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レベルイーター  作者: 亜掛千夜
第一編 古の部族

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第429話 創造実験開始

 現在竜郎は、取得可能な創造系スキルを全て取得していた。

 今朝の内に過去転移中、大量に手に入れたSPを使ったのだ。

 その為、持っている創造系スキルは14種類。竜族創造はまだ等級神から許可が下りたと言う話は無いので取得できていない。

 なので今回は、そんな手持ちの14種類の創造スキルでの実験という事になる。



「まず法則? というのか取得SPが少ない奴ほど、素材の幅が広いんだよな」

「とゆーと?」

「そうだなぁ。例えをだすとすると、取得SPが(30)だった《獣族創造》では、必要となる素材は毛皮・頭骸骨・歯・爪・目・足・心臓・血・脳となっているのに対し、取得SPが(80)だった《鬼族創造》では角・鬼脳・鬼心臓・鬼髪だけなんだ」

「前者では9種類の中から集めればいいけれど、後者だと4種の中から集めなくてはいけないという事ね。

 確かにそれだけで作れる難易度は変わって来るわね」



 レーラは興味深そうにその話をメモを取りながら、そう口にした。

 他の皆も何となく取得SPが高い=必要となる素材が限られてくるという図式を頭に描いてくれたようだ。



「まあ例外もあって、例えば《無形族創造》なんてのは液体、気体だったら大体OKという大雑把でとんでもなく広い範囲だし、《魔生族創造》は属性の帯びたものなら何でもいいっていう、少し変わり種もあったりする」

「ほうほう。それで、まずたつろーは何から試してみるつもりなの?」

「そうだな。虫……はちょっと今は遠慮しておきたいし、無形は用意するのは簡単だがちょっと特殊だから後にしておきたい……。

 となると沢山素材を持っていて、初級編の低SPの創造系に当てはまり、尚且つまだ俺達の仲間にはいない種族──《植族創造》にしてみようと思う」

「植物っすか。木とか草みたいな奴が出てきそうっすね」

「木や植物なら、拠点に置いておくだけでも違和感なく守りを固められそうではあるわね。

 それで材料は何を使うつもりなの?」



 《植族創造》に必要な素材の範囲は、幹・葉・根・蔓・蔦・蜜・樹液・花弁と多岐に渡る。

 そこで竜郎が先ほど述べた沢山持っている素材と言えば、極上蜜だ。



「蜜って、どうやって小分けするの? 量とかに決まりとかあるのかな?」

「それは解らん。だから実験するんだ」

「それもそっか」



 という事で、竜郎は土魔法で作った1リットルは入りそうなペットボトルの様な容器を即興で十本作ると、その中に極上蜜を注いでいく。



「ああぁ……もったいない…………ぺろり」

「こらっ、つまみ食いするな!」

「めんごめんごー」

「あら、ごめんなさい」

「レーラさんまで何やってんだ……。あとであげるから、二人とも大人しく待っててくれ」

「「はーい」」



 途中、女性陣二人──愛衣とレーラの妨害にあいながらも、全ての容器に移し終えた。



「だいたいだが総容量は10リットル。これだけレアな蜜を使えば、なかなかの魔物が出来そうだな。

 それじゃあ、さっそく──」



 竜郎は容器に向けて初めて自分で行う創造系スキル──《植族創造》を発動した。

 その瞬間、蓋のない容器から蜜が上空に吹き出して混ざり合う。



(もしかして、同じ素材だと小分けにしても一個扱いか?)



 創造系スキルには共通して最大で十個。最小で五個素材が必要なので、竜郎が思った様に一個扱いされてしまうと初回にして失敗となってしまう。

 けれど、そんな心配は無用だったようだ。

 空中で混ざり合った蜜は地面にボトッと落ちると、光を放ちながら竜郎から魔力を吸い取っていく。



(おっ、ちゃんと発動してくれてるみたいだな。──なら好き嫌いせずに、竜力と神力も食べなさい!)



 意識して送り込む事で魔力だけでなく竜力と神力まで加わっていき、もの凄い光を周囲にまき散らす。

 思わず目を閉じながらカルディナと一緒に探査魔法で探っていると、それも直ぐに収まっていく。



「これは……薔薇の花か?」

「きれー! それに良い匂いがするー」

「本当ね。とても魔物だとは思えないわ」



 生まれ出たのは、全長二メートル弱の規模。

 白く細いもじゃもじゃした毛のような足を持ち、棘の生えた太く硬い茎を中心にして枝葉が伸びて、色取り取りの薔薇のような花が咲き誇っていた。

 パッと見では、ただの綺麗な薔薇が密集しているとしか思えない。


 だが竜郎とは眷属としての特別なパスが結ばれているのか、ハッキリと魔物だと理解できた。

 向こうも竜郎を認識すると、スルスルとピンクのバラ?の生えた一本の枝葉を伸ばして、その花弁で頬を撫でてきた。



「ん? どうしたんだ? 手を出せばいいのか?」



 何となくそう言っているのが伝わってきて、竜郎は素直に両手で受け皿を作って前に出した。

 するとプチンと花のついた部分を切り離し、それを竜郎の手に乗せた。

 どうやらプレゼントしてくれたらしい。



「ありがとな」

「あ、もうお花が生えてきてる」



 竜郎がお礼を言うと嬉しそうにその身をくねらせ、直ぐに切り離した先からポンと新たな花が咲いた。



「他には何が出来るのかしら?」

「さて、そこん所はどうなんだ?」



 言葉が解る訳ではないのだが、竜郎の言いたいことだけはしっかりと理解してくれたらしい。

 大よそのスキル構成や出来る事などを実地で試しながら教えてくれた。


 それによれば致死毒、麻痺毒、睡眠毒の三種の毒花粉を使い分ける事が出来、さらに麻薬のように中毒性のある匂いから、興奮させる匂い、リラックスさせる匂いなど、花弁から多種多様な匂いを使って相手を好きな状態に陥らせる事も可能。

 また株分けと言うのか、時間はかかるが自分と同じ姿をしたクローンを作って増殖したり、棘を飛ばしたり伸ばしたりして戦う事も出来るとか。

 体が千切れても根っこが一欠けらでも残っていれば、時間を掛けて再生できる程の生命力も持っている。


 そして中でも竜郎や愛衣が注目したのは、その花の蜜だった。

 竜郎はこれだけ香り高い花を付けているのなら、蜜も美味しいのではと目を付けた。

 もちろん、素材に使ったのが極上蜜だったと言うのもあるのだが。


 竜郎がお願いすると、花が自分でギュッと捻じれたかと思えば、ぽとりと一滴の蜜を指先に落としてくれた。

 それをぺろりと舐めてみると、花の香りがぶわっと口いっぱいに広がった。



「一滴でこれか……凄いな」

「私にもちょうだーい」

「わたしも欲しいわ」



 愛衣やレーラも気になる様なので、お願いして蜜を分けて貰うと、二人とも竜郎と同じように目を丸くしてその香しい味に驚いていた。

 直舐めだとやはり少し雑味もあり、味はというか食材としてみれば極上蜜とは比べ物にならないのだが、それでも他の花よりも香しい蜜というのは貴重なはずだ。



「これはこっちで養蜂をやってもいいかもしれないな。

 この蜜だけでの極上蜜は興味がある」

「それ採用! 絶対やってみようね!」



 今の段階では竜郎の《強化改造牧場》内にある、魔力で適当に作られた環境にある花畑に暮らす蟻蜂女王達だが、さらにそこで繁殖して巣が増えて勝手に増殖して極上蜜の量産はうなぎのぼり状態だ。

 その中で優秀な個体を選りすぐって、この愛衣命名──バラ美ちゃん一号(眷属には子ではなく美を付けて行く方針らしい)からのみ蜜を採取して作る様に指示を出せば、また違った極上蜜が手に入る可能性が高い。


 そんな未来地図を広げながら、竜郎はもう一つ気になっていた事をバラ美ちゃんに試してみる事にする。

 それは、眷属でのテイム契約が成されるか否かである。

 これが成功すれば、眷属でもゾロゾロ連れ歩かなくてもすむ。


 さっそく竜郎はバラ美ちゃんにテイム契約を持ちかけた。

 すると困惑した感情が伝わってくる。

 バラ美ちゃんからしたら必要のない事をわざわざやっている様であり、自分は契約で縛られなければ不安にさせてしまうような存在なのかと思ったようだ。

 目に見えて悲しそうに萎れてしまう。


 竜郎は慌ててそれは違うと説明し、ようやく言いたいことは何となく理解してくれたようで受け入れてくれた。

 するとちゃんと眷属としてのパスとは別の、従魔としてのパスがつながっていく感覚が竜郎の中であった。


 それで関係自体は何が変わるというものでもないが、《強化改造牧場》が使えるとなると成長具合が色々変わってくる。

 卵から程ではないが、まだ生まれたばかりなので強化の余地は十分に残している。

 それに仮想敵との戦闘による経験値による育成も出来るので、レベリングも容易だ。

 最初の内はイモムーばかりと戦わせれば安全かつ自動でレベル上げできるし、成長してきたら、その時の実力に合わせた相手を用意すればいい。

 これまで様々な魔物を倒してきたので、用意できる種類も豊富なのだから。


 そうして一旦バラ美ちゃんには《強化改造牧場》に入って貰い、適度に強化してからレベリングに入って貰った。

 まだ他にも実験したいことはあるのだ。



「それじゃあ、お次は《創物族創造》を試してみよう」

「おー。それはまた何で?」

「このスキルでの素材は、人工物・固体・ゴーレムコアだ。

 こいつの素材も特殊枠で素材の幅は広いが、ゴーレムコアが素材の中に入っていないと、どんなに高価なものを用意しても、非常に弱く機動性の低い魔物しか作れないという制約があるんだ」

「じゃあ、実質ゴーレムコアは必須って事っすね。場合にもよりけりかもしんないっすけど」

「ん~。でもそうなるとゴーレムをどこか見つけて倒したりしないと、そのスキルで色んな魔物を用意するのは難しいわね」



 そんなレーラの言葉に、竜郎はふふんと得意げな顔をする。



「と、思うだろう?」

「あ! 人形魔法!」



 そう。竜郎にはゴーレムコアを作る魔法を持っている。

 それは時間と共に魔力が消耗していく一過性のコアに過ぎないが、ジャンヌの《天族創造》に必要な材料を用意するときに使用する、《聖竜の祝福》での一時的な聖物質でも魔物が作れる事は検証済みだ。

 ならばそれでも出来るのではないかという実験をしたかったからこそ、《創物族創造》を選択したのだ。



「って事で俺の考えが正しければ、安価で大量にゴーレムが作れるかもしれない。

 固体なんかを用意する事にしても、材料は俺の魔力と地面の土から作ればいいしな」

「コスパは最強かもしんないね」



 普通の人間だとそうはいかないのだが、竜郎は普通ではないのでそれはまかり通る。

 さっそくとばかりに竜郎は闇と土と人形魔法で作ったコアに、地面の土に闇魔法を使って強化した石材を用意した。

 比率はコア9:闇土石材1だ。


 この比率はコアが多ければ多いほど頭のいい魔物が生まれ、人工物や鉱石などが多いほど頑丈になるという事を、竜郎は後に試行錯誤を繰り返し知る事になる。

 だが今回はお試しなので、そんな事を考える事も無く実行していく。


 そうして生まれたのは──。



「マネキンみたいっすね」

「それは言いえて妙だな」



 竜郎の魔力や竜力、神力を吸って現れたのは、裸体の人間のような背格好で、人間のように目や鼻もついているのだが(股間には何もない)、良く見ると作りものだと解るゴーレムだった。

 だがこれに服を着せて数十メートル先からみれば、人間と間違えられてもおかしくはないかもしれない。


 それが竜郎に向かってお辞儀をしてきた。なかなかに流麗な動きで、少し面を食らったほどだ。



「結構頭のいい魔物の様ね。けれど耐久性は、あまり高くはなさそうだけれど」

「戦闘とかじゃなくて、家事手伝いとか任せるといいかもしんないよ。

 小天使ちゃんや小悪魔ちゃんじゃできない様な、けど爺やに任せるほどでもない様な作業とか任せたりとかさ」

「それもいいかもしれないな。手先も器用そうだし」



 小天使や小悪魔はそれほど器用と言うわけでも、頭がいいわけでもないので、細かな作業はあまり得意ではなかった。

 なのでそういう方面でなら活躍できるかもしれない。


 だが、耐久力が低いからと言って戦闘がまったく出来ないわけではない。



「──ああ、でも土系統の魔法をいくつか使えるみたいだな。それに動作速度も悪くはない」



 腐っても竜郎の魔法で創造され神力まで混ざっているのだから、それくらいは最低限こなせるようだ。

 だが人形魔法のレベルがまだ低いので、ちょっと強めの魔物程度にとどまっていた。

 そう言う事で愛衣命名マリ男は、こちらにもテイム契約を交わして《強化改造牧場》へと送っておいた。



「それじゃあ、次は《天魔族創造》にいってみようか」

「おっ、何か難しそうな奴だね。取得SPも多かったし」

「ああ。それに俺はこれで少しこの創造系スキルの可能性について、調べてみたいことがあるんだ」

「それは私も興味あるわね」



 レーラも俄然乗り気になって前のめりに覗き込んでくる。

 それに竜郎は苦笑しながら、《天魔族創造》に使う素材を用意し始めるのであった。

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