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レベルイーター  作者: 亜掛千夜
第六章 喧嘩上等編

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第282話 お披露目会

 竜郎以外では、どうやら魔力頭脳の体を持つ魔力体生物装備の行使は難しそうだと言うのが解った二人。

 けれどそれが持てないと言っても、超々高性能の装備品が超性能の装備品に落ちると言うだけで、一般的な物からしたら十分すぎるほどの物だと言うのに違いは無い。



「ということで、姉さんも期待していてください。

 苦手な微細な気力操作も装備品がやってくれるので、姉さんはこうしたいと思って振るだけで良くなりますから」

「何それ最高じゃん!」



 色々練習はしているのだが、それでも咄嗟に気力を練ったりすれば雑になるし、実は威力も、その時の気分や調子で乗っているときと、そうでないときがあるほどだった。

 本来であれば、そのレベルの気力の操作技術しか持ちわせていない人間は、どう頑張っても気獣技など形作れない。

 けれど愛衣の場合、武神というスキルのお蔭で気獣たちが全力を挙げてバックアップしているからこそ出来ていると言う状態だった。

 なのでもし、その精密で緻密な流水の如く乱れることなく扱う事が出来れば、それだけ気獣たちも攻撃だけに力を入れられるので威力も増していくことだろう。



「よかったな、愛衣」

「うん! 楽しみー!! なんて素敵な魔力頭脳ちゃん!」

「ふふっ、喜んでもらえて私も嬉しいです」



 使い手が喜んでくれることが、リアにとっては非常に喜ばしい事である。

 その点愛衣は、そういう感情を表に全力で出してくれるので、職人側からしても作り甲斐があるというものだ。

 リアは一層モチベーションを上げ、下調べの為に愛衣から宝石剣を受け取った。



「それじゃあ、お借りしますね」

「うん。私にも手伝える事が有ったら、ドンドン言ってね!」

「はい。その時はぜひ」



 そうしてリアは奈々と一緒に作業に戻っていき、竜郎達はまた明日来ると言い残して、物を踏まない様に来た道そのままを通って自分たちの部屋と戻り、その日は昼からアーレンフリートと合流し、いつものように過ごしていった。

 そして次の日の朝、約束通りリアの部屋を二人で訪れて、二個目の魔力頭脳に新たな魔力体生物を融合させる準備を始めた。



「やっぱり第一属性は水がいいんだよな。

 元々の性質は水魔法を動力として動くスライムだし」

「そうですね。それがいいと思います」

「となると、一人だけ第一属性が一レベル低いってのも可哀そうだな。

 水魔法の11も取ってもいいかな? 愛衣」

「ちなみにおいくらSP?」

「水魔法をレベル11にするには(84)だな。

 ここ最近アーレンフリートがくっ付いてくるせいでサボり気味だったが、それでもアリやら雑魚から取った分だけで充分お釣りがくる」

「ん~ならいいんじゃない?

 それくらいなら、いざとなったら近場のダンジョン行けば直ぐだろうしね」



 愛衣にも異存はないようなので、竜郎はシステムを起動してSPを支払って水魔法レベル11を取得し、残り(651)となった。



「んじゃあ一個目の水魔法はそれでいいとして、二個目の属性はどうするか。

 今の所、杖は火と風。第一に水だから、それらを除いた属性が好ましいな」

「今思ったんだけど、重力魔法の因子とかは組み込めないの?

 みんな重力操作できるようになったら凄そうだよね」

「あー。それは俺も思ったことは有るんだが、出来そうにないな。

 爆発魔法とかもそうなんだが、基本的な属性魔法以外の因子は複雑すぎて入れられないんだ。

 練習した事もあるんだが、あれは技術が無いからとか、そんな問題でもないレベルで無理だと悟ったよ」

「へー。それじゃあ、しょうがないか。となると何がいいんだろ」



 光と闇は絶妙なバランスを保っている《陰陽玉》の比率を壊してしまうので論外だとして、火、風、水以外で候補に挙がってくる属性魔法は土、樹、雷、氷、生、呪、解の七種。

 この中から、セコム君の機能と相性が良さそうな物は何かと考えていく。



「水が第一ですし、雷とかは良さそうじゃないですか?」

「後は氷で堅さも手に入れるとかも良さそうですの」

「ん~。いっそのこと、水との相性を捨てて呪魔法で俺自身の底上げをっていうのも有りじゃないか?」

「呪魔法なら、わたくしがやりたいですの!」

「だなぁ。それに武装を強化してる時点で、これ以上俺自身を上げるより、周りをフォロー出来る方がいい。ふむふむ……」



 愛衣達の意見も聞きながら自分なりに何がいいか、それぞれシミュレーションしながら考えてみる。



「となると無難に氷かな。ぶにょぶにょ体だけでなく、固さを要求したい時もあるかもしれない。

 それに水魔法で既にある水を凍らせる方が、一から氷を出すより力の節約にもなるしな」

「雷はダメなの?」

「それもいいんだが、水を伝って意図しないところに被害が出るのも怖いからな。

 その辺は必要そうなら、第三属性の候補で良いと思ったんだ」

「確かに。それは有るかも」



 広範囲に水の網を広げる事で防御網を引くので、そこに電流を流したら味方が触ってダメージをという事が有っては困る。

 なので具体的にどういう風に変わるのかを確かめてからの方が、雷魔法は安全だろうと竜郎は考えたのだ。



「よし。それじゃあ、さっそく始めよう」

「では、これにお願いします兄さん」

「解った」



 昨日見た物と瓜二つの魔力頭脳のメインコアを渡され、竜郎は了承しながら自分の手の平の上に乗せた。

 そして愛衣に引っ付いてもらいつつ、《魔法域超越》を発動して強制的に属性魔法のレベルを底上げする。

 後は竜魔力で《陰陽玉》を──と昨日やった事をなぞる様にして続けていき、融合させる前に水と氷の因子を定着。

 その後に魔力頭脳に混ざり合わせるようにイメージしながら集中すると、昨日よりもスムーズに二個目の魔力体生物の融合に成功した。



「これでどうだ? 個人的には、昨日よりもスムーズに出来たと思うんだが」

「…………………………はい。これならバッチリですね。

 では中の子は、兄さんの中に戻してあげてください」

「おっと、そうだな」



 言われたとおりに新たに生まれた子を自分の中に戻した竜郎は、手に持った空の魔力頭脳をリアに手渡した。

 それを受け取りながらリアは何かを考え込んでいるようで、どこか上の空で《アイテムボックス》にしまうと突然挙動がピタッと止まった。



「そうなると、あれも…………いえ、だから──あっ。あれを使えば出来る…………っ!」



 そして止まっていた体がまだバッと動きがはじめ、新しい紙を取り出し落ちていたペンを拾って床を机に勢いよく思いついたモノを忘れてしまわない様に、ものすごい勢いで書き始めた。

 あまりの勢いにリア以外のメンツは気圧されながら動きを止めて見守っていると、やがてペンが止まりガバッと顔を上げて目線を漂わせ、竜郎を見つけてロックオンした。



「兄さん! 今すぐ出してほしい物が有りますっ」

「……──おっ、おう。何でもいいぞ。何が──」

「えっとですね、まずは──」



 竜郎が何が欲しいのか聞こうとする前に、逸る気持ちを抑えきれなかったリアが矢継ぎ早に《無限アイテムフィールド》に眠っている素材たちの名前を挙げていく。

 それに四苦八苦しながら何とか付いていき、竜郎は要求された全ての素材をリアの《アイテムボックス》へと送信完了した。



「──ふう。これで大丈夫か?」

「はいっ、ばっちりです!」

「そうか」

「わわっ。何ですか兄さん」



 愛衣に抱く恋情とはまた違う、本当に妹がいたらこんな気持ちなんだろうかと思わせるほど、保護欲を掻きたてる満面の笑みを浮かべてくれたリアの頭を、竜郎はガシガシと撫でて最後にポンポンと頭を優しく叩いて微笑んだ。



「あんまり、無理しすぎるなよ」

「大丈夫ですよ。ナナが見張っていてくれますから!」

「自力で抑えて欲しいですの!」

「あはは……」



 バツが悪そうな顔で笑いながら奈々に怒られるリアの姿に、これならムリしすぎる事もないかと、愛衣と二人で竜郎は微笑んだ。



「それじゃあ、これ以上いても邪魔だろうし、そろそろ行くよ。

 また用が有ったら遠慮なく呼んでくれ」

「うんうん。気にしないで、いつでも来てね!」

「はい、その時は遠慮なく」



 技術的な面では竜郎達には手伝う事も出来ないので、早く作業がしたいだろうと二人はそそくさと撤退した。

 それからは再び、この町での日常に戻っていった。


 また日は過ぎていき、それから五日の時が過ぎた。

 聞いていた限りでは、あと二日くらいで完成すると言っていたはずなのだが、リアの思い付きによる機能を追加するために延長してしまったらしい。



「まあ、俺達はこっちだと年は取らないし、少しくらいなら問題ないんだけどな」

「帰る時間も調整できるしねー」



 この世界に来た時は時間の流れが一緒だと思っていたが、こっちの世界と自分たちの世界の時間は竜郎達にとってイコールではないと知ってからは、早く帰りたくないわけではないが心には大分余裕が出てきていた。


 そんなわけでリアの出来たという報告を聞いた竜郎は、今日はアーレンフリートに一緒にはいられないと言って別行動してもらう事にしてから、さっそく新装備を見に行くことにした。



「お待たせしました。兄さん」

「この町はまだ飽きないからな、まったく気にならなかったよ」

「そうそう。むしろ待たされる分、ワクワクして楽しかったよ!」

「ふふっ、なら良かったです。それじゃあ、こちらへ」

「ああ」「うん」



 二人同時に返事をしながら、前とは打って変わって綺麗に片付いた部屋を通って奥へと進んでいく。

 そして簡易工房が拡げられている所で、竜郎はカルディナ達も全員呼んで、リアの完成した魔力頭脳を使った初めての装備品のお披露目会を始めることにした。



「えー。では、さっそくお披露目したいと思います。

 まずこれが兄さんに昨日借りていた杖です」

「んー。そっちはあんまり変わってないね」

「後の方が少しだけ、ごつくなったって感じだな」



 ライフル杖の銃口の様になっている方とは真逆の部分が、長方形の箱型の物体が取り付けられていた。

 そしてよくそこを見れば、箱の中心部には何かを接続するような端子の穴が開いていた。



「そして────これが、メインコアになります」



 リアは少しだけ勿体ぶる様な素振りを見せてから、《アイテムボックス》より本命を取り出した。



「それが、メインコアか」

「はい、そうです。造るのに時間がかかりましたが──」



 リアが取り出したものは、一言で言い表すのなら撥水生地が張られていない、骨だけの折りたたまれた傘といった様相。

 しかし柄は持つところが無く三十センチ程と短めで、ちょうど先ほどのライフル杖の後部の端子に嵌りそうな細さで、柄頭部分にはクリスタル様な物の中に基盤が入った物が取り付けられていた。

 そして傘で言う先端の方は以前見せられたメインコアの周囲をクリスタルの様な透明なものの中に入れて、さらに金属的な物で植物の蔦の様に覆って保護されていた。

 次に傘で言うと骨の部分。

 そこは様々な色の金属でできており、計八本から構成されている。

 太さは柄部分より太く、一本一本が三つの節からなる鉤爪の様にも見えた。


 リアはそれを全員に見えるように持ってから、ライフル杖の後部の端子にドッキングした。



「──これで完成です」



 その完成品をリアは手に持って、竜郎の前に出した。

 竜郎はそれを受け取り、人気のない所に行って軽く振ってみた。



「重さとか大丈夫ですか?」

「ああ。これ位なら全く問題ない。それじゃあ、さっそく──」

「あっ、待ってください」

「ん?」



 さっそく魔力体生物を出して融合させて、起動してみようとしたところで竜郎はリアに止められた。



「それを起動する前に、もう二つ装着してほしいものがあるんです」

「もう二つ?」

「あれ? 後はセコム君だけじゃなかったっけ?」



 愛衣の疑問はリアと奈々以外は誰もが持っているようで、その二人以外は首を傾げるばかりなのであった。

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