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レベルイーター  作者: 亜掛千夜
第八章 帰界準備編

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第336話 ビーチ強奪作戦

 天照と月読関連の事で思っていた以上に時間がかかり話も広がったため、気が付いた時にはお目当ての土地が近付いて来ていた。

 竜郎とジャンヌのスキルカードについては降りてからに予定変更して、今は窓から見えてきた自分たちの土地の風景を眺め始めた。



「見えてきましたよ。──凄い、あれ全部が私たちの土地ですか」

「デッカイお城を、いくつも建てられそうですの」

「そんなにお城ばっかりは、いらないっすけどね~」



 天照たちの話の最後の方は雑談の様になっていたので、小トラ状態で寛いでいたアテナだったが、彼女も気になるのか《成体化》して窓から外を眺め始めた。

 そこから見えるのは小さな山や針葉樹の森が広がる地帯。それを抜けた先には広大な草原が広がっていた。

 さらにその先へと進んでいき目線を向ければ、崖になっている所や白い砂浜があり、美しいスカイブルーの透き通った海が広がっていた。



「すげっ」「すごっ」



 竜郎と愛衣はほっぺたをくっ付け合うようにして窓にかじりつき、美しい光景に感嘆の声が漏れた。



「ほんとにこれ全部を俺達で独占していいのかよ……」

「けどそのためには、先客達に立ち退いてもらう必要がある様ですけど」

「あー。何か海の近くにちらほらいるね。今いるのは……でっかいワニさん?」

「ワニと言うより、もはや恐竜の様にもみえますの」



 砂浜には現在、日光浴でもしているのか、12メートルはあろう青色のワニたちが並んでうつぶせに寝転がっていた。

 その光景は壮観で数にしたら10匹以上。



「さっすが危険域と言われて恐れられているだけはあるっす。確かにあれじゃあ普通の人間だと直ぐに胃袋の中っすよ」

「見かけ倒しってことも無さそうだしなあ……?」



 この世界にくる前の竜郎なら、この光景を見ただけで恐怖していただろう。

 けれどそんな光景でものほほんと見ていられる状況に違和感を覚え、竜郎は少し不安を感じた。

 魔物と戦い、人殺しまでしたこともあった。そんな自分が本当に元の世界で上手くやっていけるのかと、いざ帰界が近づいてきたせいかそんな事が脳裏をかすめる。

 するとすぐ横にいた愛衣も同じだったのか表情が暗くなっていた。

 竜郎が見ている事に気が付いたのか、直ぐに元の明るい表情になり、おどけて誤魔化すように、けれど他の皆には聞かれると恥ずかしいのか念話を送ってきた。



『なんだか色々変わっちゃったね、私達。帰ってもちゃんと暮らせるのかな?』

『確かに良い事も嫌な事も含めて俺達は色んなことをこっちで経験したし、変わった所も多いけど──』



 竜郎はそう言って繋いでいた手を目の前に持ってきて微笑んだ。

 何を不安になっていたのだろうと、竜郎は手に伝わる温もりに心まで温められた。



『でも一番大事な所は変わってない。俺は愛衣が好きで、愛衣が俺を好きでいてくれるのなら、俺達二人が一緒なら、どんなに変わってもどんな世界にいったって、やって行けるさ。今回だってそうだっただろう?』

『──そっか。そうだよね。うん。私も竜郎が隣にいてくれるって思ったら、不安なんてどっか行っちゃったよ』

『なら良かった。それじゃあ、俺達の新天地に行くためにも、いっちょワニ退治デートでもしませんか?』

『ふふっ。色気のないデートだこと。でもいーよ。一緒にやれば何だって楽しいんだからさ!』

『ああ!』



 そうして二人は一緒に手をつないだまま立ち上がる。

 それが合図とばかりに奈々たちも装備を身に着け立ち上がった。



「それじゃあ、まずはビーチ強奪作戦開始だ」

「おー」「はいですの」「はい」「了解っす~」



 人間の取り決めでは竜郎達の場所かもしれないが、魔物からしたら関係が無い。

 なので魔物から場所を強奪しに行くべく、皆で巨大ワニ達が寝そべる砂浜めがけて飛び降りて行く。

 竜郎は愛衣をお姫様抱っこして、月読に広げて貰った翼で飛行しながら突撃して行く。

 向こうも地表五十メートル付近まで近づいた頃に気が付き始め、こちらを伺うようにしながらもジリジリと四本の足で落下予定ポイント付近へと歩み寄り始めた。



「──地面の中にも何かいるみたいだから気を付けてくれ!

 あと卵を造りたいから、出来るだけ脳と心臓を破壊しないで殺してくれ!」



 探査で砂浜の中を調べると推定十メートル近い長さの巨大なミミズらしき反応が有ったので、大声で全員に伝えた。

 それに全員が反応したところで、いよいよ戦闘開始だ。

 竜郎が着地すると同時に、鱗に傷がたくさんついた歴戦の風格漂う軍曹ワニが一体。まだ新しそうな鱗を持つ新兵ワニが二体、それぞれ大口を開けて《突撃》で飛び込んできた。

 奈々たちにも同じような数で飛び込んでいる辺り、こちらの異様な威圧感を察して複数体で一人ずつ殺していくつもりらしい。



「「「グォオオオオッ!」」」

「ところがどっこい──てな」



 しかし竜郎と愛衣のいる場所にたどり着く前に光、火、時空の混合魔法により、ワニたちの首の真上から熱光のギロチンが突如現れ、三匹同時に切断した。

 いきなり分断された体は地面にベシャと落ち、巨大な頭だけが勢いのままに飛んできた。

 それを月読が触手を出して受け止めていると、砂浜の中に潜んでいた何かが飛び出してきた。



「ワームって奴かな。って、それは私たちが倒した奴だよ!」



 直径一メートルほどの太い胴を持ったオレンジ色のミミズの様な魔物が二匹、先端の円形の口をパックリとあけて巨大ワニの死体を持ち去ろうとしてきた。どうやら漁夫の利を狙ってくるタイプの魔物らしい。

 けれどそちらには竜郎の欲しい心臓が有るし、ただでくれてやるつもりもない。

 愛衣は王城の宝物庫で貰ったばかりの金色の両刃斧を取り出すと、一気に気力を注入。両刃の斧の先端をワームに向ける。

 一定量以上の気力を感知すると、柄先の短く尖った部分に黒く小さな球体が出来上がり、掃除機の様に吸引し始めた。

 その吸引力は注いだ気力量に比例して強力になり、ワニの死骸を飲み込もうとしていたワーム二匹が無理やりこちらへと、地面に入っていた残りの体ごと引きずり出され飛んでくる。



「どっせい!」

「ピシャーーーーー!?」

「よっこいしょー!」

「ピシーーー!?」



 いい感じに勢いが付いた所で吸引を止め、けれど慣性に従って飛んでくるままに、愛衣は斧術の派生スキル《重量増加》も使い、上から下へ橙色の気力が馬鹿みたいに漏れ出している両刃斧を振り下ろす。

 すると丸い口を縦に切り裂き、同時にそこから前に向かって橙色の可視化された牛の四本脚が飛び出して、巨木の幹の様に太いワームの体を沿うように踏みつけグチャグチャに潰して轢殺していく。

 数瞬遅れて飛んできたワームに対して愛衣は、H型についていた両刃の斧刃に気力を流しながら命じて変形させ、∀型に先端を開かせると内側についた三本の牙から灰色気力が吹き出し、一瞬で狼の巨大な頭部が現れてそれを喰らった。

 一口で前半分を噛み砕かれ、吸い寄せる力でさらに引き寄せて二噛み目で全身をかみつぶし、元の形にガシャンと戻した。



「かっこいいな、その武器。斧術と噛みつくの獣術両方使い分けられる上に、強力な吸引力も出せるとか便利すぎだし」

「でしょー。一目見た時からビビッときたんだー!」



 そんな事を言っている間にも死骸を食べようとワームが何体も地面から生えてくる。

 見守っていたものや海からも残りの巨大ワニが殺到し、水鉄砲や尾閃などの遠距離攻撃まで使ってくる。



「大量だ! ワニの魔卵がたくさん作れるぞ!」

「ワーム君はいらないの?」

「等級次第で合成素材に使おうかな。見た目がキモいから、そのままの状態では牧場に入れたくない」

「そりゃそうだ。んじゃあ、残りも一気に片付けよっか!」

「おう!」



 空からはカルディナとジャンヌも下へ向かって、魔弾や収束砲などを撃ち加勢してくれる。

 奈々たちも危なげなくワニとワームを処理していき、十分もしない間に大乱戦と化した場に静寂が戻った。多くの魔物の死骸を積み上げながら。



「おつかれさーん」



 元レベル7ダンジョンに入る前の竜郎達では苦労していただろう数と力を持った相手ではあったが、今や少し大きなイモムーくらいの感覚で狩りつくし終る。

 砂浜の先にある草原地帯の陰からこちらを観察してくる魔物はいるが、本能的に危険だと思っているのか、機をうかがっているのか仕掛けてくる様子はなかったので、今は放っておこうと視線をそらすと少し後方に下がって行った。

 なので気にもしないで竜郎は、先ほどのワニから二匹ほど強そうな個体を捕まえて、瀕死の状態で拘束していたものに近寄っていく。



「頂きます」



 虫の息で目だけをこちらに向けてくる巨大ワニの一匹に向かって、竜郎は黒球を吹き付けた。



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 レベル:62


 スキル:《かみつく Lv.8》《引っ掻く Lv.3》《水泳 Lv.5》

     《突撃 Lv.7》《統率 Lv.3》《水鉄砲 Lv.4》

     《尾閃 Lv.3》《巻回 Lv.5》

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(強そうな個体を選んだとはいえ、結構なスキル持ちだな。

 個人的には《巻回けんかい》ってスキルが気になるが、多分これと《かみつく》を併用することで、いわゆるデスロールになるんだろうな。

 一度も見ずに終わったからハッキリとは解らないが──と、終わったな)



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 レベル:62


 スキル:《かみつく Lv.0》《引っ掻く Lv.0》《水泳 Lv.0》

     《突撃 Lv.0》《統率 Lv.0》《水鉄砲 Lv.0》

     《尾閃 Lv.0》《巻回 Lv.0》

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 そしてもう一匹からもレベルを貰うと、一匹の半分に分割されても生きているワームにもやっていく。



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 レベル:38


 スキル:《丸飲み Lv.5》《土泳 Lv.5》《気配隠蔽 Lv.2》

     《強消化液 Lv.1》《振動感知 Lv.3》

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(コイツも町付近の魔物と比べたらかなり強いな。この辺じゃ弱い方になるだろうが。

 スキル構成的に地中で獲物が来るまで待ち伏せて、丸のみして引きずり込んで、消化液で止め。ってところか。

 にしても《土泳》。どうりで掘った土も出さないで、ヌルヌル土の中を動き回れるわけだ。使いようによっては便利かもしれないな、この魔物。気持ち悪いのが難点だが……育てようか育てまいか悩ましいな)



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 レベル:38


 スキル:《丸飲み Lv.0》《土泳 Lv.0》《気配隠蔽 Lv.0》

     《強消化液 Lv.0》《振動感知 Lv.0》

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 竜郎自体は一番レベルも高いので、個体レベルだけは残して他の子たちにあげた。

 順次経験値となって死んでいく魔物達の死骸もまとめて《無限アイテムフィールド》に入れていく中で、いくつくらい卵が作れそうか計算し始めたのだった。

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