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レベルイーター  作者: 亜掛千夜
第一編 古の部族

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第423話 石化対策作戦

 以前石化系統の攻撃をしてくる魔物から学んだのは、どこまでが効果範囲なのか、どこまでが平気なのかを把握するという事だ。

 これが取るに足らない石化攻撃であったのなら力でごり押しも有りえたのだろうが、今回の天使の使う石化邪眼の威力は魔法抵抗が最も高いレーラでさえ、極軽度ながら石化するほどの威力を秘めていた。

 もし愛衣に当たりようものなら、指先に光が当たっただけで全身石化は十分にあり得るし、竜郎であっても無防備に当たればその箇所が動けなくなるくらい危険だと思っていい。

 そしてそのレベルだと、発動時に解魔法での完全キャンセルは困難だ。

 となると別の方法で対処できるのが望ましい。



(石化の邪眼で良くあるのは鏡で反射して相手に返すってのが定番だが、それは無理そうだな)



 まず実験したかった鏡での反射は、先ほど竜郎が鏡面のように表面を加工した土の壁が石化して、その向こうにいた天使が何ともないので無理だと立証された。



(だが今回は目。というのが肝になってきそうだな)



 竜郎は一枚目の壁の後ろにドミノのように並べた大きな二枚目の壁と、一枚目と同じ大きさの三枚目の壁。

 さらにその後ろに置いた人型の人形の状態を見て作戦を組み立てつつ、愛衣達と一緒に遠距離から魔法攻撃を加えていき、さながら一対多数の雪合戦のような戦いになっていた。



(目と言うからには見るという動作が重要になってくる。

 そして二枚目の大きな壁は石化しているが、見えていない一枚目で隠れていた部分までは完全に石化できていない)



 目が開くのが一瞬であると言うのもあってか、以前ダンジョンで出会った岩山のゴーレムが使っていた《石化の息吹き》と違って、隣接する個所への伝染力は強くない様子。

 だが多少は伝播しているのか、隠れていた個所にも石化した跡は見受けられる。


 ただ気になるのは、二枚目の完全に一枚目に面した影になっている部分の中央付近にもまだらに石化の跡が見られたという事。

 とてもではないが隅から伝播していって石化した様には見えない。

 ここには何か不思議な法則が働いている可能性が高い。



(だが完全に二枚目で隠れていた三枚目の壁は無傷。そしてその後ろにもたれ掛けるように置いた人形にも影響はない。

 ということはだ。完全に目を開いた時に見えているもの以外は、石化できない。もしくは石化させ難いのかもしれない。

 よし、もう少し実験してみようか)



「愛衣。ちょっと作業するから、くっ付いていてくれないか?」

「え? いーよ。そういうの得意なんだ。ぎゅ~──これでいい?」



 愛衣が竜郎の右腕に絡みついて、攻撃は軍荼利明王に任せた状態となる。

 そのまま上目使いで竜郎を見上げる愛衣が可愛らしすぎて、一瞬戦場だと言うのを忘れて抱きしめそうになる自分を必死で押しとどめた。



「あ、ああ。それでもいいんだが、ちょっと集中力が愛衣の可愛い表情に吸い寄せられるから、もう少し抑え気味で頼む」

「そうなの? しょうがないなあ、たつろーは」

「ああ、しょうがないんだ竜郎は」



 そんなアホな会話をしながら愛衣が軽く手を握るだけにして、余った右手は軍荼利明王と共に戦列に加わっていく。

 お互いに触れ合っているおかげで称号効果であらゆるステータスが急上昇し、愛衣は片腕を封じられ竜郎は別作業のために攻撃を止めたにもかかわらず、そうする前と大差ない状況に押しとどめる事が出来ていた。



「よし。これなら大丈夫だな。暫く頼んだ」

「あいよー」



 どっかんどっかん攻撃を撃ちこみながら元気よく返事を返してきた愛衣に一瞬微笑みながら、竜郎は自分のやるべき事へと没頭していく。


 まず始めにやるのは、《人形魔法》によるゴーレム核の作成。

 ただしこれから作る人形は、色々と試行錯誤した上で編み出した特殊なもので、最初の工程は《人形魔法》とボディにする人形に使う魔法を組み合わせる。

 今回で言えば土と闇の混合で硬く頑丈に作り上げた、球体関節を持つデッサン人形の様な物を想像して貰えれば解りやすいだろうか。


 《人形魔法》と《土魔法》《闇魔法》の混合魔法で、ゴーレムの核を量産していく。

 こうする事で他属性の体を受け付けなくなる代わりに、組み合わせの時に使った体に核を入れた時の性能がグッと上がる。



(それから体にも細工をしてっと)



 先ほど作り上げたゴーレム核の分だけ、細工を仕込みながら土と闇魔法で出来た人型を再現した土人形を作り上げていく。

 それが出来れば月読のセコム君のスライム触手を使って、コアを全てに埋め込んでいく。



「立ち上がれ」



 本来であれば人形魔法で作られたゴーレム達は、竜郎がラジコンを動かすように意識して操作する必要があると言うのに、この人形たちは声をかけるだけで一斉に立ち上がる。

 ここがまず一つ目の仕込ポイント。

 実は土人形の制御は、その人形の中に混ぜ込んだ《精霊魔法+5》に丸投げしていた。

 前までの《精霊魔法》ではここまでちゃんとしたゴーレムの制御は出来なかったのだが、+5に性能が上がった事でより高度な動きをさせる事が出来るようになったのだ。

 だから今ではいくつもある球体関節を上手に使い、体のバランスも精霊魔法がしっかりとって人間のように……とまではいかないが、それなりに動けるようになっている。



「それじゃあ敵はあの天使だ。お前たちは転移したら、とにかく突進あるのみ。奴の体に纏わりついてやれ」



 そう言って命令をすると、竜郎はその場にいる一割を天使の近くに転移させる。

 すると言われた通りに天使に向かって我武者羅に突っ込んでいく。

 急に現れた人形たちに一瞬驚いたような挙動を見せながらも、こちらに光の打撃を飛ばすのに使っていた六角棍をゴーレムへと向けて、竜郎達には光の玉を今まで以上に増産し放ってきた。


 六角棍でラグビーのタックルの様に突っ込んでくる土人形たちをガンガン殴り、光の柱を落としていく。

 すると直ぐに土人形には罅が入り始め、あっけなく崩壊しそうになる。

 それに天使は柔らかな微笑みを浮かべた──のも束の間、一体の土人形が完全に砕けた瞬間、送り込んだ全てのゴーレム達が大爆発を起こす。



「──オオオオオォッ!?」



 それだけでも大変だと言うのに、土人形を形作っていた硬い土の欠片も容赦なく飛び交って、即死するほどではないが地味に痛覚を刺激してくる。

 さらに意識が鈍れば愛衣達の遠距離攻撃が天使の攻撃を圧倒して、こちらも容赦なく降り注いでくるので慌てて光の玉を作りだそうとする。

 だが──。



「おかわりはまだ沢山あるぞ! くらえ! ゴーレム爆弾!」



 ゴーレムはまだまだ竜郎の後ろに大量に控えている。

 先と同じだけ転移させれば、同じように突撃してきて、同じように破壊すれば同じように爆発してダメージが蓄積されていく。

 そして三度目のゴーレム転移でようやく、ゴーレムへの対処法を思いついたようだ。



「──来た!」

「オ──オオゥ!?」



 それは石化邪眼の発動。石化してしまえば爆発など出来ない。

 そう思ったからこそそれを使ったのだが、その瞬間に闇が顔の周囲を覆っていた。

 それに驚きながらも発動された邪眼の力は、竜郎が転移させた闇のカーテンをあっさりと石化させ、本来の半分ほどの威力に落ちた石化攻撃がそれを透過してゴーレム達に浴びせられた。



(ただの闇魔法で覆うだけだと無理だと思っていたが、石化した部分は石化攻撃を透過させる事が出来るのか。

 だから二枚目の隠れた部分もまだらに石化していたと。

 なら次は──)



 遠隔操作で表面が石化して動きが鈍ったゴーレム達を、中途半端な位置で爆発させた竜郎は、四度目のゴーレム爆弾転移を敢行する。

 天使は石化が効果的だというのは覚えたのだろう。また目の周囲を覆うリングを上下に開いて石化邪眼を解き放つ。

 闇のカーテンで覆われてもゴーレムを少し離れた所に足止めし、間近で爆発されなければ、それで十分なのだから。



「──ならこれでどうだ!」



 今度は闇魔法で作った目くらましではなく、天使の目を封じているリングが開いた時にできる隙間ピッタリの細いリングを転移ではめ込む。



「オオオォォ!?」



 これまで四度も発動する瞬間を見せられたので、その間に隙間の大きさや周囲など探査魔法で正確に計測できていたので、それをデータ通りに作るのはたやすい。


 またその土魔法がベースとなっているリングには、月読の《竜障壁》や《竜反射》も混ぜ込んで、頑丈さよりも魔法への抵抗力がより高くなる様に闇魔法で変質させたものなので、なかなか芯まで石化しない。

 突然の事にどう対処すればいいのかわからずに、天使が硬直した瞬間。竜郎はその自分で作ったリングを爆破した。



「"オ"オ"オ"オ"オ"ッ──」

「わー……えぐいなぁ、たつろーは」

「だが、これで邪眼封じは出来るようになったな。精霊眼で兆候を見逃さないように注意していれば、いつでも転移で嵌められるぞ」



 目に張り付いた状態での爆発により、邪眼に爆発の衝撃とリングの破片が奥まで突き刺さる。

 その痛みに悶えながら、天使はまた回復スキルを使う前兆を竜郎の精霊眼が捕えた。



「回復が終わったら全員で一気に距離を詰めよう!

 邪眼は俺と天照、月読で何とかするから、魔力が回復するまでの間に近接から攻撃を仕掛けてくれ!

 その間に俺は《レベルイーター》で魔力回復系のスキルだけは吸い取っておく!」



 今は五分から十分という短い間に大量消費した魔力を完全回復されてしまうが、それ系統のスキルさえ無くしてしまえば次の使用までのインターバルは大幅に伸びる。

 さらに時間が許す限り他のスキルも使えない様に出来れば、こちらも大分余裕が出てくるだろう。


 やがて回復スキルによる光球が天使を包み込み広がっていく。

 周囲の地面や崖面を蒸発させて抉っていく。周囲にいた土人形爆弾たちも、爆発することなく消し去られてしまう。


 やがてその光球が収縮していくのを確認しながら、竜郎は精霊眼を発動させて、いつ邪眼が来てもいいように警戒しながら、愛衣と手を繋いで全員と足並みそろえて突っ込んでいく。



「オオオオオオオオオオオォォォォォォオオオ!!」

「かなりお怒りの様ですの」



 今までのアルカイックスマイルが嘘のように歯を食いしばり、こちらへ六角棍を向けて光の打撃を撃ちこんでくる。

 さらに光の光球も雨霰と降り注ぐ中を、竜郎達は時に避け、時に攻撃で相殺しながら近づいていく。


 やがて完全に肉薄し、ジャンヌ、奈々、アテナが武器を使った近接戦闘で攻撃していき、他のメンバーはその少し後ろから援護射撃。

 回復完了からここまでの時間で、まだ一秒ほど。

 次のタイミングまで十分じゅうぶん時間が余っているのを確認しながら、竜郎は愛衣を護衛に《レベルイーター》を発動した。



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 レベル:781


 スキル:《聖力護体》《自癒他絶》《石化邪眼》《聖武具発現》

     《極心眼》《攻勢強化》《天魔飛翔 Lv.10》

     《棒術 Lv.15》《天誅 Lv.18》

     《聖棍打波 Lv.16》《剛速聖球 Lv.18》

     《堅牢体 Lv.19》《魔力質上昇 Lv.3》

     《超々速魔力回復 Lv.19》

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(あー……やっぱアホみたいにレベルが高いな。逆に言えば、それだけ世界力がここに溜まっていたことの証明か。

 んで、そんな高レベルな上に《聖力護体》、聖なる力で護る体って意味だとすれば、これと《堅牢体》で馬鹿みたいな防御力を発揮してたんだろうな。

 そしてお目当てなのは《超々速魔力回復》。見た事も無いスキルだが、名前からしてチートくさいスキルだな。とっとと無くしてしまおう)



 そうして竜郎は激しい戦闘が近くで行われる中で、必死にスキルレベル収集に励むのであった。

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