第247話 残りの確認
カルディナ、ジャンヌのステータスを見てきたので、当然今度は三女奈々の出番である。
皆で広大な白い空間に座りながら、システムをポチポチ弄っていく。
--------------------------------
名前:ナナ
クラス:邪竜
レベル:54
竜力:1554
筋力:962
耐久力:779
速力:1001
魔法力:945+100
魔法抵抗力:945
魔法制御力:993
◆取得スキル◆
《アストラル体》《真体化》《成体化》
《浮遊 Lv.8》《竜吸精 Lv.8》《竜飛翔 Lv.8》
《呪魔法 Lv.11》《生魔法 Lv.10》《毒魔法 Lv.10》
《解毒魔法 Lv.10》《氷魔法 Lv.10》《かみつく Lv.10》
《ひっかく Lv.9》《竜尾閃 Lv.2》《竜爪襲撃 Lv.7》
《急加速 Lv.4》《鉱石化の息吹 Lv.3》
《竜力回復速度上昇 Lv.8》《魔法密度上昇 Lv.5》
◆システムスキル◆
《アイテムボックス+5》
残存スキルポイント:286
◆称号◆
《呪を修めし者》《生を修めし者》《氷を修めし者》
《獣を修めし者》《毒を修めし者》《解毒を修めし者》
《すごーい!》《ソルドルング》
--------------------------------
「奈々は邪竜か。ジャンヌとは、ちょうど正反対な感じだな」
「ヒヒーーン」「ですの」
「邪竜っていうクラスも中々かっこいいなあ」
「わたくしも、けっこう気に入っていますの。そのクラス」
うちの子が中二病に……。などと、くだらない事に思いを馳せつつ竜郎は沢山あるスキルの内、何か変わっているかと覗いていく。
「毒魔法と解毒魔法が10になって、《鉱石化の息吹 Lv.3》?
これはいったい……」
「《鉱石化の息吹》は、石化の息吹の上位スキルの様ですの」
「わざわざ鉱石化って言ってるっすから、鉱石なら何でもありなんすか?」
「やってみるですの!」
そこで竜郎が造った土人形AとBの二体を使って、実験をしてみる事となった。
まずは普通の石化を意識しながら、奈々はAの方に向かって口から白い粉を消火器の様に吹き付けた。
「なんというか。すごい絵面だねえ」
可愛いらしい幼女の小さな口から、もの凄い勢いで出てくる白い粉。その姿は確かにシュールであった。
しかしその先にある白い粉を吹き付けられていたAは、土人形から石人形と化していた。
「では、今度は別の鉱物をイメージしてみますの。何がいいですの?」
「ダイヤモンド!」
「俗っぽいなあ。でも、鉱物って言ってるんだし出来なくもないのか?」
「観たところ出来なくもなさそうですが、レベル3では難しいかと。
なので実験するなら只の水晶とか、その辺りの方がいいと思います」
「そうだな。じゃあ、水晶でやってみてくれ」
「解ったですの! ──ふーーー」
今度は白い粉ではなく、キラキラした透明な粉が口から噴出された。
ただ先よりも勢いが少し弱まっている様にも感じた。
そうして土人形Bを見れば、そちらも完璧な水晶人形と化していた。
「おおっ。綺麗だねぇ」「面白いスキルっす~」
「ただの石化の息吹として使うなら、かなり強力なモノができますが、それ以外の鉱石に変えると威力が落ちていくみたいですね。
けれど水晶くらいなら、魔法抵抗値の低い相手なら問題なさそうです」
「へえ。ちょっと切って中身を見てもいいか?」
「もちろんですの」
ということで竜郎はライフル杖を取り出して、その銃口にあたる場所から圧縮した超極細レーザーを射出。
すると石も水晶も綺麗に縦半分に切れていった。
それから開いて中を見てみれば、中心部までしっかりと石と水晶に変わっているのが見て取れた。
「では、今度はもう一つ新しい技を見せますの」
「特にスキルには、それらしいのは無さそうっすけど、どんなのっすか」
「見れば解りますの。
ではおとーさま。少し石人形から離れてほしいですの」
「解った」
言われるがままに直ぐ距離を取りながら、竜郎は精霊眼で魔力視と気力視だけを起動して、解魔法も展開してから奈々を見つめた。
すると奈々から毒魔法の魔力が溢れ出し、それを石人形の足の部分に纏わりつかせた。
すると数秒もしない間に石の構造が破壊されて黒紫に変色していき、自重に負けて人形の足がグシャッと崩れ人形が倒れた。
そして残った部分にも毒魔法を付着させていくと、そちらも変色し、奈々が氷の礫をそこへ放り投げるとズボッと簡単に穴を穿った。
「毒魔法ってのは非生物にも効かせられる魔法だったのか」
「そうみたいですの。リアが言うには、10レベル以上が条件の様ですけど」
「ああ。今レベル10だもんね。それで出来るようになったんだぁ」
そうして実験を終えると、最後に称号の話に移っていく。
毒魔法と解毒魔法の称号は他の修めシリーズよりもレアリティが高かったが、内容は全く同じだったのでスルーして魔物の討伐報酬に目を向けていく。
--------------------------------------
称号名:ソルドルング
レアリティ:ユニーク
効果:物理的な攻撃でのダメージと衝撃を特大緩和。
全ステータス+18。
--------------------------------------
「これは素の防御性能が上がる効果か。
特大緩和と書いてあるが、実際どれくらいの衝撃までいけるんだ?」
「恐らく耐久力を0にされても、雑魚魔物程度の攻撃なら生身で受けても無傷で終わるくらいの性能は持っているはずです」
「常に耐衝撃性を持った優秀な鎧を身に纏ってるのと、同じようなもんって事っすね」
「防具とか付けると動きにくいですし、これは目とかの柔らかい部分にも適応してますの。
ですから寧ろ下手な鎧より、ずっと優秀ですの」
「そっか。体全体に適応されるんなら、当然そうなるよね」
「けれど魔法には適応されないので、過剰に頼るのは危険ですけどね」
「だな」
これで奈々のステータスも確認が終わったので、今度はリアのモノに目を通していく。
--------------------------------
名前:リア・シュライエルマッハー
クラス:解識鍛冶師
レベル:50
気力:618
魔力:452
筋力:668
耐久力:448
速力:483+50
魔法力:510
魔法抵抗力:400
魔法制御力:365+50
◆取得スキル◆
《万象解識眼》《土精の血脈+8》《思考加速》
《鍛冶術 Lv.12:【専】魔力頭脳・魔導装備》
《ステータス効果付与 Lv.3》《集中 Lv.10》
《品質向上》
◆システムスキル◆
《アイテムボックス+4》
残存スキルポイント:112
◆称号◆
《すごーい!》《鍛冶を修めし者》《一心傾注》
《ソルドルング》
--------------------------------
「なんだか……。
わたくし達のモノを見てからだと、しょ──慎ましく思えてきますの」
「今、しょぼいって言おうとしてましたよね!?
ナナ達がおかしいだけで、私のステータスだって標準よりも高い方なんですからっ」
「まあなあ。
俺や愛衣みたいに成長系のチートスキルじゃないし、カルディナ達みたいに種族補正が桁違いにかかる存在でもない事を考えれば、年齢とかも考慮にいれて十分天才の領域だろな」
「ですよねっ」
この世界では余程優秀でもなければ、子供の間に十を超えたスキルや50レベルまで到達──というのは、かなり難易度が高いのだ。
そうした内輪の認識ではなく一般的な感覚を擦り合わせ、リアが落ち着いた所で新しいクラスに目を向けた。
「解識鍛冶師か。多分これって、珍しいクラスなんだろうな」
「ですね。《万象解識眼》の影響がモロに出た結果だと思いますから」
「あとは集中が10になってるね。
ってことは、この……いっしんけーちゅう? って称号は、これが原因?」
「はい。効果は自身の時間感覚の遅延。
簡単に言ってしまえば、世界がスローに感じるって所でしょうか」
「それって戦闘で使ったら、かなり便利じゃないっすか?」
「そういう側面もありますが、使うとしたら一対一の状況でしか使えませんね。
そして例え一対一の状況であっても、それを使うと視野が狭くなり──文字通り目先の事しか見えなくなります。
なのでチラリと見ただけで相手の行動の結果が解る《万象解識眼》みたいなものが無いと、クセが強すぎて常時発動は厳しいと思います」
「そういう欠点があるんだね。
目先の事しか見えないなら、後ろから攻撃されただけで、やられちゃうだろうし」
「はい。でも鍛冶師の仕事などでは十分役に立ちますね。
素早く正確に細かい作業をしなきゃいけない時には、このスキルは実力以上の成果を残せるようになるでしょうし」
「戦闘系よりも、生産系の人が持ってると便利な称号って訳か」
「ただ常時使っていると、脳が疲れて睡眠を要求してくるようになりますけどね」
「痛し痒しですの」
そして最後にクラスチェンジの際に覚えた《思考加速》について聞いてみれば、これも使いすぎると眠くなるスキルの様。
しかし《思考加速》と《一心傾注》は相性が良く、同時に使えば一時的に技術力が爆発的にアップするとの事。そこに《万象解識眼》も加われば、無類の威力を発揮できるだろう。
勿論戦闘時にも使えない事もないので、多岐に渡って活躍できそうなスキルであった。
そしてリアを見終わった後は、アテナのステータスである。
--------------------------------
名前:アテナ
クラス:闘竜
レベル:57
竜力:1481
筋力:965+50
耐久力:929
速力:935
魔法力:1036+50
魔法抵抗力:1107
魔法制御力:999
◆取得スキル◆
《真体化》《成体化》《幼体化》
《不滅の闘志》《竜力路 Lv.9》《竜装 Lv.11》
《乾坤一擲 Lv.5》《雷魔法 Lv.11》《風魔法 Lv.11》
《土魔法 Lv.10》《鎌術 Lv.10》《竜尾閃 Lv.6》
《燦然輝雷》《竜力回復速度上昇 Lv.8》
《隠密迷彩 Lv.2》
◆システムスキル◆
《アイテムボックス+5》
残存スキルポイント:307
◆称号◆
《雷を修めし者》《風を修めし者》《土を修めし者》
《鎌を修めし者》《譎詭変幻》《すごーい!》
《ドナルアンペリオン》
--------------------------------
「《不滅の闘志》と《燦然輝雷》ってスキルが増えてるけど、どっちがクラスチェンジの時に覚えたのなの?」
「《不滅の闘志》っす。
それから《燦然輝雷》は、魔物の角引っこ抜いてモグモグしたら覚えたっす」
「モグモグって食ったのか!?
まあた、この子達はもー。変なの食べちゃダメでしょーもー。
後でお腹壊しても、おとーさん知りませんからね!」
「お父さんというより、お母さんみたいだよ、たつろー……。
それで食べたってことは、もしかして前のジャンヌちゃんの時みたいな物だったってことかな?」
「そうっす。かっこいい雷が撃てるようになったっす」
「かっこいい!? 見たい見たいっ」「早く見せてほしいですの!」
目を輝かせて肩を揺らしてくる愛衣と奈々に、背中を押されるようにして立ち上がると、アテナは誰もいない方向に向けて燦然輝雷を使った黄金の雷を放射した。
それを精霊眼などで見ていた竜郎も、驚きながら解析していく。
「金ピカの雷だー!」
「派手でかっちょいいですのー!」
「見た目もそうだが、威力がかなり上がるんだな。
雷魔法限定の強化スキルといったところか。操作性はどんな感じなんだ?」
「んー。結構重たいっすね。
消費も激しいっすし、放ったら勝手にビューンって飛んで行っちゃう感じっす。
だから、これで手加減とかは出来そうにないっす」
「このスキルは完全に、威力強化特化みたいですからね。
倒してもいい敵用のスキルとしてみれば、かなり有用だと思います」
その後、竜郎達との混合魔法として使えるかどうか試してみれば、アテナの負担は増えるが、それでもちゃんと出来るようであった。
そしてそれが終われば、不滅の闘志についても触れていく。
「相手のレベルが自分よりも高ければ高いほど、自身が消費すれば消費するほど、不利になればなるほどステータスが上昇していくスキルか」
「ただし、その状況に陥っても闘志が残っていれば──っすけどね。
臆病風に吹かれて消沈してたら、効果はまったく無いみたいっす」
「まさに闘う竜。闘竜のクラスに相応しいスキルって感じだね」
「ですの。それに弱るほど強くなる相手は厄介ですの。
それにアテナは乾坤一擲もありますから、それで強化してさらに消費による《不滅の闘志》での強化も加わるとなると、鬼に金棒ですの」
「そんな相手が敵にいたら恐すぎますね……」
素の能力や、称号などでも強化されたステータス。
それにさらに上乗せしていくというのだから、天井がまるで想像できない。
これはジャンヌにも勝る強化かもしれないと、皆が思った。
そして最後に、お馴染みとなった魔物の名前が冠された称号を調べていく。
--------------------------------------
称号名:ドナルアンペリオン
レアリティ:ユニーク
効果:雷魔法により、電磁力を造り出すことが可能になる。
また物質に帯電させることで、金属以外でも磁力を持たせることが可能。
極の変更も自由に切り替え可能。
全ステータス+70。
--------------------------------------
「電磁力か。この物質っていうのは何でもいいのか?」
「多分そうみたいっす。
試しに土人形に使ってみたっすけど、問題なく磁力を持たせる事ができたっすから」
「また便利そうなスキルだね」
「便利っすね。これは使えば、例えばこんな事もできるっす」
アテナはそう言うと《アイテムボックス》から大鎌を出し、それに称号効果を使って磁力を持たせた。
そして誰にもいない方向にブーメランのように投げると、今度は自分の手に強力な磁力を帯電させて、十メートル以上離れた鎌を吸い寄せキャッチして見せた。
「おもしろーい。やり方によっては、色んなことができそう」
「だな。
それにしても……人数が少ない方が得られる強化値もそうだが、能力自体も強力になるみたいだな」
「ですの。ああ、そう言えば、わたくし気獣技が使えるようになりましたの」
「あっ。あたしも使えるようになったっす~」
「二人ともか。思っていた以上に、今回の試合は収穫があったみたいだな」
それから奈々とアテナの気獣技も見学させてもらった後は、最後に自分たちが手に入れた称号について竜郎と愛衣は触れていった。
「俺と愛衣が手に入れたのは称号:エンデニエンテ。
環境への適応能力と自動回復能力かな」
「これで寒いところも熱いところも、へっちゃらになったんだよー」
「環境適応能力に回ふ──っ」
「どうしたんですの? リア」
突然空色の目を見開いて驚いたように言葉を切ったリアに、隣に座っていた奈々が不思議そうな顔で問うた。
「──……い、いえ。
少し《万象解識眼》を使いすぎて、疲れちゃったみたいです。
クラッと来てしまって」
「言われてみれば顔も青いっすよ。大丈夫っすか?」
「はい。でも、少し休ませて貰いますね」
「生魔法はいるか?」
「いえ。本当に少し休めば大丈夫なので……」
そういってリアは赤色の目に戻して、羽毛枕を出して横になった。
竜郎たちもしばらく様子を見ていたが、大丈夫そうではあるので続きを話していくことにした。
もちろん、声は抑え目にして。
「それともう一つあってな。実は響きあう存在がもう一段階上がったんだ」
「ピィュー」「ヒヒン」「そうなんですの?」「よかったっすねっ」
「うん。それでね、だいたいこんな感じになったんだよ」
そこで響きあう存在の項目を全員が、それぞれのシステムから開いて見ていく。
「基本全体の性能アップだな。
それで今回追加されたのは接触している間、任意での五感上昇。
それと同人物を媒介として、離れた場所でのスキル能力の行使だな」
「五感の上昇っていうと嗅覚とか、聴覚とかっすよね」
「うん。鼻が良くなったり、耳が良くなったりして面白かったよ」
「後の媒介にしてどうのというのは、どういったモノなんですの?」
「それは実践して見せた方がはやいな」
そうして部屋の中で暇を持て余していた時に実験した事を、カルディナ達にも見せていった。
「へー。なかなか面白いっすね。それは、どんなスキルでもできるんすか?」
「ある一つのスキルを除いて全部出来た。精霊眼も愛衣の目を通して使えたし」
「それでも私は見えないんだけどねー」
「その一つっていうのは、もしかしなくても?」
「ああ。《レベルイーター》だけは、愛衣を経由して使うことはできなかった。
それができたら大分幅が広がったんだが、こればかりはしょうがない」
「頑固なスキルだよね。その分バランスブレイカーだけど」
「まあな、スキルの恩恵を考えたら、そのくらいはマイナスでもなんでもないさ」
そうして確認作業も終わったので、リアが元気を取り戻すまで、皆静かにそれぞれの時間を過ごしていくのであった。




