第326話 時空魔法取得
「──と。盛り上がった所で、俺は最後の時空魔法を取ろうと思う」
皆で依頼を受けることにし、声を上げてから直ぐ後の一言である。
「多分またクラスチェンジするだろうし、パワーアップになりそうだもんね」
「まだ使ってないから、どんな風に戦闘に役立てられるかは想像し辛いが、クラスチェンジで別のスキルも手に入るだろうし、間違いなく今より強くなれるはずだ」
「下手したら、その破滅の魔物とやらとも戦う事になるかもしれませんし、少しでも戦力が上がるのはいい事ですの」
ということで、少々場の熱は冷めてしまったが、ここでこれまでの旅の一番の目的でもあったスキルを取得することとなった。
「よし、いくぞ」
「うん。いっちゃって!」
愛衣の声を聴きながら、竜郎はここまでの道のりを思い返しながらシステムを起動する。
そして時空魔法と書かれた項目が取得可能になっているのをしっかりと確認すると、SP(1000)を払って念願の《時空魔法》を手に入れた。
《魔を内包せし大賢者 より 魔神之系譜 にクラスチェンジしました。》
《スキル 魔法支配 を取得しました。》
《称号『神格者』を取得しました。》
《称号『創造主・急』を取得しました。》
「遂に神格を賜ってしまったか……」
「どったの?」
「とりあえずステータスを見てみてくれ。俺も気になるからさ」
「わたくしも見たいですの!」
そうして竜郎達はまたクラスチェンジしたステータスを覗いていくと……。
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名前:タツロウ・ハサミ
クラス:魔神之系譜
レベル:104
気力:1426
魔力:6127
神力:100
竜力:11730
筋力:1692+20
耐久力:1639
速力:1578+80
魔法力:10054
魔法抵抗力:9629
魔法制御力:10047
◆取得スキル◆
《レベルイーター》《複合魔法スキル化》《精霊眼》
《精霊魔法》《魔法域超越》《強化改造牧場》
《植物達の祝福》《陽光回復》《魔卵錬成》《魔法支配》
《陰陽玉》《炎風》《土尖風》
《粘着水》《呪幻視》《施錠魔法:火解風呪雷.タイプ1》
《光魔法 Lv.14》《闇魔法 Lv.14》《火魔法 Lv.11》
《水魔法 Lv.11》《生魔法 Lv.10:上限解放》
《土魔法 Lv.10:上限解放》《解魔法 Lv.11》
《風魔法 Lv.11》《呪魔法 Lv.11》《雷魔法 Lv.11》
《樹魔法 Lv.10:上限解放》《氷魔法 Lv.10:上限解放》
《重力魔法》《時空魔法》《爆発魔法》《施錠魔法》
《魔力質上昇 Lv.5》《魔法密度上昇 Lv.3》
《魔法生成上昇 Lv.3》《魔力回復速度上昇 Lv.6》
《集中 Lv.8》《連弾 Lv.2》《多重思考 Lv.1》
《堅牢体 Lv.8》《統率 Lv.12》《全言語理解》
◆システムスキル◆
《マップ機能》《無限アイテムフィールド》
残存スキルポイント:122
◆称号◆
《光を修めし者》《闇を修めし者》《火を修めし者》
《水を修めし者》《生を修めし者》《土を修めし者》
《解を修めし者》《風を修めし者》《呪を修めし者》
《雷を修めし者》《樹を修めし者》《氷を修めし者》
《打ち破る者》《響きあう存在+2》《竜殺し+2》
《竜を喰らう者》《収納狂い》《すごーい!》
《創造主・序》《創造主・破》《創造主・急》
《エンデニエンテ》《高難易度迷宮踏破者》《越境者》
《先導者》《魔物小長者》《魔物長者》《魔物大長者》
《魔物特大長者》《神格者》
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「レベルも上がってないのに、ステータスの値がおかしなことになってるんだけど……」
「それに神力ってなんですの?」
「それは多分、この称号のせい──というより、おかげかだと思う。やっぱり」
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称号名:神格者
レアリティ:20
効果:神力を得る。
全ステータス+1000。
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「全ステ1000すか。ってことは、むしろクラスチェンジで物理系は下がったうえで、この数字なんすね」
「そこいらの武術職なら、普通に殴り倒せそうな数値なのにね。そんで、神力っていうのは何だろね」
「神力と言うのは、竜力よりもさらに質の高いエネルギーの様ですね。
力の比率で言うと、神力10に対し、竜力8、魔力1くらいでしょうか」
「まじか。というか竜力も魔力の8倍もあったのにも驚きだな。
んで神力は、竜力みたいに増やしたりは出来ないのか?」
「神様をモグモグすればいいのかな?」
「そんなもの食べないでくださいよっ!?
えーと……称号効果などでは上がらない様ですが、竜力と違ってこれからレベルが上がるごとに上昇していくはずです」
「そこは他のステータスと同じなんですのね」
異常なステータス上昇と神力について解った所で、今度は三度目の創造主関連の称号を見て行く。
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称号名:創造主・急
レアリティ:ユニーク
効果:自己世界の割り込み。
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「遂にレアリティがユニークになりましたの。でも相変わらず効果の説明は同じですの。不親切ですの。何が変わったんですの?」
「えーと、これだと自分の世界なら物理法則まで捻じ曲げられるようになったみたいですね。もう何でもありあり状態です」
「なんでもありありか。これで完全に自己世界って感じになったな」
「けれど多大なエネルギー消費をすることに変わりないので、多用は難しそうですけどね」
そして最後に魔神之系譜へと至った事で覚えたスキル、《魔法支配》について調べていく。
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スキル名:魔法支配
レアリティ:ユニーク
タイプ:アクティブスキル
効果:自分よりも低いレベルの魔法を支配し、制御下に置く事が出来る。
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「これは魔法なら他人のものでも魔物のものでも、自分の制御下におけるみたいですね」
「なにそれ、これって今以上にもっと魔法のレベル上げまくったら、魔法全部無効化できるんじゃないの?」
「さすが魔神之系譜。遂に他人の魔法にまで干渉できるようになったか。
試しに一度使ってみたいな」
「ピィー」
「近くに魔法を使う魔物がいるみたいっすよ」
「なら捕まえて試してみるか」
という事で、さくっとマイホームから少し離れた所にいた、以前リアの機体で試金石に使ったのと同じ、棒の先端に目玉を付けたような、火魔法系の火炎球を使う魔物を目の前まで連れてきた。
これで後は魔法を使わせれば《魔法支配》の効果を確かめられる──はずなのだが、竜郎の前につれてきた途端、硬直して動けなくなっていた。
「どうしちゃったんだろ、この子? 何か恐がってる?」
「のように見えるが、探知系の能力は無かったはずだし、実力差も解らないはずなんだが……」
と、竜郎と愛衣が話している間に何だろうと調べていたリアが、魔物を観て、それから竜郎を観て、答えに行き着いた。
「どうやら兄さんは《神格者》の称号を得たことで、竜の威圧ならぬ神の威圧的な物が出ているみたいですね。
こちらは敵味方問わず圧し掛かって来るのではなく、味方には安心感を与えて、敵には恐怖心を与えるみたいなので、詳しく観るまで気が付きませんでした。
意識すれば抑えられると思いますよ」
「的な物て……。というか、いつの間にそんな事に。──ん」
「あ、収まってきたみたいですの。動き始めたですの」
奈々の言われるままに魔物に視線を向ければ、竦んで動けなくなっていた魔物が動き始め、さっそく火炎球をこちらに向かって撃ち放ってきた。
「いきなりだな。えーと……こんな感じか?」
竜郎は撃ってきた火炎球を精霊眼で見つめながら、《魔法支配》を意識して止まるように念じてみた。
すると竜郎の念じたとおり、火炎球は静止した。
それに驚いた様子を見せるも、動かなくなった火炎球を無視して二個目、三個目と増やしていくも、その全てが竜郎の支配下に入っていく。
やがて魔力が尽きたのか火炎球が止み、棒がしおれた植物の様にくにゃっと曲がって目玉が地面に倒れこんだ。
「ふーん。さすがに俺の魔力と混ぜて混合魔法を──ってのは出来ないが、完全にこの魔力は俺の自由に出来るみたいだな。よっと」
竜郎の支配下に置いて静止させていた火炎球を、一度ただの火の魔力の状態にまで分解して、新たに火炎放射に再構築──噴射。
魔物は自分の魔力で造った炎に焼かれ、死んでいった。
「おー凄いっすー! 分解して好きなように構築し直す事も出来るんすね」
「これを相手の探査魔法に使って好き勝手に情報を送りつける──なんて事も出来そうですし、敵に回したら恐ろしいスキルですね」
「おとーさま以外は持っていないでしょうし、敵に回る事はなさそうですの」
そうして《魔法支配》の効果も試したところで、竜郎は中途半端に焼かれ死骸が若干残った魔物を消しさろうとしたとき、神力を使ってみようと考えた。
使える手は多い方がいいし、使い心地を試しておきたかったからだ。
新たに増えた神力に意識を集中していくと、直ぐにそれが解った。
(なんか竜力よりも身近に感じる気がするな)
例えるのなら竜力は外付けバッテリーで、神力は新たに増えた内蔵バッテリーといった所だろうか。
そんなことが頭を過る中、竜郎はただの火魔法で軽く焼き払おうとした。
するといつものようにオレンジ色の炎ではなく、プラチナに輝く炎が手から飛び出し、想定以上の火力で残骸を消し飛ばすどころか、地面まで抉って消滅させていた。
「──は?」
「なに今の!? ぺかっと光ってたよ!」
「いや、神力を使ってみたら勝手に白金の炎になった。それに威力も想定していた数十倍になってた」
「他の魔法もそうなるっすかね?」
「やってみよう」
火魔法に続き他の属性魔法でも試してみたが、闇と解魔法は少し見た目に解り難かったが、他の属性魔法も同様に白金色の特徴を持ち、威力も勝手に底上げされていた。
また重力魔法や爆発魔法なども、やはり同じように白金化と威力上昇が見られ、思わぬ情報を手に入れることとなった。
「こうなると少し時空魔法も使ってみるか」
「瞬間移動でもするの?」
「いや、それでもいいんだが、いきなり自分の体でやると言うのもなんだしな。
こう言う事も出来ないかなと考えていた事があるから、それをやってみる」
時空魔法を戦闘で使う時の為に思いついた方法を試すため、また新たな魔物を一体ドナドナしてきて目の前においた。
それは成人男性ほどの大きさの、カタツムリに似た魔物。
動きは緩いが角に当たる部分が伸びて、それを鞭のようにして攻撃してくる。
けれどそれを竜郎は足さばきだけで避けながら、時空と光と火の混合魔法を展開した。
「──はっ」
巨大カタツムリ魔物の後の空間に突然穴が開いたかと思えば、そこからレーザーが射出されて殻を突き破り内臓を焼く。
怒り狂いながら触手をブンブン振り回すが、今度はその魔物の周囲に三十個の穴が開くと、三十個のレーザーが四方八方から射出して射殺した。
「魔法を転移させて、任意の場所からいきなり攻撃したんですね」
「どこからくるか解らないですし、面白い魔法ですの」
「他にも色々できそうだが、今はこの位で徐々に慣らして行こうと思う」
「それがいいね。いきなり転移魔法やって、全然知らないところに飛んじゃったら怖いし」
「だな、まあ落ち着いてから転移は練習しよう。って事で、今日は各自自由行動ってことでいいか」
「ええっ!? 助けに行くんじゃないの?」
「といってもな。俺達は寝なくても何とかなるが、リアはちょっと寝不足だろ。
なんか危なそうな奴と戦闘になるかもしれないし、それが原因で俺達がやられたら本末転倒だ。
それに今に至るまで、ずっと魔物が生まれるのを邪魔をし続けられるくらいには元気なんだ。確実に俺達の安全性を取りながら、助ける為にも明日の朝までは持ってもらおう」
「兄さん達はその間何を?」
「一応仮眠を2~3時間取ってから、ちょっと《魔卵錬成》と《強化改造牧場》で何が出来るか試してみようかと」
「私も見たいです」
むーと、少し拗ねたような表情を作るリア。どうやら魔物の卵を作る過程や、改造強化の過程などを観ておきたいらしい。
「そうむくれるなって。今はあんまり時間が作れないから、ガッツリ出来ないし、落ち着いたら皆でやるから」
「そうそう。だから今は寝てきな。目の下ちょっとクマが出来てるよ」
愛衣に目の下をツンツンされて、そこでリアは諦めが付いたらしい。
「……ですね。ちょっと思考が鈍くなっているのは確かですし、そうします。
でも次の機会では見せてくださいね」
「ああ、約束だ。リアに隠す必要もないからな。仲間以外だと《レベルイーター》の次くらいに、ばれたらヤバそうなスキルだし」
「町中に数百体の魔物をばれずに運び込んで、都市中心部で解き放って大規模テロ──なんてこともできそうですの」
「そんなことする必要もないから、やる気は無いけどな」
冗談を軽く言い合ってから竜郎と愛衣は仮眠を取りに、リアは昨晩ほとんど寝れなかった分も含めて寝る為に、それぞれマイホームへと入っていくのであった。




