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レベルイーター  作者: 亜掛千夜
第六章 喧嘩上等編

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第281話 リアの考え

 二人が揃って首を傾げる中、リアはまあそうなるだろうと予想していたので直ぐに解る様に説明をし始めた。



「まず結論から言ってしまいますね」

「ああ、その方がいいな」「うん、その方がいいかも」



 一緒にいると動作や言動まで似てくるのかな?と、関係ない事が頭を過るリアであったが、すぐに思考の外に追い出して言葉を続けた。



「ずばり──魔力頭脳と魔力体生物の融合装備の作成です」

「っていうと……。──奈々ちゃんを改造しちゃうの!?」

「私は改造されないですの!」



 リアが話そうとしている内容は事前に知らされていたので、近くで黙って話を聞いていた奈々が何を言っているんだと割って入ってきた。

 その反応で、竜郎はおそらくカルディナ達にも関係は無いのだろうと察した。



「となると、新しくそれに組み込む魔力体生物を造って欲しいって事か?」

「はい。でも今回はナナやカルディナさん達の様に形を造ってしまわずに、無形の状態で魔力頭脳と融合させたいと思っています。

 存在が確定した状態では、おそらく融合は出来ないと思いますから」

「そんなこと出来るんだ」

「今の所、私の中でまとめ上げた理論の中では──という、注釈は付きますけどね」



 けれど実際に魔力頭脳を造り上げ、これまでも様々な装備品の数々を生み出してきたリアだ。

 そんなリアの理論が間違っていると思う方が、二人には想像する事が出来なかった。

 なのでこれは出来ると思っていいだろう。

 そう考えた二人は、ようやく理解が追いついて俄然乗り気になってきた。

 となると、色々聞きたくもなってくる。



「魔力頭脳だけの場合と魔力体生物を融合した状態では、具体的にどう変わるんだ?

 今使っているライフル杖だけ見ても凄まじいんだが、それのアップデート版の魔力頭脳のメインコアだけでも良いと言えば良いんだろ?」

「はい。勿論魔力頭脳だけを搭載しても、十分強化は出来るはずです。

 前に兄さんの言っていた、魔力がガクガクする感覚も完全になくなると思います。

 けれどもし魔力体生物を融合させ、より質の高いインテリジェンス装備に昇華することで、いくつか利点が生まれるんです」

「ほうほう。それはなーに?」

「それはですね。まずそうする事で、システムをインストールされた世界に一つしかないステータスとスキル持ちの装備になる──はずです」



 その辺りはシステムに深く関わってくることなので、リア自身あまり自信は無さそうであった。



「そして魔力頭脳だけでは使い手が要求してきた仕事を、いかに最短で効率よくするかを考え、受動的に動く道具といった感じなんですが、魔力体生物を融合することで能動的に物事を考える事も出来、そのうえで魔力頭脳の演算能力も駆使してサポートしてくれるようになります」

「つまり魔力頭脳搭載型と魔力体生物をそれに混ぜた状態だと、完全に後者の方が上位武装になるって事か」

「聞いてる限りだと、魔力頭脳だけでも凄そうだけどね」



 愛衣の言葉に、その場にいた全員が頷いた。

 リアがずっと研究を続けてきた集大成が魔力頭脳なのだ。それが凄くないわけがない。

 しかしそのさらに上を目指そうと言うのだから、リアの研究意欲には皆が舌を巻いた。



「けど魔力体生物は、どういう扱いになるんだろうな。

 能動的にって事は、自分で考えられるって事だろ?

 《アイテムボックス》にいれられないとか、ないのか?」

「それは大丈夫だと思います。

 流石に融合状態のままでは難しいかもしれませんが、しまう時は兄さんの中に戻してからなら入れられると思います」

「へー。融合って、そんなに簡単に解除できるんだね」

「イメージ的には、魔力頭脳というコックピットに乗るパイロットと言ったところかもしれないな」

「ああ。それなら解りやすいかも。パイロットは《アイテムボックス》入れられないけど、コックピットだけなら入れられるもんね」



 今一リアには理解できなかったが、何となく会話内容から察しつつ二人も飲み込めたようなので特に何も言わなかった。


 そうして状況も理解できたところで、さっそくやってみることになった。



「それじゃあ、まずは何をしたらいい?」

「そうですね。まずは魔力頭脳のメインコアを手に持った状態で《陰陽玉》を造って、中にそれを混ぜ込むようにイメージしてみてください」

「イメージだな。解った。じゃあ、まずは──」



 竜郎は《魔法域超越》を発動して、自身の魔法レベルを強制的にアップさせた。



「次に愛衣、カモン!」

「とうっ」



 次に愛衣を背中にくっつけて称号効果もプラスで発動させておく。

 こうしておけば突然上がるレベルにも、なんなく対応できるのだ。



「──それじゃあ、やるぞ……」

「お願いします」



 竜郎は言われたとおりに大量の竜力も混ぜ込んだ竜魔力で、《陰陽玉》を最高レベルで魔力頭脳の上に発動。

 そして本来なら、ここでどんな存在になってほしいのか念じるのだが、そうしないで、それを下に落としていき手の平に乗っている魔力頭脳メインコアに密着させた。



(混ざるようなイメージを思い浮かべるんだよな)



 余計な事は考えない様に冷静に竜郎は念じていく。

 すると魔力体生物の体となる《陰陽玉》が、メインコアに吸い込まれるようにして中へと入っていき、やがてそこに定着したのを感じ取った。



「成功──ですかね」

「みたいだな」

「どれどれ……おおっ、きれいだねー」



 竜郎の肩から頭を出して覗き込む愛衣の視線の先には、半透明で薄青色をしたメインコアの中に、キラキラとした青い魔力の粒子がスノードームの様に内包されていた。



「それじゃあ、まだスキルが生きている間に、属性魔法の因子も組み込んでしまいましょう。

 そうすれば兄さんの魔法に、そのメインコアの魔法が加算された強力な魔法が使えるはずです。

 なので一番よく使う魔法を優先した方がいいですね。

 もちろん、それが無くても十分性能は高いはずですが」

「ん~、そうだなぁ。最近、氷魔法もマイブームなんだが、やっぱりメインは火魔法のレーザーだな。

 攻撃力とスピード、どちらも優れているし慣れてるから使いやすい」



 という事でメインコアに定着できたことを確認した後で、一旦《陰陽玉》の状態に戻して14レベルの火魔法の因子を組み込んでいく。

 カルディナ達と違って情報の移植作業が無い分、《魔法域超越》の効果が切れる前にもう一つ属性魔法の因子を入れられそうだった。

 なので、さらに自力での飛行用に14レベルの風魔法の因子も追加しておいた。

 もう一個いけるかなと思ったが、時間切れが間近まで迫ってきていたので、そちらはまた今度にすることにしてメインコアの中に戻した。



「ん、できたぞ。それからどうすればいい?」

「そうですね…………」



 リアが空色の方の目でメインコアをじっくりと観察して、やがて結論づいたようだ。



「これで兄さんの作業は終わりですかね。

 後は、このメインコアを組み込んで調整作業に取り掛かるだけです。

 なので魔力体生物の子は竜郎さんの中に戻してあげておいてください。

 私では魔力の補充もできませんし」

「解った」



 それもそうだと竜郎は生まれたばかりの新しい子を、自分の中にしまいこんだ。

 おそらくシステムもインストールされるのなら既に終わっているだろうが、どうせならちゃんと体が出来上がってから確かめた方がいいだろうと一旦おいておく事に決めた。



「そういえばさ。こうやって、たつろーの中に戻せるのならさ。

 別の子を──例えば氷を第一属性にした子を新しく生んで、入れ替えるって事は出来ないのかな?

 それが出来れば、状況に合わせて色々できそうじゃない?」

「それは私も考えていました。けれどさっき見た限りだと、コア一つに完全に適合して、他の子を入れると拒絶反応が出そうでした。

 なのでコロコロ切り替えることは出来そうにないです」

「そうなんだぁ。ちょっと残念」

「まあ、そこまでしなくても性能は十分だろうし問題ないだろ」

「ですね」



 竜郎もできたら便利だとは思うが、チートスキルを持っているうえで、これから出来ようとしているのはチート装備なのだ。

 これ以上高望みする必要も無いと、二人は思い直した。



「後は兄さんのコートに入れているセコム君を貸して貰えませんか?」

「ん? 別にいいが、そっちも何かするのか?」

「はい。そちらにもコアを組み込んでみようかと、そしてそれにも──」

「魔力体生物をくっつけるの?」

「できたらですが。今でも自動防御は優秀ですが、殺傷や非殺傷などは兄さんが細かく指定しないと混戦時は敵味方問わず攻撃してしまいますし、両方を同時に使い分けることもできません。

 ですが高い判断力を身に着け、その全てを掌握し操縦するような存在を付け足せれば、面白いと思いませんか?」

「確かに便利そうだ」「面白そう!」



 基本的に自動操縦だが、それだと味方がぶつかりそうになっても水の棘をぶつけようとしてしまう。敵味方の判断が付いていないのだ。

 なので味方が近くにいるときは、攻撃しない様に使い手が常に意識しなければならないので使い辛いという欠点があった。

 けれど今回の改造が成功すれば、敵味方をキッチリと判断し、攻撃するどころか能動的に助けることもできるようになる。

 それならば常時発動させていても、竜郎も安心して他の事に集中していられるというもの。



「じゃあ、これを渡しておくな。あと、杖は俺が持ちっぱなしでもいいのか?」



 スライム型のアイテム、セコム君を《無限アイテムフィールド》から取り出し、リアに手渡しながら竜郎はそう言った。

 けれど首を横に振られて否定された。



「最後に接続端子を付ける作業が有るので、その時に貸してくれればいいですよ。

 今はメインコアの完成が先ですし」

「解った。ならその時は遠慮なく言ってくれ。

 あとはセコム君のコアが出来たら、そっちにも魔力体生物を造りに来るよ」

「それならもうできているので、明日来てください」

「早いな!?」「早いね!?」

「あはは……。実は最初の一個目が出来上がった時に、その感覚を忘れない様にと二個三個と連続で造ってしまいまして……。

 なので現在、全部で六個の魔力頭脳を保有してるんですよ」



 どうやら最初の一つ目を造り上げるのには、かなり苦労したらしいのだが、いざ出来てしまうと二個目以降はかなりスムーズに造れる様になったらしい。

 結果、その技術を体に覚えさせてしまおうと乱造し、リアが気が付いた時には手元に六個もの魔力頭脳が転がっていたらしい。



「なんなら姉さんの宝石剣にも付けてみますか?

 気力系のデータも観ておきたいので」

「ほんと!? 付けて付けて!」

「そうなると、愛衣の方にも魔力体生物が必要か?」

「それは…………必要ないでしょうね」

「ありゃりゃ、そうなんだ」

「兄さんは自分の魔力が元になっているので、親和性百%で力を増強できますが、他者の場合は親和性がゼロですからね。

 そこで無理やり機械の体を与えるくらいなら、ナナ達の様に普通に生んで近くにいて貰う方が武器にしてしまうより汎用性が高いはずですから、意味が薄いんですよ」

「それじゃあ、カルディナ達の装備には?

 あの子達なら元は同じ俺の魔力なんだから、いけそうな気もするが」

「それも難しいかもしれません。

 実際の関係性はそのように扱っていないので違いますが、存在の格としては──言うなれば主と従と言う明確な上下関係があるからスムーズに扱えるんです。

 けれど従と従の場合、協力は出来ますが一方的に使う存在にはなり難いと思うんです」

「ん~…………。とりあえず、たつろー以外無理そうって事でいいのかな?」

「──ふふっ。ええ、それで大丈夫ですよ、姉さん」



 今までの説明は何だったのかと言うほどザックリとした愛衣の解釈に、リアは微笑みながら頷いたのであった。

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