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レベルイーター  作者: 亜掛千夜
第九章 原点回帰編

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第347話 豆太頑張る

 今よりもっと強くなろうと決めた二人は、さっそく早起きしてリビングに行き、リアと奈々と一緒に朝食を作りながらその話を伝えた。



「目指せ戦闘力53万だよ!」

「53万?」

「そこはスルーしていいぞ、リア。そういうわけで、俺達は準備が整うまでの間ちょくちょく離れるから、何かあったら《アイテムボックス》で送りつけて知らせてくれ。文字通り一瞬で帰ってくるから」

「転移魔法は本当に便利ですの。リアは転移魔法の魔道具は作れませんの?」

「うーん。一応研究は始めたんですが、今は後回し状態ですし、出来たとしても転移先は固定ですね」

「それでもすっごい便利じゃん。世界中に拠点を建てて、その魔道具を置けば、たつろーがいない時でもあっちこっちに飛んで行けるんでしょ?」

「ですがまだまだ課題は山積みですけどね。理解は出来ても、それを私の手で出来る様にするのは非常に難関。重力魔法もそうですが、それと時空の二つの難易度は他の属性魔法などの比じゃないんですよ」

「使ってる俺もそう思うよ。必要エネルギーに複雑怪奇な構成。天照のおかげで大分楽をさせて貰っているが、それが無かったら未だに使いこなせるようになっていなかっただろうしな」



 天照と魔力頭脳の演算能力をフルに使って最適解を精霊眼で観る。

 そうする事で竜郎は、最短で新しい魔法を自力でも使いこなせるようになっているのだ。

 それが無かったら転移魔法など使いこなせるようになるまでに、それこそ年単位の時間が必要だったかもしれない。

 それを自分のスキルでもない物を再現するという、さらに難易度の高い方法で実現させようとしているのだから、リアには頭が下がる思いだった。



「朝食を頂いたらすぐにでも出発するんですの?」

「そのつもりだよ。面白いモノ見つけたらお土産持ってくるね」

「それは楽しみですの!」



 それから朝食を食べた竜郎と愛衣は、カルディナやジャンヌ達にも出かける事を伝えると、そのまま天照と月読の本体も連れて四人で未だ未開の草原へと足を踏み出した。



「キャンキャン!」

「あんまり先に行くなよー」

「キャンキャン!」

「元気だねえ」



 しかしカルディナ城周辺に現れる魔物は蒼太やワニワニ隊、ワーム隊などの食料源にもなっているので、朝食の時間を過ぎたばかりの頃合いでは平和そのものだった。

 そうなると暇なので、どうせなら人の歩く道を作りながら行く事にする。

 二人だけでただただ道を作るのも味気ないので、豆太も呼んでみた。

 白金のモフモフ毛皮をなびかせて、子供の柴犬そっくりの見た目をした子狼が走って先に行ってしまうのを、二人でのほほんと見つめながら竜郎は仕事をこなしていく。ちなみに練習もかねて豆太は《肉体収縮》を使用中で、子犬程度の大きさだ。


 無秩序に伸び散らかっている草を樹魔法で根ごと枯らし、火魔法で消し炭にして風魔法で吹き飛ばし、土魔法でジャンヌが引く犀車が擦れ違えるくらいの幅を平らにし、押し固め、溝を作る。

 そうして整地した場所へ、月読の生成する竜水晶を水はけを良くするためにやや山形にしてはめ込んでいく。

 その作業のおかげで、月読の《竜水晶創造》《竜水晶制御》のスキルレベルも成長していた。



「道を作るならいつか柵とかもつけて、魔物が横切れない様にもしたいな」

「壊したりは出来ないんだろうけど、魔物の排泄物とかで汚されて欲しくはないしねー」



 常人なら複数人でやる事を一人でこなし、《肉体収縮》で子犬程度の大きさとはいえ魔物の豆太が走るスピードより若干遅いくらいのペースで道を作り上げていく竜郎。

 けれどそれを普通ではないと指摘する人もいないので、当たり前の顔をしてガンガン突き進んでいく。



「豆太! 止まれ!」

「キャンキャン!」

「おーよしよーし」



 どれくらい進んだだろうか、竜郎の探査魔法が魔物の反応を複数捕らえた。

 前を進む豆太を止めると、竜郎達の足元まで戻り「なーに?」とでも言いたげな顔でお座りして小首を傾げた。

 その姿がかなりキュートだったので、愛衣がグリグリと頭を撫でると、ク~ンと鳴いて嬉しそうにしていた。



「前方の茂みに、以前俺達が来たばかりの時にこちらを伺っていた猿の魔物が50体くらい。

 さらにその後ろに第二陣で800体くらいが、俺達を囲むように扇形に位置どっている」

「かなり多いね。強そう?」

「いや。数の暴力で押し殺すタイプなんだろうが……」

「だろうが?」

「さらに一番奥に一際大きなボスっぽい反応がある。こいつはソコソコだな。向こうもやる気みたいだし、SPはこいつからまず貰おう」

「ちっこいのはいいの?」

「そっちは数も多いし面倒だからいいや。ここらにはもっと美味しい魔物がゴロゴロいるんだから、量より質でいこうと思う」

「それもそっか。時間もかかっちゃうし」



 無数の猿魔物に囲まれていると解っても慌てることなくミーティングを終えると、一旦豆太を牧場に帰そうとした。

 けれど「いやいや」と首を振られ、「一緒に戦いたい」という意思を竜郎に伝えてきた。それを愛衣に伝えると。



「別にいいんじゃない? もし危ないようなら私たちがちゃんとフォローしてあげればいいんだし。簡単なトレーニングはさせていたんでしょ?」

「まあな。蒼太たちと違って、手を抜いても勝てる仮想敵しか当ててなかったから、ちょっと心配だが」

「基本私たちの癒し要員だしねえ」

「キャン!」



 愛衣にまた撫でられ、褒められたと思って無邪気に鳴いて喜ぶ豆太に、竜郎はこれも経験だと戦いに参加させることにした。

 となると、もう一体の癒し要員も呼んでみるかと思った竜郎は、シャチ太も呼ぶことにした。

 《空泳》のスキルはシャチ太にとっては苦手な部類なので、未だに水以外での機動力はほぼ皆無。

 けれど近付かれれば強力な近接攻撃も有り、遠距離攻撃もいくつか増やしているので、固定砲台として豆太とタッグを組んでもらう事にした。



「シャチ太もがんばろーね!」

「キュルルゥーー」

「任せてくれだってさ」

「頼もしいねえ。そんじゃま、ボス以外はぷちっと潰しますか」

「ああ。俺はSP補充が目的だから、基本的に後方支援に徹するな。ヤバいと思ったら直ぐに後退してくれよ?」

「解ってるよ、たつろ。頼りにしてるからね」

「おう。任せとけ」



 ニカッと笑う愛衣に竜郎も同じようにして笑い返す。それから敵の近くまで道を舗装しながら歩いていく。

 そしてこちらが気づいている事を伝える為に、シャチ太に頼んで《水鉄砲》を向こう側一番手前に位置している猿に撃ってもらう。



「ギビィッ──」

「一匹死んだ。結構柔らかいな」



 などと言っている間に、向こうは先鋒隊50匹が陣形を取りながら突撃してきた。

 見た目は50センチ程のテナガザルと言った感じ。けれどその手には他種の魔物の骨を削って作ったらしき槍を持つもの、弓を持つものの二種がいた。

 そして先鋒が動いたのを確認した後、後ろの陣も前進し始め大将も続いて前進し始めた。

 弓矢は山形の軌道を描きながらこちらに降り注いでくる。けれどそれをシャチ太が《水噴射》で押しやっていく。



「来るぞ! 豆太もがんばれ!」

「キャンキャン!!」



 後輩のシャチ太ばかりに良い所を持って行かれるわけにはいかないと、骨槍を持った猿達に《氷の息吹き》を吹きかける。

 すると前にいた何匹かが凍りつき動きを止めるが、後ろの個体が凍死した仲間を盾にして迫り長い槍で突いてきた。

 けれど豆太は落ち着いて一匹の槍は躱し、のこり複数体の槍は《氷盾》で受け止める。

 そして避けた槍の持ち主に一気に近寄り《氷爪》を振り下ろし、他の周りにいる個体には《氷棘》で貫いて殺していった。



「いけるじゃん、豆太!」

「キャン!」



 今の技量を見る為に後ろに控えていた愛衣も《アイテムボックス》から天装の両刃斧──ガブソン(がぶっと噛みつき、変わらない吸引力が魅力だからね! by愛衣)を取り出し加わり始め、後からは《水噴射》で弓矢を退け《尾閃》で後方支援をシャチ太が行う。

 竜郎は探査魔法で全体の状況を把握していき、弱レーザーをあちこちに放って場を混乱させていく。

 先鋒隊が完全に混乱し陣も乱れ始めた所で第二陣が合流。

 けれどキーキー鳴いて慌てふためく同胞の焦りが伝播していき、総崩れ。

 控えていた800もの猿たちの大合唱に、耳を塞ぎたくなるのを我慢しながら潰していると、残り300匹ほどになった所で他よりずっと大きい3メートルのボス猿が姿を現した。



「ゴオオオオオオオオーーーー!」



 その大声で統制を失っていた猿たちが冷静さを取り戻し、後退しながら守りに徹して陣を整え始めた。



「さすがボス猿。鶴の一声だな。だがただの猿達じゃ状況を変えられはしないぞ」

「ゴオオオオッ!!」



 竜郎の声が聞こえていたわけではないが猿隊を四分割させ、自分の両脇に整列させて自らも大きな骨槍を両手に突っ込んできた。



『あれは豆太じゃ、ちょっとつらいかな?』

『聞いてみる』



 竜郎はテイム契約のパスを通じて豆太にやれるかどうか、少し離れた場所から聞いてみる。



「キャンキャン!」

『挑戦してみたいってさ。そっちは俺が観てるから、愛衣は雑魚の殲滅を頼めるか?』

『あいよー!』



 竜郎が観ていてくれるなら安心だと、愛衣は左翼に広がる猿部隊殲滅に走り出した。

 今回の目的はスキルレベルの強化。なので大技で一気に消し飛ばすのではなく、出来るだけ多くの手数で屠っていく事に決めた。

 愛衣はガブソンを振り上げ猿の群れに突撃して行くと、蹴散らすように縦横無尽に振り回して切断し、背を向け逃げ出そうとすれば天装の能力を使って吸い戻して斧を変形させて《かみつく》。

 そんな事を何度も繰り返し、何度かレベルアップのアナウンスを耳にしながら左翼部隊を圧倒的な力で潰し終わる。

 ジャンプしてボス猿の頭を飛び越え右翼の頭上からガブソンを叩きつけるように着地。

 数十体が消し飛ぶ中で、また愛衣はひたすら殲滅作業に戻っていった。


 そして少し時を戻して豆太。彼はボス猿を威嚇するように吠える。

 けれど小さな子犬にしか見えない愛らしい外見に、ボス猿は軽く捻って後ろのシャチ太に向かおうとした。

 けれど振るう二つの大槍を軽やかに躱され、それどころか避けられる度に《爪襲撃》を放たれチクチクと傷を刻まれていくしまつ。

 ボス猿は見た目からして強そうなシャチ太に、全力を出すために残そうとしていた力を少しだけ解放することにした。



「──ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!!」

「──ッ!?」



 スキル《恫喝どうかつ》。ただ大声を上げて、格下の相手を怯ませる技。

 改造されたおかげで、豆太は等級4相当のボス猿を超える種子は宿している。

 だがいくら強化された状態で生み出された豆太といっても、元の等級はさほど高くない。そして生まれてそれほど時も経っていないのでレベルもまだ低く、その萌芽には至っていない。

 その為まんまと嵌ってしまって動きが一瞬だけ止まってしまう。


 そして一瞬あれば今のボス猿なら豆太を殺す事が出来る。

 ボス猿のスキル《筋力増強》が発動し、3メートルの巨体が持つ筋肉が風船のように膨らみ、二本の大槍を杭打ちするが如く豆太に振り下ろした。

 それは確実に豆太を屠る二撃だった。ボス猿も口が歪み喜色の笑みを浮かべた。

 ──だが。その二撃が当たる前に、横から白と黒のボディを持つ、流線型の巨大水棲哺乳類が《突撃》してきた。



「──ゴッ!?」

「キューイッ!」



 ボス猿は横向きにすっ飛び転がりながらも、あの動きが遅いデカブツが何故。とでも言いたげな顔で態勢を整え直し周りを見れば、宙を浮かぶ巨大水槽の様な水の通り道に囲まれていた。



「豆太。落ち着いて動け。お前の多種多様なスキルを生かせば、勝てない相手じゃないはずだ。豆太に有利な状況に持ち込めばいいんだ。解るな?」

「キャンキャン!」

「よしフォローはシャチ太がしてくれる。思いっきりいってこい!」

「キャン!」



 竜郎と月読で作った水の通り道を《高速水泳》で動き回り、ボス猿をシャチ太が翻弄している間に竜郎は豆太に作戦を授けた。

 それに大きく頷くと、豆太はボス猿にまた挑みにいく。それと同時にシャチ太が距離を取る。

 ボス猿は逃げられる状況でもないので、とりあえず豆太を倒そうと息を吸い再び《恫喝》で動きを止めようとしてくる。



「キャン!」

「ゴボ──」



 けれど豆太は開いた口の中に《氷礫》を投射して、強制的にやめさせる。ダメージに繋がらなくても、要は発動さえされなければいいのだ。

 そのまま一気に肉薄し筋肉がしぼみ始めたボス猿の周囲を、槍を躱しながら駆け巡り《氷の息吹き》を放っていく。

 動きも素早く、そんな攻撃は当たらないとばかりに《氷の息吹き》を余裕の表情で躱していくが、豆太の目的はボス猿に攻撃を当てる事じゃない。

 そして何度目かの《氷の息吹き》を放った時に、その目的をボス猿は理解した。



「ゴッ──!?」

「ウウウゥゥゥ~~……キャン!」



 よく見れば地面には氷が張られ、ボス猿は足を滑らせ右肩を下に体勢を崩す。

 その転ぶ先に豆太は、既に準備していた《氷棘》を設置し相手の自重を利用して右腕に深々と突き刺した。



「ゴガアアアッ──!」

「ウウゥ~キャンキャン!」



 さらに豆太は《疾走》と《氷歩》で氷の上を自在に駆け巡り、倒れているボス猿の目に《ひっかく》《氷爪》《爪襲撃》を混ぜた強力な一撃を直接あびせる。

 するとボス猿の目は潰れ、視界は完全にふさがれる。


 その間にも豆太は地面に《氷の息吹き》を放って、自分に有利なフィールドを厚く強固なものにしながら、相手が足を滑らせればその先に《氷棘》を設置。

 動きが止まれば《ひっかく》《氷爪》《爪襲撃》の合成スキルで鼻を耳を順次潰し感覚器官を減らし、口を開ければ《氷礫》で黙らせる。

 ボス猿は最後の瞬間まで闇雲に《筋肉増強》も併用して大槍二本を振り回すが、最後には両足首の後ろの腱を断ち切られ、右腕は千切れ、左手もズタボロの状態で地面に倒れ伏した。



「キャンキャン!」

「よくやったぞ!」

「さすが豆太ちゃん!」

「ク~~ン」



 二人に撫でられ嬉しそうにする豆太に頬を緩めながら、竜郎は《レベルイーター》をボス猿に使った。



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 レベル:66


 スキル:《統率 Lv.8》《槍術 Lv.8》《弓術 Lv.2》

     《嗅覚 Lv.4》《筋力増強 Lv.3》《恫喝 Lv.6》

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(一応《弓術》も持っていたのか。にしてもスキルも少ない上に、ただの脳筋タイプで助かった。

 おかげでスキルの多様性で勝る豆太でも何とか勝てたし、本人も思いっきり戦えて嬉しそうだ)



 そうして竜郎はSP(112)も手に入れて、ここまで頑張った豆太が止めを刺した。

 それによりだいぶレベルが上がったようだが、息を切らせて地面にゴロンと転がった。



「だいぶお疲れみたいだね」

「ああ、ゆっくりお休み。豆太」

「ク~~ン」



 疲れてしまったようなので、竜郎は優しく一撫でしてから豆太を牧場へと送り返したのであった。

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