第363話 魔力体生物組の成長と新たな装備品
レベル20の光と闇での《陰陽玉》では竜王のクラスへ。
極光と極闇での《陰陽玉》では竜帝のクラスへと変化した。
他の部分が変わっていない事からも、カルディナ達も今のクラスに王や帝が付くのだろうと予想できる。
だがまだ、竜郎が試していないことがある。
「という事で神力を混ぜた《陰陽玉》をーって言いたいところなんだが……」
「そっちはなんか上手くいかないんだよね」
「そうなんすか?」
当然そちらでもやって貰えると思っていたアテナは、目を丸くしてコテンと首を傾げた。
「ああ。ぶっつけ本番でやるのは好きじゃないからな。
事前に練習と思って何度もやり方を変えたりして試してみたんだが──ちょっと見ててくれ」
「解ったっす」
見て貰った方が速いと極光と極闇での《陰陽玉》を作る過程で、竜力にさらにプラスして神力を流し込んでみる。
するとパンッと風船が破裂する様な音と共に、莫大な魔力が四方へ霧散してしまった。
「と。このようにだな。ちょっとでも神力を入れようとすると破裂して魔力やら何やらが全部無駄になるんだ。
こんなの例え一度成功したとしても、理由が解らない限りはアテナたちの体には使えない」
「そりゃあ……そうっすね。いきなり爆発してお陀仏なんて、シャレにもなんないっす」
「言葉にすると恐ろしいね。その表現」
何も入っていないただの魔力の塊である《陰陽玉》が消え去る分には、魔力や竜力を無駄にした──程度で済むが、カルディナ達の情報を完全に移植してからバンッでは、もう取り返しがつかない。
リアにも一度相談しにいったのだが、ハッキリした回答は得られなかった。
だが彼女曰く。絶対にできないと言うわけでは無さそうという言葉もある上に、やっている竜郎自身も出来そうな感じはあったので、今後の課題として頭を悩ませていた。
「とまあ、そんなわけで俺も色々研究はしてみるから、そっちはまた今度って事で」
「神力入れたら絶対面白い事になりそうなんすけどね。残念っすけど、我慢するっす」
「ところでさ。話は変わるけど、光闇20と極光極闇だと体に何か違いはあった?」
「そうっすねえ。内包している魔力量は跳ね上がった感じがするっす。後は──」
そこでアテナは《真体化》してみたり、柔軟体操するかのように体を動かしてみながら今の状態を確かめていく。
「ステータスではない素の能力値は確実に上がってるっすね。
それと魔法は常時微量の光と闇の魔力が入り込んで、微妙な強化をしているみたいっす」
指の先で小さな雷光をバチバチ散らしているのを、竜郎の精霊眼で確かめてみる。
「確かにレベル1相当の闇と光の魔力が打ち消し合わずに混ざって、魔法強化をしているようだな。でもこれ位だとほぼ誤差の範囲だが」
「ん~でも、これにあたしの構成魔力を直接流すと──ほら。こんな感じでさらに強化出来るっす」
「おおっ。色が変わったー」
愛衣の言った通り、先ほどまでは精霊眼などで観ない限り解らないレベル変化だったのが、今や黒と白がまだらに混じった雷光が指先を照らしていた。
「さっきの言い方からするに、それは竜力とかではダメなのか?」
「そうっすね。文字通り身を削って強化するって感じっす。
普段はもったいないし、使いすぎると消滅の危険もあるっすから、気軽には使えないっすけどね」
「その方がいいね。今の規模なら問題ないかもだけど、大きな魔法だとあっという間に消費しちゃうだろうし」
「その辺はうまく調節すれば何とかとも思うっすけど、いざと言う時以外は控えておくっす」
粗方新しい体について調べ終わると、アテナは精神的に疲れたのか《幼体化》して小虎状態になると、竜郎と愛衣の膝の上にダイブして甘えてきた。
その愛らしい姿と先ほどの力強い威圧感を放つ女性とのギャップに少し笑いながら、二人でじゃれつくアテナと夕食まで遊んですごした。
それから数日間の間にカルディナ達も自分の新たな属性を決めていき、新たな体と新たなクラスを各々手に入れた。
カルディナは《解魔法 Lv.20》《土魔法 Lv.18》《水魔法 Lv.16》《射魔法 Lv.14》と強化。
新たな射魔法は魔弾などの遠距離攻撃の強化の為に取り入れた。
クラスは疾速刃竜から、疾速刃竜王を経由して疾速刃竜帝へ。
竜王でスキル《飛竜滞空強化》。竜帝でスキル《飛竜加速突射》を手に入れた。
《飛竜滞空強化》は離陸してから地に足を付けずにいる間、ステータスが徐々に強化されていく。だが地面に足をつけると、その瞬間もとのステータスに戻る。
つまり滞空時間が長いほど、飛んでいる間だけ無制限に強くなるスキル。
《飛竜加速突射》は、自身の形をした竜力を突進させ相手に当てるスキル。
これは射出時の速力や勢いに比例して青天井に威力が跳ね上がっていくので、《竜飛疾風》《飛竜滞空強化》での速力強化と《射魔法 Lv.14》による発射速度の上乗せが合わされば、とんでもない威力が叩き出せるようになる。
ジャンヌは《風魔法 Lv.20》《樹魔法 Lv.18》《火魔法 Lv.16》《盾魔法 Lv.14》と強化。
盾魔法はただでさえ高い防御能力を底上げし、その巨体を以って先陣を切って突撃すれば、敵にとっては脅威だろうと考えたからだ。
クラスは破天聖竜から、破天聖竜王を経由して破天聖竜帝へ。
竜王でスキル《聖竜連鉄槌》。竜帝でスキル《竜聖典第一節》を手に入れた。
《聖竜連鉄槌》は自身の拳の形と大きさをした聖なる隕石を連続で落とす。
竜力を込めれば込めるほど落ちていく上に、ジャンヌの大きな拳サイズの隕石がぼこすか落ちてくるので、広範囲に渡って遠距離から殲滅する事が出来る。
《竜聖典第一節》は発動すると一日に一回、一定時間無限の竜力を使う事が出来る様になる。
一節とあるようにSPを払う事で二節、三節と増やす事が出来る。ちなみに二節と三節はまた効果が違うようだ。
奈々は《呪魔法 Lv.20》《生魔法 Lv.18》《氷魔法 Lv.16》《突魔法 Lv.14》と強化。
突魔法は《かみつく》や《竜邪槍》などの強化のために選択。
クラスは滅齎邪竜から、滅齎邪竜王を経由して滅齎邪竜帝へ。
竜王でスキル《竜邪槍・棘》。竜帝でスキル《竜邪典第一節》を手に入れた。
《竜邪槍・棘》は一本の邪槍から枝分かれした棘をイバラのように伸ばし、周囲を埋め尽くす。広域殲滅と足止めに使いやすいスキル。
《竜邪典第一節》はジャンヌの覚えた《竜帝聖典第一節》と効果やSPで新たな節を取得できるのは全く同じで、二節以降から内容が変わってくる。
天照は《火魔法 Lv.20》《風魔法 Lv.18》。
第三属性を最大まで取るために急遽レベルを上げた《突魔法 Lv.16》。
そして《斬魔法 Lv.14》を強化。
突魔法は竜郎の十八番でもあるレーザー攻撃の貫通力向上の為。
斬魔法はレーザーで物体を切断する時などの強化のために選択した。
クラスは殲滅炎嵐奏竜から、殲滅炎嵐奏竜王を経由して殲滅炎嵐奏竜帝へ。
竜王で《極炎嵐世界》スキル。竜帝でスキル《炎嵐蝶群》を手に入れた。
《極炎嵐世界》は以前オブスルの町で出会ったエルフのレーラが使っていた《氷世界》の様な物で、視界に広がる範囲を竜力が持つ限り非常に強力な炎と嵐で焦土と化すスキル。
これで広げた炎嵐を《炎嵐の調べ》で自由自在に操る事も出来るので、フィールドを自身の有利な場に一瞬にして作り変えるスキルだと思ってもいいだろう。
そして《炎嵐蝶群》。
これは見た目は十センチくらいの赤い体に緑の翅をもつ、蝶々の形をした美しいスキル。
だがその体は鉄を軽く溶かす程の熱を持ち、翅は嵐を内包しているので触れれば指が千切れ飛ぶ。
なのでそれが一匹でも肩に止まった日には死を覚悟した方がいいというほど。
そんな物騒な蝶々を何百何千と生み出して指定の場所や者達へ送り込める。
数は調整できるので大雑把に焼き払う事が得意な天照に、小範囲でも強力な威力を発揮するスキルが加わったと思っていいだろう。
月読は《水魔法 Lv.20》《氷魔法 Lv.18》。
こちらも天照と同じ理由で、竜郎が改めて2レベル上げた《打魔法 Lv.16》。そして《生魔法 Lv.14》と強化。
打魔法は竜水晶などで殴る時に、より威力が増すようにと選択。
生魔法は常に竜郎のそばにいるので、いざと言う時に直ぐ回復や復調できるように、奈々が前線に出ても無数に触手を伸ばして回復要員として機能できるようにと選んだ。
クラスは不落水晶竜から、不落水晶竜王を経由して不落水晶竜帝へ。
竜王でスキル《竜水晶世界》。竜帝でスキル《竜水晶植花》を手に入れた。
《竜水晶世界》は氷のように地面やそこに触れている物体などを竜水晶に作りかえてしまうスキル。
これは《竜水晶制御》で好きなように形を変えられるので、有利なフィールドを作ると言う面でも効果を発揮する。
そして《竜水晶植花》。
これは竜水晶から竜水晶で出来た草花を生み出すスキル。
見た目は非常に美しく幻想的で、鑑賞という面だけ見ても素晴らしいスキルと言えた。
……だがその本質はえげつなかった。
このスキルの本質は拠点防衛と言う点において非常に優秀だった。
というのもこの竜水晶の植物は、月読が許可を出した者には本物の草花のように柔らかく、手で千切る事すらできる。
けれど許可を出していない者が触ると、体に向かって伸びてきて絡みつき、そのまま絞め殺す。
硬度は竜水晶そのものなので、一度囚われれば転移魔法やスライムのような不定形の魔物でもない限りほぼ離脱は不可能。
硬すぎて千切れもしなければ、破壊する事も出来ないのだ。
そんな草花を試しにカルディナ城の外壁に生やしてみると、翌日にはハエ捕りテープのように魔物が何体も絡め取られて死んでいた。
その光景を見た愛衣は「魔物ホイホイだね」と、不名誉な呼び名を付けていた。
過剰戦力と言われてもおかしくない程に大幅に強化されたカルディナ達。
そのおかげと言うべきか。強化したのが金軍鶏や小天使、小悪魔達も直ぐに気が付き、姿を見せるたびに最初は大騒ぎをしていた。
ジャンヌの姿を見た爺やに至っては「素晴らしい!」と連呼しながら、その成長に感動し咽び泣いていた。
ただあまりにも大仰過ぎるので、ジャンヌには若干引かれて三日間ずっと落ち込んでいた。
そんな風に魔力体生物組が竜帝のクラスまで上がり、数日が経った頃の事。
最近では規則正しく決まった時間に皆で集まり、朝食の時間を過ごすようにしていた。
いつの間に入手してきたのか、「執事の品格」と言う元王宮に勤めていた執事長が書いた本を愛衣が爺やに渡してからというもの、やたら感銘を受けたらしく竜郎達のお世話をしたがり、給仕をしてくれるのも日常になっていた。
給仕をするとしてもメイドさんの仕事では?とも思ったのだが、うちにはメイドさんもいない上に、本人も毎朝ジャンヌの姿が見られるのが嬉しいらしいのでそのままにしていた。
そんないつもの朝食の時間を過ごしていると、リアから全員へ装備品について報告が上がった。
「カルディナさん達の武器が出来ましたので、お渡ししたいと思います。
なので今日は早めに帰ってきてくださいね、皆さん」
「遂にできたんすね!」
「ええ。今は最終チェック中ですが、見た限りでは問題ないので大丈夫だと思います」
「ピィィィューー!」
「ヒヒーーン!」
アテナは解りやすく毎日まだかなあ、まだかなあといった態度を取っていたので最もはしゃいでいた。
けれどカルディナ達も表には出していなくても、やはり楽しみだったようで早くみたいなとソワソワしていた。
そんな娘たちの様子に、竜郎と愛衣はホッコリした笑顔で見つめた。
リアに言われた通り、いつもより少し早い夕方前に竜郎と愛衣は拠点へと帰ってきた。
急かしてくるアテナに背中を押されながら、最近は竜郎が実験するときに使っていた何もない部屋へと連れてかれた。
部屋へ入ると既に全員揃っており、どうやら竜郎達が最後の様だ。
「遅くなったか?」
「いいえ。ちょうどいい時間ですよ」
「なら良かったよー。それじゃあ、いよいよカルディナちゃん達の装備品のお披露目開始だね」
「はい。では最初は──アテナさんからにしましょうか」
「やったっすー!」
一番待ちきれなさそうにしていた様子にクスリとリアが笑って指名すれば、アテナは無邪気に喜んだ。
その姿に嬉しそうに顔をほころばせながら、リアは《アイテムボックス》からアテナ専用の大鎌をとりだした。
「これがあたし専用の鎌っすね。赤くてかっこいいっす!」
前までは死神のような黒い大鎌だったのだが、赤と言うより深紅に変わっていた。
形も柄の頭部分には魔力頭脳の入った膨らみがあり、刃の形もアテナの癖に合わせたのか、三日月だったのが横に長いL字に近い形に変わっていた。
「赤いのは紅鬼石を使ったからですね。
以前姉さんが戦ったと言う獣人の人から貰った装備を潰して手にいれた物です」
「あーアレね。こうやって素材になってくれたんだから、手に入れた甲斐があったもんだよ」
紅鬼石のみで作られた最高級の剣の元持ち主からしたら、まさかこんなふうに使われているとは夢にも思っていないだろう。
「この紅鬼石は剣術と鎌術の気力に非常に親和性が高い素材ですからね。
そしてさらに切れやすく頑丈で大量のエネルギーにも耐えられるように研究し尽くした比率で、カサピスティの宝物庫でもらった素材などの物質と混ぜて作った紅鬼石合金であつらえています。
なのでアテナさんがどれだけ全力で竜力を注いで振り回しても、これからは何の問題も無くなりました」
「それはいいっすね。けど随分形が変わっちゃったっすから、分化の能力は無くなっちゃったっすか?」
「いいえ。アテナさんもそこが気に入っていた様なので、ちゃんと残るように設計しておきました。
それに分化だけでなく、縮小拡大も出来る様にしておきました。
前までは分けないと小さくなりませんでしたから、一本でいい時も大振りの攻撃になったりしてましたし、逆にもっと広範囲を切りたいのに分化して小さくなってしまっていたなんて事もありましたからね」
「お~良く見てるっすね」
アテナは感心したようにリアを見つめた。
「最初から皆さんの装備品は作るつもりでしたからね。
できるだけスムーズに仕事ができるように意識していただけですよ」
などと何でもない風にリアはそう言うが、この鎌の詳細を聞かずともアテナが使い易いように細かな所まで考えられているのが解る。
だがそれを本人に説明しても当たり前のことだと言うだけだろう。
なので竜郎と愛衣は、ありがとうの気持ちを込めて頭を撫でた。
唐突のことに本人はよく解らずに首を傾げているが、他の皆はその意味が解ったのか微笑ましそうにしていた。
その生温かい空気にむず痒そうにし、リアは話を続けることで切り替えることにした。
「──こほん。それでですね。見てお解り頂けると思いますが、柄の先の部分に魔力頭脳が搭載されています。
そしてそれを起動する時は、竜力を注ぎ込みながら下に引っ張って下さい」
「こうっすか?」
アテナが柄先に触れながら軽く竜力を直接そこへ流しこむと、魔力頭脳を覆っていた金属質な部分が淡く光を帯び始める。
その状態で軽く下へ引っ張るとガシャンと音を立てて柄が伸び、パリンと帰還石が割れる音がする。
魔力頭脳から鎌の刃先まで青い筋が中から透けて見えた。
「これが起動した状態です。帰還石のソケットは魔力頭脳のある膨らみ部分にありますので、使い終わったら補充しておいて下さいね」
「了解っす」
アテナはリアから予備のソケットを受け取りながら頷いたのであった。
微修正の報告を。
カルディナ達と統一したかったので、天照と月読のクラス名の中にあった『之』を消しました。
最近出てきていないステータス表記などは、森へ行く直前に全員分の物を載せるつもりです。
細かい成長度合いが知りたい方がいらっしゃったら、もう少々お待ちください。




