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レベルイーター  作者: 亜掛千夜
第五章 呪われた少女編

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第253話 エンデニエンテの真の効果

 竜郎はずっと心の奥底でモヤモヤしていた疑問が消えたことにより、晴れ晴れしい気持ちで振り返った。

 するとその視線の横で、広い海全面が帰還するポイントに変化していくのが見えた。



「たつろー。聞きたいことは──聞けたみたいだね!」

「ああ。ばっちりだ!」

「わふっ──」



 竜郎の晴れやかな顔を見て直ぐに察した愛衣は、サムズアップとウインクで応えてくれた。

 それに対し竜郎は嬉しさのあまり、愛衣を思い切り抱きしめた。

 地球にいた頃なら痛いほどの力であったが、今はステータスのおかげで心地いいくらいだった。

 そうして愛衣も竜郎の腰に手を回し、しばらくお互いの体温を味わってから離れた。



「それで、どんなことを聞いたの?」

「俺達の世界でもシステムを使う方法だ」

「──ということは……タツロウさん達の世界では、システムは起動しないのですか!?」

「え、ああ。うん。そうみたいだな。

 けど帰還石を身につければ、エネルギー供給が出来て使える様になるらしいんだが……どうしたリア?」



 一番関係が薄そうなリアが一番前のめりで聞いてきた事に、竜郎は不思議そうな顔をした。



「いやあ。それを聞いて安心しました。

 タツロウさん達の世界でシステムが常時起動しっぱなしだったら、大変な事になる所でしたよー」

「「大変なこと?」」



 突然言い出した不穏な言葉に、竜郎と愛衣は二人そろって首を傾げた。



「はい。実はですね。

 単刀直入に言いますと──私も、タツロウさんも、アイさんも」

「リアちゃんも、たつろーも私も?」

「今現在、元ボス戦で得た称号のせいで、ドワーフでも人種でもない別の存在に切り替わってしまっているんです」

「「は?」」



 何を言っているんだろうか、この子は。と竜郎と愛衣もだが、カルディナ達も黙って聞きながら疑問符を浮かべていた。

 その反応に、まあそうなるだろうと察していたので、リアはそれを無視して言葉を続けていく。



「実はタツロウさんとアイさんの持っているエンデニエンテという称号効果は、あらゆる肉体のダメージを回復するというものですが。

 これは見た目に解りやすいダメージだけではないんです」

「逆に見た目に解らないダメージって何かな? 軽い病気とか?」

「勿論それもありますが、その中には老化などの細胞レベルでのダメージも含まれているんです」

「──まってくれ。それじゃあ、システムが機能している間。

 俺と愛衣は歳を……歳をとらないって事なのか?」

「はい。一種の不老不死の状態ですね。

 けれどここまでなら別に私も、最初にそれを知った時ほど驚きはしなかったんですよ」

「最初って──もしかしてあの時かな」

「ああ。言われてみれば急に変だったからな」



 愛衣と竜郎の頭の中にステータスを見ていた時、突然体調を崩したと言って横になったリアを思い出していた。

 そう言えばあの時は竜郎と愛衣の称号の話になり、そこをリアが《万象解識眼》で見ていた気がする。



「でもまあこの際、老化はいいとして。

 さっきの言い方だと、それ以上にシステムが切れなかったら不味い事があったって事だよな?」

「はい。一言で肉体ダメージの回復と言っていますが、これは回復というより元となる──その人物に於いてもっとも動きやすい、最盛期の体を定義に置いて、その状態へ強制的に変換しているんです。

 こちらの意志も何もかも無視して」

「んー? もっともいい状態を維持してくれるなら、別にいいんじゃないの?」

「そうですね。男性・・の場合は、それでも支障は無いでしょうね」

「男性の──もしかしてっ」



 竜郎の頭の中で、男に無くて女に有るものを思い浮かべていく。

 そして体を動かすのに最も適した状態を維持するというのなら、つまり女性として大切な機能も止まった状態になってしまうのではないかという結論に行き着いた。



「タツロウさんは気が付いたようですね。

 多分その想像であっていると思いますが、私からハッキリ言わせてもらいます。

 つまり、エンデニエンテという称号が適用されている限り、アイさんに生理が来なくなるんです」

「生理が来ないって…………そういえば最近来てなかったかも?

 ん? ってことは──赤ちゃん!」

「はい。子供が作れない状態だという事です」

「そんな……────アレ? でも、そっか。

 帰った後にシステムを起動しなければ、その期間は適用されないわけだから問題ないってこと?」

「その通りです。はあ──。

 これを知ってからどう切り出そうかずっと悩んでいたんですが、解決法が見つかって良かったです……」



 そのふにゃっとしたリアの心底安堵した表情に、そこまで自分たちの心配をしてくれていたのかと二人は感動した。

 そしてこの子をあの時救う事が出来て本当に良かったと、今改めて思った。



「何か、余計な気苦労までかけちゃってたみたいだな。

 すまなかった。そして、ありがとうリア」

「ありがとねっ、リアちゃん!」

「いえ。お二人は私の未来を切り開いてくれた恩人ですから、少しでもお力になれたのなら嬉しいです。

 ──ああ。でもですよ。もし将来お二人が子供を作った場合。

 妊娠期間中は絶対にシステムを起動しないで下さいね!」

「──だな。そんなことしたら、強制的に俺たちの子が──」



 それ以上は想像もしたくないので、竜郎は言葉を噤んだ。

 それは愛衣も同様だったようで、絶対にそれだけは忘れないようにしようと心に刻み込んだ。

 うっかりで自分の子を消滅させてしまうかもしれないのだから。



「あーけど。不老不死か……。どうなんだそれって」

「私たちの世界で歳をとらない存在ってのは、かなり不気味だよね」

「なら呪魔法で隠してしまえばいいんじゃないですの?

 おとーさま方の世界ではシステムを持っている人なんていないでしょうし、かけほうだいですの」

「システムが無いってことは、魔力抵抗値も0っすからね~」

「俺達が悪人だったら何でも好き勝手に出来そうだな、それ……」



 本当に何をしても誤魔化せてしまう事は想像に難くない。

 多少ズルはしてしまうかもしれないが、それでも誰かを貶める行為だけは注意しておこうと竜郎は思った。

 そんな想像をしている竜郎とは別に、愛衣は別の事を考えていた。



「そうなるとー。

 帰ったら、まずは普通の学生として生きてから社会人になって。

 それから呪魔法で誤魔化しつつ生き抜いたら、こっちの世界で面白おかしく生きるって人生もできそうだね」

「それで飽きたら、自分たちの世界でのんびり余生を過ごして死んでいくってか。

 それもいいかもなあ」



 別に学生を終えたら、こちらの世界に来たっていい。けれど向こうには親もいるし、付き合いもある。

 こっちの世界での楽しみは、向こうの世界の自分が寿命か何かで死んだ事になった後でも十分楽しめるのだ。

 それまで普通の人生を生きてみるのも貴重な経験だろう。



「休みに、ここにきてもいいしな」

「何の心配もしないで、ただこの世界を観光して回るのも楽しそう!」



 自分たちの未来図が何となく見えてきたところで、ふと竜郎はあることを思い出した。



「そういえば、リアもドワーフじゃなくなってるって言ったよな?

 そっちは大丈夫なのか?」

「はい。ちょっとゴーレム気味のドワーフになっただけですよ。

 子供だってちゃんと生めますし、寿命がかなーーり延びた程度でしょうか」

「気味とは一体……」



 本人は別段問題視していないようなので、まあいいのかな?と竜郎もそこで考えるのをやめた。



「だがまあ。困った事が有れば言ってくれ。

 どうやら帰ってからも、こっちにこれそうだし何か力になれるだろ」

「では、その時は期待させてもらいますね」



 すっかり肉付きもよくなり、今では立派で健康的な美幼女だ。

 これなら元のガリガリの頃のリアを知っている人物からしたら、パッと見解らないのだろうなと思いながら、竜郎はその微笑ましい笑顔に笑い返した。



「さて。長かったダンジョン生活もこれで終わりだ。

 だいたい日数にして140日くらいは籠っていたはずだから、時間も大分稼げただろう」

「私たちの基準でいうと、4か月と20日くらいって事だね。

 てことは、異世界生活の7割以上はダンジョンって事になっちゃったんだ」

「けどそのおかげで、大分SPは稼げたぞ。

 それに称号も──ああ、そうだ。

 なんか知らない称号とかも貰ったし、そっちを確認していくか」

「そういえば何か貰ったっけ。いきなり変な事が起こったから忘れてたよ」



 ということで、今回新しく得た称号《創造主・破》《高難易度迷宮踏破者》《竜殺し+1》《越境者》。さらにスキル《魔法域超越》。

 これらを纏めて調べていく。



 --------------------------------------

 称号名:創造主・破

 レアリティ:23

 効果:自己世界の割り込み。

 --------------------------------------



「パッと見、前の序とはレアリティしか変わってないみたいだが」



 誰もが同じ感想を抱く中、リアだけは《万象解識眼》でさらに詳しくスキルを覗いていく。



「えーと…………ふむふむ。

 どうやら前のでは物理法則を無視できなかったんですが、これだと重力という点においては好き勝手に出来るようになったみたいですね」

「重力魔法を覚えたことで解放されたって感じか」

「そうですね」



 今は疲れているので試すにしても後にしようという事で、サクサク次の項目に移っていく。



 --------------------------------------

 称号名:高難易度迷宮踏破者

 レアリティ:18

 効果:10レベル以下のダンジョンにおいて、全ステータス微増。

    同ダンジョンにて体力消費減、睡眠時間減。

    同ダンジョンにて暗視能力付与、方向感覚上昇。

    同ダンジョンにて、レアドロップ率上昇。

 --------------------------------------



「ダンジョン内限定で効果が発揮される称号の様ですの」

「周回プレイが楽になりますって所かな。

 でもこの睡眠時間減てのは、少ない時間でも沢山眠った状態と同じになるって事?」

「そうですね。

 一日三時間も寝れば、七時間くらいの睡眠と同じ状態に回復するようです」

「微妙に便利だな。

 それにレアドロップ率上昇とか…………もっと早く欲しかった……」

「確かにそうっすけど、それは無理っすよ~」

「だなあ」



 クリアしなければ貰えないのだから、アテナの言葉が全面的に正しい。

 そんな事は竜郎にも解っていたので、気持ちを直ぐに切り替えて次を皆で調べていく。



 --------------------------------------

 称号名:竜殺し+1

 レアリティ:9

 効果:竜素材の装備数に付き、ステータス微増。

    竜力を消費して《竜の覇気 Lv.1》を行使できる。

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「基本的に《竜殺し》より、ちょっと良くなったって感じだな」

「それはそうだけど、この《竜の覇気 Lv.1》って何かな?」

「えーと…………それは、普段竜が放っている威圧感の様な物を他の種族でも放てるようになるってスキルのようです。

 これだと…………もの凄く弱い魔物や獣は近寄ってこなくなるみたいですね」

「微妙なスキルですの……」



 竜郎達の仲間には本物が四体もいるのだから、ぶっちゃけいらない上に適用範囲も狭すぎる。

 まさに奈々が口に出してしまった通りだなと、全員共通の思いに駆られた。



 --------------------------------------

 称号名:越境者

 レアリティ:16

 効果:自分以外のパーティメンバーの全ステータスを微増。

    ※複数いれば効果は重複していく。

 --------------------------------------



「これはパーティ全体の強化効果をもっているのか」

「ボッチには、とんでもなく辛い称号だね!」

「重複が可能という事ですから、沢山の人間がこれを持っているパーティは、全体が底上げされるようですしね…」



 今のところ所持しているのは竜郎だけなので、本当にこの称号効果が発動しているのか今一実感に欠けていた。

 けれどこれが二個三個と所持者が増えれば、全員がその恩恵による強化を実感できるようになりそうな称号だった。


 そしてラスト。

 竜郎がエレメンタルマスターというクラスからまた変化し、大賢者という大仰なクラスになった時に覚えたスキルを見ていくことにした。



 --------------------------------------

 スキル名:魔法域超越

 レアリティ:23

 タイプ:アクティブスキル

 効果:一日一回三十分間限定で、

    属性魔法の全レベルを、一時的に『3』上げる事が出来る。

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「────────は?」

「これはまた──恐ろしいスキルを入手しましたね。

 観てみましたが、このスキルの場合、上限解放は無視できるみたいですよ……」

「って事は、今たつろーがそれを使った場合。

 光と闇魔法は17レベルまで上がっちゃうって事?」

「──になるな。他だって一番低いのでも13まで上がるんだから、強力なんてもんじゃないぞこりゃ」

「それに今のとーさんだったら、いきなりスキルが上がっても難なく使えるだけのステータスもありそうっすからね~」


 例えこのスキルを一般人が持っていても、スキルレベルだけ上げられても、レベルにステータスが追いつかずに大した意味を持たせられないだろう。

 けれど竜郎は各種称号によって底上げされ、さらにクラスが上位になるにつれてレベルアップ時のステータスの上がり幅も増えてきている。

 その辺りを考慮に入れれば、竜郎ならばステータスが足を引っ張って、レベルの高いスキルを持て余すなどという事もなさそうだった。


 しかしそうなってくると、竜郎は一つ試してみたい事が出来た。



「これで底上げしたスキルで、カルディナ達の体を造ることはできるのか?」

「それは──……どうでしょう。

 直接観れば出来るかどうか、起こした結果はスキルレベルの減退と共に無くなるのかどうか解るかもしれません」

「ならやってみますの!」

「ピュイーー」「ヒヒーーン」「やってみるっす~」



 ここでそれが出来るのならカルディナ達はレベル14の体から、17の体に一気に押し上がることになる。

 そうなればより竜郎達の役に立つ事が出来そうだと、四体は一斉に賛成の意を告げてきた。

 そして本人たちがそれを望んでいるのなら、やってみるのもいいだろうと竜郎は、さっそく試してみる事にしたのであった。

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