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レベルイーター  作者: 亜掛千夜
第九章 原点回帰編

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第395話 事後処理

明けましておめでとうございます!

 

 

 竜郎は、《『レベル:211』になりました。》と。

 愛衣は、《『レベル:163』になりました。》と。

 カルディナは、《『レベル:98』になりました。》と。

 ジャンヌは、《『レベル:98』になりました。》と。

 奈々は、《『レベル:98』になりました。》と。

 リアは、《『レベル:146』になりました。》と。

 アテナは、《『レベル:99』になりました。》と。

 天照には、《『レベル:81』になりました。》と。

 月読には、《『レベル:81』になりました。》と。


 それぞれレベルアップのアナウンスが聞こえてきた。

 そして全員が《魔王種殺し+1》を得て、竜郎と愛衣には《響きあう存在+3》が。

 後は竜郎だけに《越境者+1》が贈られた。

 竜郎だけ一気に伸びたのは、黒鬼になる前の黒渦から吸収した分が加算されていたからである。


 リザルトを聞きながら、竜郎は急に眠気に襲われ倒れそうになる。

 だが直ぐに横にいた愛衣が支えてくれた。響きあう存在がランクアップしたおかげか、非常に心地よい。



「たつろっ!? どうしたの?」

「いや、急に眠たくなってきて……」

「それは……さっきの気魔混合の影響ですかね。ただでさえ制御が難しい竜力だけでなく、神力まで使って形を成すには並みの制御力じゃありません。

 なので称号効果でも対応が出来ずに、体を休めようとしているのだと思います。

 おそらく時間もそんなにかからないでそうし、少し眠ってみてはどうでしょう?」

「少しならいいか……。だが、その前に愛衣の傷を治さないと」

「そんなの大したことないし、後でいいから寝てて」

「そんなわけにいくか。愛衣を前線に出す時に、俺が傷を治すと言ったんだから治させてくれ。頼むよ」

「もう……。しょうがないなぁ」



 自己治癒能力も称号で備えているにもかかわらず、まだ完全に癒えていない傷がいくつか残っている。

 このまま寝入ってしまっても傷痕一つ残さず治るだろうが、それでは竜郎の気が収まらない。

 多少無理をしてでもと竜郎は目に力を入れて、無理やり自分の足で立つ。

 そして愛衣をギュッと抱きしめて、生魔法と解魔法で傷口を探り癒していく。

 すると一か所、左肩から手首の方に向かって一本深めの傷を見つけた。

 既に血は止まり、元に戻ろうとはしているが、今この状態という事は、傷を受けた時はもっと深かったという事だ。

 竜郎は奥歯をギシリと噛みしめた。



「痛かっただろ。ゴメンな」

「それはちょっと武器の切り返しがこんがらがっちゃって受けただけで、相手の実力というより自分のミスだからさ。だから謝らないで。

 謝るくらいなら、私はもっと嬉しい言葉があるんだよ?」

「──そうか。ありがとう、愛衣。俺や皆を守ってくれて」

「どういたしまして。そしてありがとう、たつろー。私や皆を守ってくれて」

「……どういたしまして。守ったと言うか作戦を考えて、皆に実行して貰っただけなんだけどな。結界を張ったりはしたが」

「それも大事なことなんだよ。だからご褒美に、よしよししてあげる」

「ご褒美なら主に夜のアレでお願いします!」

「はぁ……。もうね、はぁ……。まったくね、はぁ…………えろろー」



 愛衣はジトッとした目で竜郎を抱きしめる力を強くした。

 だが竜郎はどこ吹く風で抱擁を止めたりしない。



「俺もまだ若いしな。高校生男子の欲望を舐めたらいかんよ、愛衣君」

「そんなのよく知ってるよ、ばか」



 そんな会話をしながら愛衣の傷はかすり傷一つなくなった。

 それから他の面々も傷が無いか探っていく。

 するとアテナも黒鬼の近くをうろついていたせいか、傷を負っていたのに気が付き直ぐに癒した。

 カルディナ達にも魔力を目いっぱい補充していったところで、完全に竜郎の意識が途切れた。


 竜郎が目を覚ますと、目の前には二つの丘があった。

 思わず触ってプルプルと柔らかな感触を楽しんでいると、何処からともなく手刀が飛んできて頭をはたいた。



「いてっ」

「起きぬけに何しとんじゃい、えろろーめ」

「そこに見慣れた丘があれば触るだろうさ。常識だぞ、愛衣」

「知らないよっ、そんな常識! その辺にポイしてきなさい!」

「それがし、こればかりはポイできぬ。まこと残念な事である」

「どこのサムライよ……」



 竜郎が寝ている間、愛衣は警戒しながら膝枕で寝かしつけていてくれたようだ。

 どっと疲れたような顔をしている愛衣に、竜郎はさっそく気になる事を尋ねてみる。



「俺はどれくらい眠っていた?」

「う~ん、五分くらい? だからもっと寝ていてもいいんだよ?」



 心配そうに頬を撫でてくる愛衣の手を取ると、竜郎はそのままの態勢で首を振った。



「いいや。今はもの凄く思考がクリアだ。むしろ黒鬼と戦う前よりもスッキリしてるくらいだ」

「そお? ならいいけど──ひゃんっ。もうっ」

「こりゃ失敬」



 竜郎は惜しみながら愛衣の太ももをサッと触ると、そのまま腹筋を使って起き上る。

 唇を尖らせて抗議してくる彼女に軽くキスをしてから、竜郎はすぐ横に視線を向けてぎょっとした。



「これはっ──アイツの頭か」

「そうだよ。たつろーが欲しがるだろうって思って持ってきておいたの。

 もう死んでいるってのは解ってるけど、迫力あるよねソレ」

「だなー。でけー」



 それはまごうことなく魔王種であった黒鬼の頭だった。

 角は一本完全に折れ、他も先端が欠けていたり、顔も火傷跡で生前どんな顔をしていたのかすら解り辛い。

 なので竜郎は愛衣と手を繋いで《復元魔法》を使い、出来るだけ綺麗にしてみた。

 すると折れた一本の角はダメだったが、他はかなり綺麗な状態まで復元できた。

 このままうまく処理すれば、綺麗な剥製が作れそうな程に。



「うん、中の脳みそも綺麗なもんだ。心臓が無いのは残念だが、これ以上は望むべくもないか」

「そうだね。これだけでも魔卵は作れるんだし……それでさ。どうする?」



 この場合のどうするは、もちろん食べるかどうかという事である。

 鳥は見た目からしても非常に食べやすい素材であった。

 けれど今回の場合は人間ではないにしろ、形は非常に人の頭部に近い。

 どれだけ珍しく貴重なモノであったとしても、食材としての見た目は最悪であると言わざるを得ない。



「えーと……毒は──」

「リアちゃんは無いって言ってたよ」

「あっ、そうですか……。というか、毒が有ろうと後で解毒して貰えばいいだけだし、強くなっておくに越したことはないんだから悩むだけ無駄なんだけどな」

「だねぇ。意外と珍味だったーなんて事も有るかもだし。

 そんじゃあ、えーと……どこを?」

「どこって言ったってそりゃ……柔らかそうな所で言うなら頬肉か?」

「うーん。見た目的にどこもかしこも硬そうだけどなあ」



 とりあえず愛衣は宝石剣で頬の肉を切り取ってみる。

 そして皮を削いで、真っ黒な切り身の出来上がりだ。



「まあステキ。焼いても無いのに消し炭の様だわ!」

「ほんとに黒いな。中まで完全に真っ黒とは、見た目は肉じゃなくてタイヤの破片みたいだ」

「確かに。そー言われて差し出されたら信じちゃいそう」



 さすがに生で食べる勇気はないので、火魔法で炙ってみる。



「臭いは……うんまあ妙な臭みがあるとかも無さそうだな」

「くんくん。ほんとだ。ちゃんとお肉の臭い。でも最初から真っ黒だから、焼けてるかどうか、わっかんないねー」

「解魔法でちゃんと調べながら焼いてるから大丈夫だ。ちょっと味付けもしてっと」



 塩コショウを振って適当に味付けし、まずは二人で試食してみる事にする。

 カルディナ達も、近くでそれを眺めて体を休めながら反応を伺っている様子。



「はぐ」「はむ」



 二人同時に口の中へと思い切りよく放り込む。

 そして咀嚼してみれば肉質はかたく、見た目同様ゴムの様。そのまま味も確かめてみると……。



「「ジャーキー?」」



 やや薄味のビーフジャーキーのような味がした。

 別に不味くも無いが、とりわけ美味くも無い。しいて言うのなら塩気を足せば、お酒のおつまみにはギリギリなるかもしれないといった所か。


 食べられない程の味でもないので、リアや他の面々にも食べさせていく。

 このメンバーで一番料理に詳しいリアの反応はと言えば──。



「もう少し柔らかければ、料理にも使えなくはないと言った感じなんですけどね。

 これだったら別にもう食べなくていいかなって……」



 意外と辛辣な評価だった。

 だがこうして全員食べたことで、黒鬼の魔王種結晶が手に入ったはずだ。

 さっそく出してみれば、黒水晶を彫って作った黒鬼の三十センチサイズのオブジェと言ったものが現れた。

 試しにライフル杖に入れてみれば、銃剣のように先端部の周囲に八本の小さな刀が現れた。



「今度はこう来たか。なかなかいいな」

「ねーねー。私のはほら! かっこいいよ!」



 愛衣は相性もいいだろうと宝石剣に入れてみれば、西洋の大剣が日本刀──それも宝石の様な質感を持つ大太刀へと変化していた。



 使用時の変化はと言えば、竜郎の場合レーザーを撃つとその周囲にレーザーの強さに比例して切れ味が増す刃が八筋追加されていた。

 また風魔法で突風を起こせば、そこへ鎌鼬のような斬撃が何本か自動で混じり、何も指定しないで射魔法を発動すると勝手に刃が飛び出し、斬魔法では威力が増した。


 一方愛衣の方はと言えば、兎に角切れ味が半端なく、試しに鉄を上から刃の上に落としてみると、豆腐のように何の抵抗も無く切って見せた。

 斬撃を飛ばしてみてもそれは同様で、適当に振って飛ばした斬撃でも切れ味だけは抜群だった。

 また軍荼利明王に入れてみればアームの手の平から出てくるのが気力の槍ではなく刀になり、気力の矢も刀の形をしていた。

 ユスティーナの三又槍に入れれば槍部分が日本刀のようになり、突くと言うよりも斬る槍になり、雷嵐を巻き起こせばそこへ斬撃が混じるようになっていた。

 いずれも切れ味は最上級の領域だ。


 カルディナの魔砲機は竜郎の杖と同じように、ジャンヌの鉈斧は刃の部分が刀に──などなど似たような変化を見せる中、奈々のキングカエル君はと言えば……。

 手に持っている杖が仕込み杖になり、魔法補助だけでなく自発的に敵を斬りつける事も出来る様になっていた。

 これに奈々は大絶賛し、この領域で重たいであろう体もなんのその、終始かっこいいですの!を連発していた。



「前回の鳥の魔王では風属性でしたが、今回は斬属性の魔王種結晶の様ですね。

 それぞれに個性があって、なかなか面白いです」

「こっちも今後の戦いで役立ちそうだな。そういえば魔王種結晶で思い出したが、魔王種殺しとか称号関係も一応確認しておくか」

「そうだね」



 そうして皆で新たなスキルについて調べていくのであった。

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