第335話 天照、月読のレベル上げ
一国の王が自分達に熱い思いを抱いているとは露とも知れず、彼らは早速とばかりにジャンヌが背負う空駕籠に乗り込み、この世界における最高の拠点を築くべく、危険区域と恐れられる場所まで飛んでいく。
「王都ももう少し観ておきたかったけどねー」
「ああ、でもとりあえず俺達は帰るための準備が優先だからな。
拠点を作って土地の整備を大雑把に済ませたら一旦帰って、向こうで落ち着いたら、またこっちに来たらいいさ」
「その時はデートしようね♪」
「そうだな」
シートは人数分ちゃんとあるのに頑なに一緒の席に座る二人は、そんな事を言いながら指と指とを絡ませながら手を繋ぎ、窓から見える小さくなっていく王都を見つめキスをした。
そうして落ち着いた所で、まだ到着まで少し時間が有るので先ほど手に入れた物品をさっそく使ってみることにした。
具体的に言えば竜郎とジャンヌのスキルカード。天照、月読の50レベル越えのアイテムである。
前者はいつでもできるのでとりあえずおいておくとして、今は後者を優先することにした。
「といっても、まだ二人はクラスが決まってないんだが。先に何かしら取ってからやった方がいいのか?」
「えーと、私に聞かれても解りませんよ兄さん。というか、クラスも決めないでレベル49に至れる時点で本来ありえないですからね。この世界の誰も知らないと思いますよ」
「だよねー。カルディナちゃん達だったらそれも出来たんだろうけど、結局は先に何かしら覚える事になってたし……どうしよっか」
「試しにやってみたらいいのではないですの? 少なくとも弱くなる事はないでしょうし」
「それは言えてるっす。そんで、とうの二人はどっちがいいんすか?」
どちらにするにしても本人の意思が重要だ。どちらを選ぼうとも尊重すると竜郎が伝えると、どちらも今すぐを選択した。
「どちらも今すぐか。解った。やってみてくれ」
竜郎の言葉に反応してピカピカコアを輝かせると、開花の石を自分たちの《アイテムボックス》から取り出した。
そしてそれに触れながら使うように念じると石が半分に割れる。すると中から光るビー玉サイズの光が飛び出して、二体の本体が宿るコアに吸い込まれるようにして消えて行った。
《《『レベル:50』になりました。》》
《《称号『天衣無縫』を取得しました。》》
などというアナウンスが天照と月読に入ると、そこから別々にもう二つ聞こえてくる。
天照には
《スキル 竜の息吹 Lv.12 を取得しました。》
《スキル 竜念動 Lv.9 を取得しました。》
《称号『竜息之権化』を取得しました。》
というものを。
月読には
《スキル 竜障壁 Lv.12 を取得しました。》
《スキル 竜反射 Lv.9 を取得しました。》
《称号『竜壁之権化』を取得しました。》
というものが。
コアをピカピカ光らせて、二体は竜郎達にもステータスを観るように促して確認し始めた。
--------------------------------
名前:アマテラス
クラス:無冠の竜─>▽▼▼▼☆★
レベル:50
竜力:1232
筋力:426
耐久力:426
速力:421
魔法力:851
魔法抵抗力:654
魔法制御力:699
◆取得スキル◆
《低出力体》《常態出力体》《高出力体》
《竜の息吹 Lv.12》《竜念動 Lv.9》《攻勢強化》
《火魔法 Lv.14》《風魔法 Lv.14》
《竜力回復速度上昇 Lv.4》
◆システムスキル◆
《アイテムボックス+4》
残存スキルポイント:150
◆称号◆
《火を修めし者》《風を修めし者》《竜息之権化》
《魔王種殺し》《天衣無縫》
--------------------------------
--------------------------------
名前:ツクヨミ
クラス:無冠の竜─>▽▼▼▼☆★
レベル:50
竜力:1242
筋力:426
耐久力:456
速力:421
魔法力:753
魔法抵抗力:753
魔法制御力:673
◆取得スキル◆
《低出力体》《常態出力体》《高出力体》
《竜障壁 Lv.12》《竜反射 Lv.9》《守勢強化》
《水魔法 Lv.14》《氷魔法 Lv.13》
《竜力回復速度上昇 Lv.4》
◆システムスキル◆
《アイテムボックス+4》
残存スキルポイント:150
◆称号◆
《水を修めし者》《氷を修めし者》《竜壁之権化》
《魔王種殺し》《天衣無縫》
--------------------------------
「クラスなしでレベル50になると、無冠のホニャララになるっぽいな」
「そんでもってスキルが貰えなかった代わりに、《天衣無縫》って称号が増えたと」
「効果はどんな感じなんですの?」
そこで《天衣無縫》の欄を開いてみると、以下のようになっていた。
--------------------------------------
称号名:天衣無縫
レアリティ:17
効果:全ステータス+100。
初期スキルのレベルを底上げする。
--------------------------------------
「初期スキルのレベル底上げ。これのおかげで、《竜の息吹》や《竜障壁》なんかのレベルが上がったようですね」
「しかもそれあっての全ステータス+100とか、かなりお得スキルっす」
「だな。んで一番気になるのはやっぱり──」
「クラスの横の記号だよね。なんだろコレ?」
レベルキャップに届いた時とはまた違う、『─>▽▼▼▼☆★』という謎の記号。
良く解らないのでとりあえず愛衣が天照の方の並ぶ記号の『▽』をツンツンと指でタップしてみると、新たな項目が表示された。
--------------------------------------
クラス名:上位竜
分類:通常種
説明:上級竜としての格を持つクラス。
--------------------------------------
「たつろー! つついたら変なのでたよっ。やってみ、やってみ」
「つつけばいのか。どれどれ」
愛衣に促されるままに全員が天照の方の記号の部分を順番に触っていくと、次のような項目がそれぞれ出てきた。
・左から二番目の「▼」
--------------------------------------
クラス名:火竜
分類:上位通常種
説明:上位竜であり、火の特性を強く持つクラス。
--------------------------------------
・左から三番目の「▼」
--------------------------------------
クラス名:風竜
分類:上位通常種
説明:上位竜であり、風の特性を強く持つクラス。
--------------------------------------
・左から四番目の「▼」
--------------------------------------
クラス名:念竜
分類:上位通常種
説明:上位竜であり、念動の特性を強く持つクラス。
--------------------------------------
・左から五番目の「☆」
--------------------------------------
クラス名:火風竜
分類:希少種
説明:上位竜であり、火と風の特性を強く持つクラス。
--------------------------------------
・左から六番目の「★」
--------------------------------------
クラス名:炎嵐奏竜
分類:上位希少種
説明:火と風を自在に操作する、上位竜最高位のクラス。
--------------------------------------
そしてこれを天照本人が見た場合に限り、『このクラスへと至りますか?』という表示が出てくるらしい。
「つまり、この中から好きに選んでクラスチェンジしていいと言う事ですの?」
「だと思います。といっても、強さを求めるのなら実質一択だけの様な気もしますが」
「そりゃ、この中でただの上位竜や火竜を選ぶなんてありえないっすよね」
「それに火風竜も次の炎嵐奏竜の下位互換みたいな書かれ方だしな。
それじゃあ、月読の方はどんなラインナップになってるんだ?」
「れっつさーち!」
愛衣が先陣を切って月読の方のステータスから、次へのクラスを覗いていくと。
・左から一番目の「▼」
--------------------------------------
クラス名:上位竜
分類:通常種
説明:上級竜としての格を持つクラス。
--------------------------------------
・左から二番目の「▼」
--------------------------------------
クラス名:水竜
分類:上位通常種
説明:上位竜であり、水の特性を強く持つクラス。
--------------------------------------
・左から三番目の「▼」
--------------------------------------
クラス名:氷竜
分類:上位通常種
説明:上位竜であり、氷の特性を強く持つクラス。
--------------------------------------
・左から四番目の「▼」
--------------------------------------
クラス名:硬竜
分類:上位通常種
説明:上位竜であり、障壁の特性を強く持つクラス。
--------------------------------------
・左から五番目の「☆」
--------------------------------------
クラス名:水氷竜
分類:希少種
説明:上位竜であり、水と氷の特性を強く持つクラス。
--------------------------------------
・左から六番目の「★」
--------------------------------------
クラス名:水晶竜
分類:上位希少種
説明:特殊な水晶を創造し身を守り攻撃できる、上位竜最高位のクラス。
--------------------------------------
「こっちも実質一択だねー。特殊な水晶ってなんだろ?」
「それは解らないが、こっちもなんだか凄そうだ。とはいっても最終的に決めるのは天照と月読だし、好きに決めていいんだぞ?」
とはいうものの実質一択と思っていたのは天照も月読も同じこと。二体は迷うことなく、炎嵐奏竜と水晶竜を選択する旨を伝えてきた。
「なら決まりですの! さっそくやってみるですの!」
「私も早く観たいです」
好奇心から幼女二人も目をキラキラさせて天照と月読のコアをみつめ始めた。
それに応えるように二体はそれぞれクラスチェンジするべく、ステータス画面を操作した。
すると天照には──。
《無冠の竜 より 炎嵐奏竜 にクラスチェンジしました。》
《スキル 炎嵐の調べ Lv.5 を取得しました。》
《炎嵐奏竜 より 殲滅炎嵐奏竜 にクラスチェンジしました。》
《スキル 炎嵐奏竜の息吹き Lv.5 を取得しました。》
《スキル 《分霊:火力増幅輪》 を取得しました。》
月読には──。
《無冠の竜 より 水晶竜 にクラスチェンジしました。》
《スキル 竜水晶創造 Lv.5 を取得しました。》
《水晶竜 より 不落水晶竜 にクラスチェンジしました。》
《スキル 竜水晶制御 Lv.5 を取得しました。》
《スキル 《分霊:内通外防球》 を取得しました。》
とアナウンスが聞こえてきた。それに驚いた二体は、慌てて竜郎達にステータスをまた見るように促してきた。
そして自分たちに何が起こったのか竜郎へと伝えていった。
--------------------------------
名前:アマテラス
クラス:殲滅炎嵐奏竜
レベル:50
竜力:1322
筋力:586
耐久力:586
速力:581
魔法力:1111
魔法抵抗力:814
魔法制御力:859
◆取得スキル◆
《低出力体》《常態出力体》《高出力体》《分霊:火力増幅輪》
《竜の息吹 Lv.12》《竜念動 Lv.9》《攻勢強化》
《火魔法 Lv.14》《風魔法 Lv.14》《炎嵐の調べ Lv.5》
《炎嵐奏竜の息吹き Lv.5》《竜力回復速度上昇 Lv.4》
◆システムスキル◆
《アイテムボックス+4》
残存スキルポイント:150
◆称号◆
《火を修めし者》《風を修めし者》《竜息之権化》
《魔王種殺し》《天衣無縫》
--------------------------------
--------------------------------
名前:ツクヨミ
クラス:不落水晶竜
レベル:50
竜力:1402
筋力:586
耐久力:666
速力:581
魔法力:913
魔法抵抗力:963
魔法制御力:833
◆取得スキル◆
《低出力体》《常態出力体》《高出力体》《分霊:内通外防球》
《竜障壁 Lv.12》《竜反射 Lv.9》《守勢強化》
《水魔法 Lv.14》《氷魔法 Lv.13》《竜水晶創造 Lv.5》
《竜水晶制御 Lv.5》《竜力回復速度上昇 Lv.4》
◆システムスキル◆
《アイテムボックス+4》
残存スキルポイント:150
◆称号◆
《水を修めし者》《氷を修めし者》《竜壁之権化》
《魔王種殺し》《天衣無縫》
--------------------------------
「えーと、ただの炎嵐奏竜や水晶竜じゃないのは、いきなり二段階クラスチェンジしたからと。
まあ、カルディナ達も体のレベルを上げた途端にクラスチェンジしたんだし、不思議ではないか」
「分霊スキルも手に入れてるしね。あとはちょっとステータスも上がって、クラス関連のスキルも増えたと」
それから天照の方で調べて解った内容は、《炎嵐の調べ》は魔法に限らず自然現象の火や風などにも干渉でき、竜郎の《魔法支配》の様に他人の火と風魔法にも介入出来るらしい。
そして《炎嵐奏竜の息吹き》は竜の息吹きと違い他属性を混ぜる事が出来ない代わりに、本来のレベルでも出せない程の超火力の嵐と炎の混じった息吹きを広範囲に吹き散らす事が出来る。
さらに《分霊:火力増幅輪》。これは大小伸縮可能な金の輪っかの形状をしており、効果はその輪を通した攻撃──武術、魔法問わず強化して放つという純粋な火力増幅装置。だが効果が単純なだけに、その効果はかなり高くなっている。
次に月読の方で解った事は、《竜水晶創造》は薄青い透明度の高い水晶を造りだすスキル。造りだされた竜水晶はとんでもなく硬く、硬度だけで見るのならLv.5の時点で今まで見たどんな物質よりも高かった。
さらにその水晶には反射効果も付ける事が出来、半端な攻撃は跳ね返す事も可能。
そしてそんな竜水晶を自由に形付けたり動かす事が出来るのが、不落水晶竜で覚えたスキル《竜水晶制御》。
このスキルのレベルが上がれば上がるほどに、より細かな形や動作を要求できるようになる。
最後に月読の分霊、《分霊:内通外防球》。これは伸縮自由な球体を自身の周りに造りだしシールドを張るというもの。
ただこれは《竜障壁》と違って内側から外へは干渉でき、外側からは干渉させないという効果を持っている。
つまり外からの攻撃は弾き飛ばすが、内側からは攻撃し放題と言うものである。
「これまた面白い感じになって来たな」
「たった一レベル上げただけなのにね。天照ちゃんも月読ちゃんも、これでお姉ちゃん達にも並べられるね」
愛衣のその言葉にまだまだだよーとでもいうように、ピカピカと光り輝いていた。
そんな中。リアは月読が軽く生み出した竜水晶を、なめまわすように観て興奮していた。
「それにしてもこの竜水晶。このレベルの素材が竜力がある限り出し続けられるとか凄すぎます……。
これはまた創造の幅が広がりますね!」
「リアはそれを加工できるんですの? とても硬いのでしょう?」
「時間はかかりますが、やってできない事は無いですよ。ですからこれを貰ってもいいですか? 練習したいんです」
「ああ。いいよな、月読?」
了承の意を示すように月読がコアを光らせると、リアは嬉しそうに頬を赤らめ、まるで新しい玩具を貰った幼子の様に心踊らせた。
それを見ていた竜郎達のほっこりとした視線にも気が付かず、リアはそそくさと自分の《アイテムボックス》へとしまったのであった。




