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レベルイーター  作者: 亜掛千夜
第九章 原点回帰編

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第362話 アテナの体更新

 清子さんが産まれ、カルディナ達へ欲しい属性魔法を早い所きめてくれと竜郎が促してから数日が経った頃。

 竜郎と愛衣がその日もSP集めやスキルレベル上げなどから帰ってくると、数日の間に王都へ行って仕立てて貰った、有翼のケンタウロスが着こなせる執事服を身に纏った爺やがリビングでお茶を入れてくれた。



「ありがとう爺や。お茶も私が入れるよりずっと美味しいや」

「恐れ入ります。アイ様」



 礼を言いながら二人でまったりとティータイムを楽しんでいると、アテナが部屋へと入ってきた。

 そして入って来るなり第四属性を何にするか決めたから、レベル20の体にしてくれと言ってきた。



「斬属性にするっす。それが一番あたしの戦闘スタイルに合ってる気がするっす」



 どうやら呪魔法で奈々の様に自己強化するのもいいかとも思っていたようだが、最終的に斬属性にすることを決めたらしい。

 一度決めてしまうとアテナという個を消し去らない限り、属性の決め直しは出来ないのだが、本人はちゃんと悩んだ末に決めたらしいので竜郎とて否は無い。



「そうか。これでリアが作ってくれる装備と合わせれば、鬼に金棒だな」

「何でも斬って見せるっす~」



 現時点でも何でも斬れそうだが、竜郎達が目指している場所を考えればいくら強化したっていい。

 ましてアテナは前衛での戦いを好む傾向もあるので、彼女にとって攻撃力の増加はもっとも望むものなのだろう。



「んじゃあ。アテナを一番最初にレベル20の体に更新しようか」

「やったっす~」



 なるべく集中できるようにとリビングのソファに座り直し、愛衣はコアラのように竜郎の背にしがみ付いた。

 アテナは正面に立ちながら、すぐに体を入れ替えられるように身構えた。

 竜郎は天照を構え、スキル《陰陽玉》をレベル20の光魔法、闇魔法で発動させた。

 愛衣がくっ付いてくれているおかげで今消費した大量の魔力は一瞬で元に戻ったのを感じ取りながら、そちらへアテナの情報を移植し直した。



《幻想闘竜 より 幻想闘竜王 にクラスチェンジしました。》

《スキル 完全通過 を取得しました。》



「おっ。クラスチェンジしたっす」



 変化が無いようならこのまま他の属性魔法のレベルも上げてしまうつもりだったのだが、アテナはそう言いながら一旦元の人型へと戻り、どうなったのかを伝えてくれた。



「やっぱり20でクラスチェンジしたんだね」

「これでしてくれなかったらどうしようかと思っていたが、上手くいったな。

 それで《完全通過》って言うのは、どんなスキルだったんだ?」

「えっとすね~。どうやら物体をすり抜ける能力っぽいすね」

「物体をすり抜ける? 例えば壁が有ってもお化けみたいにスーって通り抜けられるって事?」

「だと思うっす。ちょっと試してみるっすね──うひゃっ!?」

「アテナ!」「アテナちゃん!?」



 と。アテナがさっそく覚えたスキルを発動させるや否や、床に吸い込まれる様に落下した。

 何事かと二人はアテナが吸い込まれた床を凝視していると、直ぐにぴょんと同じ場所から当人が飛び出して帰ってきた。



「いやーびっくりしたっす。特に意識しないで使用すると、床を通り抜けちゃうみたいっすね。地下室に行っちゃったっす」

「それは驚くだろうな。けれどそれは意識すれば制御できるのか?」

「みたいっす。だから例えばこうやって──」



 竜郎達の座っている大きめのソファーにぶつかる様な軌道で前に進んでいくと、幽霊のようにスーとソファーだけを通り抜けて、後ろ側に回り込んでしまった。



「すごいじゃん! それって攻撃とかも通過できるのかな?」

「ただの光レーザーで試してみるか?」

「やってみるっす!」



 アテナもやる気の様だったので色々確かめてみたのだが、基本的に魔力や気力などがたっぷりと籠った物でも透過できるにはできた。

 が、そのエネルギー量に比例して大量の竜力を要求されるので、躱した方が楽だという結果になった。

 ただまだ完全に制御しきれていないが、それが出来る様になれば地中や床に潜りこんで自由に移動しまわり、相手の死角をついたり──などはできそうだった。


 実験が終わると今度はアテナの魔法の更新だ。

 現在竜郎の属性魔法は全て取得できる最高レベルの20。

 物理属性もカルディナ達に第四属性として渡せられる最大レベルの14まで頑張って上げてある。

 なので今回アテナには、《雷魔法 Lv.20》《風魔法 Lv.18》《土魔法 Lv.16》《斬魔法 Lv.14》と大幅に強化する事が出来た。


 けれどそっちではクラスチェンジの兆しは現れなかったので、今度は極光と極闇による未知の領域へと踏み出していく。



「使えなそうな体だと少しでも思ったのなら、無理に移植しようとせずに拒否してくれよ?」

「解ってるっすよ。心配ありがとっす」

「どういたしまして。と言っても、カルディナ達の心配をするのは当たり前なんだがな」

「そうそう」



 愛衣も竜郎同様頷いた。竜郎と愛衣はもう完全に父性と母性に目覚めているので、娘達の心配をするのは当たり前の事なのだ。


 竜郎はまず右手に大量の光の竜力と魔力の竜魔力。左手に大量の闇の竜魔力をそれぞれに捻出して纏めていく。

 どれくらい必要なのか解らないので、かなり多めに作り上げると、今度は極光と極闇へと変換していく。

 変換時に要求される魔力量だけでも、常人なら一瞬で枯渇しそうな莫大なエネルギーを要求されるも、愛衣がくっ付いているので、さして問題も無く魔力と竜力がたっぷり詰まった極光と極闇の魔力がバチバチとスパークをはじけさせながら漂い始めた。

 それが散ってしまわない様に気を付けながら、竜郎は《陰陽玉》を発動させて今作ったばかりのこの魔力を注ぎ込んでいく。


 すると今までの普通の光や闇の時と同じように陰陽玉は完成した。

 ただ今までの時と違い、激しい嵐のようなスパークを周囲にまき散らしていた。



「いけそうか?」

「………………うん。いけると思うっす」



 その力の塊に魅了されたように、アテナはそれから目を離さない。

 本当に大丈夫なのかと思いながらも本人がいいと言っているのだからと、アテナを信じて止めずに見守る事にする。


 アテナがその玉へとそっと手を伸ばし、指先が触れた瞬間──先の床抜けの時のようにスッと吸い込まれていった。

 それを見届けた竜郎は慌てずに慣れた手つきで、アテナの情報を移し換えていった。



《幻想闘竜王 より 幻想闘竜帝 にクラスチェンジしました。》

《スキル 幻想竜杖 を取得しました。》



「またまたクラスチェンジしたっす。大盤振る舞いっす~。クラスは幻想闘竜帝、スキルは幻想竜杖を覚えたっす」

「将棋が強そうなクラスから落語家みたいなクラス名になったね」

「その表現はどうだろうか……」



 言われてしまうとそうとしか聞こえなくなってしまい、ありがたみが薄れてしまったが、覚えたスキルは中々に破格の様だ。



 --------------------------------------

 スキル名:幻想竜杖

 レアリティ:20

 タイプ:アクティブスキル

 効果:一日三種類まで、この杖で触れた物を完全に再現し変化する。

    幻想系統のスキルを大幅に強化する。

    ※他人には貸与できない。

 --------------------------------------



 試しにスキルを発動してみれば、アテナの手には三体の龍が三つ編みの様に絡み合って、天辺部に付いている見る角度によって色の変わる宝珠を喰らおうとする──といった形状の、一メートル半程の杖が握られていた。



「完全に再現か……。それじゃあ、俺の杖とかもできるのか?」

「私の宝石剣とかガブソンとかも?」

「やってみれば解るっす」



 竜郎達が出したのはリアが作った固有のオリジナル装備であり、魔力頭脳が搭載されたオーパーツと言ってもいいほどに何処にもない先進技術の結晶体。

 そして愛衣の言うガブソンは変形型の両刃斧であり、どんな技術者も再現不可能と言われている天装。

 これらを完全に再現できると言うのなら、それは恐るべきスキルと言えるだろう。


 アテナは竜郎と愛衣が並べた天照が入った状態のライフル杖、宝石剣、ガブソンを幻想竜杖でコンコンコンと一回ずつ軽く叩いていく。

 叩くごとに宝珠が点滅していく。



「え~と。それじゃあ、とーさんの杖になれっす~」

「魔法少女アテナちゃんだね!」

「少女って見た目ではないけどな」



 そんな必要もないのにアテナはノリノリで杖をクルクルと回しながら、宝珠を天へと掲げた。

 すると絡み合った龍のうちの一体がズルズルと宝珠の方へと動き始め、ごくりとそれを飲み込んだ。

 幻想竜杖がぴかっと光ると、一瞬で竜郎の持っているライフル杖と天照のメインコアが付いた大きな杖へと形を変えた。



「おーできたっす。うん、魔法補助もガッツリついてて使いやすそうっす」

「ねえねえ。それは天照ちゃんまでも再現しちゃってるの?」

「いや。そこまでは出来てないみたいだな」

「そうっすね。人間はコピーできないみたいっす」

「でも外身が完全に再現されてるって事はさ、そこへ天照ちゃんが入る事は出来るのかな?」



 通常一つのコアを体と認識してしまえば、それ以外のコアには移れないし、他の魔力体生物が入る事も出来ない。

 だというのにソコへ天照が入る事が出来るのなら、それはまさしく完全にこの杖を再現していると言っても過言ではないだろう。


 竜郎の杖のメインコアから天照がふわっと抜けると、アテナが持っている色形は全くそのままのもう一本の杖に搭載されたコアへと移動してみる。

 すると何の抵抗も無くそこへ天照が収まってしまった。



「マジか」

「おおまじっす」



 とはいえ。魔力体生物の入った装備品は、竜郎だからこそ装備として扱えるのであって、他者ではない方がいいと言う状況も起こりうる。

 アテナと天照は同じ魔力を持つ存在ではあるが、思考はまるで違う。

 そんな二人が協力し合って戦う事は出来るが、双方どちらかを──言い方は悪いが道具のように行使するのは難しい。

 なので一瞬の判断が要求されるときには、噛み合わなくなる事もあるのだ。


 そんな理由もある事から天照は直ぐに竜郎の杖へと戻ったが、それでも魔力頭脳の性能だけ見ても最高の装備品なので問題は無い。

 ひとしきり確かめると、アテナは元の三匹の龍が絡み合った幻想竜杖へと戻した。



「思いっきり魔法を使いたい時は使わせてもらうっす。

 んじゃあ、次はかーさんの宝石剣っす。宝石剣になあれ~~っす」



 今度は先とは違う別の龍が宝珠を喰らいに行き、ぴかっと光れば宝石剣へと形を変えた。

 少し竜郎達から距離を取ってブンブンと振り回してみる。愛衣と違って素の身体能力も高いので、剣術スキルが無くても見様見真似でそこそこ様になった動きをしていた。



「いい感じっす。けど使い慣れてる鎌の方が、やっぱいいっすね」

「俄か剣術よりも、気獣技まで使える鎌の方がいいわな。

 そう考えると使い勝手がいいやら悪いやらって感じのスキルだな」

「ねー。突然他人の武器を使うってのは難しいと思うし」



 などとひとしきり感想を言い合いながら最後にガブソンの再現へと移っていく。

 ライフル杖、宝石剣の時には動かなかった三匹目の龍が宝珠を喰らうと、そこにはガブソン瓜二つの両刃斧が出来上がった。

 だが形は取り繕えても、その能力まで再現できていなければ意味が無い。

 即ち刃の背中側を口のように開いて、そこに付けられた牙で噛みつけるかどうか。

 そして天装たるゆえんでもある吸引する掃除機のような不思議能力。


 愛衣に使い方を教わりながら何となくやってみれば、問題なくガシャンガシャンと斧の刃の部分が動いてくれた。



「ここまでは順調だけど、問題は次だね」

「ああ。刃の開閉くらいは現代技術でもできないわけじゃあないらしいしな」

「それだけだと天装なんて呼ばれないだろうっすからね」



 という事でアテナはガブソンモドキを片手に持って前につきだし、屋内なのでそこまで強くならない様に意識しながらゆっくり竜力を注入していく。すると──。



「おっ。発動したっす!」



 離れた場所に置いてあったゴミ箱がスーと吸い寄せられて、アテナの手に持つガブソンの所までやってきた。



「すごーい。天装の能力まで再現しちゃうんだあ」

「これなら使い慣れてなくても、いくらでもやりようは出てくるな。他の天装も今後の為に触っておいたらどうだ?」

「そうするっす~」



 今ある天装のうち軍荼利明王はリアに預けたままなので、他の槍、扇、ハンマーをそれぞれ幻想竜杖で触れていき、いつでも使えるように登録したのであった。

前の話で生まれた清子さん(鳥竜)の魔卵についてなのですが、

その魔卵の複製が出来なかったことについての記述をするのを忘れていました。

なので第360話 種族改造 を少しだけ修正しました。

竜郎だったら絶対に試してみるでしょうし(汗


けれど改めて読むほどの修正ではないので、

軽く「そうなんだな」くらいに思っていただければ問題ありません。

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