表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
レベルイーター  作者: 亜掛千夜
第一編 古の部族

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

426/634

第424話 大天使討伐

 竜郎は一番厄介な《超々速魔力回復》を最優先に、魔力消費量を減らす《魔力質上昇》、尋常ではない防御力に貢献している《堅牢体》と吸い取っていき、次は機動力を奪おうと《天魔飛翔》に手を出していた。


 そんな時、《石化邪眼》を発動する兆候が竜郎の精霊眼に映る。

 先ほどの目元での爆発が堪えて控えていたのか使ってこなかったが、《堅牢体》の効果が消えたことでダメージが急激に増加し、他に対処法が思い浮かばなかったのだろうと冷静に分析していく。

 そうしながら竜郎は天照に魔力を渡し、ほぼ自動で目を塞ぐリングを用意して、発動と同時に転移させてはめ込み爆破。

 邪眼に激痛が走り悶える天使の姿が竜郎の目に映りこんだ。


 そこで竜郎は石化という脅威を無事払うことが出来たと安心した──その時。

 グルンと、天使の顔が竜郎の方を向いた。

 今は既にリングが閉じて見えない血の滴る正面の目が見ている気がして、竜郎の肌が粟立った。

 まるでこれをやったのはお前だな。そんな怨嗟の籠った視線を向けられた気がしたのだ。


 そしてどうやら、それは正しかったようだ。



「オオオオオオオオオオオォォォォオオオオーーーーーーーー!!」

「──!?」



 突如ジャンヌや奈々、アテナなどの近距離から攻撃してくる存在や、中距離から攻撃してくる存在などを一切合財無視して、その身を傷だらけにしながら竜郎へと突っ込んできた。


 突然の奇行に慌ててカルディナ達も必死で止めようとするも、捨て身の突貫の勢いを殺す事も出来ずに竜郎の目の前にまで来させてしまう。



 --------------------------------

 レベル:781


 スキル:《聖力護体》《自癒他絶》《石化邪眼》《聖武具発現》

     《極心眼》《攻勢強化》《天魔飛翔 Lv.7》

     《棒術 Lv.15》《天誅 Lv.18》

     《聖棍打波 Lv.16》《剛速聖球 Lv.18》

     《堅牢体 Lv.0》《魔力質上昇 Lv.0》

     《超々速魔力回復 Lv.0》

 --------------------------------



 竜郎は慌てて天魔飛翔のレベル吸収は諦めて黒球を飲み込むと、月読は亀の魔王種結晶を入れた状態で竜障壁をいの一番に張り、次に愛衣が同じ魔王種結晶を鎧に入れて気力の盾を展開。

 竜郎と天照はそれにワンテンポ遅れながらも、同じく亀の魔王種結晶で強化した複数の属性を使った壁を作り上げた。


 そんな破壊不可能かと思われる様々な結界を前に、レベル781の天魔という上位種族の中でも最上級に属する魔物が出せる全身全霊の力で、棍を振った先に光の柱を落とす《天誅》に、《聖棍打波》と《剛速聖球》を混ぜた一撃を死力を込めて振り下ろした。


 その一撃は月読や愛衣の防壁に亀裂を入れて、その隙間からこぼれた余波だけだが竜郎の元へと振りそそいで来る。

 天照と月読の属性体を纏った竜腕をクロスさせるようにして身を守る竜郎。



「──ずっ」

「たつっ」



 竜郎の両腕の骨がへし折れた。竜腕を纏った腕があらぬ方向へとねじまがったのだ。

 だがそんな事もお構いなしに、竜郎を心配して声をかけてこようとする愛衣に向かって叫んだ。



「馬鹿っ。気を抜くな!」

「えっ」



 そう。今ジャンヌ達が後から切りかかり、翼は全て失い下半身は氷に覆われ、上半身も穴だらけでズタズタだというのに、柔らかな微笑みを浮かべながら血の涙を流し二撃目を撃ち放ってくる。

 それは最初の一撃よりも弱く範囲も小さくなっていた。

 けれど気を抜いてしまい、気力の盾の制御を甘くしてしまったせいで、また小さな余波が零れて愛衣の頭上へと降り注ぐ。


 それは魔法の一撃。魔法抵抗の低い愛衣が受けたら、余波だけでも消滅しかねない。



「クソっ!」



 竜郎は折れた腕を庇うことなく、愛衣を右の竜腕で押しのけた。

 そこへ光の小さな余波が降り注ぎ、その腕を焼いていく。

 右腕は天照の属性体に覆われていたのだが、それを蹴散らし直に竜郎の腕を炭へと変えていく。



「あ"あ"あ"あ"あ"ああああっーーー!」



 右腕を焼かれる壮絶な痛みに耐えながら、竜郎は月読の方の竜腕に射魔法と突魔法に風を混ぜた正拳突きをお見舞いした。

 天使はそれをもろに顔面に受けて、整った鼻が豚の様に潰れ、周囲の骨をへし折って凹ませ顔の形を変える。


 それでひるんだ隙に後ろに下がって、ようやく天使と距離が開いた。



「大丈夫!?」

「……はぁ、はぁ、はぁ。この──くらい……平気だ」

「でも右腕が真っ黒じゃない!」

「そんなものは──こう、やって、いくらでも治せる。それよりもこいつを──」



 竜郎は月読と一緒に生魔法を使って両腕を一瞬で綺麗に修復した。

 そしてそのまま決めてしまおうと眼前の天使を睨み付けると、向こうは魔力も足りないのに回復スキル──《自癒他絶》を行使しようとするのを捕えた。

 それはリアもレーラも《万象解識眼》と《精霊眼》で観ていたので、気が付いたのは同時。

 魔力が足りないので使えないと思っていたのだが、不完全ながらも発動の兆しが見えていたのだ。

 まだ一番近くにいるジャンヌ、奈々、アテナはその事に気付いていない。

 レーラとリアは直ぐに後ろに下がるように呼びかける為に口を開くが、間に合わない。



「──っ!!」



 だから竜郎は転移の魔法を使って、強制的に全員を後方に下げた。

 だが一瞬遅く、規模は十全に魔力があった時とは比べ物にならない程小さい光球だったが、威力は変わらず発動してしまう。

 その結果。転移する寸前に、怒りのままにその体に攻撃を加えていたジャンヌ達はそれぞれ負傷してしまう。

 ジャンヌは右肘の下あたりを少し欠損。奈々はかみつくの動作を取っていたので、獣術用の武器でもあったグザンの牙もろとも両手首の下あたりまで消失。アテナは野生の勘でもあったのか、一瞬早く大鎌を戻したので武器は無事だが、距離を取るために蹴った右足を失った。


 だが全員命に別状はなく、少し離れた場所まで下がる事が出来たのは僥倖だろう。

 竜郎はかなり無理やり転移させたせいか、魔力頭脳をもってしても無駄が多く消費魔力がかさんだが、それでも全員無傷──とはいかないまでも、致命傷は避けられたことに胸を撫で下ろした。



「すまん。もう少し早く転移させてやれれば」

「ヒヒーーン」



 ジャンヌは気にしないでと嘶いた。



「あの武器を失ったのは惜しいですけれど、リアならもっといいのを作ってくれるはずですから問題ないですの。

 腕も魔法で生やせますし」



 自前の生魔法で両手を復活させて、それをプラプラ振りながら竜郎へと笑いかけてくる奈々。



「そうっす。むしろ、あの状態でこれだけで済んだなら上出来っすよ」



 直ぐに竜郎が駆け寄って支えながら足を再生したアテナも、何でもないとあっけらかんとしていた。

 そしてジャンヌも失った肘の辺りを再生させて、改めて竜郎は天使へと振り返る。



「ォォォォ──」



 そこには傷が中途半端に治っただけで翼も生やす事も出来ず、逆に魔力を完全に枯渇させて力が出ないせいで、六角棍を杖代わりに体を支えて立っているのがやっとの状態だった。



「ほんとに最後の悪あがきだったみたいだな」



 そういって見つめていると、いつの間にか横に来ていた愛衣が竜郎の腕をペタペタと触って問題ないか確認していた。



「大丈夫だよ。完全に治したから」

「うぅ……私が油断しちゃったから……ごめんね、たつろー……痛かったでしょ?」



 しょぼくれる愛衣の頭を竜郎は優しく撫でた。

 あの状況なら仕方がないだろう。最愛の人の腕が目の前であらぬ方向に曲がったのに、平然としていられる方がおかしいのだから。

 そんな風に励ましながら、潤んだ瞳で見上げる愛衣のおでこに唇を当てて前へと顔を向けさせた。



「もうちょっと愛衣といちゃついていたいが、それよりもアイツを始末しないとな」

「そうね。いくら魔力の回復速度が遅くなったからと言っても、何時までも放っておいたら戻ってしまうでしょうし──ね!」



 レーラが軽口を言うように竜郎へと喋りかけながら、杖を振るって《極氷世界》を展開して天使を完全に氷漬けにしてしまう。

 それでも動けなくなっただけで芯まで凍りついてはおらず、ちゃんと生きてはいるが今の状態ではどう頑張っても抜け出す事は出来ないだろう。

 

 それからレーラは氷を操作し、首元の氷だけを剥がしていく。



「これで決めよう。もうこれ以上アイツの相手は勘弁してほしいからな」



 まさかここまで自分たちに被害が及ぶことになるとは思ってもいなかった為、疲労感が半端ではなく、今すぐにでも横になりたい気分の竜郎は天照の方の竜腕を前へと突き出した。



「だね。私アイツ嫌い。はやく経験値にしちゃお」

「八百近い化物ですから、また大幅にレベルが上がりそうです」

「私は多分上がらないでしょうけどね」

「レベル1000オーバーの人じゃ、そりゃ無理っすよ」



 そんな事を言いながら全員で少し距離を取りながら、それぞれの攻撃を溜めていく。

 そこに集まるエネルギー量に天使は必死で体を動かそうとするも、そこから首元以外動くことも出来ずに、少し回復した魔力も無駄に消費してドツボに嵌っていく。

 これなら近づいて《レベルイーター》で──とも一瞬思う竜郎ではあったが、これ以上欲をかいてまた予想だにしない行動で被害を被るのも御免だと諦めた。



(谷底の悪魔だけで大分SPは稼げたしな。ちょっともったいないが、しょうがない)



 これが完全に格下ならここまで慎重に考えるまでも無いのだが、実力的に個々では危険な存在だ。

 慎重になるくらいがちょうどいいだろう。



「じゃあな。今後有効的に活用させてもらうから、大人しく素材になってくれ」

「──────!!」



 竜郎の声など聞こえてはいないのだろうが、自分の死を感じているのか張り付く氷を振るい払おうとするも、無情に時は過ぎていく。


 十分にあった時間を有効活用して作りこんだ攻撃を、竜郎達は首元めがけて撃ちこんだ。


 その攻撃は唯一氷の張っていない首へと真っすぐ飛んでいき、鎧の縁を抉り、肉を弾き飛ばし、骨を削り、そのまま後方へと突き抜けて行った。


 ポーンと天使の首がグルグルとボールのように宙を舞い、三メートルという巨体が持つにふさわしい頭の重さが伝わる様なドスンと言う音をたて、わずか数十分という生に幕を下ろしたのであった。

次回、第425話は2月21日(水)更新です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ