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レベルイーター  作者: 亜掛千夜
第六章 喧嘩上等編

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第277話 蟻の巣探索

 女王アリ──アーマレと働きアリ──アーマルの巣の入り口から、竜郎と愛衣とポッケの中の《幼体化》したカルディナ。《幼体化》したジャンヌとアテナ。アーレンフリートの三組が、それぞれ別の穴から侵入していく。



「この壁、崩落の危険は今の所、無さそうだな」

「そうなの?」

「ああ。特殊なスキルか何かで、トンネルの壁をコンクリみたいに固めているんだ。

 町みたいな重い構造物が何建も上に置かれたら危ないだろうが、ここみたいな平野なら地揺れでもない限り大丈夫だろう」

「なら安心だね。でも崩れても竜郎の魔法とか、私が力づくで上に穴を空ければ問題ないよね?」

「ジャンヌとアテナもな。アーレンフリートは……解らんな。

 まあ、アイツは自分から付いてきてるんだし、自己責任で何とかしてくれって感じだな」

「私もあの人に思い入れがあるわけじゃないし、生きてそうなら救助。でいっか」

「そうそう。付いてきたいと言ったのはあっちなんだ。

 俺達が、あの男まで気にする必要はないさ」



 簡単にねじ伏せられる相手ならばもう少し警戒を下げてもいいが、あれは敵対されれば危険な類の存在だ。

 だからこそ竜郎は出来るだけ関わり合いたくないので、冷たく対応する。


 そうして巣のトンネル内部を竜郎の光魔法の明かりを頼りに進んでいく。

 戦闘要員であるアーマルは、大量に駆逐したので気配はない。

 なので特に荒事になることもなく穏やかに歩を進めていると、やがて大きな四角い小部屋を見つけた。



『一匹みっけ。だね』

『ああ。しかし、もう卵をあんなに産んでやがる』



 小部屋の中を外からこっそり覗き見れば、アーマルと呼ばれる働きアリたちより一回り小さく顔は赤、お尻から産卵管を飛び出させた魔物が、部屋の隅に隠れるようにして丸くなっていた。

 さらに竜郎の言った通り、その区画には白に灰色を混ぜたようなゼリー状の卵が、部屋の床はおろか天井や壁に至るまでびっしりとくっ付いていた。



『何かのスキルを使ってるみたいだな』

『気持ち悪いね……』



 アーマレは産卵を既に止めており、体から光の粒子を吹き出しながら卵に付着させていた。



『どんなスキルかは知らないが、今のうちに卵と一緒に潰しておこう』

『どうやるの?』

『火魔法で焼いてしまうのが一番早いんだが、ここで使うのは抵抗があるしな。

 氷魔法でいこうと思う』

『解った』



 念話で意思の疎通を取り合うと、愛衣は竜郎の腕に巻きついて称号効果を発揮させる。

 竜郎は《無限アイテムフィールド》に起動したまま、時を停止させて入れていたライフル杖を取り出した。

 既に一個のコアが起動した状態のライフル杖に、竜郎は氷と風の混合魔法を使うべく魔力を流し込んでいった。

 すると杖の先から気流が生まれ、冷たい風が小部屋に入り込んでいく。



「ジジーーーーーーーーーーーッ」



 温度が急降下していく中、アーマレは何らかの魔法が使われている事を察し、スキルを切ってせみの様な鳴き声を盛大に上げた。

 ──すると卵が一斉に孵化して小さなアーマルが飛び出し、さらにムクムクと成体と同じ大きさまで直ぐに成長していった。



「もう手遅れだぞ」



 竜郎は気づかれているのならと出力を大幅に上げて、水魔法も混ぜてみぞれの嵐を吹雪かせる。

 水の様にベチャベチャした氷を全身に浴びせられ、さらに風で煽られることで気化熱も加わり体温を急速に奪っていく。

 そうして、あっという間に孵化したアーマルは全滅した。

 だがその母体であるアーマレだけは、かろうじて生きていた。

 竜郎がワザとその区画だけ魔法を緩めたからだ。



「ジ────ジィ────」



 ガタガタ体を震わせ、必死で生に追い縋ろうとするアーマレ。

 それを見ながら竜郎達は氷点下まで下がった室内に、《エンデニエンテ》の称号効果で直ぐに適応した体で寒さを感じることなく悠々と入っていった。

 そこでようやく竜郎達に気が付くが、もう体を思うように動かす事が出来ずに微かな鳴き声を上げて威嚇してくるだけだった。



「んじゃあ、お前のSPを貰うからな」



 アーマレが弱り切っているのを解魔法でも確認して、近寄って《レベルイーター》を行使した。



 --------------------------------

 レベル:11

 スキル:《産卵》《卵強化 Lv.2》《魔力感知 Lv.1》

 --------------------------------



(直ぐに魔法だって気付いたのは《魔力感知》のおかげか。

 あと最初に使っていたのは《卵強化》……。

 多分、卵の状態の時に何らかの強化を促すスキルってとこだろうな)



 --------------------------------

 レベル:11

 スキル:《産卵》《卵強化 Lv.0》《魔力感知 Lv.0》

 --------------------------------



「んじゃあ、カルディナ。さくっとやっちゃってくれ」

「ピピッ」



 愛衣のポケットからピョンと飛び出して《成体化》すると、右の足に細長い土の槍を造り出し、アーマレの頭を串刺しにして命を奪った。

 それが終われば、カルディナは《幼体化》して直ぐに愛衣のポケットの中に潜りこみ警護に戻った。



「それじゃあ、先に進もう」

「おっけー」



 そうして竜郎達は同じ方法で、小部屋が見つかるたびに魔物を順次殲滅していった。


 ジャンヌとアテナは力ずくでオーバーキルしていき、ドンドン拠点を潰していく。

 アーレンフリートは呪魔法で思考を誘導し、孵化したアーマルに母体であるはずのアーマレを食らわせて、さらにそれが終われば共食いさせていく。

 そして最後に残った一匹を弱体化させて自分で手を下すと言う方法で、他のメンバーたちより進行速度は遅いが確実にトンネルを進んでいった。


 順調に奥へと進んでいくと、外に出てこなかった個体と新たに生み出されたアーマルにも出くわすようになってきた。

 狭い道で連なってカサカサ歩きながらやってくる様は中々に気持ち悪かったが、そんなもので竜郎達を誰一人として足止めする事も出来ずに蹴散らされていく。



「一匹一匹は大して強くはないから、数回程度のアタックなら普通の冒険者でも潜れそうだな」

「けど、とにかく数が多いからね。

 半端な気力や魔力だと、途中でバテて食べられちゃいそう」

「だな。俺と愛衣はくっ付いてるだけでどんだけ消費しても直ぐ回復するし、ジャンヌとアテナだって自前の魔力を使わずに増えた竜力だけで回せば全く問題は無いだろうし。

 そういった回復手段が無いと、普通は攻略出来ないって事だな」



 変わり映えのしない出てくる魔物を排除しながら、延々と暗いトンネルをズカズカと進んでいると、少し変わったモノが現れ始めた。



「何か卵みたいの持ってるね」

「ああ。でもアーマルが生まれるのとは、ちょっと色が違う気がするな」

「うん、アレは真っ白」



 十体近くのアーマルの内一体が、真っ白なゼリー状の卵を背に抱え、残りはそれを守るように輪形陣を取って列を乱さず規則正しく進んできていた。

 ここまで見てきた卵は白に灰色を混ぜた感じの色合いで、常に母体であるアーマレが近くにいた。

 けれど今回は母体はおらず、子のアーマルだけで純白の卵を大事そうに抱えて、どこかに運ぼうとしている。

 これで何もないという事は有りえないだろう。



「取りあえず始末して、その後卵を調べてみよう」

「OK」



 愛衣は鎌術の派生スキル《隠密迷彩》を自分自身に発動させて、《空中飛び》も織り交ぜながらアーマルの後方。竜郎とは反対側に回り込んだ。

 竜郎はそれを確認しながら、氷の薄膜でトンネル内部を前に向かって覆うよう展開。

 異常に気が付いたアーマル達は直ぐに後退を始めたが、黒い気力によって造られた盾が行く手を阻みあっという間に氷が足元に這い寄ってきた。

 氷は四本の足をガッチリとホールドし、動けなくなったところで盾と《隠密迷彩》を解除。

 軍荼利明王の八本の手の平から気力の槍を飛び出させて、それで的確にアーマルの頭を貫き、愛衣は自分の手二本で剣と槍を持って突きを放った。

 まさに電光石火の早業で、魔物は死んだことすら気が付かなかっただろう。



「おつかれさん」

「いやいや、これ位じゃ疲れないよ」



 転がる死骸地点で合流し、軽口を叩きあいつつ竜郎は変わり種の卵を解析していく。



「アーマルの卵じゃないな。……えいやっ」

「げっ、何してんの」

「いや、中を見てみようかと」

「うっ、なんか甘ったるいにおいが……。おえぇ──」



 アーマルの卵とは違う反応に興味が惹かれ、竜郎は極細のレーザーメスを指先から出して表面を切って割ってみた。

 すると中から鼻にネットリとこびり付くような甘い臭いを広げながら、出来かけの魔物がズルリと出てきた。

 それは一見アーマルの様に見えるが、顔だと思われる部分が薄く赤色に染まっていた。



「やっぱりアーマレの卵か。これを各所に配置し直して、元の状態に戻そうとしているのか。

 となると、もう侵入者には気づいているんだろうな」

「きじゅかれたとおろで、もーいみはいへどへ」



 愛衣が鼻をつまみながら「気付かれたところで、もう意味無いけどね」と、戦力差からくる余裕を見せた。

 大分深層に潜りこみ、最深層もおそらくもうそこだ。

 なので竜郎としても、これ以上敵に何かできるとは思えなかった。


 そうして卵の残骸を始末していき、とっとと根源を断つためにも先へと急ぐ。

 道中、母体の卵を持ったアーマル達を潰していき、やがて最深層──全ての穴に繋がる最後の大部屋の前にたどり着いた。

 そこの入り口付近からコッソリ二人が覗き見れば、三メートル近いアーマレと、それを守護するように二メートル近く、体つきも他よりもガッシリしたアーマルが取り囲んでいた。



『さしずめ女王アーマレと、近衛アーマルと言ったところか』

『確かに他のより、ちょっと強そう。て言っても、他のよりってだけだけど』

『でも油断しすぎて怪我とかしないでくれよ?』

『解ってるよ。治るって解ってても痛いのは嫌だし』

『ならいいんだ』



 既に壊滅的ダメージを受けた巣を元の状態に戻そうとしているらしく、女王アーマレは産卵管から卵を排出し、無数に空いているトンネルの中へ通常サイズのアーマル達を使って運ばせていた。



『多分、アイツしか母体となるアーマレは産めないんだろうな』

『じゃあ、アイツを倒せば楽になりそうだね』

『ああ、ジャンヌとアテナやアーレンフリートもまだみたいだし、来る前に俺達だけで片づけてしまおう』

『がってんだい!』



 ファイティングポーズを取ってやる気を表現する愛衣の頭を撫でながら、竜郎は《無限アイテムフィールド》から杖を取り出し、魔法の準備をしていくのであった。

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