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レベルイーター  作者: 亜掛千夜
第五章 呪われた少女編

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第235話 新たな杖

 組み分けを話し合った結果。

 次のようなグループに分かれる事となった。


 第一グループ:竜郎・愛衣

 第二グループ:カルディナ・奈々・リア

 第三グループ:ジャンヌ

 第四グループ:アテナ


 こうなった経緯を語っていくと、まず第一グループに関しては……。



「おとーさまと、おかーさまは一緒のほうがいいですの。

 お互い一緒の方が強化できますし、離れた所では心配でしょうし」

「そうっす。その方が、あたしらも安心出来るっす」

「それはあるか。俺も愛衣が大丈夫なのか心配しなくて済むし」

「私もたつろーが大丈夫か心配しなくて済むし」



 《響きあう存在+1》効果もある上に、魔法も物理も高いレベルでカバーし合えるので、バランスもとれている。

 そして何より近くでお互いを守れるというのは、精神衛生上非常に助かる。

 そんな事から第一グループは直ぐに決まった。


 そして次の第二グループの場合は、リアの兵器開発はだいぶ改良が進んだものの身体能力はステータス補正があっても、このダンジョンレベルの魔物に対しては心もとなかった。

 なのでリアを一人にさせるのは論外だった。

 となると誰を組ませるのかだが、仲も良く前衛も回復もステータス向上や敵の足止めなどもできる奈々を組ませる事にした。

 だがそれでも、魔物の特性によっては危険かもしれない。

 そこでアテナと同様、一人での参戦に意欲的なジャンヌを第三グループに配属。

 これまた一人での参戦を真っ先に切りだした、アテナを第四グループへ。

 残ったカルディナは単独戦闘も十分期待できるが、解魔法による状況把握能力は複数戦闘でも役に立つ。

 ということで、カルディナには奈々とリアのいる第二グループへと入って貰ったのだ。



「これで組み分けも出来たな。という事で、一番大事な決め事をしておこう」

「決め事ですの?」

「ああ。まず大前提として、自分の命が最優先。攻略は二の次だ。

 だから危険だと思えば、すぐに逃げてもいい。俺もそうするつもりだ。

 攻略してみたいって思いは確かにあるが、誰の命ともまったく釣り合わないからな。

 だから勝てないと思ったら、意地を張らずに逃げる事。解ったか?」

「はーい」「ピュイ」「ヒヒーン」「はいですの」「はい」「了解っす」



 竜郎は一人一人の目を見ていき、ちゃんと自分の言いたい事が伝わったのを確認してから頷いた。

 これで大事な事も言ったしそろそろ行くかと竜郎が言いかけたその時、リアが挙手をして意見を述べる意思を伝えてきた。



「はい。リア君」

「えーとですね。この場所は魔物も出てこないみたいですし、久しぶりに落ち着いて過ごせる空間じゃないですか」

「おーい、ダンジョン。ここは魔物って出てくるのかー?」

〔扉の中に入らない限り出てきませんよー〕

「ってことは、久しぶりに熟睡できる空間だって事か」

「はい。難易度が上がってからは、安全そうな場所でも気が気じゃなかったですし…」



 次の階層へと渡るポイント付近では、魔物はめったに出てこない。

 そんな法則は経験則からも、あるのだとは皆思っていた。

 しかし、絶対に出てこない。ではなく、滅多に(・・・)、だ。

 何度か寝込みに襲撃を受けた事もあったため、眠りはいつも浅かった。

 ところがこの場所は、ダンジョン本人からのお墨付きだ。

 完全に信用しているわけでもないが、今まで嘘をつかれたことは無いし、基本的にはフェアに接してきていた。

 なので信じてもいいと、竜郎は思った。



「それに今回は少人数戦ですので万全を期して、これまでの研究の知識を総動員して装備品のアップグレードを図りたいんです」

「あっぷぐれーど? それって、どんな物ができるの?」

「基本的には元ある装備品の底上げというだけですが、今回はタツロウさんの杖を一本造り上げようと思っています」

「俺の杖か。って事は、研究は全部終わったのか?」

「いいえ。根幹に当たる部分は未だに不完全です」

「それでも、造るんですの?」



 未完成品を渡されても困るのでは? という、当然の疑問を奈々がリアに投げかけた。

 リアはそう思われるのは解っていたのか、直ぐに考えを口にした。



「ですから未完成品ではなく、根幹部分を除いた……そうですね……。

 言うなれば半分だけ完成した物とでも表現しましょうか」

「それは半分だけでも、ちゃんと使える物って事っすね」

「はい。私の思い描く完全版程ではないですが、半分だけでも既存の杖を凌駕します。

 今のタツロウさんの持つ杖では多少の補助効果は期待できますが、それでも持ち主のレベルに付いていけていないですからね。

 ですが私の理論を正確に現実に引き出す事さえできれば、半分だけでもタツロウさんのレベルに何とか付いていけるはずです」

「聞いてるだけでも凄そうな杖ができそうだな」



 実際今でも竜郎は杖を使って魔法を使っているが、レベルが上がり称号も多く手に入れてきた辺りから、本人の魔法能力の向上が著しく、杖に補助してもらう部分も無意識に自分でやってしまう事があるほどだった。

 なので楽は楽だからという理由で使ってはいるが、ぶっちゃけてしまえば、無くてもさほど支障が出るという物でもなくなっていたのだ。

 ところが今回リアが提案する杖は、魔法系のステータスが常人を越える竜郎の能力にも十分適応できているらしい。

 それはぜひ使ってみたいと顔には出さないように気を付けながら、キリッとした顔で愛衣を見た。

 すると愛衣は微笑んで頷いていた。



「じゃあ、お願いしようかな。

 それに俺だけじゃなく、他の皆やリア自身の装備もアップグレードはするんだろ?」

「はい。もちろんです。

 そうなれば、全員の安全性も勝率も少しは上がると思いますし」

「じゃあ、頼む。俺達にも出来ることがあったら言ってくれ。

 できるだけ手伝うよ」

「解りました。では遠慮なく頼らせてもらいますね」

「それじゃあ、まだ挑戦はしないが暫く居座らせてもらうよ」

〔どうぞー。ここまで来れる他のパーティは、まだいなさそうですしー〕



 ということで、休暇を兼ねた装備品の拡充作業を優先しておく事に決めたのであった。


 制作作業に勤しみ一番忙しいリアも、ちゃんと休むように見張りつつ、協力できるところは皆で全力でサポートしていく日々が数日続く。

 そうして既存の装備品のアップデート作業も無事終わり、何度か失敗も繰り返しながら竜郎の杖もようやく半分・・出来上がった。



「それは杖…………なのか?」

「杖って言うか、良く見ると、てっぽーみたい」



 リアが渡してきた杖(仮)を見れば、遠くから見れば確かに杖だと言えるフォルムをしていた。

 だが近くでちゃんと見れば、それはトリガーも付いた銃。

 それも、かなり重厚感あふれる百四十センチ程ある大型ライフルともいえる物としか言えなかった。



「ちょっと持って貰ってもいいですか?」

「ああ。───っと。見た目ほどじゃないが、ちょっと重いかもな」

「頑張って軽量化も目指したんですけど、機能性重視にしたらそうなっちゃいました。

 振り回せない程重たいですか?」



 竜郎はまだ説明も受けてないので、トリガーに指を入れないようにして、持ち手を握って片手で水平に構えてみたり、そのまま走ったりジャンプしたり回転したりと様々な動きをしてみた。

 それは元の世界にいた頃の竜郎であったのなら、片手で水平に持つのはかなりきつかっただろうが、魔法職とはいえレベルもかなり上がったおかげか、十分とり回し可能なレベルの重さであった。



「いや。大丈夫そうだ。これなら支障は無いと思う」

「なら良かったです。正直、今の私の技術では、それ以上の軽量化は難しかったので」

「ところでさ。なんでたつろーの杖は、てっぽーみたいな形にしたの?」

「それはですね。

 タツロウさんにとっての攻撃のイメージを形にしたらと聞いた時に、銃だと答えられたからです。

 基本的にタツロウさんは攻撃魔法が多いですし、魔法はイメージが重要です。

 だから杖の機能を持ちつつ、攻撃的な見た目でイメージの補強も出来ないかと考えつつ造っていったら、そうなったという訳です」

「へぇ。杖の形も関係あるんだね」

「まあ、一番大事なのは中身なんですけどね」



 無事一仕事終えてホッとした表情で、リアはそうおどけて見せた。

 だが見た目がライフルにも見える物になった理由は解ったが、結局は杖である事に変わりはない。

 そうなって来ると、一つ疑問がアテナの脳内に過った。



「それじゃあ、その引き金は飾りなんすか。

 ちゃんと引けるようには、なってるみたいっすけど」

「その方が気分が盛り上がるから、じゃないですの?」

「あー。イメージが大事って言ってたしね!」



 と説明する前に愛衣たちが勝手に解釈し始めてしまったため、リアが慌てて説明を切りだした。



「いえ、飾りじゃ無くてですね。ちゃんと意味はありますからっ」

「どんな意味があるの?」

「それにどんな意味があるのか説明するためにも、まずトリガーを引かない状態で魔法を使ってみて貰っていいですか」

「解った。やってみる」



 竜郎はリアに言われた通り素直にそれが、ただの杖だと思いながらいつも通りに魔法を使ってみた。



「うん。確かに前以上には、魔法が使い易くなったかもしれないな」

「おー。綺麗だね!」



 全十二属性の球体をクルクル宙に浮かべて回転させながら、それぞれの挙動を確かめていく。

 今まではどれかの属性を集中して使いたい時は、その属性の杖に持ち替えたり何本も一人で持ったりと、少し煩わしく感じていた。

 だがこの杖なら、これ一本持っているだけで今まで持ってきたどの杖よりも魔法の行使がスムーズになっているように思えた。

 だが最初にリアが「既存の杖を凌駕します」と言っていた程ではないな。とも感じたのだ。

 それは隠しているつもりでも漏れ出ている、微妙な表情からリアも感じ取っていたが、それでも微笑は崩してはいなかった。



「では今度は、一度だけトリガーを引いてみてください」

「銃口は何処に向ければいい?」

「何処へでもかまいませんよ。

 そこから弾が出てくるわけでは、ありませんから」

「解った」



 竜郎はでは何が起こるのだろうと疑問を抱きつつも腕を垂らし、下に銃口を向けた状態でトリガーを引いた。

 するとパリンッと硝子の様な何かが割れる音がしたかと思えば、直ぐにフィーーーンという、PCが起動した時のような音が銃身から発せられた。

 そしてさらに内部から零れた青い光が、銃身の隙間から粒子となって舞い始めた。



「これは一体、何が起こってるの?」

「魔力頭脳のサブコアが一つ起動したんです。

 それでは、強めの魔法を誰もいない方角に向けて撃って貰えますか?」

「解った。……ふっ─────!?」



 竜郎は銃身を上に向けて、その先から強めの太いレーザーを天井に向けて放つ。 すると今までとは段違いの魔法制御能力を発揮し、撃とうと魔力を杖に流した時にはイメージした通りの魔法が既に放たれていた。

 そして威力も精密さも、今までの杖を明らかに凌駕していた。

 ただ難点としては、情報処理まで勝手にやってくれるので、使い始めの竜郎にはいささか挙動が速すぎてピーキーすぎるとも思えた。

 けれどそれも、使っていれば慣れるのも時間の問題だろうとも感じた。



「凄いな。これに慣れたら、もう他の杖なんて持てないぞ……」

「ふふっ。ありがとうございます」



 竜郎のその驚きの顔が何よりもの報酬だと言わんばかりに、リアは自信に満ちた最高の笑顔でそう答えたのであった。

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