第284話 二体の能力
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名前:アマテラス
クラス:-
レベル:1
竜力:442
筋力:25
耐久力:25
速力:20
魔法力:353
魔法抵抗力:253
魔法制御力:248
◆取得スキル◆
《低出力体》《常態出力体》《高出力体》
《竜の息吹 Lv.10》《竜念動 Lv.5》《攻勢強化》
《火魔法 Lv.14》《風魔法 Lv.14》
◆システムスキル◆
《アイテムボックス+4》
残存スキルポイント:3
◆称号◆
《火を修めし者》《風を修めし者》《竜息之権化》
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名前:ツクヨミ
クラス:-
レベル:1
竜力:441
筋力:25
耐久力:25
速力:20
魔法力:352
魔法抵抗力:252
魔法制御力:247
◆取得スキル◆
《低出力体》《常態出力体》《高出力体》
《竜障壁 Lv.10》《竜反射 Lv.5》《守勢強化》
《水魔法 Lv.14》《氷魔法 Lv.13》
◆システムスキル◆
《アイテムボックス+4》
残存スキルポイント:3
◆称号◆
《水を修めし者》《氷を修めし者》《竜壁之権化》
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「「「「「「「…………………………………………」」」」」」」
天照と月読のステータスを見た初めての感想は、全員無言であった。
そしてそれを最初に打ち破ったのは、アテナだった。
「あ、あれ~~。あたし目がおかしくなっちゃったんすかねー。
なんか、とーさんから貰った以外の初期スキルで、10レベルのがある様に見えるんすけど……」
「それに称号も付いてますの……。私たちの時と違いすぎますの……」
ダンジョンを回ることでスキルレベルを上げてきたカルディナ達。
けれど末の二人の妹たちは、それを嘲笑うかの如く最初から高いスキルレベルを有していた。
「やっぱりレベル10の体が最初の場合と、レベル17の体が最初だと、こうも変わってくるか」
「インストールされた時の状態で変わるってのは、これで決まりっぽいね」
「でもさすがに、分霊系のスキルは無いみたいですね。
もしかしたらとは、生み出す時に思っていたのですが」
「それは体のレベルにプラスして、最低50レベルは必要なんだと思いますの」
「それが無くても一レベルのステータスじゃないっすから、十分戦力にはなりそうっすけどね」
そうして各々パッと見の感想を述べ終わった所で、細かい所にも目を向けていく。
「《低出力体》《常態出力体》《高出力体》とは、機能レベルの段階調整と言ったところですかね。
《低出力体》では最小限の魔力消費だけで維持できて、《常態出力体》で通常運転。
そして最後に《高出力体》でフルブースト。魔力消費はかなり激しいみたいですが、その分性能がガツンと上がる様ですね」
「《幼体化》とか《真体化》とか無いかわりに、そういうスキルが入ったんだろーね」
「待機モード、起動モード、高機能モードって感じだと思っておけばいいかもな」
次に目を向けたのは、《竜の息吹 Lv.10》と《竜念動 Lv.5》。
「竜の息吹は、口から竜力を吹き出して相手を消滅させる──いわばジャンヌさんの《竜力収束砲》の拡散型ですかね。
威力は大分劣りますが、その分広範囲に攻撃できます。
そして竜念動は強力な念動力。
手を触れずに物を取ったり浮かべたり、なんて奴ですね」
「ほにゃららの息吹っての何度か見覚えはあるが、これは属性指定のないスキルか。
なら火魔法を混ぜて一緒に使えば、火の息吹とかに出来そうだな」
「正確には火魔法+竜の息吹となるので、威力はそちらよりも高くなるでしょうね」
「それは面白そうですの。じゃあ《竜念動》は物を浮かべたりとリアが言ってましたけど、戦闘ではどんな事が出来そうですの?」
奈々が何気なく口にした言葉に応えるように、竜郎に意志を伝えてきた。
「ん? ああ、そう言う事もできるんだな。解った、見せてくれ」
「おっ、何するのかな」
竜郎はライフル杖に宿った天照(以降、天照で統一)を構えながら、光魔法の魔力を流し込んだ。
すると後部の傘骨の様に広がっていた三節からなる八本の鉤爪が動き始め、ガチッと金属音を立てるとコア部分から外れて、根元に細いワイヤーを伸ばしながら八方に浮かび上がった。
そして竜郎の光魔法の魔力を使って、鉤爪の先端から光だけのレーザーを放って見せた。
「ガ○ダムみたい! ガ○ダム!」
「ガ○ダム言うなっ。というかガ○ダムじゃなくて、例えを出すならファンネルだろ。
──って、それはいいとして、リアはこう言う事が出来ると知っていたんだな」
「はい。最初にしっかりと観させて貰ったので、スキル構成は全部知っていたんです。
ですから直接攻撃にも使える杖の分離を考えまして、コアに繋がっているワイヤーで魔力頭脳の演算も八本全てが使える様になっているので、魔法を分割して八方から別々に発動することもできるんです」
「威力が欲しいときは一本の杖として使って、細かな手数が欲しいときは杖先と八本の鉤爪から分散攻撃も出来るって事っすね」
「そうです。それにツクヨミさんがいるので難しいですが、近づいた敵を鉤爪の様に使って引き裂くこともできます」
話している間に天照の竜念動で動かした鉤爪から放たれた光のレーザーが収まると、また元の位置に装着された。
「ちなみに竜念動の効果範囲とかあるのか?
視界全部の物を動かせるとかだと、かなり便利そうだが」
「レベルで範囲が変わるみたいですね。
レベル5の竜念動では、自身を中心とし直径5メートル内が限度だと思います」
「レベルイコール効果範囲と言った感じの様ですの」
「なるほどな。それじゃあ次は《攻勢強化》を見ていくか」
天照の中で見たことのない最後のスキルに目を向けていく。
「これは攻撃行為全般に補正がかかるスキルみたいですね」
「ってことは、その逆に月読の《守勢強化》は防御行為に補正がかかるってことか」
肯定を示すようにコート裏の左胸に固定されていた、月読のコアがピカピカと点滅していた。
「見事に攻防で真逆なんすね、天照と月読は。
息吹は攻撃系で竜障壁と竜反射なんて、モロに防御系みたいっすし」
「ですね。《竜障壁》は竜力による壁を展開するスキルで、ちょうど姉さんの鎧で出来る気力の盾みたいな感じでしょうね。
それで《竜反射》は発動した状態で触れた物を、そのまま相手に反射するスキルの様です」
「私が使える扇術の《反射》と似たようなもんかな」
「姉さんの方は技術で跳ね返すといった感じですけど、《竜反射》は当たったら問答無用で物理法則も無視して跳ね返すって感じですね」
「何それズルい」
「けどその分、反射できる力──反射力とでも言えばいいんでしょうか、とにかくそれが完全に上回っていなければ無効化されてしまって、ただ竜力を消費しただけになってしまうので応用は全くききませんね」
「そうなんだ」
愛衣の扇術の派生スキル《反射》の場合、相手の攻撃が強すぎて反射できなくても、盾術の派生スキル《受け流し》の様な事をしたり、違う方向に弾きかえしたりと状況によって独自の判断で制御できる。
けれどこの《竜反射》の場合、反射できる程度の攻撃でなければ強制的に無効化されて、攻撃が素通りで向かってきてしまうのだ。
「それだと、どの程度の攻撃まで反射できるかは調べておきたいな」
「けれどツクヨミさんの場合、《竜反射》の消費を無視すれば《竜障壁》と組み合わせて使う事もできます」
「ということはですの。
竜力で造った壁に反射効果を加えて、反射できる攻撃は相手にそのまま返して、反射できない攻撃は障壁で防ぐ……。
なんて事が出来るという事ですの?」
「その通りです、ナナ」
半端な攻撃は弾きかえして来る上に強い攻撃は壁に阻まれ、突き抜けたとしても威力が減退してしまう。
これに他の魔法なども駆使して守りを完全に固められたら、突破するのは相当に骨だろう。
「しかも迎撃能力もしっかりあると来てる」
そういうと力を示すように月読がセコム君を操作して竜郎のコートから、ちょうど雷神が背負っている雷太鼓の様な風体で細い水の管で連結された水の玉を展開した。
そしてその複数の水の玉からスライム状の触手が伸びてきて、先端を手の形にすると全員に握手を求めてきた。
竜郎も含め全員分の手が現れているので、皆面白がって積極的に握っていった。
質感としてはシットリとした、もち肌といった感じだった。
「──ん? そうか、解った」
「どったの、たつろー?」
「またやりたいことがあるみたいだ。ちょっと見ててくれ」
握手をしおわり触手が水球の中に戻ると、直ぐに月読は次にやりたいことを手袋を通して竜郎へと伝えた。
異を唱える理由も無いので素直に要求を受け入れて、鉄のインゴットを《無限アイテムフィールド》から取り出して上に軽く放って見せた。
宙を舞い重力に従って落ちてこようとする鉄の塊。
けれど落ち始めた瞬間、竜郎の背部に展開された複数の水の玉から触手が飛び出し、インゴットに攻撃を加えていく。
まず一本目は、先端を氷魔法で硬質化させたうえで螺旋の溝を造って、触手を高速回転。そのまま鉄のインゴットに突き当てると、ドリルの様にキュイーーーンと言う音を立てて穴を穿つ。
二本目は紙よりも薄い刃と化して、触手をしならせスパッと縦に鉄を切り裂いた。
三本目と四本目は先端を金槌状に氷で固めて、両サイドから鉄のインゴットを叩いて拉げた。
五本目と六本目、七本目と八本目は人間の左右の手の様な形になって、拉げて半分に割れたインゴットを、それぞれ掴みとると捩じって形を変えてしまった。
そして最後にまたそれを宙に自分で放り投げると、全ての触手が解けるように数百本の細いロープ状に変化して、先端は氷でコーティングしてドリル化。
それらが一斉に先端を回転させながら、ぐちゃぐちゃになったインゴットに突撃していく。
するとキュィーーンという歯医者でよく聞くドリル音を立てながら、インゴットを穴だらけの蜂の巣にして、最後に水の手二本で受け止めて竜郎に渡すと、触手は水の玉に戻っていった。
「パワー、スピード、応用力。どれをとってもセコム君だけの時より、格段に成長してるな」
「ドリルにナイフにハンマー。スライムの体だから、形状は何でも有りだったけど、元の攻撃方法は棘状に変化して突き刺すか、先端を丸くして打撃するかだけだったもんね」
「水魔法のレベルが高くなって、セコム君の運動能力が増した事も影響していますが、そこにツクヨミさんの力が合成されて、魔力頭脳での演算も可能ですからね。
思考速度に魔法制御能力などは、1レベルでも群を抜いている様です」
「これならとーさんでも、武術系相手とタイマンしても楽勝で勝てそうっすね」
「天照と月読がいる時点で、タイマンと言えるかどうかは謎だがな。
けれどこれで、かなり戦力が増強されたのは間違いない」
こうしてスキルや運動性能などのチェックは終わったので、最後に《竜息之権化》と《竜壁之権化》を調べてみれば、どちらも効果は同じで竜力+100。魔法力+100。竜力消費大減。制御力上昇。となっていた。
「竜力消費減はありがたいな。竜の息吹とか障壁を乱用できる」
「だねー。まだ天照ちゃんも、月読ちゃんもレベル1だし、捻出するのが大変そうだからね」
「けれどもう兄さんの一部みたいになってますからね、兄さんの大量に保有している竜力をアマテラスさんやツクヨミさんに使用許可を出したり、任意で流し込めば、それを消費できますよ。
兄さんたちと違って最初から竜力を持つ竜種ですからね。ほとんど魔力と変わらない様に竜力を使えるはずですから」
「それはいい事を聞いた。それなら俺の竜力の使い道も解りやすいってもんだ」
竜肉で大量に手に入れたはいいが、竜力での魔法行使は人種の竜郎では扱いが難しく、結局は面倒でも魔力に変換、または混ぜて使うという方法がやりやすかった。
それにダンジョンを出てから、そちらに手を出す必要のある存在に出会ってもないので、結局は魔力消費だけで竜力は活躍していなかったのだ。
だと言うのに、これからは天照と月読の本体にガンガン渡せば、ガンガン使ってくれると言う。
これは思わぬ使用方法を得たと、竜郎は嬉しくなるのと同時に試してみたくもなった。
「なあ、皆。今からちょっと外に出て、今の全力を試してみたいんだが……。どうだろう?」
「いいんじゃない? いざという時に全力がどのくらいなのか知ってないと、私達も危ないだろーし」
これからは天照の補助もあるので、自分の想像を超えてしまう事は無いのかもしれない。
けれどもしもの時に無用な破壊をもたらさない為にも、自分を知っておいた方がいい。
竜郎自身ただ試したいという気持ちが大部分ではあったが、そういう考えも有っての発言だった。
そうしてカルディナ達も見てみたいとの事なので、アーレンフリートに見つからない様に町を出て、人気の無い所までジャンヌの背に乗り飛んでいくのであった。




