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レベルイーター  作者: 亜掛千夜
第八章 帰界準備編

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第338話 ジャンヌ、奈々の新スキル

 竜郎の《復元魔法》でだいぶ時間を取ってしまったが、今度はジャンヌの《風閃斬存》のお披露目である。

 ジャンヌは自分専用武器の巨大ハルバートを取り出すと、それを両手に握る。

 そして《斧術》を意識しながら《風閃斬存》を起動し縦に振り下ろす。

 ブオンッともの凄い風切音を響かせながら、地面に刃先がめり込んだ。


 それは一見して、ただ地面にハルバートを振り下ろしただけに見える。

 けれど竜郎の精霊眼、カルディナの解魔法、リアの《万象解識眼》にはハッキリと風魔法と斬撃が混ざった力の線が、縦に一本残っているのを捕えていた。

 そのままジャンヌは舞うかの如く巨大なハルバートを振り回していき、肉眼では見えない線を描いていく。

 そうしてからジャンヌが動きをとめてハルバートを地面に降ろすと、彼女の目の前には幾重にも重なった風の斬撃の線だけが残された。



「ヒヒーーン」

「ピィュー」



 ジャンヌが何やらカルディナに向かって話しかけると、頷きながらカルディナは土魔法で大きな土人形をジャンヌの前に魔法で造りあげた。

 そして地面を滑るように土人形は斬撃の線に向かって飛び込んでいく。

 やがて土人形の体が線に触れると一閃。触れた斬撃が一斉に襲い掛かり、木っ端みじんに切り裂かれた。



「斬撃を空間に残しておけるスキルか。これも面白いな」

「ヒヒーーン」

「残しておくだけじゃないそうですの」

「ほうほう。みしてみして!」

「ヒヒーーン!」



 愛衣にキラキラした目を受けられたジャンヌは、俄然やる気を出してハルバートを構え直す。

 そしてまたカルディナに巨大土人形を造って貰うと、その周りを歩きながら、クルクル高速でハルバートを振り回す。

 すると土人形の周りには、隙間なく大量の斬撃の線が刻まれた。

 これで準備は完了だとばかりにハルバートを降ろして、竜郎達の見ている場所まで戻ってきた。



「ヒヒーーン!」



 戻って来るなり一声鳴くと、それまで止まっていた斬撃が動き始め、四方八方から一斉に土人形めがけて飛んでいき、あっという間に木っ端みじんにしてしまった。



「おおっ、かっちょいいっす!」

「ほんとほんと! かっこいいよ、今の技!」

「ヒヒーーン♪」



 アテナと愛衣に絶賛されて、ジャンヌは嬉しそうに尻尾を振って喜んだ。



「任意のタイミングで飛ばす事も出来るのか。これって一斉にではなく、一つだけ動かすって事も出来るのか?」

「ヒヒン!」



 ジャンヌは力強く頷いて肯定の意を示す。



「それは便利だな。自分がその場にいなくても、あちこちから好きなタイミングで斬撃を飛ばしていけば、一対一の状況でも複数対一に近い戦況に持って行く事も出来そうだ」

「一撃一撃も強力ですし、例え視認できるスキルを持っていても対応するのは難しそうですね」



 その後も何度か実演して見せたところで、ジャンヌはハルバートを自分の《アイテムボックス》にしまい直した。



「よし。これで近々で済ませておきたいことは終わったし、心おきなく拠点づくりについて話し合えるな」

「おー!」



 と。愛衣が元気よく返事をしたところで、それならとリアから提案を出された。



「この周辺の大雑把な地形を紙に書いた後に、それを見ながら話し合った方がよくないですか?」

「それは言えてますの。何処に何を造るのか決めやすくなりそうですの」

「そこで私が空から見た光景を、この水晶玉で写してみようと思います」



 そう言いながらリアが取り出したのは、王城の宝物庫で貰った頭の中に描いたものを魔力で造りだした紙に映し出す水晶玉。

 それであるのなら見たままの光景を一瞬で紙に写せるのだと言う。

 スマホでの写真では画面サイズに問題があるが、これなら大判の紙も作れるそうなので皆で一斉にみることも出来るとの事。


 ならさっそくばかりに《真体化》した奈々がリアを抱え、空からの魔物対策でカルディナが周辺を警戒した状態で、リアは水晶玉を手に持ち空へと上がっていった。

 見たままを簡略的な地図として、水晶玉から一分もしないで巻物の様な形で紙が排出されていく。

 それを奈々に抱えられた状態で広げ、もう一度眼下の風景と見比べて問題ない事を確かめると、リアは下に降ろしてもらうように指示を出した。



「これが、この辺一帯の大まかな地図です。これを見ながら何処をどうするか決めていきましょう」

「一瞬でこんな地図が出来るんだな。便利なもんだ」

「ほんとほんとー」



 竜郎と愛衣は感心したように出来立てホヤホヤの──文字通りわずかな熱を帯びた紙を地面に広げた。



「いずれは私達の敷地全部の見取り図などを、誰でも見られるように作りたいですね」

「マップ機能をもってるのはたつろーだけだし、そういうのも作っておいて損は無いだろうしね」

「それに俺のマップ機能も大雑把な平面地図だからな。この紙に書いてある様な、一目で地形が解る様には出来ていないし見れるのならこういう奴の方が俺もいい」

「マップ機能を拡張したら、もっと細かく見れる様になるんすかね?」

「かもしれないな。拡張されていった先にどんな機能が有るかも気になるし、今後の候補に入れておくか──っと、ちょっと話が逸れたな。先に進めようか」



 まだ何もできていないただの魔物の巣窟の地図よりも、帰ってから安心してこちらに来られる拠点作りを優先しておきたい。そんな当初の話題を思い出し、竜郎は話を元に戻した。



「まず俺としては、魔物も人間も入って来れない様な強固な部屋を作って、そこを今後俺達の世界と行き来するポイントにしたいと思っている」

「こっちに戻ってきたらいきなり魔物と遭遇ってのも面倒だしね」

「そういうことだな。その部屋を作るのが第一条件として、後は各々好きな条件をあげていこう」



 そこで出た意見はと言えば、竜郎は皆で集まって寛いだり遊んだりできる場所。愛衣は海を一望できる展望台。カルディナは高い場所で休める所。ジャンヌはスチーム爆弾風呂。奈々はウォータースライダー。リアは自分の工房と広いキッチン。アテナはモコモコした絨毯が引かれた、丸くなって寝転びやすい場所。天照と月読は、属性体と言う自由に動かせる体を手に入れたので、運動のできるアスレチック場。

 などなど一部(ジャンヌ)竜郎や愛衣が首を傾げる物はあったが、以前マイホームを作る時にそれほど関心の見られなかったカルディナ達も、長く存在してきて欲が出てきたようだ。

 これはいい傾向だなと竜郎は密かに喜んだ。



「じゃあ後は場所決めして、空いたスペースはまた考えるってとこなんだが、帰還ポイントは地下とかがいいか」

「ちゃんと周囲を頑丈に作れば一番侵入が難しそうですし、それが一番無難ですの」



 奈々以外も竜郎の意見に賛成の様で特に異論は出てこなかった。

 ということで帰還ポイントは拠点地下中央に配置することが決まった。



「となると次に重要なのはリアの工房だな」

「キッチンも重要だよ!」

「えっと、私のですか?」



 なんで? とでも言いたげな顔で首を傾げるリアに、逆に何故と言いたくなる竜郎達。



「いや。俺達の意見は基本自分の為だが、リアのは他の皆にも繋がる重要案件だ。

 リアが望むなら、この辺一帯全部工房とキッチンにしてもいいぞ」

「いや、そんなに大きいのはいらないですって兄さん……」

「でもさでもさ。たつろーのは大げさだけど。それぐらいリアちゃんの作るご飯は美味しいし、装備品も凄いから助かってるんだよ。だから遠慮しないでね」

「ふふっ。まず食が出てくるあたり姉さんらしいですね」

「ご飯は大事だよ!」

「そうだ。美味いご飯は特にな!」



 もうすっかりリアに胃袋を掴まれた二人は本気の目でそう言い放った。

 他からしたら十分凄いのに、チート人間たちに囲まれているせいで今一その感覚が鈍っていたリアも、そこで少し自分の評価を上げることが出来たようで、遠慮することなく広い工房を希望することに決めた。


 そんなこんなで大体の間取りやら他のメンバーの希望を取りいれていった結果、その拠点は豪邸の域を超えていき、最早城ともいっていい規模まで膨れ上がってしまった。



「さすがに広くし過ぎたか?」

「お掃除が大変そうだね……どうしよっか?」

「でもこれが出来れば完璧ですの。──あっ、なら私が労働力を確保しますの!」

「労働力? それはいったいどうやって集める気なんですか? ナナ」



 やけに自信満々に言い放つ奈々に、こんな所に誰が来てくれると言うのだと疑問を投げかけるリア。

 けれど奈々はバッと立ち上がると、こう言い放った。



「そんなの決まってますの。この前取ろうかどうか迷っていた、《死霊竜術》を取得するんですの!」

「ってことは、アンデットにメイドや執事みたいなことをやらせるって事っすか?

 あははっ、幽霊屋敷っすねそれ! 面白そうっす」

「夜にちょっと出歩くだけで、本格肝試しが開催できるね!」

「ゾンビやスケルトンなんかを、自分たちの城の中に徘徊させるのはちょっと……な?」



 アテナや愛衣には好評なようだが、竜郎、リアには不評な様子。奈々は少しションボリした顔で大人しく座った。

 なのでそれをフォローするために竜郎が言葉を選んでいると、横からカルディナが「ピィーピィーピュー」と鳴いて意見してきた。



「なら《死霊竜術》を取ったら、《魔族創造》を取得すればいいって言ってるっす」

「その手がありましたの! さすがおねーさまですの」

「ピィュー」



 などと奈々は感激したようにカルディナに抱きついて、感謝の気持ちをダイレクトに伝えた。それにカルディナは「それほどでもないわ」と、背筋をぴんと伸ばしてお姉様風をびゅーびゅー吹かせた。

 けれど以前カルディナ達はどんなスキルを覚えたらいいかと言う話し合いをしていた時に、ちらっとスキル名が出てきただけなので、愛衣は今一良く解らずに隣で顎に手を当て検討中の竜郎へ問いかけた。



「たつろー、《魔族創造》って?」

「五体か十体のアンデットを生贄に、天魔の邪なる方に属している魔物の配下を造りだす、邪竜系統のスキルだな。

 んで造りだした魔物は創造者に絶対服従っていう」

「ああ、そゆことね。つまりその辺の魔物とかの死体でゾンビを造って、直ぐに《魔族創造》で生きてる魔物に造り変えて、メイドさんと執事になって貰おう──って事でOK?」

「だと思う。魔物だから喋ったりは出来ないだろうが、単純作業くらいは命令すれば出来るはずだ。それなら人型の魔物も簡単に造れそうだし良いかもな。

 ってことは俺の方でも仕事がこなせそうな形をした魔物をテイムすれば、魔族と合わせて作業効率も上がりそうだ」

「ということは取ってみてもいいですの? おとーさま」

「ああ。奈々が取りたいって言うのなら、もとより反対意見なんて言うつもりはないよ。だから好きにしていいんだ」

「なら取るですの!」



 そう言って奈々はスキル取得欄を出すと、《死霊竜術》にSP(10)。《魔族創造》にSP(12)を払って取得していった。

 そんな妹を見つめていたジャンヌは、竜郎に鼻をツンツンと当てて何かを言いたそうにしていた。



「どうしたんだ、ジャンヌ?」

「ヒヒーーン。ヒヒーーーン。ヒヒーーン」

「えっと、奈々姉がそれを取るんなら、ジャン姉も《聖竜の祝福》と《天族創造》を取りたいって言ってるっす」

「ああ、そういうことか」

「どういうことだ?」



 またまた度忘れした愛衣に竜郎が説明する。

 それによれば《聖竜の祝福》は、無機物を一時的に聖なる物質に変換するスキル。

 そして《天族創造》は聖なる物質を五個か十個を材料に、聖なる方に属した天魔の魔物を造りだす聖竜系統のスキル。



「つまり石ころとか金属にジャンヌちゃんが祝福をして、それを使って天使的な魔物を造りだすと」

「奈々のとほぼ同じで、真逆って感じだな。ん~俺の《強化改造牧場》と合わせても足りそうだが、それはそれでいいかもな。取りたいなら取ってみてもいいんじゃないか?」

「ヒヒーーン!」



 そうしてジャンヌも奈々に遅れてスキル取得欄を出すと、《聖竜の祝福》にSP(10)。《天族創造》にSP(12)を払って取得していったのであった。

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