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レベルイーター  作者: 亜掛千夜
第七章 黒菌編

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第314話 調査するにあたって

 調査は直ぐに始めることは出来ないので、取りあえず宿をとって詳しいミーティングをしようとした竜郎達だったのだが、下級市民地区にある宿屋はどれも雑魚寝部屋しかなく、一般市民地区に行くとすると奈々かアテナに戻って貰わなければならない。

 そこで面倒になった竜郎達は町の外に出て、適当な所を見つけてマイホームを《無限アイテムフィールド》から取り出した。


 認識阻害のアイテムを起動してから、解の精霊魔法を入れた鳥型の木人形を放ち、人型の木人形には火を、馬型の木人形には光を入れて、乗馬した状態でレーザーが撃てるようにしてから家の前に立たせた。

 そうして簡単に守りを固めてから竜郎達はリビングのテーブルに座って、依頼について話し始めた。



「まず提案なんですが、明日までに人数分の、自動的に竜力を吸い取って体の周りに展開する簡単な魔道……というより竜道具?を造りたいと思っています。

 そうすれば不測の事態で意識が途切れても、勝手に竜力で防いでくれるので奇病に感染することは無くなるはずです」

「おおっ。いいね、それ。あっちもこっちも考えながら戦うのは、めんどくさいし!」

「面倒ってのもあるが、意識しないで勝手にやってくれるっていうのは助かるな。

 いざという時の保険にもなる」

「じゃあ、造ると言う方向でいきますね」

「ああ、頼む」



 書記を買って出た奈々が、手元の紙に『・リアが竜道具を作る』と書いた。



「それじゃあ、それが出来たらさっそく狩りに行くんすか?」

「んー、それも良いと言えば良いんだが、まずは俺とカルディナで解析。

 それからリアの《万象解識眼》や俺の《精霊眼》での解析。

 これが終わってから、シュベルグファンガスを解析。

 そこでやれそうなら討伐して、奇病の範囲内で動けているサンプルとして回収って流れが理想かな。

 今回はほとんど解っていないだけに、出来るだけ慎重に行きたい」

「それもそうだね。でも私とたつろーのエンデニエンテって奴は、あらゆる環境に適応できるんだよね?

 今回の奇病でも、私達二人は大丈夫って事は無いかな?」

「ああ、それは俺も考えていた。だが万が一、その称号でも対応できなかった場合は最悪だからな。

 大丈夫だと確信が持てない限り、試す訳にはいかない。だから、やってみようなんて絶対に考えないでくれ」



 竜郎は心配だと目で語りながら、横に座っていた愛衣の手をギュッと握って見つめた。

 それに愛衣は少し顔を赤らめながら、「うん、解った」と言って竜郎の手をギュッギュッと握り返した。



「あと、やっておいた方がいいことは有りますの?」

「ピィーーーユューーイィューーピィッ」

「ヒヒーーンヒヒーーン。ヒヒーーン」

「それもそうですの」

「ん? 今カルディナとジャンヌはなんて言ったんだ?」

「カル姉は万全を期すなら、リアの魔道具を完成させてから行ったらどうかって言ってたっす。

 んでジャン姉は、ならかーさんのグローブも造っておいた方がいいんじゃないかって言ったっす」

「翻訳ありがとな、アテナ。ふーむ、リアと愛衣のヤツか。

 その辺は何処まで進んでいるか聞いてもいいか?」

「ええ、勿論です。と言うか、よくぞ聞いてくれました兄さん。

 私の道具も姉さんのグローブも、合わせて完成まで二、三日といった所です。

 移動時間はほとんどこっちをやらせて貰ってましたし、かなりはかどりました」

「ほんとに! ねーねー。それじゃあ、ちょっと待ってみよーよー。

 さすがに一ヶ月とかだと怒られちゃうかもだけど、それくらいなら準備期間のうちだよね?」



 愛衣のグローブと言うと、体術スキル用の魔力頭脳を使った装備品だ。

 愛衣は自分だけでは纏を使えないが、魔力頭脳にアシストして貰えば出来てしまう。

 そうなれば体術の大幅な強化にも繋がるので、密かに楽しみにしていたのもあり、愛衣はキラキラした目で竜郎を見つめた。

 竜郎は「可愛すぎる!」と叫びながら、思わず抱きしめて頭を撫でていた。

 愛衣はそれに「なにするのー!」と口では言いながらも、しっかりと自分からも竜郎を抱きしめていた。



「えーと。それでどうするんですか、兄さん、姉さん」

「おっとスマン。我を忘れていた……」

「おっとすまねぇ!」



 ほっておくと本気でイチャイチャタイムに突入しそうだったので、リアが話を進めるために先へ促すと、竜郎は南無南無と手を合掌し、愛衣は右目を瞑って右手の側面を縦に顔の前に持ってきてゴメンポーズをとっていた。



「えーと、何だったか。──ああ、そうそう。愛衣とリアの新装備の話だな。

 ったく、愛衣が可愛すぎるせいで忘れてしまったじゃないか」

「それならしょうがないね!」

「はいはい、もうそれでいいですから。どうするか決めてくださいよ、兄さん」

「そうだな。カルディナとジャンヌが言う事も、もっともだ。

 だがそれを造ったうえで、竜力を展開する竜道具?だっけか?

 それもとなると、余裕をもって見積もった場合どれくらいの期間が必要になるか解るか?」

「えーと。そうですねぇ……。最長でも五日あればできると思います」

「早いな。ならリアはそれを頼む。

 となると、その間俺達は暇になるから情報収集と、準備が終わり次第すぐにでも行けるように、森周辺にいるギルドの職員達と顔合わせもしておこう。

 ってことで、どうだろう」



 全員が竜郎の提案に頷いたようなので、今後はそのように動いていく事となった。

 とはいえ、今日は技術班以外にやる事も無いので、ここで解散とし、リアと奈々は工房ルームへ、カルディナ、ジャンヌ、アテナはリビングのソファで《幼体化》してグデーと寝ころんでいた。

 それを横目に微笑みながら、竜郎と愛衣は散歩をしてくると言って家を出た。


 外に出れば馬と人の木人形が二匹の魔物を倒しており、玄関から少し離れた所に転がされていた。

 その死骸を《無限アイテムフィールド》にいれて、竜郎は愛衣を抱えて月読の翼を広げ、天照に風を制御して貰いながら空のデートとしゃれ込んだ。


 今いる場所は町から五キロほど離れた場所で、木々がポツポツと立ち並び草が無造作に生えていた場所。

 そこを家の範囲だけ切り開いて、マイホームを置いたのだ。

 そうして眼下に人間の手の入っていない自然を収めながら、竜郎と愛衣は空の上で話し合っていた。



「それにしてもイモムーの進化系かぁ。早く見てみたいなー」

「俺達が初めて会った異世界生物だからな。それからも何度となく出てきたし──と、噂をすればあそこにもいる」

「どこー──あ、ほんとだ。本当に何処にでもいるんだね、イモムーは」



 解魔法の反応的に全く美味しくないので、特に攻撃することなく草むらをウゴウゴと這っている姿から目を離した。



「あれが昆虫種のドラゴンと呼ばれるようになる存在とはな。想像もできない」

「しかもそれが複数体だよね。そんなに強いのが何体かいるんなら、もしかして残りのSPも稼げちゃうかも」

「けどまあ、言うてもイモムーの進化形だぞ?

 油断する気は全くないが、あんまり高望みするのはやめとこう。

 そうすれば、多かった時に喜びも一入だろうからな」

「そっかあ──うん、そうだね。それに状況次第では、《レベルイーター》使う前に殺さなきゃいけないかもしんないし」

「ああ、そう言う事だな」



 そこで一旦話を打ち切り、竜郎はお姫様抱っこしている愛衣と口づけした。



「──ん。あとさー。小妖精さん達の兄貴分さんってのが帰って来なかったのってさあ……」

「ああ……」



 皆わかっていながらも口にしなかった事だが、二人の間で遠慮する必要は無いと愛衣は口火を切った。



「バンラモンテも奇病の範囲内だ。もしあそこにいたのだとしたら、既に死んでいる可能性が高い」

「だよね……。生きてるのなら直ぐに脱出するなりして、帰ってるだろーし」



 もし奇病を除去できた末に死体を発見したのなら、遺体だけでもあの小妖精たちに持っていこうと二人は決めた。



「よしっ! 暗い話はこれで終わりだ!」

「うん! 後は暗くなるまでデートしよー!」



 心に差した闇を振り払うかのように二人は空を舞い、近場を飛びかいながらデートを楽しんだ。

 そして最後は高く高く飛び上がって、ここからも何となく見える遠くのバンラモンテと言う山の中腹を二人で眺めた。

 その山は非常に高く、雲を突き抜け、幅も大きくとった巨大な壁の様な一つの山だった。

 そんな山に夕日が差し込んでいくと、それは真っ赤に染まっていき、二人の目を引き付けた。



「でっかい山だねー」

「ああ、日本にいた頃の俺達じゃ、登ろうとすら考えもしなかった山だ。

 あんな山の天辺からの景色も、こうして愛衣と見てみたいな」



 胸に抱いた愛衣をギュッと抱きしめると、愛衣も潤んだ瞳で竜郎を見上げた。



「うん。だからとっとと依頼を解決して、今度はお山の天辺でデートしよーね♪」

「ああ、約束だ」

「うん、約束──ん」



 そうして高い高い空の上で、竜郎は背中の水の翼をはためかせ、愛衣は上に口を向け、真っ赤に染まる遠い山を背景に、今日だけでも何度目かも知れないキスをしたのであった。



「それじゃあ、名残惜しいが」

「うん。そろそろ帰りましょ、旦那様♪」

「──っ。あ、ああ。帰ろう」

「ふふっ、照れてる。可愛いなあもー」



 真っすぐ瞳を見つめられ、可愛らしく微笑んでの「旦那様♪」は竜郎にクリーンヒットし、顔を赤くした彼氏を前に愛衣は可愛い可愛いと頭を撫でてきた。

 そんな彼女に、竜郎はやられっぱなしではいけないと反撃に出る。



「くそっ。今夜は覚えてろよ! 今度はこっちが可愛くしてやるからな!」

「ヘヘーんだ。今日は私も燃えてるからね! 逆にそっちでも手玉にとってあげちゃうんだから!」

「──ほう。言ったな。これは今晩楽しみですなあ」



 余裕の笑みの竜郎に、今度は愛衣が逆境に立たされたようだ。何せ最近は、夜の営みでは竜郎にやられっぱなしの愛衣なのだから。

 けれど愛衣もやられっぱなしではいられないと、強がってみせる。



「ふ、ふんだ! 私の今まで培ってきた技術を見せてやるんだから!

 で、でも、ちゃんと優しくするんだぞ!」

「当たり前だ。世界で一番大切な人を乱暴に扱えるか」

「世界で一番大切な人だなんて、やだなーもうっ」

「だが、そっちでは負ける気はないぞ。なにせ俺のホームグラウンドだからな!」

「なんちゅーとこをホームグラウンドにしてんのさっ!?

 この、えろろーめーーーー!!」

「ふはははははっ。俺にとっては最高の称号だぜ!」

「ばかーーーー!」

「ふははははーーーー!」



 そんな事を空の上でギャーギャー話し合いながら、空のデートは終わっていった。


 ちなみに。その日の夜の戦績は愛衣が何とか一勝を勝ち取ったのだが、後は竜郎の独壇場だったとか……。

次回、第315話は9月6日(水)更新です。

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