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レベルイーター  作者: 亜掛千夜
第七章 黒菌編

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第325話 託されたモノ

 《強化改造牧場》というスキルの情報を見た後は、まだ見ていないスキルや称号を見て行く。



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 スキル名:植物達の祝福

 レアリティ:10

 タイプ:パッシブスキル

 効果:植物が多くある場所にいるほど、ステータスが上昇する。

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「シュベ公たちが持っていたのは《植物達の応援》だったが、それと似たような効果か」

「けれどこちらの方が、上位スキルのようですね。補正値も高いです」



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 スキル名:陽光回復

 レアリティ:12

 タイプ:パッシブスキル

 効果:日光を浴びると、消費系エネルギーの回復速度が向上する。

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「光合成みたいなモノかな?」

「水とかはいらないですから厳密には違いますが、近いかもしれないですね。

 前の《植物達の祝福》もそうですけど、本来樹に属した妖精や魔物にしか得られないスキルのようですし、エンデニエンテがなかったら、移植できなかったスキルだと思います」



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 スキル名:魔卵錬成

 レアリティ:18

 タイプ:アクティブスキル

 効果:魔物の卵生成が可能。

    魔物の卵合成が可能。

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「これはクラスチェンジした時に覚えた自前のスキルだな。

 名前からして、もしかしたらとは思っていたが……合成…………。

 レアモンスター卵、作り放題フラグか!?」

「作り放題かどうかはさて置き、これまた面白いスキルですね。

 大賢者に《強化改造牧場》が加わって、クラスチェンジしたからこそ覚えた──っていう感じのスキルみたいです」

「《強化改造牧場》は卵が関係してそうっすけど、大賢者は何か関係してるんすか?」

「魔卵を生成するための条件なんですけど、まずは対象の魔物の脳、心臓、魔石を、統一しなくてもいいので合計十個集める事。

 そしてそれを媒体として、魔卵を構成するのに必要な十二属性の魔力を、種類ごとに適した比率で送ることで生成を可能とします。

 細かな比率はスキルが勝手に調整してくれるので、素材集めさえクリア出来れば兄さんには簡単な事ですが、普通の人間は十二属性も持ってませんからね。

 覚えることは無いでしょう」

「さらに素材の複製もできる、《無限アイテムフィールド》が有ると言うのも影響しているかもしれませんの」

「そっか。たつろーなら複製ポイントの残りを度外視すれば、同じ種類の魔物を何匹も狩らなくても一体から集められるもんね」

「ああ。しかしとなると………………まあ、今は置いておこう」



 竜郎は色々と頭の中で、どういう使い方をしようかと考え始めたが、まずは先にやる事があると次のスキルに注目していく。



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 スキル名:堅牢体 Lv.8

 レアリティ:8

 タイプ:パッシブスキル

 効果:肉体の耐久力を向上させる。

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「これは見たまんまだよね。けど頑丈になるのはいい事だね!」

「魔法攻撃は、アホみたいに高い魔法抵抗力で何とかなるっすからね。

 そのうえで今回上がった耐久力を上乗せすれば、物理でもそうそう後れを取ることはなそうっす」

「ノーリスクで常時発動型ってのも魅力的ですの」



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 スキル名:統率 Lv.12

 レアリティ:12

 タイプ:パッシブスキル

 効果:高いレベルほど二人以上の行動時に、

    自分の言葉を他者に納得させ易くなる。

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「俺の統率能力が上がるかと思いきや、言葉の説得力が増すだけか。

 びみょ~なスキルだな」

「けれど多くの魔物を抱えるテイマーには、結構重要なスキルですよ。

 魔物は人間ほど理性で動いてはくれませんから、こういうスキルがあると沢山の対象を統率しやすくなるんです。

 それに称号効果は結構いいものですよ」

「称号……っていうと、これのことだな」



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 称号名:先導者

 レアリティ:10

 効果:自分以外の人間と共に行動し指揮を執る際、

    自身の思考速度を小増大。

    自身も含めた全員の能力値を小増大。

    全ステータス+5

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「確かに良い称号だな。これは儲けたかもしれない」

「パーティ全体の底上げに思考速度も少しですが増大ってのは、確かに美味しいですの」

「正直うちのパーティをこれ以上底上げしてどうするのって感じっすけど、思考速度が上がれば色んなことの対処も速くなるっすからね」



 そうして統率がレベル10で覚えられる称号効果を確かめてから、最後に魔物長者シリーズを一気に覗いていく。



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 称号名:魔物小長者

 レアリティ:3

 効果:全ステータス+3

テイムした魔物から、ほんの少しだけ懐かれ易くなる。

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 称号名:魔物長者

 レアリティ:9

 効果:全ステータス+10

    テイムした魔物から、少しだけ懐かれ易くなる。

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 称号名:魔物大長者

 レアリティ:12

 効果:全ステータス+30

    テイムした魔物から、それなりに懐かれ易くなる。

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 称号名:魔物特大長者

 レアリティ:14

 効果:全ステータス+100

    テイムした魔物から、懐かれ易くなる。

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「これは前の称号の持ち主が集めた魔物の数かなんかで得た称号っぽいな」

「上から5匹、30匹、50匹、100匹魔物を従えた者に与えられる称号ですから、その考えで正解ですね」

「確かにあの木魔物君、百匹以上は《強化改造牧場》に入れてたもんね」

「ですの。それに称号効果的に、全ステータスアップが重なっていて、これはテイマーなら是非狙っていきたいものですの」

「前にマリッカさんの話を聞いた限りだと、テイマーには個々で魔物を抱えられる容量が有るみたいだし、《強化改造牧場》に近いスキルでもない限り大量には連れてけないよな」

「餌代も馬鹿にならないだろうしねぇ」



 ちなみに《強化改造牧場》は、異空間牧場に魔物を収納すると、そこは入れた魔物が暮らすのに最適な空間となるように変化する。

 そして食事はスキル保持者の魔力、もしくは竜力などを使って生み出せるので、わざわざ餌を買ってくる必要もなく、とても便利すぎるスキルとなっているので、四六時中愛衣とくっ付いている竜郎なら回復も早く、牧場に入れられる限り何匹でも養う事が出来るだろう。



「さすがユニークスキル。ぶっ飛んでるな」

「私も《強化改造牧場》欲しかったなあ。そしたら可愛い魔物をいっぱい集めて、モフモフパラダイスが作れたのにー」

「俺のステータスの合計値で言ったら、かなり牧場の広さもあるだろうし、愛衣が気にいった魔物がいたら沢山いれられるぞ」

「ほんと!? モフパラできる?」

「ああ、できるぞ。俺の物は愛衣の物でもあるんだから、遠慮すんな」

「ありがとー! たつろー! 私も出来る事が有ったら何でも言ってね!」

「何でも? はい。では楽しみにしてます!」

「えろろーな目をしてるっ!?」



 などとイチャイチャ劇場が始まり、少し空気が緩んできたところで、さっそく件の《強化改造牧場》に付いて、もう少し詳しく知っておこうという事になった。

 何かあるとしたら、一番彼が主として使っていたこれにヒントが隠されているかもしれないと考えたからだ。

 その流れで竜郎が《強化改造牧場》を意識してみると、一匹だけ既に収納されている事が発覚した。



「これは……。もしかしてこの一匹が、伝えたいことを示すカギになるのかもしれない」

「ならとりあえず牧場から出してみよーよ」

「大きさ的には3メートルサイズの……ラフレシア? って感じの見た目だな」



 竜郎が《強化改造牧場》の中にいる魔物を意識すると、突然システム画面の様なモニターが現れ、中に唯一収められていた存在の映像が映し出されていた。

 そしてそれは、竜郎が許可すれば誰でも見る事が出来る様だ。なので愛衣達にもジャングルの様な区画に一体だけ鎮座する巨大花を見せた。



「ほんとだ。確かラフレシアって、くちゃい花だよね。外の方がいいかも」

「今や兄さんの魔物という事になっているでしょうし、むやみに暴れる事は無いでしょうが、知らない魔物ですからね。そのほうがいいと思います」

「では早速外に行きますの」



 という事で玄関をくぐって外にやってきた竜郎達。

 周囲を改めて探査して問題ない事を確認してから、竜郎は広く開けた場所にラフレシア──の様な見た目の魔物を異空間牧場から召喚した。

 すると竜郎の指定した場所に、赤に黒の斑点がついたラフレシアが現れた。



「特に臭いは無いな。えーと、テイムした魔物なら、魔力を通した言葉を理解してなくても伝えられるんだよな。

 ううんっ。──元主のヘンリッキに何か言われてはいないか?」



 魔物とはいえ植物に話しかけるのにわずかな抵抗を感じた竜郎は、一度咳払いして気持ちを切り替えてから、魔力を乗せた声を発した。

 ちゃんと伝わったらしく、ラフレシアがモゾモゾと揺れ動き始めた。

 すると地面から直接生えているかのように見える大きく肉厚な花弁の中心部から、鳥のくちばしそっくりの口らしき器官が飛び出し、そこから少しくぐもった妙に甲高い男の声が聞こえてきた。



「────これを聞いている誰か」

「喋った!?」

「少し静かにっ。人の言葉を記憶し、模倣する能力がある魔物の様です」

「う、うん」



 愛衣が驚いている間にも話が進みそうになったので、リアは静かにするようにたしなめて、元主人が記憶させたであろう言葉を聞いていく。



「まず、無事に《強化改造牧場》を移植できて良かった。

 何度か新しい体に乗り換える為に魔物に移植スキルを使った事はあるが、人間相手に使うのも──託す側になるのも初めてだから、心配だったんだ。

 《強化改造牧場》は、中々便利で珍しいスキルだから、気に入って貰えたら嬉しい。

 そこで突然ですまないが、そのスキルを受け取ったお礼をしてほしい。

 いきなり戦いを吹っかけて、いきなりスキルを渡しておいてなんだと思われるかもしれないが、それでもお願いだから聞いてほしい。

 実はバンラモンテの山にある風山に、強大な魔物が生まれようとしているのを、私とアウリッキという小妖精の男が発見した。

 そのまま放置すれば、間違いなく数多の国々を蹂躙するであろう破滅の魔物だ。

 だからアウリッキは、それを阻止するために風山にとどまり、私は森に誰も入らない様にしたんだ。

 そして一日もあれば、アウリッキが魔物の渦を破壊できる予定だったんだ。

 けれどアウリッキは何日たっても帰って来ない。だから様子を見に行こうかと森は魔物達に任せて、自分で行ってしまったのが悪かった。

 風山に近づいて行くと、体が力で満ち溢れてきた。

 私はそれが何かもよく解らずに、つい気持ちが良くて自分からそれを吸い込んでしまった。

 最初は良かったんだ、力が少しずつだが増していき、万能感に包まれていた。

 けれど気が付いた時には、自分の思考力が鈍くなっているのに気が付いた。

 これは不味いと、その場から離れる為に急いで森に戻ったのだが、症状は治まらず、少しずつ知能が削られる。

 私の体の特性を生かせば、時間を遅らせるくらいできるが、完全には無理だと判断し、こんな形で伝言を残し、我が友でもあるアウリッキを救える人間に託すことにしたんだ。

 ……ここまで聞いてもらえれば解るだろうが、私のステータスやスキルを前渡しの報酬として、風山で今も魔物が生まれない様に頑張っているであろう小妖精の男──アウリッキを救ってほしい。

 お願いだ。彼は私に名前をくれた大切な存在なんだ。私を孤独から救ってくれた恩人なんだっ。私と……私と長き時を共に生きた親友なんだ!

 だから頼む…頼むから……彼を救ってくれ…………………………。

 ────取り乱してすまない。私からは以上だ。君が願いを聞き届けてくれると信じて、これで伝言を終える。では────────」



 そこで伝言が止み、しばしの静寂の後にラフレシア魔物が声を発していた嘴の様な器官を花弁の中央に引っ込ませた。

 それ以上は特に何もないようなので、竜郎は異空間牧場に戻るように意識すると、霧に溶けるように消えて行った。



「って事だが……。今の話と俺達の調べた情報を纏めると、破滅の魔物とやらはまだ生まれていない。

 黒菌の発生は上手く魔物になれない残骸で、何かに邪魔されているから今もなお発生し続けている」

「ってことはだよ。邪魔している何かはアウリッキさんで、今も現在進行形で生きてるって事になるよね」

「その可能性は極めて高くなりましたね。それでこれからどうしますか?

 どの道、私たちは風山にいって原因の打破をすることになっていましたし、それをすることでアウリッキさんも救う事になるはずです。

 なので私は受けてもいいと思いますが」

「ここまで来たら、最後までやってやるですの!」

「そうっす。そんで依頼の報酬も貰ってガッポガッポっす!」

「ピィュー」「ヒヒーーーン」



 天照と月読も、コアを光らせて賛同していた。



「愛衣はどうだ?」

「何か最初の依頼もこんな感じだったよね」

「だったな。依頼を見た時には相手は死んでいて、報酬も前払いだった」



 一番最初にこの世界に来て受けた依頼を、二人は思い出していた。

 竜郎のSPは1000を超えた。時空魔法取得条件を全て満たしている。

 もう風山へSP集めに行く必要もないし、全て無視して転移魔法の練習を始めて、上手くできそうになれば直ぐにでも異世界生活を切り上げる事だって出来るだろう。

 けれどこのままでは、二人はすっきりした気持ちで帰れない。

 そして最初と似たような依頼が、おそらく今回やっと帰界するまでの最後の依頼となるであろう。



「なんか、そういうのもいいかなって思うんだ」

「だな。この世界での一つの区切りとしては、最高の依頼だ」

「やっちゃおっか」

「やってやろうぜ」



 そうして二人は見つめてあって、ニッと笑いあった。共に心は同じであるという事が、どうしようもなく嬉しかった。



「いっちょ助けに行くぞ!」

「おー!」「ピィュー!」「ヒヒーン!」「おーですの!」「はい!」「了解っす!」



 天照と月読も、姉たちと同じような気持ちで光り輝く。

 そうして竜郎達は、ヘンリッキ最後の願いを聞き届けることにしたのであった。

次回、第326話は9月21日(木)更新です。

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