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レベルイーター  作者: 亜掛千夜
第一編 古の部族

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423/634

第421話 悪魔の末路

 --------------------------------

 レベル:113


 スキル:《暗転》《完全暗視》《影転移》《影糸 Lv.13》

     《器用 Lv.9》《粘着糸 Lv.8》《土操作 Lv.5》

     《威圧 Lv.5》《恐怖付与 Lv.6》《看破 Lv.10》

     《闇土侵食 Lv.6》《闇土操作 Lv.9》《闇土硬化 Lv.8》

     《影触手 Lv.7》《影毒付与 Lv.7》《影槍 Lv.11》

     《影分身人形 Lv.9》

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(うおっ、レベルも高いしスキルも豊富だな。そりゃあ、この界隈じゃ敵なしなわけだ。

 うーん……おそらくこの《看破》って奴のおかげで、カルディナ達の存在に気が付けたんだろうな)



 《看破》は幻術系のスキルを見破る事に特化したスキルなので、竜郎のその考えは正しい。

 ちなみに《闇土侵食》は、闇魔法の魔力を大地に吸わせ、特殊な土へと変質させるもので、これの操作や硬化などのスキルを用いる事で、本来の土魔法だけでは出せない程の硬度や柔軟性を持った動きを持たせることが出来る。



「なぁ……もぉやらねぇからさぉ……。助けてくれよぉ……」

「………………」

「あれを作るのが気にくわないんだろぉ……? もう作らねぇよぉ……だから」

「………………」

「なぁ……おいっ、聞いてんのかよぉ。

 ………………あぁ? おい、何してんだよ? なぁっ!」



 自分から少し離れた場所で半口を開けて黙って突っ立ったようにしか見えない竜郎に、そこで初めて違和感を覚える。

 これはただ自分を見下して悦に入っているのではなく、何かをされているのではないかと。

 谷底の悪魔の全身から嫌な汗が噴き出してくる。



「何をしてやがっ……あぁ?」



 何とか阻止しようと地面の土を操作して邪魔しようとしたのだが、《土操作》も使えなければ《闇土侵食》で大地を闇で浸すこともできない。

 影糸を伸そうとしても、今までは手足のように使えていたはずなのに何もでてこない。

 谷底の悪魔の背筋が凍りつく。



「や、やめろっ! なにぃっしてっやがるっ!」

「………………」



 どんなに凄んでも返ってくるのは無言だけ。

 慈悲の無い瞳で見つめられ、自分から大事なモノが失われていく恐怖が襲ってくる。

 片っ端から自分のスキルを発動していく。

 周囲を闇で覆う《暗転》や《完全暗視》は使えたが、《影転移》は影糸をいつの間にか全て消された上に、新たに出す事も出来ないので使えない。

 そして《影分身人形》……。これを使った時にほんの少しだけ影が盛り上がりかけたのだが、消えゆく蝋燭の灯のように崩れ去っていく。



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 レベル:113


 スキル:《暗転》《完全暗視》《影転移》《影糸 Lv.0》

     《器用 Lv.0》《粘着糸 Lv.0》《土操作 Lv.0》

     《威圧 Lv.0》《恐怖付与 Lv.0》《看破 Lv.0》

     《闇土侵食 Lv.0》《闇土操作 Lv.0》《闇土硬化 Lv.0》

     《影触手 Lv.0》《影毒付与 Lv.0》《影槍 Lv.0》

     《影分身人形 Lv.0》

 --------------------------------



 それと同時に竜郎は口の中の黒球をごくりと飲み込み、完全にスキルレベルを取り込んだ。



「う──そ、だろぉ……おいぃ……。なんなんだよぉこれぇ……なんなんだよぉこれぇはよぉっ!

 ──なぁ! かえせよぉ! ワタシのスキルを返せよぉ!!」



 もういつ死んでもおかしくないほどの重傷を負っているはずなのに、人間部分の手を地面について、三分割されて軽くなった蜘蛛の巨体を引きずり、這いずりながら竜郎へと迫って来る。

 ──が。月読の竜障壁による見えない壁に阻まれて、近づくことが出来ない。

 それでも手を打ち付けて、爪で引っ掻き、頭をぶつけて突き進もうとする。



「かえせっ、かえせっ、かえせっ、かえせっ、かえせぇえええええっ!!」



 そのあまりの剣幕に思わず一歩下がるものの、竜郎は月読に頼んで前だけでなく谷底の悪魔の上も前後左右も竜障壁を展開して封じ込めてもらう。



「悪いな。俺のスキルは吸い取るだけで返却は出来ないんだ。だが──」

「かえせっ、かえせっ、かえせっ、かえせっ、かえせっ、かえせっ、かえせっ、かえせっ、かえせっ、かえせっ、かえせっ、かえせっ、かえせっ、かえせっ、かえせっ、かえせっ──」



 こちらの言葉など一切耳に入らないのか、半狂乱になりながら死に体の身に鞭打って血まみれになりながら、竜障壁に体や手をぶつけて暴れまくる。

 竜郎はそれを無視しながら魔法を構築していくが、当の本人は気が付かない。


「──ここで死ぬんだ。そんなものを持っていてもしょうがないだろう」

「かえっ────は?」



 竜郎とカルディナ達の混合魔法。そして愛衣とリア、レーラの斬撃系の攻撃を、転移魔法で竜障壁の中へと飛ばす。

 すると谷底の悪魔の人間部分の体が切断された。


 ごろんとバラバラになった死骸から落ちた頭は、キョトンとした幼子のような瞳で竜郎を見上げていた。

 そこにあった生者としての輝きは直ぐに失われていき、作り物のような光を反射するだけの物になっていく様が、よけいに人間を殺したのだと訴えかけてくる気がした。



(盗賊たちを殺したことはあったから、もう少し慣れたかと思っていたんだが、そういうものでもないんだな)



 となりで同じように思っていたのか、ほぼ同時に横を向いた愛衣と目が合い、お互いに手をギュッと握りあって直ぐ離した。

 やる事はまだあるのだ。



「よし。後はあそこのゲイジュツサクヒンとやらを回収して、本番だ。

 皆まだ疲れてはいないよな?」



 これから行うのは、ここに溜まりに溜まった世界力から魔物を創りだす事だ。

 多少は世界力を残すと言っても、恐らく出てくるのは今殺した谷底の悪魔の比ではないだろう。

 皆の状態を念のために聞いてみるが、カルディナやレーラ達にとっては、今の戦いなどウォーミングアップ程度にしかならなかったようだ。

 竜郎や愛衣同様に疲れなど微塵も見せてはいなかった。


 それを見た竜郎は《無限アイテムフィールド》に谷底の悪魔の死骸と、呪具化したゲイジュツサクヒンを土魔法で台地と切り離してしまっていく。


 光の精霊魔法を作り直して、視界が悪くならない様に周囲にいくつも散らして谷底を真昼の如く照らして場を整える。

 ピアヤウセ族の遺体は全て土と闇魔法で作った棺桶に入れて、地中深くに丁重に埋葬した。

 それから凸凹した岩のように硬い地面を平らに慣らし、万が一にも足を取られない様に整地すれば戦闘準備は完了だ。



「それじゃあ、さっそく魔物を創りだすからな」

「うん。頑張って、たつろー! 横で応援してるからね」

「ああ。任せとけ」



 横で万が一にも反応できるようにとお互いに手を取り合って、ステータスをグンと底上げしておいてから、竜郎は杖を前に突き出して《世界力魔物変換》を発動した。

 小さな黒渦が杖の先にポンッと出来上がり、竜郎の目に世界力が可視化されて現れた。



(なるほど、これなら取りこぼしも無さそうで安心だな)



 そこから綿飴を作る時のような感覚で、無意識的に杖の先端をぐるぐると回していく。

 すると竜郎のイメージ通りに周りの世界力を巻き込んでいき、見る見るうちに巨大化していく。

 それを見ながら竜郎は等級神に話しかける。



(えーと……とりあえず全部集めてみればいいんだよな?)

『そうじゃ。お主の《世界力魔物変換》というスキルから、その力を完全に切り離すと魔物化が始まるが、そうしなければ生まれることは無い。

 じゃから慌てずに、全部集め終ったらその渦に向かって《レベルイーター+α》を放つのじゃ』

(オーケー。了解した。どれくらい吸い出せばいいのかは、ちゃんと指示してくれよ?)

『解っておる。任せておくのじゃ。ここでミスするわけにはいかんのじゃからのう』



 谷底の悪魔との戦いは竜郎達の目的である世界力の調整とは、直接的には関係のない事だったので適当でも良かったが、ここでの調整は後々に大きく響いてしまうので、等級神とはいえ気が抜けない様だ。

 至極真面目で力強い声が竜郎の耳に帰ってきた。


 これなら何の問題も無いだろうと杖を回す速度を上げていき、一気に周囲に溢れかえっていた世界力を杖先の渦に絡め取っていく。


 しばらくそうしていると、周囲の世界力は軒並み竜郎の目の前に出来上がった特大の黒渦に吸収されて、小さな絞りかすのような世界力まで吸い上げれば完成だ。

 竜郎はそこへと向かって《レベルイーター+α》の黒球を吹き付けた。



 --------------------------------

 レベル:???


 スキル:《魔物変換 Num-??????》

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(あれ? 全部ハテナになってるぞ。これで大丈夫なのか?)

『大丈夫じゃ。スキルから切り離された時に、そこが決まると思ってくれてよい。

 それよりもここから肝心じゃ。儂がよしと言うまで世界力を吸い取ってほしい』

(解った)



 等級神と共に集中しながら竜郎はその黒渦から世界力を吸収していく。

 そうするとほんの少しずつではあるが、徐々に黒渦の大きさも縮んでいく。



『よし! 止めるのじゃ!』

(──ん。それでこれからどうすればいいんだ?)

『口の中に出来上がった黒球を解くようなイメージで、ゆっくりと黒渦と混ざらない様に逆の方向へと息を吹くのじゃ。

 その際に意識を黒渦からも切らさない様に注意するのじゃぞ』



 竜郎は黒渦もちゃんと意識し制御しながら、一歩下がって後ろへと振り向く。

 そして黒球を解くようにイメージをしながら、蝋燭の火を揺らす程度の勢いで口先を尖らせ息を吹いていく。



(えーと──こんな感じでいいのか?)

『うむ。ちゃんと出来ておるぞ。これなら、今後も大丈夫そうじゃな』



 そうして完全に口の中の黒球を解き吹き終ると、周囲にはそこそこの世界力が漂っているのが竜郎の目には見えた。



『それじゃあ、後は魔物へと変換じゃ。

 おそらく魔王種かそれに匹敵するだけの魔物が出てくる可能性が非常に高い故、努々油断するでないぞ』

(解ってるよ。こんな所で死んだら意味が無いからな。全力で叩き潰すさ)

『うむ。その意気じゃ。では儂にできるのはここまでじゃ。健闘を祈る』

(ああ、ありがとう等級神)



 等級神へと別れの挨拶を送ると、竜郎は改めて目の前にある巨大な黒渦に目を向ける。



「皆。それじゃあ、いよいよ真打のお目見えだ。油断しないでいこう」

「はーい!」「ピィューー!」「ヒヒーーン!」「了解ですの!」「了解です!」「わかったっす~」「「────!」」「ええ!」



 皆の元気な返事に頼もしさを感じ薄らと笑みを浮かべると、竜郎は《世界力魔物変換》から黒渦とのリンクを切り離すのであった。

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