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レベルイーター  作者: 亜掛千夜
第五章 呪われた少女編

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第248話 最終確認

 軽く横になったからか、リアはすっかり元に戻った様子。

 なので念の為に解魔法でも確認して大丈夫だと判断してから、皆でジャンヌが戦った部屋から出ていった。

 すると四つ置かれていた扉全てが塵となって消え、超巨大なボスへと続く扉だけが残っていた。



「──これで、いよいよ長かったダンジョンも最後か」

「最後の方は大変すぎて頭おかしくなっちゃいそうだったけど、それに見合うだけの成果は皆あったよね」

「もちろんですの。

 まず、ここにいる全員が50レベル以上まで成長したですの」

「それに、ここじゃなきゃ手に入れられなかったかもしれないスキルもゲットできたっすし」

「素材も沢山確保できました!」

「ピィー」「ヒヒーン」



 皆が一様に入る前とは違った強力な力を手に入れた事に充実感を味わいながら、最後に残った大きな扉を見つめた。



「──じゃあ」

「うん」

「ピィイ」

「ヒヒン」

「はいですの」

「はいっ」

「はいっす~」



 全員が同じ気持ちで前に進──まず、後ろに踵を返した。



〔あれーー!?

 皆さん、なんで行かないんですかー?

 今ー雰囲気的に行くところですよねー!?〕

「馬鹿を言え。次はボス戦だぞ。それに相手は竜だ」

〔だから恐れをなして帰ってしまわれるのですかー?〕

「ふふふ。甘いね、ダンジョンちゃん」

〔──っ!? ちゃん付けで呼ばれたの初めてですー!〕



 存外嬉しそうに叫ぶダンジョンに、竜郎はげんなりとした。



「いや。そこに食いつくなよ……。

 勿論ここまで来たんだ。最後まで挑戦するに決まってる」

〔ではー?〕

「ここで休憩に決まってるでしょ。いったい私たちの何を見てきたの。

 ダンジョンちゃんはー」

〔………………そういえば。

 私と話ができる所では、必ずと言っていいほど居座ってましたねー〕

「そういうことだ。

 それにリアは、元ボス戦で大分武器を消費しちゃったらしいしな。

 その補充もしなきゃいけないし、せっかくの竜なんだ。

 骨までしゃぶりつくす勢いで身ぐるみ剥がす為にも、準備は万全にしておきたいんだよ」

〔割と国を破壊できるレベルの子なんですがー。

 あなた方が言うと出来ちゃいそうで、あの子が可哀そうですー!

 せっかくのレベル10ダンジョンになってからの初陣なのにー〕

「それはまあ、こっちも命がけで挑むんだから我慢してくれ。

 でだ、実は聞きたい事があるんだが」

〔? ここには魔物は出てきませんよー? 前にも言いましたよねー?〕

「ああ。それは聞いたから別の事だ。

 お前。さっきまでの全ボスの振り分け。俺達の構成を見てから決めただろ?」

〔ありゃー。ばれてましたー?〕

「それにスキル構成も対俺たち用に少しばかりバージョンアップしたり、弄ったりしたんじゃないか?」

〔まあ、そこまで大がかりな事はしてませんけどー。多少はしましたー〕

「やっぱり」



 そもそも最初に部屋に入った時点で魔物が待ち構えていない事から、もしかしてとは竜郎も思っていた。

 そして全部《レベルイーター》が使えないレベルのないスキル構成の魔物だったり、カルディナ達の遭遇した魔物たちについて聞くにつれて、苦戦する様にあつらえたとしか思えなかったのだ。



〔けどー。そればっかりは許してほしいですー。

 あの子たちも最後くらいは、まともに戦って見送ってあげたかったんですからー。

 それに、あなた達も成長できるような魔物だったはずですよー?〕

「まあな、だから別に怒っちゃいないよ。

 ただ確認してみたかっただけ、なんだからさ」

〔ならよかったですー。

 それに、あの子たちを倒してくれたのが、あなた達で良かったと思っているんですよー〕

「良かったって、どういうこと?」

〔それはですねー。

 もしあなた方の様に、個々が突出した実力を持った方々が攻略してくれなかった場合。

 きっと挑戦者達は何組も徒党を組んで、ここに押し寄せてきたはずですー。

 そんな物量で押してくるような人達に、かわいい子たちの魂を何個にもぶつ切りして渡すなんて、まっぴらごめんですからー〕

「そういうことか」

〔そーゆーことでーす。

 それにー。あなた達なら、つまらないところで死んだりしないで、ながーーーく生きてくれるでしょうしー。

 その子たちも末永ーーーーく、外の世界を堪能できるとも思ったんですよー〕

「まあ、俺達もただの人種とはいえまだ若いしな。

 期待に添えられるかは解らないが、早死にする予定もないし。そこは期待してくれていい」

〔はいー。それで、ほかに聞きたいことはありますかー?〕

「ないよ。色々話してくれてありがとう」

〔こちらこそー。それでは、またここを出るときにでもー──〕



 そうしてダンジョンとの会話は終わった。

 会話を終えた竜郎達がまず最初にしたことは、家を出して食事や一日休む事。

 そして次の日からは、リアの手伝いなどで忙しい日々を過ごす事となるのであった。


 それから二十日ほどの日数をたっぷり使って過ごし、リアの消耗品の武器補充もばっちり終え、竜郎達の武器や防具などの調整や修復なども完璧。

 手の空いた時には新しいスキルや既存のスキルの特訓までして、自らの技術向上にも抜かりはない。

 出来る準備は全部やりきったという自信もあった。


 相手は竜。それもおそらく上位の竜。自分たちの力を過信しすぎれば、手痛い目に合うかもしれない。

 そんな慎重さも、全員しっかりと自分に言い聞かせてきたので慢心もない。

 後は全力で持って打ち取りに行くだけである。



「というわけで、今日はミーティングを終えたら各自ゆっくり休むこと。

 そして明日、完璧なパフォーマンスが出せる状態で挑もう」



 竜郎の目には全員がリビングに置いてある、それぞれ専用の椅子に腰かけて、揃って頷く姿が見て取れた。

 なので竜郎は最終確認のために、ボス竜への対応の仕方を話し始めた。



「まず。

 今回一番やっておきたいと思うのは、全員に《竜殺し》のスキルをつけたいって事だ。

 だから余裕があるのなら、全員揃って最後の一撃を決めたい」

「それはもう、その称号を持ってる私とたつろーもって事だよね」

「ああ。俺達にも意味があるんだよな。リア」



 そこで竜郎は円形テーブルの向かって左側、奈々の横に座っていたリアに視線を向けると、静かに頷きながら肯定した。



「はい。《竜殺し》のスキルも重ねることで、+の値を付ける事が出来るはずです」

「ということだから、出来るようなら全員でってことを覚えておいてくれ。

 もしそれができたなら、竜肉での竜力増加もできるし、全員もっと強くなれるはずだ」

「それは楽しみっすー」



 未だ高みを目指す気満々のアテナは、まだ見ぬ竜に今から闘志を燃やしていた。

 それはまだ早いとジャンヌがいさめてくれたので、アテナが元の状態に戻ってくれたところで竜郎は次の話に移っていく。



「次に今回は出来そうでなら──という言葉が頭につくが、スキルレベルだけを取って本体のレベルは吸収しないで倒したいと思っている」

「大量の経験値と、より多くの上級素材の確保ですね」

「そうだ。

 俺と愛衣とカルディナで倒した魔竜はレベル1にしたら、素材の質も落としちゃったからな。

 今回は大量の高レベル竜素材が手に入れられるチャンスだ。

 経験値もそうだが、なるべく狙っていきたい」

「竜肉のレベル調整も、元が高い方がいいしね」

「ああ。それもある。

 勿論、無理そうなら全部取るつもりだから安心してくれ」

「命が最優先ですの!」

「ああ。それが何より大事なことだからな」



 竜郎はそう言いながら、少し離れた場所にいる奈々の頭に手を伸ばしてヨシヨシと撫でた。



「後は向こうが自己回復系の能力を持っていた場合。

 出来るならでいいが、戦闘中に牙や鱗なんかの剥ぎ取りもしたい」

「そんで回復したら、また剥ぎ取ると。悪魔だね!」

「まあ、それは本当に余裕があったらの話だから、話半分に覚えておいてくれればいい」



 一レベルの魔竜の素材でも中々に有効活用できているので、せっかくならもっと高レベルの素材を沢山ほしいという気持ちはどうしても捨てきれないのだ。

 そうして概要を話し終えたので、今度はもっと踏み入った内容に入っていく。



「まず初めにやることと言えば、リアにスキル構成を丸裸にして貰う事だな」

「相手のスキル構成が解れば、対処法も自ずと解りますからね。

 それは任せてください」

「そんで私たちはリアちゃんが観終るまでの間、竜の相手と護衛だね」

「ああ。完全に相手の手の内を明かすまでは、牽制くらいで遠くからチクチクやった方が安全だろう」

「解った後に、わたくし達は反撃開始。

 その間におとーさまが、《レベルイーター》でのスキルレベル吸収。

 レベルがなくなったら、全員でタコ殴り──という流れですの」

「けどレベルのないスキルってのもありそうっすから、それには気を付けた方がいいっすね」

「勿論そうだな。程度にもよるが、あまりに危険なスキルなら早期決戦も考えないといけない。

 後予測されるのは、このダンジョンは最初から最後まで水のない階層が一つもなかった。

 だから何かしら、水に関するスキルを持っているんじゃないか。

 または、水が広がるフィールドでの戦闘になる可能が高いんじゃないかと思ってる」

「私たちに取っては足場が悪くて、相手に有利かもって事だね。

 実際ジャンヌちゃんの戦った場所は、海水が入った水槽みたいな所だったんだよね?」

「ヒヒン」



 肯定するようにジャンヌは《幼体化》した姿で可愛らしく椅子に座った状態で、コクリと頷いた。



「ジャンヌは大きいし膂力もあるからそこまで問題なかったんだろうけど、さすがに他のメンツは飛翔系のスキルが無いと動きにくいな」

「竜と戦うのに、足場造ってる余裕があるかも解んないしね」

「そうなったら足場を事前に浮かべておくか。

 あと気になることがある人はいるか?」



 そう言って竜郎は全員の顔を見渡すが、特に気になることはない様子。

 気になることも何も、まだ漠然と強そうな竜という情報しか持っていないのだからそりゃそうだと、竜郎もここでこの話を打ち切った。

 それからは細かな話や雑談などにフェードアウトしていき、そろそろ話し合いも切り上げることにした。



「それじゃあ。明日は、いよいよこのダンジョンの最終決戦だ。

 何度も言っているようだが、絶対に自分の命、仲間の命を優先してほしい。

 だから危ない時は、気にしないで直ぐに帰還石を使ってくれ」



 また全員を見渡すと、真っすぐとした視線をこちらに向けて、はっきりと頷いてくれた。

 それに竜郎も頷きかえして、最後の締めとした。



「明日は朝食をとって少し間を入れた後、出発だ。

 それまで気力体力万全の状態にしておいてくれ。以上、解散」



 そうして、それぞれが一番安らげる場所へと散っていき、竜郎と愛衣は共に部屋でいちゃつき、精神状態もベストコンディションへと持っていく事にしたのであった。

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