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レベルイーター  作者: 亜掛千夜
第七章 黒菌編

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第316話 愛衣とリアの装備完成

 発生源を特定してからもリアが準備を整えてくれるまでの間に、竜郎達はバンラロフテ森林とバンラモンテについて外から解る事をじっくりと調べて回った。

 解った事と言えば、森と山に存在する魔物の種類、脅威レベル、主な生息圏。

 それと発生源を数日かけてじっくりとあの手この手で試行錯誤しながら調べていくと、発生源はどうやら竜郎達が目的地に定めていた風山だったという事。

 そして巨大な力がそこで渦巻き、辺りに黒菌をばら撒いているという事が解った。

 なのでもし小妖精たちに頼まれた人物──アウリッキが黒菌発生時にそこにいたとするのなら、死んでいる可能性が高い。

 だが炎山に帰らずに別の所に移動したという事も十分あり得るので、あまり悲観的にならない様にした。解魔法での探査がそこだけ上手くいかないのだから、それを確認する術もないのだから。



「てのが今現在、俺達が解っている事だな。

 その事を念頭に置いてこれからの行動を考えるのなら、まずはリアに造って貰った、この竜力の保護膜を形成する道具を身に着けてから、結界の外からリアに一度《万象解識眼》で見て貰って森へ侵入」



 そう言いながら竜郎は、リアが作った黒菌対策のゴムの様な素材で出来た伸縮可能な腕輪を手に取った。



「それから依頼3のイモムーパパの掃討だね」

「シュベルグファンガスな。まあ、名前なんて何でもいいが」

「倒し終わったら、そのまま発生源まで突入しますの?」

「いいや。発生源に何があるのか全く解っていないから、念には念を入れてどんなに消耗が少なくても、その日はホームに帰還して、全員の竜力を最大値まで回復させてから山にアタックしよう」

「発生源は勿論の事、そこ以外でも何があってもいいように万全の状態を整えていた方がいいっすからね」

「そういうことだな。ダラダラとのんびりやるつもりはないが、慌てたり面倒くさがって手を抜くのは違うからな」

「ですね。一歩間違えたら死んでしまう事だってあるんですから、油断は絶対に厳禁です」



 そうして話し合っていき、シュベルグファンガス十二体討伐、帰宅。

 バンラモンテの一部、風山へとアタック開始、到着次第調査。解決できそうなら、そこで片づける。

 という大まかな方針を決めた。



「今の手持ちの情報だと、決められる手順はこんなもんかな。何か質問は?」



 竜郎が全員の顔を見渡しても誰も発言する様子はなかったので、作戦会議はこれ位にして、いよいよお待ちかねの愛衣のグローブと、リアの機動力を増強させる装備品のお披露目と相成った。

 しかし今いるマイホームのリビングでは狭いので、全員で広い外へとやってきた。



「ではまずは姉さんのグローブから」



 そう言いながらリアは《アイテムボックス》から、愛衣専用の魔力頭脳搭載型グローブを取り出した。



「おお、たつろーのとお揃いっぽい!」

「流石に愛衣の方は打撃もするから甲の部分には何もついていないが、色とか形とかの雰囲気は似ているな」



 そのグローブは黒く肘までの長さで、竜郎の物と違って甲の部分には何もなく、前腕の肘裏の近くに魔力頭脳のコアがそれぞれ一つずつ埋め込まれていた。

 袖の部分には輪形の帰還石を入れるマガジンが装着できるようになっていた。


 それをリアから受け取った愛衣は、さっそく自分の両腕に装着してみせた。

 そしていつも戦闘時には身に着ける鎧も出して、手装甲の部分だけを装着しないで他全てを身に着けてみた。

 すると鎧も黒を基調としているので、手装甲からグローブに変えても違和感は無く、見た目的にも似合っていた。



「それでこれは、どうやって起動すればいいの?」



 宝石剣や竜郎のライフル杖の様にトリガーが付いているわけでもなく、発動の為の機構が何処にも見当たらなかったので、愛衣は素直にリアに問いかけた。



「それはですね。手の甲同士を打ち付けると起動するようになっています。

 それなら誤発動も無いでしょうし」

「えーと、こうかな──おっと。出来たみたいだね」



 リアが左手を出して右の甲で左の甲を叩くような仕草をしたので、それを真似るように愛衣がグローブの甲同士を打ち付けると、帰還石が割れた音と共にコアに青い光が宿っていった。



「それはグローブですので手だけの補佐しかしてくれない様に見えますが、ちゃんと体術全部の補佐をするように造ってあります。

 ですので普段通りにやってみてください」

「解った! ──いくよー」



 愛衣はいつもの様に両の拳に白と黒の竜の気力を纏おうとすると、宝石剣の時同様に、ほとんど制御をする事無く、いともたやすく気獣技を顕現して見せた。



「やっぱり魔力頭脳があると楽ちんだねー。ならこれも出来るかな──っと」



 今度は気獣技の極技『纏』を、体術で再現してみることにした。

 右半分が白の、左半分が黒の一匹の竜を体から飛び出させると、それを自分の体表面に張り付ける様なイメージで纏っていく。

 魔力頭脳が宝石剣の時の様に最も適した形を演算していき、二秒後には答えにたどり着いた。



「ん、できたみたい」



 愛衣の額には右半分が白の、左半分が黒の竜の顔を模した紋が浮かび上がり、体術の纏──白黒竜を体全体で纏う事に成功した。

 これでちゃんとできているのなら、自分の破壊したい物だけを破壊できるようになっているはずだ。

 なので試しにと愛衣から見て木が縦に二本並んでいる所にめがけて、竜纏の拳の気力を飛ばしてみた。

 すると手前の木はすり抜けて、後ろの木だけを半分消し飛ばした。



「おー。いつみても『纏』ってのは不思議な技っすね」

「殴りたいもの以外は透過してって、かなりのチート技だよな。

 手前の障害物を無視できるんだから、相手の鎧とか防具も無効化できるわけだろ?」

「まさに武術職の魔法ですの」

「その代わり、全部位の使用を許された者にしかできない芸当ですけどね」

「うん。だから特殊な恩恵のある人とかじゃないと、出来ないっぽい」



 特殊な恩恵とは、それぞれの体神、剣神、槍神などの名を冠するスキルを持っているか、その全ての上にある武神の名を冠するスキルである。

 これらがないと、まず気獣が全身を貸してくれるということはない。



「まあでも、うちの場合はカルディナちゃん達が纏を使えなくても、他で十分カバーできるし、使えなくても問題ないんだけどね。

 それじゃあ、私のはこれでいいとして。次はリアちゃんのやつを見して!」

「はい。解りました」



 リアの場合は明確な形を教えられてはいないので、手伝っていた奈々以外はどんな見た目をしているかも解っていない。

 なので皆興味深げな視線を向けて見守った。

 そんな中取り出されたのは、ボス竜の鱗で造った軽装鎧。



「まず簡易型移動装置からお見せしますね。これは起動をかなり簡略しているので突然戦闘になった時や簡単な戦闘時、または狭い場所で使う道具です」

「じゃあガッツリ戦闘バージョンもあるんすか?」

「はい。そっちはこの後でお見せする予定です。ではまずこっちをっと──」



 リアは出来るだけ軽く頑丈にし、背中の内側に魔力頭脳のコアが埋め込まれていて、腰の部分には長方形の箱が出っ張った物が付いた軽装鎧を身に纏う。



「起動──」



 軽装鎧の腰についていた箱の側面部についているロータリスイッチを捻って、魔力頭脳のコアを起動させると同時に、鎧の裾部分から茶色い鉱物で出来た細い蜘蛛の足の様な物が左右四本ずつ飛び出して地面に立ち上がり、リア自身の足は地に触れるかどうかという所で浮いていた。



「それが簡易型の移動装置か。それは蜘蛛の足みたいな方で自由に動けるのか?」

「はい。それじゃあ動作チェックもかねて、試しに光魔法だけのレーザーで私を打ってみてくれませんか? 兄さん」

「まかせとけ──ていっ」



 竜郎はただの光魔法単一で造った非殺傷のレーザーを、右手人差し指からリアに向かって撃ち放つ。

 当たってもイモムー一匹殺せない無害なレーザーポインター的な魔法とはいえ、速さは高速。

 タイミングが解っていても、撃ってから回避行動に動いてはリアの場合避けるのは難しいはずだった。

 けれどリアの鎧から飛び出した八本の蜘蛛足が勝手に動き、サッと無駄のない動きで横にずれて回避して見せた。



「おお凄いな。だったらこれはどうだ!」



 感嘆の声を上げながら、何処まで躱せるのかと今度は上と横から湾曲するレーザーを同時に二本放ってみた。

 直線軌道ではなく弧を描いて上方向と横方向からくるレーザーを、蜘蛛足はバックして躱す。



「まだまだ!」



 だが躱された先で軌道を変えて、バックしたリアに向かって直線に向かってきた。

 けれど今度は蜘蛛足をバネの様にして、上に三メートルほどジャンプして逃げる。

 さらに軌道を修正してレーザーが下から打ち上げるようにやってくる。

 空中では躱せまいと竜郎が思っていると、驚くべきことに空中を蹴って横に飛んだ。



「うおっ。空中移動もできるのか!」

「まだ改良の余地はありますけどね」



 などと呑気に会話しながらも、竜郎の二本のレーザーはまだリアを追い続ける。

 けれど人間の二本脚ではまずありえない足さばきで、ピョンピョン空中を蹴りながら立体的な軌道を描き上下左右、自由自在に動いて二本のレーザーは掠りもしなかった。



「お見事、降参だ」

「お粗末様でした」



 竜郎が両手を上げてレーザーを消すと、リアの方は二本の蜘蛛足で上を蹴って地面に落ちていき、残りの六本の足をサスペンションの様にして勢いを殺して綺麗に着地。

 ここまでの動きは、明らかにこれまでのリアの機動力を凌駕していた。



「それって軽く探査魔法を使っているよな?」

「はい。周囲6メートル範囲に入ってくる物体を感知して、魔力頭脳に情報を送信。

 高速演算で最も適した軌道を算出し、オートで攻撃を避ける仕組みになっています」

「魔道具で探査魔法まで再現しちゃうんだね」

「ええ、けれど精度は物体感知くらいで、解析までは出来ませんけどね」

「さっきリアッちはオートで攻撃を避けてるって言ってったっすけど、とーさんのレーザーを躱してた時は、何にも操作とかはしてなかったんすか?」

「はい。マニュアル制御もできますが、基本オートで私は私で別の事が出来るようにしてあります」

「空を蹴ってるのは、どんな仕組み? 私の《空中飛び》みたいなもの?」

「というよりはダンジョンの敵が使っていた《水歩》と、ボスが使っていた《竜水歩》を参考にしながら、何とか空中で出来ないか試行錯誤して今に至るって感じですね。

 ただ今もって不完全なので重量制限が厳しい状況でして、小細工なしでは簡易版の方でしかできません。

 どこかで空系の歩行スキルを持った魔物とかいませんかね。是非観たいのですが」



 竜郎や愛衣はそんなスキル持ちにはあった事が無かったので、知らないと態度で示したのだが、カルディナはそのスキルを使う魔物と実際に戦った事がある事を思い出した。



「ピュィーピィピィピューー」

「あら、そうなんですの? リア、カルディナおねーさまが戦った魔物に、そんなスキル持ちがいたそうですの」

「ほんとですか!? ちょっと詳しく教えて貰えますか?」

「ピィッ!」



 勿論と言うように翼を広げ、カルディナは以前にリューシテン領で戦ったテイマー達の魔物の中にいた、黒豹の魔物の事について語って聞かせた。



「私のは堅いですか?」

「ピィーピピィュー、ピピィュー。ピュィー」

「以前見た魔物の空歩は、もっと柔らかい地面を踏むような感じだったといってますの」

「ほうほう。では──」



 そうして簡易型ではない本命を紹介する前に、リアはカルディナを質問攻めして困らせたのであった。

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