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レベルイーター  作者: 亜掛千夜
第九章 原点回帰編

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第404話 竜郎帰還

 レーラに会うのが少し怖くなった竜郎ではあったが、それでは話が進まないので、とっとと会う場所と時代を聞いておくことにする。



「それでレーラさんとは何時いつどこで会えばいいんだ?

 封印の事も考えれば、俺達から別れてから十年以上は後の方がいいんだろう?」

「まずお主達は拠点がある時代に戻り、それがあるイルファン大陸より東に行った場所にあるオウジェーン大陸へ行ってほしい。

 そしてその大陸にある天魔の国、ゼラフィムに行けば会えるはずじゃ」

「天魔の国ゼラフィム? 天族やら魔族やらが沢山いる所と思っていいのか?」

「うむ。人口の八割は天魔じゃと思ってよいじゃろう。

 そこは竜神信仰が盛んでクリアエルフ信仰がほぼなく、エルフ自体もほとんどいない。

 故にセテプエンリティシェレーラ──レーラにとって、逗留場所としては適しておるのじゃ」

「へー。確かにそれなら、クリアエルフにとっても過ごしやすそうな場所だな」



 竜郎は手に持ったメモ用紙に『東の大陸オウジェーン。天魔の国ゼラフィム』と書き加えておいた。

 その地にある冒険者ギルドの受付に尋ねれば、レーラのいる宿を教えてくれる手はずになっているらしい。



「これでレーラさんの方は大丈夫そうだな。あとは……」



 過去へ行く手伝いをしてくれる人物の事は把握できた。

 なので次は未来へ行くためのキーパーソンである、《未来同期視》を持つ竜について聞いてみる事にする。



「そやつは大陸一つ丸々を自領としている、竜大陸イルルヤンカの女帝イシュタル。

 竜の王達を統べる女傑じゃな」

「大陸丸々牛耳ってる竜たちの王の、さらに上の女帝って……。

 本当に俺達みたいなのに協力してくれるのか?」

「うむ。確約はしてくれんかったが、前向きに検討はしてくれたぞ?

 それにイシュタルも一つ叶えたい夢がある様じゃから、その辺りを手助けしてやれば恐らく協力してくれるじゃろうて。

 心根の悪い奴ではなく信用できる奴じゃ。一度約束をすれば、それを違えるようなこともせん。そこは儂らも保障しよう」



 その言いように、イシュタルなる竜は随分と神に信頼されているのだなと素直に感心した。



「へー。それじゃあ実力の程も相当だと思って良さそうだな」

「そうじゃな。クリアエルフが人の始まりというのなら、イシュタルは竜の始祖たる真竜の直系であり孫にあたる。

 こちらも生まれながらの神格持ちじゃよ」

「竜の中でも別格のサラブレッドさんか……そりゃ強そうだ」



 竜にもエルフで言うクリアエルフに当たる存在がいたのかというのと、始祖の直系というのも吃驚だ。が、まだ(・・)三世だという事に、なによりも驚いた。



「というか。その人でも過去に行けるんじゃないか?

 始祖からたった三世代目なんだから相当な歳だろ」

「いいや。まだあ奴は千歳と少しといった所じゃ。人種からしたら十分長生きじゃろうが、それでは足らんじゃろう?」

「ああ、それじゃあ足りないな。………………というか、世代を繋ぐ期間が半端ないな。

 それで良く竜が増えたもんだ」



 竜の始まりが一体いつからなのかは知らないが、少なくとも数万年という単位では足りないだろうことは想像に難くない。

 それだけの長い期間があってまだ三世が千歳とは仰天だ。



「まあ真竜は基本的に不死じゃからのう。慌てて直系の子孫を残す必要もなかったのではないかのう。

 竜族創造スキルで同族は何体か生み出しておったが。

 今の竜たちは、そうやって生み出された者が繁殖していった訳じゃしな」

「竜族創造……そんなスキルが」



 帰ったらさっそくシステムで確認しなくてはと意気込んでいると、直ぐに怪神によってその気持ちに水を差された。



「言っとくけど~、竜系は私の管轄外だから~、アタシの権限じゃそのスキルは与えられないからね~」

「そんな殺生なっ!?」。

「んな事言われてもね~。欲しいなら命神か全竜神辺りの許可は得ないと~」

「そこはアレだ。等級神の威光でババンと……ほら、二番目に高い位な訳だろ?」



 竜郎は希望の眼差しで等級神を見つめた。

 だが等級神は目を逸らした。

 竜郎に100のダメージ!



「全竜神は第三位じゃが儂の系統ではない。故に命令だけで動かしていい存在ではない。

 そして全竜神の上は儂と同格の第二位の命神じゃ。儂の威光なぞ効くものか」

「同系統じゃないと命令とかはできないのか」

「基本的にはのう。位とて一応ある程度で、別系統じゃとよけいに上下関係のようなものは生まれにくいのじゃ」



 ちなみに後で聞いた所によれば、それぞれ武神と魔神は技能神の系統、怪神は命神の系統に属する第三位との事。


 竜郎はそれじゃあ確かにダメっぽいなと素直に引き下がろうとしたところで、等級神が希望の光を照らした。



「じゃが仲が悪いわけでもないしのう。頼んでおくことくらいは出来よう」

「等級神って良い奴だったんだな!」

「その言い方じゃと、まるで悪い奴だと思っていた様ではないかっ!」

「いや、ちょっと最初の頃の印象が残っていてな……すまんすまん」

「むう……」



 少し前に子供のように口喧嘩していたので、どうしてもその時の感情が抜けきっていなかったようだ。

 それを等級神も察したのか、それ以上は何も追及してこなかった。


 と。ここまで色々聞かされてきたが、これで竜郎は今後の予定を全て聞き終えた事になる。

 だがもう一つだけ。竜郎には確認しておかなければならない質問があった。

 というのは──。



「なあ、等級神たちはどうして俺達に手を貸してくれるんだ?

 世界の安定だけを只管ひたすらに願うなら、協力するより排除した方がぶっちゃけ早い気がするんだ。

 そこにあるのは、ただの同情や罪悪感ってわけじゃないんだろう?」

「その気持ちが無いわけではない。というのは知っておいてもらいたい。我々神々の総意として、その思いはしっかりと持っておる」

「ああ。それは何となくだが、ちゃんと伝わってきているよ等級神」



 竜郎は真っすぐな目で等級神と視線を交差させた。それに等級神は頷き、直ぐに口を開く。



「だがの。真の理由は、より安定した世界に矯正し直す事が出来るかもしれないと踏んでいるからじゃ」

「矯正というと?」

「今のこの時間軸は無理やり二つがくっ付いている状況じゃと言ったじゃろう。

 そしてお主達が目指すのは、成功した方の時間軸に上手く乗ってその先へと行くとも言ったじゃろう」

「ああ、そう聞いているな」

「じゃが儂らが目指すのは三本目の分かれ道。

 実は分かり難いのと、わざわざ話す必要もないかとも思って説明は避けていたのじゃが、我々の行う『ぼかした』結果から得られる世界線は今ある二本のどちらにも属さない」

「えーと……だから?」

「今ある二本はキッチリと世界力を消費してしまった結果の世界と、何もしないで他世界が壊れた結果の世界だけなのじゃ。

 じゃがそのどちらの世界も、ここでの繋がりが少しずつ影響して、世界が壊れるとまではいかなくとも不安定さが増してしまう様だという解析結果が出たのじゃ。

 じゃからその中間世界を作り上げ、どちらもあった世界に入る事でより安定した世界へと行けるのではと目論んでおるのじゃ」

「つまり何もしないでいると仕事量がさらに増えそうだから、手を貸して楽な世界へと行きたいな──とそんな感じか?」

「有態に言ってしまえばそうじゃ。

 もちろん世界に深刻なダメージを与えない様、こちらでは慎重に観測し安全性の為の余裕は確保しておる。

 じゃから、お主達が乗り気なら儂らも頑張ってみる事にしたというわけじゃ」



 何もしない方が余計な緊張感を覚えることもないので、それもいいかとも思っていたらしい。

 だが竜郎達が本気で解決したいと思ったその時は、自分たちも覚悟を決めてより安定した世界の為に頑張ろうと決めたようだ。



「そう言う事なら解った。俺達は俺達の為に頑張るが、そっちもそっちで自分の為に頑張る理由があると言うのなら、そちらの方が安心できる。

 話してくれてありがとう。これで心置きなくやれるよ」

「そう言って貰えるのなら、話したかいがあったわい」



 それから竜郎は成功を祈って、皆と握手を交わし別れを告げた。



「儂らと話したくなったら、該当のスキルをイメージしながら呼びかけてみることじゃ」

「余程の事でもない限り応じられるように待機しておくから、気になる事があったら直ぐに聞いてほしい」

「私はアイと早く話したいわ! そう伝えておいて頂戴!」

「アタシは魔物関係なら少しは相談に乗れるかもね~」



 等級神、魔神、武神、怪神がおのおの言いたいことを言い終え、竜郎がそれに一人ずつ頷き返すと、再び意識が遠のいていくのであった。






 目を覚ますと、竜郎の視界に自分の頭を持って泣いている愛衣の顔が見えた。

 竜郎はそっと愛衣の頬を撫で涙を拭った。



「たつろー!」



 文字通り魂が抜けた状態だったせいで、体の不調は治っているはずなのに目を覚まさないと言う謎の状況だった。

 それに愛衣が、どうしたらいいかと途方に暮れていた所でこれである。

 愛衣は思わずギュッと力の限り抱きしめた。

 それに一瞬竜郎は不味いと思い身を固くしたが、良く良く考えれば今竜郎と愛衣のステータスは称号効果のおかげで全く同じになっているので、愛衣の本気の抱擁をちょっと強いなくらいの感覚で受け止められた。



「心配かけたみたいだな……。ごめんな、愛衣」

「ほんっとだよ! もー! もー! もー! たつろーのばかーー!」



 愛衣の泣き怒りの声に胸を痛めながら、竜郎は優しく抱きしめかえして彼女の背中を何度も撫でて落ち着かせる。

 しばらくそうしているとようやく落ち着いてきたのか、ゆっくり竜郎から少し離れ、ふくれっ面で竜郎を睨んできた。



「私。不味いと思ったら止めてって言ったよね! なんで無茶するの!」

「いや、すまん。だが俺は確かに少し無茶をしたが、ちゃんとぶっ倒れる前に引いたんだぞ?」

「倒れてたじゃーん!」



 額と額を合わせられ、グリグリして竜郎に抗議してくる愛衣。

 それに心配させておきながら不謹慎かとも思ったが、少し笑いがこみ上げてきてしまう。

 それにますますグリグリの威力が増していき、竜郎は愛衣の肩をタップした。



「また別の事情があってだな。何にしても危ない事をして倒れたわけじゃないから、安心してくれ」

「…………どういうこと?」



 結局解決できずにぶっ倒れただけにしては、竜郎の表情が明るい事に愛衣は気が付く。

 これは倒れている時に自分たちには解らない何かがあったに違いないと、竜郎へと質問を投げかけた。

 会話をしなくても理解してくれる愛衣に、竜郎は嬉しくなって頬にキスをすると一度みんなを見渡した。

 すると元気そうな竜郎に嬉しげな表情で見守っていてくれていた事が窺えた。



「皆にも心配をかけたみたいだな。すまなかった」



 心配をかけた事には違いないので、一度自分の足で立ってから改めて全員に頭を下げて謝罪した。

 それに皆は思い思いの言葉をかけてくれた。

 そうして落ち着いた所で、竜郎は爆弾発言を投下した。



「解決方法が解った」

「「「「「「「──!?」」」」」」」



 竜郎が無事だったことによりホッとした雰囲気から、全員の空気が引き締まったのを肌で感じた。



「そうなの!? 本当に私たちの世界を元に戻せるの?」

「ああ、なんたって神様のお墨付きだからな」

「神……さま? えーと……頭大丈夫?」

「大丈夫だよっ!」



 別に馬鹿にしたわけではなく、さっき倒れた時に頭でも打って変な夢でも見たのではと、愛衣以外の面々も再び心配そうな顔になってしまう。

 それに竜郎も段々と自信がなくなっていき、実は自分にとって都合のいい夢を見ていただけなのではないかと不安を抱く。



(そうだっ。確かスキルを意識して呼びかければ、応えてくれるって言ってたじゃないか!)



 竜郎は自身が真面まともである事を確かめようと、《レベルイーター》を意識しながら等級神との交信を試みる。

 急に目を瞑って黙りこくる竜郎に心配そうな視線がチクチクと刺さる。

 そして──。



『何か聞き忘れた事でもあったかのう?』

(つながったーー!)

『繋がるも何も既にお主と儂はスキルによって繋がっておったじゃろうに。

 それで何の用じゃ?』

(いや。さっきまでの話が夢であったらどうしようかと思ってな。ちゃんと等級神と話せるかどうか確かめてみたんだ)

『ああ、そう言う事じゃったか』



 こんな用件で交信して少しくらいは怒られるかとも思っていたのだが、等級神の声音はいたって平常。

 拍子抜けした気分だが、夢でないことが解れば問題はない。



(すまないな。けど、これで確信が持てたよ。

 そういうわけで、これから皆にも説明するから、勝手なようだがもう切っていいか?)

『うむ。よいぞ。小さなことでも気になったら、こちらの事は気にせずに確認してくれればよい。ではな』

(ああ、ありがとう。じゃあまた)



 軽く挨拶を交わして等級神との会話を打ち切ると、改めて皆に向き直る。



「うん。俺はいたって正常だ。今確認が取れたから、それについて説明したいと思う────んだが」

「だが?」



 愛衣がキョトンとした顔で竜郎を見つめてくる。

 その不意の表情が可愛くて、竜郎の頬が少し緩んだ。



「一先ず俺達の拠点に帰ろうと思う」

「えっと……これは……ほっといていいの?」



 愛衣が黒渦の集合体を指差した。それに竜郎はコクリと一度頷き返す。



「ああ。今それに手を出してもしょうがないからな。

 それにカルディナ達にとってこの場所は辛いだろうから、用がないなら一度戻るべきだ」

「ん、解った」



 明確に何か方策が見つかったのだろうと愛衣は素直に頷き、カルディナ達も賛同してくれた。



「それじゃあ俺達の拠点がある、あの時代へ──」

「れっつごー!」



 皆で一塊になって貰ってから、竜郎は天照の杖を構えて天へと翳す。

 そして転移を発動し、再びヘルダムド国歴992年からヘルダムド国歴1028年まで飛んでいくのであった。

これにて、第九章の終了です。ここまで読んで下さり、ありがとうございます。

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