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レベルイーター  作者: 亜掛千夜
第六章 喧嘩上等編

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第289話 宝石剣改修完了

 冒険者ギルドで軽く揉め事があった事を細かく伝えて、もう無いだろうが今後いちゃもんを付けてきた場合の布石をしっかりと打っておいた。

 それから報酬を受け取り宿に帰る頃には、辺りはすっかり暗くなってしまっていた。

 なので一旦アーレンフリートと別れ、竜郎達は夜食を食べるべく自分たちのフロアに向かった。

 リアを訪ねてみればキリの良い所だったので、一緒に夜食をとる事と相成った。

 話題は当然、今日のお互いの行動についてだ。



「あはは。それは大変でしたね、兄さん」

「笑い事じゃないぞ、リア。死にそうなところを助けたのに、獲物を横取りした──なんて発想する輩がいるとは思わなかった」

「その方々はシド村って言ってたんですよね?

 確かここより少し離れた所に、そう言って領内に住みついている集団がいましたっけ。

 法律もなくスラムの様な所で、子供には近づくなと言われている所ですね。

 聞くところによれば力こそが全て、みたいな風習みたいですし、舐められたら負けと思って引くに引けなかったんでしょう」

「力こそ全てっすか。そんな所で狂犬呼ばわりされていた割には、残念な実力だったすけど」

「ハッタリだったんじゃありませんの? 張りぼてでも、身を守れることは有りそうですの」

「というよりガキ大将みたいな子供だったから、大人からそう呼ばれただけって感じかもしれませんね。

 強い弱い関係なく、単に迷惑な暴れん坊と言う意味で」



 リアの言葉に全員が「あー……」と言った顔で、納得してしまった。

 そして今度は奈々とリアの話に話題は変わっていった。



「姉さんの宝石剣の改修が終わりました」

「ほんとっ。ありがとーリアちゃん!」

「──わぷっ」



 愛衣は胸にリアの顔を押し付けるように抱きしめた。竜郎はそれを羨ましそうに眺め、今夜やって貰おうと密かに画策した。



「──ぷはっ。もう解りましたから、ちょっと離れてくださーい」

「あん。しょうがないなぁ」



 リアに押しのけられてようやく愛衣は距離を取った。

 それを確認するとリアは《アイテムボックス》から、生まれ変わった宝石剣を取り出した。



「おー。なんか柄の部分がメカっぽくなって、かっこいいかも」

「ええ。使いづらい部分が有ったら、遠慮なくいって下さいね」



 出てきたのは宝石の刃の箇所以外の、持ち手部分、全てが新しく換装された宝石剣。

 宝石部分の根元内部に魔力頭脳のコアが完全に埋め込まれており、それ以外は宝石の刃の部分は変わっていない様に見える。

 特筆するほど変わっているのは鍔から柄の部分。鍔の部分は厚さ三センチ程の四角柱で、四隅から細い筒が一本ずつ伸びていた。

 そして柄の部分は持ち手の長さは変わらないが、竜郎のライフル杖の様にトリガーが設置されていた。

 また柄の頭部分は逆V字になっており、薄い長方形の何かを嵌め込むようなソケットが付いていた。


 そんなNEW宝石剣を手に取って、愛衣は皆から少し離れて広いスペースの中で剣を振ってみる。



「うん。宝石剣自体としては、前と変わらず使えそうだね」

「では次に柄の根元付近にあるトリガーを引いて下さい。そうすればコアが起動します」

「解った!」



 愛衣は幼子の様な無邪気な笑顔で持っていた右手の人さし指を伸ばして、トリガーを引いた。

 すると竜郎のライフル杖の時同様に、フィーーンという音がすると宝石剣内部に埋まっていたコアが青く光り始めた。



「気力を込めて、気獣技を形作ってみてください」

「あいあいっ」



 愛衣は赤い気力を剣から噴出させながら、それを纏め上げようと意識する。

 瞬間、魔力頭脳が勝手に演算を開始し、愛衣が望む形を最適な気力を使って精密に実行していく。

 すると以前よりも密度が増し、より現実感のある巨大な獅子の赤い爪が出来上がった。



「すごっ。これ、ほとんど私は制御してないよ。

 これなら他の事に注意を向けられそう!」

「ふふふ──それだけで満足して貰っては困りますよ、姉さん。

 とっておきのギミックがここに──」



 リアは不敵に笑いながら、《アイテムボックス》から薄く細長い長方形の硝子の様な材質の透明な板を取り出して見せた。



「──そっ、それはっ!? ……なんだろ?」

「何で知ってる風を装ったんだよ……」



 相変わらず謎の行動をとる愛衣に呆れながらも可愛いなあと竜郎が思っていると、リアが改めてその物体が何か説明してくれた。



「属性魔法を封じこめて、他人が使えるようにする指輪を覚えていますか?」

「あー、あったっす。でも確か最大でもレベル6までで、そんなの使う暇が有ったら自分の力で攻撃した方が早いって言って、リアっちの研究用に保管することになった奴っすよね?」

「そうです。そしてダンジョンの情報を渡す相手を選ぶときに、鬼種の方が出したカード。

 アレはレベル10までの魔法を一時的にだけ封じ、設定時間で発動するという物でしたが、それも覚えていますか?」



 その言葉に皆の脳内では、『ケットチェリカ』のリーダー、エコアリチの顔と共に、取引材料の中にあったカードが二十枚ほど入ったカードホルダーを思い浮かべた。



「ああ。指輪と違って、属性魔法に囚われない所が魅力的だと思ったのを覚えている。

 ん? 今その話題を出してくるって事は、もしやそれは」

「はい。それらを研究した結果生み出された、新たな魔道具です」

「へー。それを使うと、どーなるのリアちゃん?」

「まず主目的としては、これはレベル10相当の魔法まで保存し、好きな時に放出する事が出来ます。

 呼称を付けるなら、魔封結晶とでも言いましょうか」

「それは凄いな。指輪やカードのアップデート版ってとこか。

 んで、主目的はって事は、副次的な使い方も出来るって事だよな」

「その通りです、兄さん。まずこの中に……そうですね、レベル10相当の火魔法ではなく、火属性の魔力を入れてください。

 やり方はコレを手に持って、色が変わるまで魔力を流せばいいだけです」

「解った」



 魔封結晶を受け取った竜郎は、言われた通り火属性の魔力を透明から色が変化するまで流し込んでいった。

 するとスポンジに水を吸わせるが如く竜郎の魔力が吸収されていき、あっという間に赤色に染まった。



「これでいいか?」

「はい。大丈夫──ですね。では、これを──」



 《万象解識眼》で状態を確かめてから、リアはそれを愛衣の持っている宝石剣の逆V字の柄頭に設置されたソケットに差し込んだ。



「では姉さん。気力を流し込みながら、魔力を開放するように念じてみてください」

「魔力を開放するようにね。──ん~~~~」



 愛衣が宝石剣を正眼に構え、魔力を解放するように念じながら気力を流していく。

 すると魔封結晶の色が抜けていき元の透明に戻ったかと思えば、刀身が真っ赤な炎に包まれた。



「──わわっ。なんか燃えちゃったけど、だいじょーぶコレ!?」

「大丈夫です。今度は気魔混合の時の様に、それを自分の気力に取り込んで制御してください」

「──解った!」



 皆が見守る中、燃え盛る炎の魔力に自分の気力を混ぜていき制御していく。

 するとただ燃え盛っていた炎が収まり始め、火属性を持った気力の刃が形成された。

 そしてそのまま気獣技を発動すれば、高温の炎熱が付与された獅子の巨爪が出来上がった。



「すごーい! 魔法の剣みたい!」

「というか、まさに魔剣じゃないか、これって。

 今は火属性の魔力だったけど、魔封結晶に入れる属性を変えれば色んな属性を持たせられそうだな」

「はい。ですが使いきりなので、一度使ってしまうと魔封結晶のカートリッジを交換しないと二回目が使えないという欠点があります。

 なので、ここぞという時に発動させるのが良いと思います」

「そういえば手伝っている最中は気づきませんでしたが、魔力を入れられるのなら、そこにおとーさまの魔力を入れて、わたくし達の非常食には使えませんの?」

「はい。それも出来ると思います。けれど今のカルディナさん達の体を維持する魔力量には、保有量が全く追いついていないので、本当に非常食という感じでしかありませんが」

「それでも、ありがたいっすよ」



 分霊系のスキルはほぼ半分の構成魔力を使用しているので、破壊された時のリスクが大きい。

 けれど非常食でも何でも、そこから直ぐにリカバリー出来るのなら、今よりは使いやすくなるだろう。



「後の問題は個数ですかね。造るのに手間がかかるので、まだ二つしかないんです」

「材料的には問題ないのか?」

「ええ。兄さんの《無限アイテムフィールド》による複製などもありますし、宝物庫で手に入れた稀少鉱物で賄えるので」

「ということは、時間さえあれば量産できるってことですの?」

「そうなりますね」



 けれど今は二つしかないので、愛衣用に火と雷の属性魔力を竜郎が注入して渡しておいた。



「ちなみに、その宝石剣の鍔の四隅ある筒の中に帰還石が入っています。

 一回の使用で一本消費するので、無くなりそうなら新しい物に入れ替えてくださいね。これが予備のマガジンです」

「はーい」



 そうして新たな宝石剣の使い方を軽くレクチャーしてもらい、愛衣はそれを自分の《アイテムボックス》にしまいこんだ。



「次は姉さんのグローブと、私の機動力強化を考えています。

 姉さんは素手でも大丈夫そうですが、より細かな気力操作の為にも念のため造っておいたほうがいいでしょうし、私は機動力がネックですからね」



 カルディナ達魔力体生物組は、分霊スキルのおかげで大分強化されているので、愛衣やリアを優先してという事も含まれての順番である。



「ネックと言っても、俺より早いけどなぁ」

「純魔法職の兄さんは正直動かなくても、いくらでも闘いようが有るじゃないですか。

 でも私の場合は、鍛冶術による変形と創造は直接当てる必要があるので、魔力頭脳をふんだんに使った乗り物を造ろうかと」

「今度こそガ○ダムくるかな。わくわくっ」

「愛衣は、そんなにガ○ダムが好きだったっけか?」

「いや別に、観たこともないし」

「見たことすらないんかいっ」

「そのガ○ダムって、この前も言ってましたけど、一体どんな物なんですか?」



 リアが興味深げに問いかけてきたので、竜郎が何となく知っている特徴を伝えていった結果、何とか伝わった。



「超大型の人型の乗り物で、それに人が乗って操縦して戦う……。

 まさか兄さんたちの世界は、そこまで進んでいるんですね……。

 そっちに行くまでに、もっと勉強しておかなきゃですね!」

「いやいやいや、架空の兵器だぞっ! そんなに科学も進歩してないからっ!」

「えっ、そうなんですか?」

「そうそう。アニメっていう、お話の中の存在だから、あんまり気にしないでね」

「そうですか……」



 ちょっと見てみたかったリアは、残念そうにションボリしてしまった。

 それを見た竜郎は、帰界して落ち着いたら、お台場に連れて行ってあげようと心に決めた。動くことは無いのだが、迫力はあるだろう……。



「とまあ脱線してしまったが、実際はどんなのを造ろうとしているか聞いてもいいか?」

「そうですね、人が乗って操ると言うのは正解です。形は……今の所未定です。

 どんな形がいいかなと、考えている所なので」

「そうなんすね。じゃあ、かーさんグローブはどんな感じになるんすか?」

「姉さんのは、他の武器を持つのに邪魔にならない様に薄めのグローブをと考えています。

 デザイン的には、ちょうど兄さんとお揃いみたいになるかもしれません」

「お揃いだって、楽しみだねっ、たつろー!」

「ああ」



 嬉しそうに笑いかけてくる愛衣が可愛くて、竜郎は意識しないでも口元が綻んでしまう。

 そして慣れた手つきで引き寄せて背中側から抱きついた。愛衣はそれを受け入れながら、お腹に回った手をギュッと握りしめたのであった。

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