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レベルイーター  作者: 亜掛千夜
第五章 呪われた少女編

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第236話 さあ進もう

 杖による魔法能力の向上は使った本人でないと、いまいち掴み切れない。

 なので竜郎以外の面々は、普通に竜郎がレーザーを天井に撃ったようにしか感じなかった。



「うーん。何かカッコいい杖だけど、そんなに凄かったの?」

「ああ。今までの杖が全部、玩具に思えるくらいに」

「ふぇ~。そりゃ確かに凄そうっすね」

「しかもこれでまだ完全版じゃなくて半分だけの完成って言ってましたから、そこも驚きですの」



 竜郎の感想から凄くいい杖なんだろうと言うのは伝わった様なので、他の面々もようやく少し実感を持ってくれたらしい。

 だがリアは、そこで首を振った。



「ですが、今のでも全ての性能は出していませんよ」

「そうなのか? これでも十分だと思ったんだが」

「ええ。確かに今くらいの威力の魔法なら大差はあまり感じられませんが、もっと強力な魔法を使うならその機能を十全に引き出した方がいいんです」

「その具体的な方法は?」

「まずですね。現在タツロウさんが持っている杖には、12個のサブコアが搭載されています。

 そして先ほど一回トリガーを引いたので、今は一個だけが起動中です。

 なので──」

「トリガーを引くたびに、そのコアが起きていくってわけね!」



 話の流れを聞いていた愛衣が、ズバリとそれを言い当てた。



「そうです。ですが戦闘中にいきなり十二個すべて使いたいと思った時に、十二回もかちゃかちゃするのは面倒ですよね」

「確かにそれは、ちょっとマヌケな絵面ですの」

「なので、銃身の横から飛び出したレバーがありますよね。

 そこのレバーで個数を指定して、一気に起動することができます」



 竜郎はそのレバーがどれかと視線を落とすと、すぐに杖の様なライフルの様な──言うなればライフル杖の左横に一から十二までのメモリが振られ、手前に引く構造のレバーを発見した。



「これでいいんだよな?」

「はいそうです。せっかくなので、比較してみましょう。

 まずはそのままの状態で、先ほどよりも強力な魔法を使ってみてください」

「ああ」



 今度はさらに強力なレーザーを上に向けて放った。

 するとある一定の魔力量を杖に流した時に、凄いと感じるほどの性能が薄れた気がした。

 それは《万象解識眼》で観察していたリアも理解していたので、次の実験に移る。



「では今度は、一番手前に一気に引いてからトリガーを引いてみてください」

「やってみよう」



 竜郎は先ほど見つけたレバーを一番手前にまで引き寄せてから、トリガーを引いてみた。

 するとパリンッという音が複数重なって聞こえ、フィーーーンという音も複数聞こえ始める。

 そしてまた、青い粒子が先ほどよりも多くライフル杖の隙間から零れていた。



「その状態で、今のタツロウさんのできる限り強力な魔法を撃ってみてください」

「出来る限りだな。ふっ───」



 竜郎は集中しながら出来る限り強力な魔法を撃とうと、杖に魔力を流していく。

 すると先ほどと同様一定の魔力量に達すると性能が一瞬落ちたのだが、直ぐに復活して魔法の補助性能が元に戻るという現象が何度か起こった末。

 高出力エネルギーが圧縮された、細く貫通力が抜群のレーザーが放たれた。



「一個のコアを起動していた時よりも、十二個全部使った方が、より強力な魔法に対応できるようになるって感じがするな。

 でも一定量を超える度に力の流れがえーと……、なんて表現すればいいのか……。

 ──そうだな、ガクガクする感じと言えばいいのか。ちょっと、それが気になったな。

 だが、それ以外は文句なしの性能だった」

「だと思います。そのガクガクが未完成(ゆえ)なんですよ」

「と言うと?」

「今現在その杖は言うなればコアを直列につないだ状態で、自身が出来る仕事量を越えた時、次のコアに仕事を振っていくという、バケツリレーのような事が行われているんです。

 おそらくその受け渡しの時に、性能が一瞬落ちるのでガクガクとした感じを覚えたのだと思います」

「ってことは完成版だと、そいうのは無いの?」

「はい。完成版は未だ研究や技術が未完成なメインコアに当たる魔力頭脳が必要でして、これを取り付ける事によって、全てを並列に処理する事が出来る様になります。

 そうする事で一つ一つが順番に仕事を受け流すのではなく、いっぺんに起動しているコアに仕事を割り振って、同時進行でタツロウさんの魔力からイメージを読み取り演算、補強、強化などを施して出力してくれるようになるはずです」



 一気に説明されて、今一つ言葉だけでは理解できなかった竜郎達であった。

 だが要は、今の杖は纏めてくれる人がいないので、上手く仕事の伝達と割り振りができていない状態。

 だが完成版では、優秀な纏め役が仕事の割り振りと伝達を完璧にこなし、その全てを管理、調整して最も効率のいい方法を常に選択してくれる状態。

 と思って貰えればいいと最後にリアに付け足され、何となく全員がそれを理解した。



「あと気を付けてほしいのは、一つのコアが起動できる時間は三十分程度です。 切れそうになったらトリガーを引けば動力が補充されて再起動は可能ですが、それにはこれを一つ消費します」



 そう言いながらリアが《アイテムボックス》から取り出したのは、帰還石だった。

 どうやらそれをコアの動力として使っているらしい。

 そしてその帰還石は、ライフルで言うマガジンの位置に入れられており、サブコアを一つ起動するにつき、一つの帰還石が消費される仕組みなっているそうだ。



「という事は、無くなったら補充する必要があるってわけだな。

 このマガジンには、何個まで帰還石を入れられる?」

「サブコアと同じ十二個です。

 ちなみに代えのマガジンを複数用意しているので、それを付け替えるだけで直ぐに使用できるようになっています」

「あー。だから銃弾も無いのに、マガジンが付いていたのか」

「はい。では、そちらにマガジンを送っておきますね」



 そうして竜郎の《無限アイテムフィールド》に、マガジンが十セット送られてきた。

 それから帰還石のマガジンへのセット方法のレクチャーを受けて、先ほど使った分を自分で補充してから、そのマガジンをライフル杖にセットした。



「これでタツロウさんの目立った武器の引き渡しは終わったので、後はお一人で行かれるジャンヌさんにはこれを。

 アテナさんには、これを渡しておきますね」

「ヒヒン?」「なんすか?」



 そう言って《アイテムボックス》から、それぞれに新しい装備品を渡していく。

 まずジャンヌの物はと言えば、それは十メートルはある巨大な剣……というより鉈に近い形状の切断武器が二本。

 さらにその竜郎の背丈の数倍ある巨大な鉈の持ち手には、ジャンヌの手にフィットして、さらに爪を入れる穴もあり、メリケンサックの様な持ち手になっていた。

 そしてアテナには甲の部分に五つ穴があき、手首の下にも大き目の穴が開いた重厚感あふれるガントレットを両手分、目の前に出した。



「ヒヒーーン♪」「???」



 ジャンヌは前々から頼んでいた物だったので嬉しそうに嘶きつつ、《真体化》して早速手に持ってみていた。

 だが、アテナの方は疑問符を浮かべて首を傾げていた。



「あたしは竜装があるっすから、ガントレットを貰ってもあんまり意味ないっすよ?」

「いえいえ、それは別に防御の為の物じゃなくてですね。

 とりあえず嵌めてみて貰えますか?」

「解ったっす」



 アテナは減るもんじゃないしと、特に何も考えずにガントレットを両腕に嵌めていった。

 すると完璧に腕にフィットして、付け心地もなかなか良かった。



「付けたっすよ?」

「それじゃあガントレットを人のいない方に向けてから、土魔法の魔力を流してみてください」

「人のいない方にっすね。…………──おっ」

「何か出てきた!」



 アテナが土魔法の魔力を流した瞬間、ガントレットの手首の辺りからは直径5センチの太いワイヤーが飛び出し地面に突き刺さり、甲の辺りからは五本の直径1センチの細いワイヤーが飛び出していた。



「それはまだレベル7のダンジョンにいた時に倒した、トゲトゲの魔物の棘を改良強化して造ったワイヤーです。

 そして土魔法で自由に動かせる上に電導率が非常に高いので、相手に突き刺して内部から雷魔法で感電させる事も出来ます」

「へー。ちょっと遊んでみるっす」



 そう言いながらアテナは土魔法で両腕合わせて十二本ワイヤーを操って蛇の様にウネウネとさせてみる。

 さらに雷魔法で軽く電気を通すと、尖ったワイヤーの先端から電気の火花が散った。



「おー。守る物ではなく、武器なんすね。面白いっす。

 それにこれ、魔法の補助機能も付いてるっすよね?」

「はい。腕輪型杖の機構を改良して盛り込んでみました。

 ですがタツロウさんの物の様に杖に似た形では無いので、やはりそのあたりは劣ってしまうのですが」

「いや、大丈夫っすよ。魔法だけに専念する事はあたしの場合、そうそうないっすからね。

 面白い物をありがとうっす」

「どういたしまして。

 ちなみにジャンヌさんの鉈にも、同じように魔法補助機能が入っていますから」

「ヒヒーーン! ヒヒーーン!」

「それは助かる。ありがとう。と言ったですの」

「はい。どういたしまして」



 ジャンヌは巨大な二本の鉈を片手づつに持ったまま、上機嫌に使い心地を確かめていた。

 その後にその主な素材として、剣魚と巨大エイの両腕についていた巨大剣だという話も聞かされた。

 どうやらそれらの素材は加工が楽なわりに頑丈で気力の限界量も高く、この世界ではどちらも高値で売れる金属だったらしい。

 それからもそれぞれの装備品のアップデートの詳しい報告を受け、遂に準備が万端に整った。



「それじゃあ、行くか。

 一応聞くが、どの扉に行きたいとか希望はあるか?」



 希望も何も、どれを通ると何が出てくるのかなど皆目見当もつかないのだ。

 なので当然、誰も何も言わなかった。

 けれどそれは竜郎自身解っていた事なので、ここはもう適当に決めてしまう事にした。

 まず第一グループの竜郎と愛衣は、右の向かって左側の扉。

 第二グループのカルディナと奈々、リアは、その隣の扉。

 第三グループのジャンヌは、竜郎達の正反対の扉。

 第四グループのアテナは、その隣の扉。

 と、それぞれ何のこだわりも無く適当に、その前へと歩み出た。



〔それでは、扉を開いてもいいですかー?〕

「もう一度聞くが、皆は大丈夫か?」



 その竜郎の問いかけに、全員から気持ちのいい返事が返ってきた。

 どうやら何も問題は無いらしい。



「危険を感じたら、すぐに逃げる事。これだけは肝に銘じておいてくれ。

 それじゃあダンジョン、開けてくれ」

〔はーい。それでは、楽しんで殺し合って下さいねー〕



 そんな不吉なダンジョンの言葉に苦笑しながら全員気負う事なく、それぞれの扉の中へと入って行くのであった。

次回、第237話は5月17日(水)更新です。

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