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レベルイーター  作者: 亜掛千夜
第九章 原点回帰編

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第374話 蒼太たちとの模擬戦

 まず最初に仕掛けたのは竜郎だった。

 天照と一緒に魔王種結晶をライフル杖とコアにそれぞれ込めると、緑の鳥の形へと変化した杖先を空へと掲げ、風纏う豪雨のようなレーザー光線を何筋も相手側へと降らせた。


 その一発一発は、当たれば野生のイモムーなら消滅する威力。

 とはいえ《重鱗装甲》で着膨れした蒼太には全くのノーダメージ。

 ワニワニ隊も物理型の個体だと、当たれば痛い──くらいである。

 つまりはただの牽制攻撃だ。



「クュィィイイロロロロゥーー」



 それを直ぐに察した蒼太は空でとぐろを巻き、その巨体でもって傘のようにワニワニ隊を覆ってレーザー光線を遮った。

 さらに余った尻尾の先に、いつの間にか覚えていた《龍尾閃》を込めて竜郎めがけて打ち下ろしてきた。



「させないよ!」



 愛衣が左手に持った宝石剣一本で、その《龍尾閃》の叩き付けを弾き飛ばしつつ、突っ込んできたワニワニ隊の遊撃型と万能型の個体に対し右手を振って鞭を伸ばし寄せ付けない。



「ゴオオォッ!!」



 飛んできた鞭を前に遊撃型と万能型が後ろに下がって距離を取る。

 けれど遅れてやってきた高耐久型が矢面に飛び出し、白色の大きな盾でしなる鞭を上手くいなし始めた。

 その隙に万能型が遊撃型をフォローする形で前へと飛び込んでくる。

 魔法攻撃型二体が後から水の弾丸を何発も撃ち放って、愛衣へと牽制し始めた。



「魔法は俺が何とかするから、突っ込んでくるワニの対処を頼む!」

「がってん!」



 《魔法支配》で全ての水弾を魔力へと霧散させ、竜郎は天照と月読に新たな戦闘スタイルを取るように念じた。

 竜郎はライフル杖をクルリと回転させ、傘骨の方を前へと突き出す。

 傘骨が天照の《竜念動》で動き始め、八本の指を持つ手の骨格の様な位置で停止する。

 天照の属性体で竜郎の右腕が覆われていき、緑の鉤爪の八本指の赤く大きな竜の腕となった。

 左腕は月読の属性体で覆われていき、青い水晶で出来た五本指の大きな竜の腕となる。

 そして月読はセコム君に魔王種結晶を込め、薄らと風を纏った水の翼を三対六枚背中に広げた。

 さらに水晶の左手の周りにもセコム君を展開し、血管の様な管で繋がりあった六角形の水の盾が鱗のように重なりあって出来た巨大な水盾が出来上がった。


 時間としてはほんの一瞬だったが、その頃になると蒼太の溜めも終了していた。



「キゥイイイイイイイイイイイイイイロロロロロローーー!!」



 蒼太は大口を開けて、竜郎でさえ真面に当たればただでは済まない《龍力超収束砲》を撃ってきた。



「──はあああああ!!」



 それに対し竜郎は右腕に合体した天照と杖を蒼太に向ける。

 八本の指を広げて手の平の前に天照の《分霊:火力増幅輪》を設置し、それと同時にかなり本気目の極大レーザーを撃ち放った。

 天照の分霊でさらに強化されたレーザーと、蒼太の本気の《龍力超収束砲》がぶつかり合う。


 そうなると《魔法域支配》に思考を割いている余裕が無くなり、後に控えていた魔法型達二体が愛衣へと巨大な水の砲弾を撃ち放つ。

 愛衣は愛衣で攻撃特化型まで加わった四体のワニワニ隊の連携を、たった一人で拮抗させて寄せ付けないようにしている。

 が、その魔法へと完璧に対処するには今目の前にいる存在を消し飛ばすしかない。

 けれど殺しては不味いのでどうしようかと焦っていると、竜郎の左腕になっている竜の腕の大盾の一部がパージされ、愛衣の前まで伸びてきて巨大な水の砲弾を《竜障壁》で防いで見せた。

 それにホッとしたのも束の間、一瞬の愛衣の油断を突いてもっとも速力に優れる遊撃型が飛んでくる鞭や斬撃、突撃を掻い潜って目の前まで迫ってしまう。

 さらに耐久型が当たっても死なないのをいい事に無理やり前へと突っ込み活路を開くことで、万能型と攻撃型まで肉薄してきてしまう。

 だが──。



「なめんなー!!」

「──ゴオゥッ!?」



 遊撃型は左上段蹴りで太ももを蹴られ横へ吹き飛び、海を水切りしながら遠くへと行ってしまう。



「とりゃあーーー!」

「──ゴブッ」

「せいやー!」

「──ゴッ!?」



 それとほぼ同時に鞭と宝石剣を軍荼利明王に持たせた愛衣は、こちらからも万能型と攻撃型へ突っ込んでいく。

 手前にいた万能型には軽くジャンプしボディブロー。空中を蹴って攻撃特化型の真下に一瞬で着地し、アッパーカットを食らわせ二体を気絶させた。



「こっちも終わらせる!」

「クィロロローーーー!」



 竜郎も二体が沈んだのを見て本腰を入れ始める。

 レーザーVS収束砲の拮抗を崩そうと蒼太も目に力を込めながら、そうはさせるかと全力中の全力で口内に竜力を注ぎ込む。

 けれど竜郎がレーザーの火力をさらに上げ、それプラス天照と一緒に《突魔法》を込める。

 みるみる拮抗は崩れていき、押し合っていた収束砲を蹴散らし貫通した。



「クゥイィー!? ────ロロロゥゥゥロロローー!!」

「月読!」

「──!」



 レーザーが口内を突き破ろうとする寸前で頭をグイッと上にあげて顔を逸らし、左頬の鱗をごっそりと持っていかれたが中身は無傷。鱗も直ぐに再生を始める。

 お返しとばかりに蒼太は上にあげた頭を下に振り、額に二本と鼻先一本の鋭い角から《龍角槍刃》の斬撃。

 次いで体を空中で横回転させながら、連続《炎熱龍爪襲撃》と《龍鎌鼬》を辺りにまき散らす。

 竜郎は月読に指示を出し、《龍角槍刃》には竜水晶を混ぜた《竜障壁》に竜郎の《盾魔法》を付与したもので防ぎ切る。

 そして左腕に付いているセコム君で構成された小さな六角形の集合体である大盾を細かく分散し、竜郎の解魔法の情報を元に最適の場所と角度で《炎熱龍爪襲撃》を防ぎ、《龍鎌鼬》はむりやり《魔法支配》で散らせていった。



「とりゃあーーー!」

「ゴォオ!」



 そちらの守備は全て竜郎に丸投げした愛衣はワニワニ隊を減らし、蒼太撃破に加わるためにまずは攻撃魔法型への道を塞ぐようにして盾を構える防御型を何とかしなければならない。

 愛衣は向かう途中で鞭と宝石剣を軍荼利明王から返してもらう。

 そして左手一本と軍荼利明王に持たせた天装四つと四本の気力の槍で耐久型をガンガンと攻め立てていく。

 その間残った右手で鞭をしならせ、後ろにいる攻撃魔法型二匹に魔法を撃たせない様に牽制するのも忘れない。

 それでも小さな水弾はやって来るが、そちらは鎧の能力である黒い気力による盾で防ぎきる。


 耐久型はこの海辺に現れる魔物達相手に、ひたすら守る事を心掛けて戦ってきたせいもあり、愛衣の猛攻をいなし弾き耐え抜いてみせる。

 感心したように思わず愛衣は口笛……の声真似をして称賛した。



「ぴゅー。やるじゃん! 頑張ったんだね!」

「ゴオオォォーーー!」



 気の抜けない戦闘中であっても愛衣に褒められて嬉しかったらしく、耐久型はさらに良い所を見せようと動きにキレが増してきた。

 面白いと愛衣は蹴り技も加えて攻撃の手数を増やしていく。

 足も合わせて計十一方向からくる攻撃にさしもの耐久型も防御が間に合わなくなっていき、体中に傷が増えていく。

 そして右から打ち付けられた宝石剣の一撃を盾で受けた時、とうとう力負けしてガクッと左膝が砂浜についてしまう。



「貰った!」

「グゥォ!?」



 地べたに這うように屈んでからの足払いをもろに受け、後ろ向きにスッ転びながらも盾を構えようとする高耐久型。

 しかし愛衣は攻撃魔法型に向けている鞭の先ではなく、手もと近くの場所を波打たせて手を弾くという器用な芸当を見せる。

 盾は一瞬痛みに痺れた手から滑り落ち、完全に無防備状態で背中が地面へと吸い込まれていく。

 けれど背中が地に着く前に決着がつく。

 無防備に倒れようとする耐久型が目にしたのは、軍荼利明王自身に本体を持たせ、左手一本で弓を引く愛衣の姿。



「おやすみ!」

「「「ゴォッ──」」」



 魔力頭脳を取り込んだ軍荼利明王になってから出来る様になった、気力を調整して矢先を丸くした気力弓矢で顎を打ち抜いた。

 それと同時に壁が無くなり攻撃が通りやすくなった後ろの二体も、鞭で頭を叩いて鎮圧した。



「──ふう。それじゃあ、たつ──」

『愛衣。横からくるぞ!』

「──おっと」

「ゴォオッ」

『さんきゅー、たつろー!』

『いいってことよ』



 海の彼方に飛ばした遊撃型が戦いに集中する愛衣へといつの間にか忍び寄り、油断した瞬間に手に持つ二本の両刃鋸による十文字切りを仕掛けてくるが、すんでで愛衣は足さばきだけで躱した。

 蒼太を抑え込みながらも解魔法で全体の動きを掌握していた竜郎により、遊撃型のもくろみは泡と消えた。


 《気配遮断》に《隠密》スキルを併用した自信のあった一撃を躱された遊撃型は、何故躱されたのかと驚愕の表情を浮かべる。

 けれどそんな暇があるのなら、距離を取る事を優先するべきだった。



「さいなら!」

「グボッ」



 腹に鞭の先端を巨大化した投擲を当てられ、完全に意識を失った。


 竜郎相手に四苦八苦している間にワニワニ隊壊滅。

 愛衣を抑える者は誰もなく、もう仲間から支援を受けられる状態ではなくなった事を知った蒼太は《龍燐旋風》を発動。

 着膨れした鱗を吹き飛ばして体の周囲に起こした旋風に乗せて自身を守るとともに、近づく相手を攻撃する事も出来るスキル。

 確かに一匹での戦闘なら守りを固めた方がいいだろうが、それでは攻め手にかけるのではないかと竜郎は思った。


 蒼太は《龍燐旋風》を身に纏うと、頭をこちらに向けてきた。体を空中で大きく波打たせて、空を大きく掻いた。

 空気を切り裂き鱗の旋風を周囲にまき散らしながら、三本角を輝かせ《龍角突進》で迫ってきた。



「そうきたか!」

「クュィイイロロロォーーーーー!!」



 長大な龍が鱗を周囲にまき散らせながら、自ら猛スピードで角を突き立てようと迫って来る中、竜郎は月読の属性体を纏った左腕を前に突き出した。

 すると属性体で出来た竜の左腕が伸びて行き、竜水晶に変化したカチカチの拳が鱗の嵐を弾き飛ばしながら顔面を殴った。


 けれど蒼太はひるまずサッと横にずれると、また《龍燐旋風》からの《龍角突進》で特攻を仕掛けてきた。

 月読の防御なら鱗の嵐は抜けられたが、何枚も鱗を弾き飛ばすと威力は減退し、蒼太に真面なダメージを与えられない様だ。


 ならばと竜郎は背中の翼をはためかせて空へと飛んで、蒼太の突進をかわす。

 竜郎のいた場所に大きなクレーターを作りながら激突。その威力に目を丸くしながら、そっちがその気ならと竜郎は天照のスキルを発動させた。



「頼んだぞ、天照」

「──!」



 赤い竜の右腕を突き出すと、手の平から体は赤、翅は緑という美しい蝶々が無尽蔵に放たれた。

 それを見た蒼太は慌てて《龍燐旋風》を発動させ空へと舞い上がり、周囲に鱗の嵐をまき散らす。

 そんな嵐の中へ蝶々の群れが入り込んでいく。

 一匹、十匹、百匹、千匹と蝶々が嵐の中で翻弄されながらも、飛んでいる鱗に捕まっていく。

 鱗に捕まれば溶けだしていき、羽に鱗が当たれば風が巻き起こり旋風が乱されていく。

 やがて億を越え兆の蝶々が群がると、鱗を蝕み何度《龍燐旋風》を発動しても焼け石に水。一瞬で溶かされてしまう。

 逃げようにも蝶々が球状に蒼太を囲っているので逃げられない。

 《龍力超収束砲》で蹴散らしても直ぐに隙間を埋めるように、新しい蝶々が飛んでくる。

 内部の熱量は相当で、特に頑丈な蒼太でなければ焼けただれていた事だろう。

 こうなればもうアレしかないと、蒼太は《重鱗装甲》をさらに分厚くなる様に念じながらスキルを行使していく。

 するとスキルが1レベル上がり、鱗の層が増えていく。

 これならいけると口内に竜力を溜めこみながら、体に力を込める。そして《龍力超収束砲》を放つと同時に蝶の壁へと突っ込んでいった。

 収束砲で散らし、分厚い鱗を何層も溶かされながら蒼太は何とか突き抜けた。

 しかし──ホッとした瞬間、大きな手の様な物に体の中腹部分を掴まれ地面へと押し付けられた。



「クュィーー!?」



 訳も解らず押し付けられた地面は砂浜ではなく、水晶の花畑だった。

 蒼太はその花畑が何か直ぐに悟り、急いで空へと逃げようとするがその草花が全身を覆って締め付けてくる。

 ならば地面ごと空へと思った所で、顔の前に誰かの気配を感じ取った。



「終わりだ、蒼太」

「抵抗しないでね」



 前に視線を向ければ竜郎は天照の右手を突き付け、愛衣は魔王種結晶を込めた宝石剣を構えて、いつでも頭を吹き飛ばし、首を落とせる状態だった。



「クュィロロロロゥ……」



 これ以上の戦闘は無駄だと悟り、蒼太は悔しそうに口を曲げて地面に伏せた。

 それに竜郎は苦笑いしながら《竜水晶植花》のスキルを解いて解放すると、慰めながら鼻先を撫でた。



「そう残念そうにするなって。強くなったな蒼太、えらいぞ」

「クィロロロローーォオ!」



 先ほどとは一転、自分よりも強い主に力を認められた事が誇らしくなり、それと同時に主の強さに憧れて、もっとこの人の役に立てるように強くなろうと蒼太は誓うのであった。

次回、第375話は12月6日(水)更新です。

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