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レベルイーター  作者: 亜掛千夜
第九章 原点回帰編

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第403話 協力者について

 他に聞いておくべきことはといえば、即ち協力者についてである。

 とりあえず全貌をちゃんと把握してから、そちらの情報を集めようと思っていたのだ。



「というわけで、協力者というクリアエルフと竜について教えて欲しいんだが」

「おお、それもそうじゃな。会う人物たちについてもそうじゃが、待ち合わせ場所なども言っておらなんだ」



 おいおい、しっかりしてくれよ。という眼差しでジッと竜郎が等級神を見つめると、スマンスマンと悪気のない笑みで返された。



「まずはクリアエルフの方が話が早いじゃろうから、そちらから話すとしよう」

「話が早い?」

「そうじゃ。なんと言ってもそなたらも知っておる人物じゃ。数百万の時を生きるエルフに心当たりはないか?」

「数百万の時を生きるエルフ……?」



 そもそも積極的にこちらの世界の人間とコミュニケーションを取ってきた訳でもないのだから、そんな稀少な人間に会っていたのなら気が付いていそうなものである。

 積極的に協力したがっていると前に言っていた事を考えると、まず真っ先に思いついたのはアーレンフリートだ。

 が、彼はニーアエルフと自分で言っていたし、一万年も生きていないはずだ。


 次に思い浮かんだは、最近仲良くしているハウル王。

 アーレンフリートすら上回っていそうな輝きを持っている辺り、十中八九エルフの中でも長命種であることは間違いないであろう。

 ただクリアエルフと言う種であり、数百万年も生きていたとするのなら、もっと強くてもいいような気もした。


 ただそうは言っても知り合いに可能性のある人物はと言われれば、ハウルしか思い浮かばなかったので、その名を等級神に向かって出してみた。



「ハウルとな? えーと……ああ、お主達が拠点を築いた土地の国の王か」



 何となく竜郎達の動向は見守っていた様なので、存在自体は把握していたようだが、この反応からして違うようだ。



「彼はクリアエルフではなくニンフエルフという、クリアエルフの次に長命な種ではあるんだけど、件の人物ではないね」

「ニンフエルフ? 妖精とのハーフとか?」

「いいや、そうじゃないよタツロウ君。幼少期が異常に長く、なかなか大人になれずにいつまでも小さく愛らしい見た目のままだからと、そんな名前が付いただけなんだ。

 だから実際に妖精との関係はなく、生粋きっすいのエルフで間違いないよ」

「へー、そんな種もいるんだな。うーん……しかし、そうなるともう解らないな。

 その人の名前は?」



 当たった所で賞品があるわけでもあるまいし、竜郎は考えるのを放棄して直ぐに答えを要求した。

 それに少しつまらなさそうな顔をした等級神が、協力者の内が一人、クリアエルフの名前を口にした。



「セテプエンリティシェレーラ。氷の精霊──氷神の寵愛を受けし巫女じゃ。

 どうじゃ、心当たりが有ろう?」

「せてぷえんりつぃれ? なんだって?」

「む? 知らんのか?」



 いきなり外国人風の長ったらしい横文字の名前を聞かされても、純日本人の竜郎に一度で聞き取れと言うのは酷である。

 ただ名前を聞けば解ると思っていた等級神たちは、何故解らないのかと首を傾げた。

 だがその中で魔神が唯一何かに気が付いたようで、右手人差し指を立てて上にあげ、「ああ!」と何か閃いたような声を漏らした。



「セテプエンリティシェレーラだよ。タツロウ君。

 今はレーラ・トリストラと名乗っているようだね。そっちなら聞き覚えがあるんじゃないかい?」

「──はあ!? レーラさん!?」



 ストレートしか有りえないと思っていた球筋が、急にカーブした時の様な衝撃が竜郎を襲った。

 一体誰が田舎町の冒険者ギルド元職員と、始まりの人でありエルフの始祖と呼ばれるクリアエルフなどという大層な存在と結びつけることが出来たであろうか。

 それに、そう言われても竜郎には納得できない理由もある。



「ちょっと待ってくれ。もし俺達の知っているレーラさんがクリアエルフだったとしてだ。

 それにしては……その……、後であった長命種のエルフたちの方が正直強そうだったんだが……?」



 いくら何でも数千年生きてきたエルフと、数百万年生きてきたエルフでは年季が違うはずだ。

 それもレーラが引き籠りがちで一切レベル上げをしそうにない人間ならいざ知れず、元々冒険者として名をはせていたらしいのに、アーレンフリートやハウルと互角以下レベルとしか感じなかったというのは、いささか疑問である。

 もっと言うのなら、そんな人物を冒険者ギルドが一介の職員として遇するとも思えない。


 そんな竜郎の問いかけに「はて?」と魔神以外の面々が首を傾げていた。

 その表情からは、そうだったっけ? という感情が窺える。

 なので唯一その謎を知っているであろう魔神が口を開いた。



「それはね。クリアエルフという存在は特別だからだよ」

「……え?」



 その答えにますます竜郎は混乱する。

 特別であるのなら、それ相応に特別な何かを秘めているものではないだろうか。

 だというのに、レーラはどちらかというと普通のエルフだと思っていたくらいに、そこまでの特殊性は感じなかった。


 魔神には竜郎のその思考が読めていたのか、うんうんと頷いて一拍置くと再び話を続けた。



「例えばだ。もしタツロウ君が凄く有名な人だったとしよう」

「はあ」



 自分が有名人などとは今一想像もできないので、ぼんやりとした返事を反す竜郎。



「それはもう有名すぎて、町に入ろうものならあっちこっちから一目見ようと人が溢れかえったり、拝まれたり、摺り寄ってきたりされたらどうだろう」

「それじゃあ窮屈すぎるな……。おちおち愛衣とデートも出来やしない」

「……えーと、デートはまあいいとして」

「良くはないだろう。愛衣とデートできるかどうかは凄く重要だぞ」

「うん。もうそれは解ったから。話を進めてもいいかな」

「おっと、そうだった。続けてくれ」

「ああ……そうさせてもらうよ」



 真顔の竜郎に少し疲れた顔の魔神。そんな二人がお互いに顔を見合わせながら、話は進んでいく。



「そう。窮屈だし、何をするにも注目されて気が休まる事も無いだろう。

 なら、そうならないように町を歩くには、タツロウ君ならどうするかな?」

「俺なら? ……そりゃあ、ばれないように変装なり何なりして、顔が解らない様に──ああ。そういう何かをしていたという事か、レーラさんは」

「その通りだよ」



 つまりレーラは、クリアエルフでは無いように装う何かをしていたと魔神はいいたいらしい。



「クリアエルフというのは、確かに人間として地上に生きてはいるけれど、生まれながらに神格者の称号を持つ半分神様の様な存在なんだ。

 無意識に人前に出ればただならぬ人であると直ぐにばれるだろうし、どんなに神の威光を隠しても、同族のエルフには一目でクリアエルフだと気付かれてしまう」

「直接のご先祖様の種族だから、何か感じるものがあるんだろうな」

「だろうね。そしてクリアエルフという存在はエルフ以外の種にとっても特別ではあるが、特にエルフにとっては神そのものの様に崇拝されている。

 本能レベルで崇めたくなるのだそうだよ」

「うわぁ……。やだな、それは」



 町中を普通に歩いていたら、自分の熱狂的信者が突如平伏して拝みだすのを想像し、竜郎は苦い顔をした。



「それにエルフじゃなくてもクリアエルフを祀る宗教もあるから、他の種族でも同じような事をする者もいる始末。

 だからこそ大抵のクリアエルフは、人里離れた場所で自然に溶け込み生きていく。

 そしていざ常人には対処できない様な事態が起こった時は、自分から首を突っ込んで解決したり、我々神々から頼まれて事態の収拾に努めたり──なんて事をしているのが普通なんだ」

「あのさ。そんな事をしているから余計に崇められるんじゃないか?」

「そうだろうね。けどまあ、崇める人がいない場所に行ってしまえばどうという事もないんだ。

 けどね。セテプエンリティシェレーラ──解りやすくレーラと言おうか。彼女は少し特殊だった」



 魔神は懐かしむような遠い目でそう言った。



「特殊?」

「普通は暇な時間を研究に費やして、特定の分野に対しての知的好奇心を満たして満足するんだ。

 けれど彼女はあらゆる事象に興味を持ち広く深く知りたがる。

 その為に他人とも仲良くして、色々な伝承や事象を聞いて回ったりしたいと思う子なんだ。

 そんな子が人目を避けていられると思うかい?」

「難しいだろうな。いっその事開き直ると言う手もあるだろうが、それでも信者が邪魔になる事もあるだろうし、レーラさんは一体どうやってそれを解決したんだ?」



 おそらくそれが彼女のクリアエルフらしからぬ所に繋がるのであろう。

 竜郎は魔神を急かして答えを求めた。



「クリアエルフが特別なのは、その神から賜った生まれながらの神格と恩寵だ。

 それを無くす手っ取り早い方法は、男女問わず誰かと子を成す行為をする事だね。

 そうすれば神格は失われ、神の恩寵も消え、地上に住む一エルフとなる」

「じゃあ、レーラさんはその方法を取ったという事か?」



 他人の情事について聞いてもいいのだろうかと思ったものの、ここまで聞いたら今更かと開き直る。

 だが魔神は首を横に振った。どうやら、そういった方法ではないらしい。



「だがその方法だと、永遠の命は失われてしまう。永久の時を使って知識を貪りたい彼女にとっては悪手だ。

 ……それでも狂う事も無く五万年くらいは生きられるのだけどね。

 そして時として危険な場所にも知識を求めて赴く彼女にとって、力も必要だった。

 であるのなら神の恩寵を無くすのも悪手だ。

 そこで考え付いたのが、自己封印という新たな魔法。彼女はそれを一から自分で作り上げてしまったんだよ」

「自己封印? 自分で自分を弱体化させるって感じか」



 魔神によれば、レーラはその術法を用いて自分の持つ神格と力を抑える代わりに、クリアエルフとしての特殊な威光を薄めた。

 もとから強い力を有していたので、抑えても一般人からしたら破格の力だ。

 大抵の事はそれで解決できる。

 また、より強い力がいる様な所に行きたくなった時は、封印を解いて最高の状態を取り戻す事も出来るのだと言う。



「そんな事が出来るのなら、魔竜退治の時も、もっと手伝ってくれればよかったのに」

「それはしなかったんじゃなくて、出来なかったんだよ」

「というと?」

「彼女の封印は掛けるのも解くのも時間がかかるんだよ。

 解りやすく例えを出すのなら、封印を掛けるというのは体中に鎖を巻きつけるようなもので、封印を解くと言うのはそれをほどいていかなくちゃいけないんだ」



 さらに具体的に言うと、自分自身の力をエルフにもばれないレベルまで封印するには少なくても10年。

 最盛期の状態まで戻すのにも10年程の時間を有すると言う。

 竜郎達があそこで、せめて5年ほど待っていられる状況だったのなら、十分に当時の竜郎達と渡りあえていたらしい。

 だがあの時は、そんな悠長にしていられる状況でもなかったし、一日やそこらでは封印の片鱗すら解けはしないのだから、あの時のレーラの判断は間違っていなかったのだろう。

 と。そこではたと竜郎は思った。



「それじゃあ今のレーラさんは?」

「今が何時いつを指すかによるけれど、君たちが拠点を築いた年代では完全に解けている状態だよ。

 だから安心して彼女を頼っていいと私たちが保障しよう」

「そんなに強いんですか? レーラさんは」

「神の恩寵を受けて産まれてきたってだけでも相当なのに、彼女は自己封印が解けて直ぐに、もっと力を寄越せと氷神に直談判してスキルをふんだくっていったからね。

 今は過去の絶頂期すら超えているはずだよ」

「神様に直談判してスキルをふんだくるって……そんな事できるのかよ……あの人」

「基本的に神格者になればスキルを通じて神へ話しかける事は出来るんだよ。

 けど彼女の場合クリアエルフなんて生まれながらに半分神として生まれてきたものだから、無理やり精神世界に潜りこんで私と氷神を呼び寄せるなんて力技をやってのけたんだ。

 あれには私も氷神も驚きすぎて、最初何をされたのかすら解らなかったよ」

「ぱねぇ……。まじぱねぇっす、レーラさん……」



 あの時のレーラからは想像も出来ない程の力技に、竜郎は一瞬氷が背中を伝うかのような寒気を感じたのであった。

明日更新分で今章は終わりそうです。

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