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レベルイーター  作者: 亜掛千夜
第五章 呪われた少女編

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第259話 2人目の取引材料

 エコアリチに聞いた残りの10点のアイテムの概要を説明すると、以下のような物との事。

 十センチほどの緑色の細長い笛。

 これは周囲の魔物を引き付ける物。

 主に囮に使ったり、別の魔物を引き寄せて今闘っている魔物にぶつけるなどの使い道があるらしい。


 カードが二十枚ほど入ったカードホルダー。

 これは中のカードに10レベル相当までの魔法を吸い込ませて閉じ込めて、それから10~60秒の間において、任意で設定した時間に解放させられる物らしい。

 ちなみにこれは、使い終わった後に回収すれば何度でも使える。


 五角形の黒いガラス板に、奇怪な文字がいくつも書かれたもの。

 これは炎瀑陣というアイテムで、起動すると周囲百メートルの空間を強力な炎で焼き尽くす。

 設定により起動時間をタイマー予約できるので、炎に耐性が無くても逃げることは可能。

 けれど壊されてしまった場合、暴発して時間より早く起動する可能性もあるので注意が必要。


 刀身一メートル半ほどの日本刀のような刀。

 これは鬼種が占有している一部の鉱山でしか取れない、紅鬼石べにきせきという珍しい鉱石を使って打たれた一品。

 紅鬼石の特徴は、剣術の獅子と鎌術の鰐の気獣技によって生成される気力と非常に相性が良く、その使用時には切れ味が何倍にもなるという。


 全長二メートルほどもある長い錫杖。

 これは解魔法使いでなくても、持てば1レベルの解魔法を使える。

 しかし真価はそこではなく、解魔法使いに持たせると現スキルレベルより1上がった時と同様の出力を得られるとの事。


 三十センチほどの銀色の棒の両脇に、鷹の足の形を模した物が付いた何か。

 これは一日一回だけ、レベル12相当の強力な雷を落とす事が出来るアイテム。

 けれど所持者にも少しだけ持ち手から雷撃を流してくるので、雷耐性が無い者が何の対処もしないと痺れて暫く動けなくなる。


 四十センチ四方の白い石版に丸や三角、四角などがいくつも重なりあって描かれた何か。

 これは魔力ないし気力を流し込むことによって浮遊する。

 重さ三百キロまで乗せる事ができ、エネルギーの込めた量で30センチから三メートルまでの高さまで上げられる。

 さらに浮かせた状態で横から力を加えると簡単に動かすこともできるので、足をつけられない場所をこれで移動することもできるという。


 翠聖石という宝石で造られた全身鎧。

 これは愛衣の持つ宝石剣の全身鎧版。他に特に珍しい効果は無い。


 透明なダイヤモンドの様な美しさを持つ、棒術家用の細長い棍。

 これは天魔晶という天魔種が五人以上で何年も暮らした場所に生えてくるという不思議な水晶で、この国で手に入れるのはかなり難しい素材。

 それで造られたこの棍棒は気力を通すと不思議な白い光を帯びて、邪なる存在(黒い翼をもつ天魔種やアンデット、幽霊など)に優位性を持った武器になり、魔力を流すと黒い光を帯びて聖なる存在(白い羽を持った天魔種や神聖な森に暮らす妖精など)に優位性を持つ武器となる。

 さらに気力許容量は無制限なので、どんな気力馬鹿でも安心らしい。


 漆黒の金属でできた、右腕だけのガントレット。

 これは天装で、嵌めた腕で気力による拳の打撃を飛ばすと、それが特大強化されて打ち出される様になるらしい。

 威力の強弱も付けられるので、多少の手加減も可能。



「どれも魅力的な物ばかりですね」

「だろう。なら是非、ウチと取引して貰いたいものだ」

「それは他の方々の話を聞かないと何とも言えませんが、情報を公開してもいいと思えるくらいだ。と言うのは本当です」

「そうかそうか。それじゃあ期待して待っている事にするよ」

「はい」



 竜郎のお世辞抜きの言葉に嬉しそうに破顔すると、エコアリチは説明したアイテムを一旦全部仕舞い込んだ。



「解っているとは思うが、ここで見た物らを、ここ以外でも他言してほしくは無いからな。

 自重してもらえると助かる」

「勿論。むやみに話すことはないので、安心してください」

「ならいいんだ。それでは、ウチからは以上だ。

 次の『ナレントニス』のサンジヴを連れてくるとしよう」



 そうして立ち上がって出て行こうとするエコアリチに、竜郎は一言だけ添えておいた。



「あの、できれば来るのは十分後にするように伝えて貰えませんか。

 今見た物に関して、記憶が新しいうちに話し合っておきたいので」

「ん? ふむ。それもそうだ。ちゃんと考えてくれるようで俺も有難い。

 そのようにサンジヴには伝えておこう」

「ありがとうございます」



 軽く頭を下げた竜郎に朗らかな笑顔で手を振ると、今度こそエコアリチは退室して行った。

 そしてバタンと別の扉が閉まる音を聞いてから、竜郎は《アイテムボックス》から紙を出して凄い勢いでメモを取り出したリアに顔を向けた。



「──どうだった?」

「はい。言っている事は全て正しいようです。

 そして完全コピーできないのは、天装のガントレットやダンジョン限定アイテムでしょうかね。

 他も技術やら何やら必要そうだったりしますが、仕組みはしっかりと勉強させてもらいました」

「ちょ~とずるい気もするけど、取れる情報は取っておきたいしね」



 盗み見している様で気は引けるが、情報を見るだけでは何も出来ないのだからと割り切った。

 所詮、初めましての人に、そこまで気を使うよりは今後の自分たちの糧にする方が優先されるのだから。

 と。そこまで考えたところで、竜郎はソファの後ろで寛いでいるフリをしているジャンヌに声をかけた。



「そっちはどうだった?」

「ヒヒーーン」

「問題は特になかったそうですの」

「それなら良かったよ。次も頼むな、ジャンヌ」

「ヒヒーーン!」



 実はジャンヌには事前に《無限アイテムフィールド》経由で、宝物庫で手に入れた真実と嘘を見抜く鏡を持たせていた。

 それで樹魔法を使ってさりげなく死角から相手を映し、嘘をついてはいないか監視して貰っていたのだ。

 その監視によれば、エコアリチは全て真実を語っていたようだ。



「相手も何らかのアイテムで、これを誤魔化す事が出来ないとは言い切れないが指標にはなるだろう。

 後二、三分で来そうだが、メモの時間はまだいるか? リア」

「いえ、あと一分もあれば重要な個所は全部書ききれます──」



 そうしてリアが手を高速で動かしながらも、読み取れるほど綺麗な字でメモを取り終って数秒後。

 離れた所で扉が開く音と共に、ノシノシという足音が聞こえてきた。

 そして今いる部屋の前で止まると、コンコンコンとノックされた。



「どうぞ」

「──ふむ」



 そういう顔つきなのか、それとも性格からなのか、実に愛想のない顔を向けたままジャンヌに一瞥くれると、竜郎達の目の前のソファーにストンと座った。



「では始めましょうか」

「解った。うちが出すものは、ただ一つ──金じゃ。

 50億用意した。他のやつらはアイテムやらで誤魔化して、はした金を掴ませようとしてくるだろうが、うちは違う。

 その金で欲しい物を買えばいいのだから、アイテムなんぞよりも良かろう」

「……はあ。そうですかね」

「そうだとも。これだけあれば、大概揃えられるはずじゃ」



 正直お金だけなら何の魅力もない。竜郎達は宝物庫へと入った折に、大量のコインを手に入れたのだ。

 全員で仲良く分割したが、それでも常人が個人で有する額を遥かに超えている。

 さらに金銀などの貴金属に、黄金水晶もまだ沢山残っている。

 ゲシュマグミンだって複製で増やせるので売ることも出来る上に、レベル10ダンジョンの強力な魔物たちの素材まで持っている。

 そんな事情など知らないのだからしょうがないのかもしれないが、この時点で竜郎達の脳内ではバッテンを張って候補から外した。

 だがさらにそれに追い打ちをかけるように、ジャンヌが身じろぐフリをして嘘の判定結果を知らせてきた。



(今の少ない会話で嘘を吐いた?

 ──となると、50億という額を払う気はない?

 だが払わない限り、こちらは口を閉ざせばいい。なら──まさか……)



 そんな事はしないだろうと思いつつも、念のため一度ソファーを微かに揺らしてジャンヌに見ていてくれるように念押ししてから口を開いた。



「もし貴方に情報を全て教えた後。

 その程度の情報ではこれくらいが妥当ではないかと、値切って支払った代金を何割か懐に戻す……。

 なーんて事は、絶対に(・・・)無いですよね?」

「…勿論だとも」



 顔色は一切変えずに勿論の言葉を発し終えた瞬間に、ジャンヌがまた身じろぎして嘘を教えてくれた。



(まじかよ。狡い爺さんだな……)



 まさかそんなクレーマー紛いな手法で来るとは思ってもみなかったので、さすがに顔が微かに引きつった。

 別に返せと言われてもそんな義務はないのだから突っぱねればいいのだが、目の前の老人の神経質そうな顔は何処までも、しがみ付いて勝つまで離れ無さそうな執念深さが滲み出ていた。


 サンジヴと取引するつもりなら、ここで念書でも血判状でも書かせるところだが、生憎もう最有力除外対象をぶっちぎりで独走してくれているので、その必要もない。

 なので当たり障りのない言葉で締めくくる事にした。



「解りました。では、前向きに検討させて頂きます」

「ふふん、当然じゃな。

 では帰るが、儂は最も単純にして最も価値ある物を提示した。

 考えるまでもないだろうからな。

 直ぐに次を呼んでしまおうと思うが、いいかな?」

「ええ。大丈夫ですよ」



 竜郎が営業スマイル全開で応対すると、機嫌よく扉を閉めて出ていった。

 どうやら自分で決まりだと本気で信じているらしい。

 そして扉が閉まる音が聞こえた瞬間。



「ないな」「ないね」

「ピィイ」「ヒヒン」「ですの」「ですね」「そうっすね~」



 カルディナとジャンヌの言葉を通訳してもらう必要すらなく、サンジヴが言った通り考えるまでもなく除外された。

 そして直ぐに扉の開く音と女性の軽い足音が、今いる部屋まで響いてきた。

 コンコンコン──家主にどうぞというのは、どうなのだろうと思いつつ、竜郎は入って貰うように言った。

 すると特に気構えした様子もなく、竜郎達からしたら数か月ぶり、ビヴァリーからしたら三十六年ぶりの邂逅を果たした。



「本当に中では時間が、ほとんど進んでいなかったようだねえ」

「ええ。おかげで浦島太──いえ。不思議な気分ですし、実は未だに信じ切れていません」

「だろうねえ。私でも同じ状況ならそうだろうからね。

 ああ、ちなみに私はエルフの血が入っているから、歳を取っていない様に見えただけだよ」

「やっぱりそうなんですね。──と。話し込む前に始めましょうか。

 二人も待たせていますし」

「それもそうだねえ」



 ビヴァリーは扉を閉めると、そのままジャンヌに微笑みかけてから対面側のソファーに腰かけた。



「では、始めましょうか」

「そうだね。始めようか」



 そうして最後の話し合いへと進んでいくのであった。

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