかったが、この《生贄の牛》というスキル。

 生贄に捧げた体の一部が受けた痛みの分だけ牛が強化され、強化率も増加。

 さらに、この巨人ミイラはわざわざ《痛覚倍増》というドMスキルまで使っていた。

 なので、ここにいる黒い粒から生まれようとしている──または生まれる前にでも牛を倒すと、下手したら先に看取った竜──ニーリナ級の化物になってしまう可能性が高かった。

 

 そんな状況ならば、上半身に攻撃をして牛が生まれる前に殺してしまうしかない。

 そう考えて全員がそちらへと攻撃を仕掛けようとしたのだが、体を覆っていた黒紫の一枚布が形を変えて上半身を覆ってしまう。

 その直後に竜郎達の攻撃が当たったのだが、よほど特殊な材質の布らしく、急造の攻撃では破るどころかほつれ一つ出す事すらできなかった。



「オーーン──」



 悟りを開いた釈迦のようにスッキリとした表情でそんな声を発すると、巨人ミイラの上半身だけが宙に浮かび上がっていき、空高く上っていく。

 そのまま昇天してくれと思わないでもなかったが、そんなわけも無く、ある程度の高さで止まった。


 それと同時に地上に残された、下半身から作りだされた大量の黒い粒が割れていき、十メートル級の真っ白い牛が一斉に「モーーーー!」と鳴いて好き勝手に暴れ始める。


 さらに──。



「させないよ!」

「オーーン」

「今、自分で牛を殺そうとしたっすね……」



 空高くから、右手に握った鞭で牛を叩き潰そうとしてきたのを、愛衣がこれまた鞭で器用に弾いて牛を守った。



「アイツにとっては地上の攻撃手段でもあり、強化素材でもあるって事だからな。

 愛衣、大丈夫か?」

「うん、まだ平気。けどこれより強くなられると、弾き返すのはきつくなるか──も!」



 二打目も愛衣が鞭で弾き返す。カウンターとばかりに竜郎がレーザーをかますが、その身を包む布が傘のように広がって防いでしまう。

 どうやらあの巨人ミイラの本体を叩きたいのなら、奴よりも高い所から攻撃する方が良さそうである。



「こうなったら地上で牛の相手をしながら牛を守る部隊と、空に上がって直接アイツを叩く空戦部隊に分かれた方がいいな」

「そうなると、わたくしとカルディナお姉さまは飛行速度も速いですし、そちらに回りますの」

「ピュィーー」



 愛衣が空からの鞭を防いで、ジャンヌやアテナ、リアやレーラが牛を殺さない様に牽制してくれている。

 その間に竜郎は空戦部隊を選出していく。

 その結果。竜郎、カルディナ、奈々、天照、月読の五名が空へと上がり巨人ミイラを叩き、他の面々が地上で牛の相手をするという事に決まった──のだが、イシュタルも飛ぶのが得意だという事で空戦部隊に入って貰うことにした。


 多人数戦や実戦の経験不足より、やや連携に難はあるが、それでも実力は本物なので当てにさせてもらう。

 地上は愛衣やジャンヌ達だけで十分回せそうだが、空は本体がいるので若干戦力不足かもしれないと感じていたからだ。



「なら決まりだ。出来るだけ早く叩きのめしてくるから、地上部隊もそれまで牛のお守を頼む」

「まっかせて!」



 愛衣が元気よく鞭を振りながらそう返してくれたので、竜郎は気兼ねなく月読によるスライム六翼を展開し空へと舞い上がる。

 それに続いてカルディナ、奈々、イシュタルもそれぞれの背に生えている翼をはためかせて宙へと舞い上がる。


 鞭で竜郎達を攻撃してこようとするが、今度は逆に愛衣の鞭の気獣技によって布の外側から入り込んでくる攻撃を防ぐために使う事になり、それは叶わない。


 もう片方の左手による《邪砲掌底》というスキルによる、黒い掌底をいくつも撃ち出してきて牽制してくる。

 その一つ一つは直撃すれば危険なレベルだが、軌道は直線なので当たる間抜けはここにはいない。


 そうして竜郎を含む空戦隊は、巨人ミイラの頭上を取ることに成功。

 どうやらあちらは、今よりも高い位置までは飛べない様だ。

 チラチラとこちらを気にしてくるが、さらに上に上がってくる様子は見られない。


 しかも体を覆っている一枚布は形を変えられるが面積は一定らしく、下からの攻撃を警戒して広げているせいで、上からの攻撃は防ぎきれそうにない。



(また派手に傷を負わせても牛の材料にされそうだが、今以上に身を削れば──例えば片腕でも失えば攻撃の手数が減って楽になる。

 なら、思いっきり攻撃しても大丈夫そうだな。

 だが念のためにレベルイーターも使って、弱体化させておきたい)



「カルディナ達は攻撃を頼む。俺は何とか弱体化できないか立ち回ってみる」

「ピュィーー」「了解ですの」「解った」



 竜郎も攻撃をするつもりだが、カルディナ達の攻撃で生まれるであろう隙は逃さぬよう、探査魔法もしっかりと使って、いよいよ本格的な巨人ミイラ退治へと乗り出すのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ