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レベルイーター  作者: 亜掛千夜
第七章 黒菌編

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第324話 彼の真意

 竜郎のもくろみ通り天照と月読がレベルアップした後は、地面に降りてバラバラになった骨片をかき集めて《無限アイテムフィールド》に収納した。



「…………………………」

「もうネタ切れか?」



 巨大骸骨を出した後はただの木の様にジッとして、何も声を発さずにいた人間に分類されていた木の魔物。

 だが竜郎達が警戒しながら近寄っていくと、また今までと違う反応を見せてきた。



「おま─たち つよ─った これ─アウリッ─ たすけ──らえる」

「助け、らえる? というか、お前はまだ話せるのか?」

「いちば─ だ─じなと─ろ まもってあ─た。

 でも もうまりょ─ なくな─た もうじ─ わ─ししぬ

 た──まもの ─なる」

「リア、今コイツが──」



 リアに聞き取れた会話だけをかい摘んで、こんな感じの事を話しているはずと、木魔物の言葉が解る竜郎が伝えていく。

 何かを助けてもらいたがっている事。そして一番大事な部分は必死に守ってきたが、今回の戦いで魔力を切らしてダメになり、もうすぐ完全に自我が消え去り魔物に成るという事。



「攻撃したのは、助けられない自分の代わりに助けてもらうため、強い存在かどうか計りたかったという事でしょうかね。

 私の見た限り、完全に自我を失っていてもおかしくない状態なのに言葉を喋っているのがまず驚きですが」

「まあ、そこは今は置いておこう。向こうにはもう時間が無いようだし」



 そこで竜郎は木魔物が話す言語に切り替えて、また問いかけた。



「それで具体的に、お前は何がしたいんだ?」

「わたし─ぜんぶ お──にやる そのか─り ア──ッキ たす─てや──くれ」

「ア~ッキ? さっきはアウリッ~とか言ってたし、もしかしてアウリッキの事か?」



 そもそも竜郎達がここに来たのは、アウリッキと言う小妖精達の兄貴分の様子を見に来る予定だったのだ。

 所々切れ切れになる会話文から聞き取れた固有名詞らしき二つの単語、ア○○キ と アウリッ○。

 これらが同一単語なら、それはまさしく竜郎達の探し人という事になる。



「アウリ── しってるの─? ならは─く たすけ──」

「知ってはいるが、助ける助けると言われても、状況も解らないのに解りましたと言えるわけがないだろう。

 時間が無いんなら、もっと要点だけを端的に教えて欲しい」

「わ─し もう かんが─まとめる あたま な─。

 だから うけと─ そ─すれば わかるは─

 やるか─うかは そのあ─ きめて─ いいから

 もう おま─たち し─ いないか─ たの─」



 もう限界が近いのか、だんだんと早口となり体が震えだすと、木魔物の体が真っ二つに割れて中から緑色の蔦がでてくる。

 そしてその先端には黄緑色で十センチくらいの大きさをした種の様な物が付いており、それを竜郎の目の前に差し出した。



「おま──の なかで おま── いちば─ てきおう─るはず。

 これを さ─ってく─」

「俺にこれを触れと言っているみたいなんだが、触っても問題ない物か?」

「…………それは。──ああ、兄さんなら大丈夫なはずです」

「いったいどういうものなの?」

「先に触ってあげてください。今の状態だと、あと数秒で意味を無くしてしまいますので、手袋を取って直接手で触れてみてください」

「そうか。リアが言うのなら信じよう」



 竜郎はリアが確信をもって太鼓判を押してくれたので、天照や月読と意思疎通をするための手袋を右手側だけ外し、人差し指と中指でそっと黄緑色の種子に触れた。



「──っ!?」

「ああ── これで── おわれるの──……」



 蔦と繋がっていた種子がプチンと勝手にちぎれると、竜郎の触れた指に根を張り始めた。

 それに驚きリアを見るも、大丈夫だと頷いてくれたのでジッと動向を見守ることにする。

 すると何やら竜郎の体がポカポカと温かくなっていくのを感じると、種子が黄緑から緑、深緑とグラデーションに色彩が暗くなっていく。

 そして最後に真っ黒になると小さく光り輝く粒子となって、竜郎の体に吸い込まれていった。



《スキル『融合移植』が発動されました。

 これより『タツロウ・ハサミ』を主として、『ヘンリッキ』のシステムが統合されます》



「は? なんだ──」



《『エンデニエンテ』の称号を確認。適応率に大幅な補正が入りました。

 武術能力が『ヘンリッキ』よりやや劣っています。

 魔法能力が『ヘンリッキ』より大幅に優れています。

 これにより92%の移植が可能になりました。

 これよりインストールを開始します》



「え? あ? ええ?」

「どうしたの、たつろー? 何か体が変になったの?」

「いや、そういうのじゃないから安心してく──」



 心配そうに見つめてくる愛衣達を安心させるように出来るだけ冷静を装うが、ドンドン勝手に進んでいくアナウンスに竜郎は内心かなり慌てていた。



《インストール完了。

 これにて『タツロウ・ハサミ』がステータス、継承可能なスキル、称号が正常に移植されました》

《大賢者 より 魔を内包せし大賢者 にクラスチェンジしました。》

《スキル 魔卵錬成 を取得しました。》



「……………………終わった…………みたいだな──っと」

「おおうっ。いきなり攻撃してきたね」

「ああ、だがもうシステムが消え去ったから、こいつはもう人間の残滓もないし、かなり弱体化してる。

 ここで止めを刺してやろう」



 事情を説明しようとしたところで、完全に『ヘンリッキ』としての全てを失い、ただの魔物と化したそれが、枝で叩くように近くにいた竜郎に攻撃してきた。

 けれどそれを月読が自動でセコム君を使って掴み取り、そのまま引き千切って枝を捨てた。

 それを見ながら竜郎は、これは自分の役目だとばかりに外した手袋をはめ直して一歩前に出ると、天照を手から放して《竜念動》で浮遊しながら後ろについていて貰いながら、無手で自分だけの力で残った枝からの攻撃を焼き焦がしていく。



「受け取れば解ると言っていたが、結局まだよく解らない。

 けれど俺達のやれる範囲で、お前の意に添うように動いてみよう。

 だから、安らかに眠れ──」



 竜郎は小さな光り輝く火種を手の平から出し、それを飛ばして木魔物に付着させる。

 すると苦しむ間もなく、あっという間に消し炭となって死に絶えた。

 もう人間の部分は空っぽの魔物とはいえ、チクリと竜郎の心が痛んだ。



「とりあえず、これでもうシュベ公は増えないはずだ。

 今日は一旦引き返して、そこで詳しい事を話すよ」

「うん、解った。それじゃあ、皆てっしゅー!」



 暗い気持ちを吹き飛ばすように、愛衣は明るく撤収の号令を出した。

 それに続くようにして、竜郎達はこの森を後にした。


 その後は、結界の外からも巨大骸骨の姿と激しい戦闘音が聞こえていたらしく、ギルド職員に説明を求められたので、話せる範囲で軽く事情を伝える。

 事情を理解した職員たちは半信半疑ながらも納得してくれ、直ぐに竜郎達は質問攻めから解放された。


 そしてそのまま森から離れ、今は落ち着けるように拠点と化したいつもの場所に家を取り出し、そこのリビングの丸テーブルに全員で腰かけ話を聞く体勢をとった。



「それじゃあ、あそこで俺に起きたことを説明しようと思う。

 という事で、まずは俺のステータスを見てくれ」

「はーい」



 元気に返事をする愛衣含め、全員で竜郎のステータスを覗いていった。



 --------------------------------

 名前:タツロウ・ハサミ

 クラス:魔を内包せし大賢者

 レベル:104


 気力:426

 魔力:4627

 竜力:11730


 筋力:992

 耐久力:939+60

 速力:878+40

 魔法力:8454

 魔法抵抗力:8029

 魔法制御力:8747

 ◆取得スキル◆

 《レベルイーター》《複合魔法スキル化》《精霊眼》

 《精霊魔法》《魔法域超越》《強化改造牧場》

 《植物達の祝福》《陽光回復》《魔卵錬成》

 《陰陽玉》《炎風》《土尖風》 《粘着水》《呪幻視》

 《施錠魔法:火解風呪雷.タイプ1》

 《光魔法 Lv.14》《闇魔法 Lv.14》《火魔法 Lv.11》

 《水魔法 Lv.11》《生魔法 Lv.10:上限解放》

 《土魔法 Lv.10:上限解放》《解魔法 Lv.11》

 《風魔法 Lv.11》《呪魔法 Lv.11》《雷魔法 Lv.11》

 《樹魔法 Lv.10:上限解放》《氷魔法 Lv.10:上限解放》

 《重力魔法》《爆発魔法》《施錠魔法》《魔力質上昇 Lv.5》

 《魔法密度上昇 Lv.3》《魔法生成上昇 Lv.3》

 《魔力回復速度上昇 Lv.6》《集中 Lv.8》

 《連弾 Lv.2》《多重思考 Lv.1》《堅牢体 Lv.8》

 《統率 Lv.12》《全言語理解》

 ◆システムスキル◆

 《マップ機能》《無限アイテムフィールド》


 残存スキルポイント:1122


 ◆称号◆

 《光を修めし者》《闇を修めし者》《火を修めし者》

 《水を修めし者》《生を修めし者》《土を修めし者》

 《解を修めし者》《風を修めし者》《呪を修めし者》

 《雷を修めし者》《樹を修めし者》《氷を修めし者》

 《打ち破る者》《響きあう存在+2》《竜殺し+2》

 《竜を喰らう者》《収納狂い》《すごーい!》

 《創造主・序》《創造主・破》《エンデニエンテ》

 《高難易度迷宮踏破者》《越境者》《先導者》

 《魔物小長者》《魔物長者》《魔物大長者》《魔物特大長者》 

 --------------------------------



「おぉ……。俺も今初めて見たんだが、かなりおかしな事になってるな」

「クラスも変わって、レベルがちょろっと上がってるし、何かよく解んないスキルとか称号がモリモリ増えてる……」

「さりげなく竜力も少し上がってますね」

「それもそうですけど、魔法系はまだいいとしても、低かった武術系統のステータスが大幅に上がってますの!」

「これは何が起こってるんすか?」

「ん~俺にも今一よく解らんが、リアなら説明できるんだよな?」



 何となくこうなのではないか? という推察は出来るが、自分よりもよく知っていそうなうえに、こうなるキッカケともなった大丈夫だと太鼓判を押したリアに竜郎は水を向けた。



「ですね。けれど私も彼の奥底で厳重にしまわれていた中核を観れたのは数秒でしたし、憶測も含みますがいいですか?」

「ああ。勿論それでいい。だから頼む」



 そこで一旦リアは頭の中で説明する順序を組み立てながら、ゆっくりと説明を始めた。



「まずはあの元人間だった木魔物ですが、彼は元は支配型の融合植物だったみたいです。

 なので元は人間どころか魔物ですらない、植物の一種でした」

「ん? それじゃあ先天的に魔物だったりとか人間だったりとかじゃなく、後天的に魔物人間になったって事か?」

「はい。まず元となっている融合植物は、取りついた別種の植物に融合して支配し、その植物の体を乗っ取って成長していくのですが、その途中で植物の魔物に融合して乗っ取ったようです。

 そうして自我が少しずつ生まれて、本能でより強い植物魔物に融合し成り替わっていき、組み合わせが良かったんでしょうね、その途中で人間へと至ったのだと思います。

 そして今回、兄さんがこのようになった原因となる《融合移植》というスキル。

 これは彼の根源となす融合型の植物として持っていた性質を、システムがインストールされたことによって、スキルとして定着したものだと思います。

 効果は強い方にシステムが移植され、弱い方は消えてなくなるというものです」

「ってことはだよ? 今回はたつろーの方が強かったから、木魔物さんのシステムがまんま移植されたって事でいいの?」

「それでいいと思います。けれど普通は植物と人ですから、相当相性も悪いでしょうし半分も移植できなかったはずです。

 けれど兄さんにはエンデニエンテという、適応力の塊のような称号がありました。

 なので本来なら兄さんよりも、カルディナさん達の方が適性があった所を押しのけて、そちらに目を付けたのだと思います」

「なら別に、おかーさまでもよかったんですの?」

「姉さんの場合。《武神》スキルの影響力が激しすぎるのと、移植元となっている方のステータスが、どちらかと言えば魔法よりのテイマー型のモノとなっていた事も影響していると思います」

「ん~? でもとーさんの増えたスキルを見るに、解析系の能力はナイっぽいっすけど、どうやって見分けたんすかね?」

「それは……正確には見れませんでしたが、おそらく核となっている融合植物が本来から持っている、最適な融合先を嗅ぎ分ける様な本能があったのだと思います。

 もしくは継承しきれなかったスキルの中に、あったのかもしれませんが」

「それで俺って事か。まあ見る限りマイナスになった所は一つもないし、有難いと言えば有難いんだが」



 結局、木魔物の彼──ヘンリッキが、受け取れば解ると言った何かが、未だ解らずモヤモヤした心持ちの竜郎。

 けれど受け取った何かを探って行けば解るかもしれないと、細かい箇所に全員で目を向けていく事にした。



「まずは何より目を引くのは、《強化改造牧場》だよね!

 マッドなサイエンティストの匂いがプンプンするよ!」

「実は俺も一番気になってたんだよな。えーと、どれどれ~」



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 スキル名:強化改造牧場

 レアリティ:ユニーク

 タイプ:アクティブスキル

 効果:《テイム契約》、《共感覚》を最大レベルで使用可能。

    テイムした魔物を異空間の牧場に収納でき、いつでも召喚可能。

    また魔卵状態で収納すれば、生まれた時からテイム状態となる。

    (※牧場の大きさは、全ステータスの合計値が高いほど広くなる。

      テイム容量は、その広さに収まる分だけとなる)

    テイムした魔物は、強化と改造が可能。

    (※生まれてからの日数が短く、成長過程であればあるほど幅が広がる)

 --------------------------------------



「……ユニークって、私たちの《武神》や《レベルイーター》に匹敵するレアリティってことだよね?

 一人でそれを二つも持つことになるって、ちょっと凄くない?」

「レアリティもアレっすけど、効果もヤバいっすよ、かーさん。

 これはテイマーにとっては破格のスキルっす。もう書いてある事がチートそのものっす」

「この方は突然、高い知性に目覚めたタイプなのでしょうね。後天的に人間になった人には極稀にいるそうですから。

 それでもここまでのスキルを初期に与えられるほどの知性を、いきなり目覚めさせるのは、ほぼ有りえないのでしょうけど」

「ということは、おとーさまは、最強の魔法使いでもあり、最強のテイマーにもなりえるという事ですの?」

「ここまでぶっ飛んでると、もはやテイマーとは別物みたいだけどな」

「けどこれなら、たつろーの卵コレクション達も使えそうだね。

 でっかい蜂さんの卵も持ってたし、将来養蜂でもやっちゃう?」

「あれを使うか……。コレクションにするつもりだったんだが、こんなスキルを与えられたら使うしかなさそうだな」



 そう考えながら《無限アイテムフィールド》をポチポチして調べると、どうやら卵は素材として複製出来そうだと言うことが解った。



(一応《アイテムボックス》とかに入るから、生物扱いされていないのは解ってたが、普通に卵も複製できるのな)



 これは面白くなりそうだと、竜郎は密かに胸を高鳴らせたのであった。

私の事情で(火)(水)に休みを移動し、明日月曜日も更新したいと思います。

次週からはいつも通りに戻ります。

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― 新着の感想 ―
[一言] 強化改造牧場ってグレゴリーの高祖父が求めたものそのままずばりですね 自分と子孫の生涯かけてもたどり着けなかったものが、既にスキルとしてあったってのはスキルですべてが決まるこの世界らしい皮肉だ…
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