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レベルイーター  作者: 亜掛千夜
第五章 呪われた少女編

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第239話 第二グループ1

 カルディナ、奈々、リアが開いた扉の中へと入って行くと、そこはただ真っ白な空間が広がっているだけだった。

 そして他のメンバー全員も各担当の箇所に入っていったところで、開いていた扉が勝手に閉ざされた。

 すると真っ白な空間が揺らめき始め、やがて爽やかな風が通る広い草原の大地に、天井部が肉眼では見えない程高く雲もチラホラ浮かぶ場所へと変化した。

 そしてその魔物は、こちらから五十メートルほど先にポツンと立って、こちらを見ていた。



「また妙なのが出てきたですの」

「ピュィーイ」「ですね」



 カルディナ達の前方に立っているその魔物は縦三メートル、横四メートルの四足歩行で馬の様な体形の魔物。

 だがそれは動物型ではなくゴーレム型の魔物で、その体は何かの茶色い鉱物で出来ていた。

 そして頭はひしゃげた楕円形で、そこに落書きで描いたような適当な円形の穴が三つ開いており、まるでそれが目と口であるかの様であった。

 それだけでも中々に特徴的な魔物であるのだが、ソイツにはもう一ヶ所特殊な部位が付いていた。

 それはキノコの様に背中から生えて上へ三メートル程伸びていき、その先端部には湾曲した刃が扇風機の羽の様に六枚ついていた。



「どうやら背中から生えている物体と、下の馬?ゴーレムは別個体の魔物どうしが結合しているようです。

 そして二体が結合状態だと、タツロウさんとアイさんの様にお互いを強化し合う《寄生強化》というスキルを上の魔物が所持しています」

「なら二体を切り離すのが良さそうですの。

 他には何かあるですの?」

「あのゴーレムの体の鉱物は、鍛冶術が12レベルになった私でも変形が難しい物で出来てますね。

 その鉱物はゲシュマグミンと未知の鉱物との混合物質で、特性は硬いというより柔軟、けれど耐久性と耐衝撃に優れています。

 なので生半可の威力の攻撃は無力化されます。

 それにしても、あの鉱物は興味深いです。ぜひ欲しい」

「ピュィッー!」

「そう言うのは後ですの! 来るそうですの!」



 四足の足が大地を蹴るために力を入れたのを感知したカルディナが警告すると、それは関節も見当たらないのにどうやって動いているのか、獣の様にしなやかに大きく一歩を踏み出し駆けだした。



「ピューーイ!」

「解ったですの。リア、取りあえず、こちらから攻撃してみるですの!」

「解りました!」



 カルディナは魔弾を連続で撃ちだして、奈々は魔物が踏みしめる大地を氷魔法で凍らせつつ、ステータス下降が混ざった竜呪爪襲撃を放つ。

 そしてリアは、四連ロケットランチャーで大規模爆発の弾を四発発射した。

 それは並の魔物なら一撃一撃が必殺の威力、だがゴーレムは構うことなく突撃してきた。

 集中砲火の中ゴーレムは体中に極小さな浅い傷を作りながら駆け抜けてきて、やがて凍らせた地面に到達して足を滑らせバランスを崩した。

 そこで奈々が喜色の笑みを浮かべようとした──のだが、上の六枚刃の魔物が回転し、下のゴーレムごと引っ張って低空飛行。

 直ぐにバランスを立て直し、下のゴーレムは凍った大地を甘蹴りして、それを補助した。

 さらに悪い事に上のヘリコプターの翼の様に回転して飛行している刃から、無数の気力の斬撃があちこちに飛び散ってきた。

 それは一撃だけでも相当な威力が籠っており、何の対処もしないで食らうのは危険なレベルだった。

 


「あれは飛ぶことは出来ますが、ゴーレムが重たいせいで飛行能力は高くありません。

 上に逃げましょうっ」

「ピュィー」「解ったですのっ」

「うわっ」「わわっ」

「ピュィーーーー!」



 上に逃げようと提案したころには既に斬撃と魔物が迫ってきていたので、自分が運ぶのが一番早いと《真体化》したカルディナが、二人を前足で引っ掴んで急上昇した。

 すると一秒もしない間に、先ほどまでいた場所に無数の斬撃とゴーレムの前足がめり込んでいた。



「お姉さま。後は自分で飛べますから、わたくしは離してほしいですの」

「ピュィ」

「私はそのまま、ぶら下げていてほしいです。お邪魔でなければ…」

「ピィ!」

「問題ないだそうですの」

「ありがとうございます。カルディナさん」



 奈々はカルディナの左前足から解放されて自分の翼で上空を飛び、リアはそのまま右前足で腰を捕まれたままぶら下がった状態を維持した。

 そして魔物の方はと言えば、リアが言った通り飛行能力は低いらしい。

 上空七十メートル程の場所にいるカルディナ達を追ってこれずに、空に向かって気力の斬撃と土の砲丸を撃ちだしてくるだけで対処は難しくなかった。



「これなら空からタコ殴りできますの!」

「上から下に攻撃できる方が楽ですからね。ぽいぽいっと」



 早速リアはそう言いながら攻撃を避けながら動くカルディナの前足の中で、爆撃機の様に下にいる魔物に向かって手榴弾を次々と投下していった。



「ピューー!」「面白いですの!」



 それに続けとばかりにカルディナと奈々も、それぞれ下に向かって攻撃していく。

 魔物は十センチ以上高度を上げる事が不可能らしく、こちらに来ることも出来ずに攻撃を一方的に食らっていた。

 だがその耐久力は凄まじく、カルディナ達の攻撃をその身に直に受けながらも、耐え抜いてしまっていた。



「やはりスキル効果で共にステータスが上がっているせいか、攻撃が通りにくいですね」

「けれど、まったくダメージが無いわけでもないですの。

 まだ残り時間も十分ですし楽勝ですの!」

「ピィイ」

「解ってますの。お姉さま」



 油断はしすぎない方が良いとカルディナから諭された奈々が、素直にそれを受け入れていると、さすがに魔物の方もこのままでは不味いと理解したのか、動きを見せてきた。

 カルディナ達が攻撃を投下しながら見ている中で、下のゴーレムがこちらまで音が聞こえる程激しく振動し始めた。



「あれは──。

 二人とも、あの魔物達が分離するようです!

 上の魔物だけなら飛行能力も高いので、すぐにこちらに飛んでくると思います」

「ピユュユイィィー」

「───解ったですの。

 リア、飛ぶ方はお姉さまが相手をしてくれるそうなので、わたくし達は下のゴーレムを破壊しますの」

「……分離した状態なら耐久力も下がっているでしょうし、その方が良いかもしれませんね。

 では、お願いします!」

「ピィー!」

「御武運を──」

「ピィピュィー」



 魔物の背中から木の根のような者がズルズルと出てきている中、奈々はリアを受けとりながらカルディナに呪魔法でステータスのアップと、生魔法での自動回復を付与して一度高度を上げた。



「もうすぐ分離が終わります……4、3、2、来ますっ!」

「ピィューーーーー!」



 リアのカウントにジャストで完全に分離が成功し、竹トンボの様に六枚刃のプロペラが回転しながら一番近いカルディナめがけて突っ込んできた。

 そしてカルディナも望む所だとばかりに翼に竜力を込めて竜翼刃を形成、そして更に土魔法も混ぜ込んで竜翼土刃で更に強度を上げて舞い降りる。


 ガキンッ! ガガガガッ!!

 まるで硬い金属が大型ファンに巻き込まれた時の様な盛大な音を立てて、カルディナの翼と魔物の六枚刃の回転湾曲刀がぶつかり合った。

 その瞬間を見計らって奈々たちは、カルディナのいる場所を通り抜けて下のゴーレムの元まで急降下していった。


 奈々とリアと擦れ違う間際に、目と目でお互いの健闘を祈りつつカルディナは二人を見送る。

 そして土で強化された竜翼刃に更に力を込め、できるだけ二人から離すように力ずくで斜め上へと押し飛ばした。



「ピュィー」



 魔物はカルディナの意図した通り奈々達から、より離れた上空へと飛び退ったが、その代償として翼が数か所切り裂かれていた。

 だが事前に奈々に自動回復する様に呪魔法で生魔法を付与して貰っていたので、その傷は直ぐに塞がってくれた。

 けれど探査魔法で相手を調べてみれば、一本刃先が少しだけ刃こぼれした程度。

 つまりは刃としては、向こうの方が上だという事に他ならなかった。


 解析結果によれば、カルディナの竜翼土刃を5とすれば向こうは4。

 この時点では勝っているが、アッチはそれが計六枚。

 それらが一秒も満たない間に、何度も電動カッターの様に回転してくるのだ。

 結果。刃としての性能だけを見れば、向こうに押し負けてしまったという訳である。


 そのことを苦々しく思いながらも、カルディナは治った翼をはためかせ、下から突き上げるように魔弾と土魔法の混合魔法を連続で、ガトリングガンよろしく撃ち放った。

 流石に強化されていない状態でそれを何発も食らうのは不味いのか、逃げるように高度を上げながら右へ左へと飛んで行く。

 だがスピード、そして飛行能力はカルディナ程ではない。

 なので、それを生かして攪乱していく。



「ピィューーーーーーー」



 私はここだとアピールしながら、下に降りさせないように引き付ける。

 そして空を右へ左へと高速で移動し時に追い、時に追われながら魔弾と気力の斬撃をお互いに打ち合った。

 カルディナの魔弾は一度のアタックで平均三発ほど当てられ、向こうの気力の斬撃は探査魔法と機動力によって全てを躱してのけた。

 ここだけ見ればカルディナが圧勝していた。

 だがそれで魔物が良しとするはずも無く、次の一手へと進み始めた。

 カーーーン──。

 斬撃の嵐が止み、魔物からそんな音が響き渡ってきた。



「ピィユ?」



 カルディナは首を傾げながらも、油断なく探査で辺りを警戒。

 何があっても直ぐ動けるように翼を意識しつつ、動きの止まった魔物に魔弾を打ち込んでいく。

 するとその途端、横向き状態だった六枚刃が縦に起き上がり、さらに重なり合って太い一本の湾曲剣に変化した。

 かと思えば湾曲した状態がピンと皺を伸ばすように真っ直ぐになり、重なり合って分厚い刀身になっていたものが細く長く成形されていく。

 そして最後には、一本の日本刀の様な十メートルの巨大な剣が、フワフワ浮かんで切っ先をカルディナに向け、魔弾は当たった端から切られて消えていった。


 どうやらこの魔物は切る。という動作をしなくても、触れただけで斬撃を与える事が出来てしまうらしい。

 また浮いている事からプロペラの様に回転して飛ぶだけでなく浮遊、またはそれに近いスキルを有しているのは明白。

 そんな分析をカルディナは冷静にしつつも、物騒な姿になった刀のお化けを睨み付ける。


 するとその切っ先が後ろにグググッと下がると、その瞬間弓矢のように弾かれて、とんでもないスピードで真っ直ぐカルディナに突撃してきた。



「───ピィ!?」



 カルディナは慌てて上へと逃げて何を逃れるが、通り過ぎざまに当たった風にも斬撃が適応されていたのか、後ろ足がズタズタに切り裂かれてしまっていた。

 だがまだ奈々の呪魔法によって付与されていた自動回復によって、直ぐに再生を始めてくれた。

 そんな間にも既に反転して切っ先をカルディナに向け、また弾け飛んで来ようとする魔物が目に映る。

 この魔物はギリギリではなく、十分に余裕を持って躱さなければ危険。


 しかし移動速度こそ陸の亀の如き速度に落ちたものの、先ほどの射出速度はカルディナの最高速度を若干超えてしまっていた。

 射出時は真っ直ぐにしか飛べないというハンデを背負ってくれてはいる様だが、探査魔法と反射神経だけで大差をつけて躱すのは不可能だった。

 その為カルディナは現在、照準をあわされないように縦横無尽に滅茶苦茶な軌道で飛び回る事で何とか対応してみせた。


 けれどこれは所詮、一時しのぎでしかない。

 奈々のかけてくれた自動回復も、後数回で打ち止め。

 これ以上ぽんぽん怪我をしていたら、最終的に体を構成する魔力を飛ばし尽くされ消滅してしまう。

 かと言ってこちらの魔弾は切られてしまうし、竜翼刃もさらに刃物として切れ味の増したアレに適うとは思えない。

 他の手札は解魔法に土魔法、水魔法。

 とてもじゃないが、あの魔物を破壊するのには攻撃の性能が足りなかった。



「……ピィ」



 死ぬくらいなら帰還せよと竜郎から厳命を受けている。

 だが帰るのは嫌だ。

 なら下の奈々たちと合流して新たな作戦を───とも思ったが、どうやら下も激戦状態であれに割って入ってしまえば、お化け刀も一緒に付いてきて二人をさらに危険にさらしてしまうだけだろう。

 こうなったら情けないが、二人がこちらより先に片付けて応援に来てくれる事を祈る他ない。

 そんな結論に至ったカルディナは、悔しそうに嘴をモゴモゴ動かした。


 ───だが、それから時間が経っても二人はまだ戦闘中。

 このままではタイムオーバーだ。

 これから向こうがゴーレムを倒しこちらに合流、そして討伐。

 それで間に合うか微妙な時間になってきてしまっていた。

 時間切れ、イコール負けである。

 これは何とかして活路を見出さなければと、先ほどから頑張っている妹たちをアテにしてしまった弱い自分を恥じて、知恵を振り絞らんと思考を回転させていく。


 そこでふと、カルディナは思った。

 竜力でなら武術系の技に魔法系の技を乗せられるのなら、その逆は出来ないのかと。

 カルディナの持つ攻撃スキル、魔弾に竜翼刃を乗せて放つことは出来ないか。

 そう思いながら自分の翼に目をやった。

 その瞬間、またカルディナは思った。

 自分の翼に竜力の刃を纏って切り裂くのが竜翼刃。 

 だが自分の翼は、この小さな刃物の様な一本一本の羽の集合体である。

 今までは翼を一つの刃として竜力を流していたが、もしこの一本一本の羽を一個の翼と見立てて竜力を流した時、竜翼刃はどの様に変化するのだろうかと。



「ピィッ!」



 こんな所でウダウダ悩む前に実践だ!

 そう言わんばかりに暗くなり始めていた目に光を戻し、カルディナは勝利を求めて思いつきを形にし始めたのであった。

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