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レベルイーター  作者: 亜掛千夜
第五章 呪われた少女編

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第230話 恐ろしい魔法

 竜郎の貧乏性な部分も働き、愛衣の攻撃によって完全に消し飛んだ部分以外の細かな破片も逃さず、《無限アイテムフィールド》に収めていると、やがて筏がまた妙な挙動を見せ始めた。



「なんだろ? 急に蛇行し始めたね」

「ああ……。けど今のところ魔物の反応は無いな」

「でも、今までのことからしても絶対何かありそうっすね」

「ですの。ここは回復しつつ、警戒をするのがベストですの」



 そう言いながら奈々は他の面々に生魔法で体力や魔力、気力、竜力などの回復を呪魔法で付与して回った。

 そうして暫く回復しながら蛇行する筏の上で大人しく警戒していると、愛衣の危機感知に強烈な反応があった。



「──上から何か来る!」

「「「「「「───っ!?」」」」」」



 愛衣は危険を竜郎達に伝えながら目一杯上に気力の盾を展開し、さらにそこから緑色の気力を出して盾の気獣の亀の甲羅に形を変え、ドーム状のシェルターが全員を覆った。

 そしてその瞬間、巨大な槍の形をした雷が空から雨霰の様に降り注いできた。



「───ぐぅっ。きっつい…」

「俺も手伝うっ!」



 気獣技まで使った愛衣の盾でも、その衝撃と威力は凄まじかった。

 一瞬でも愛衣が気を抜けば、簡単に穴を穿って竜郎達を消し炭に変えてしまうほどだ。

 そこで竜郎やカルディナ達も愛衣の負担を軽くするべく、直ぐに構えてそれぞれの属性魔法の結界などを張っていった。



「──ふうっ。ちょっと楽になったよ。皆ありがと」

「当たり前のことだよ。

 それにしても解魔法に何の反応も無いのにいきなりって事は、魔物じゃなくてトラップの類か」

「今までの物と比べて、威力が段違いですね。

 トラップってレベルの攻撃じゃないですよ」

「防げなきゃ一瞬で、あの世行き~って感じっすからね」



 結界も分厚くなった事で話す余裕が出てきたが、それでも身動きが取れない状態であった。

 そんな状態で竜郎は愛衣と手を繋ぎながら互いの自然回復を促進しつつ、その余剰分でカルディナ達に魔力補給をしながら耐える事十分。

 突如、雷の槍の雨が静まった。だが、どうやらそれで終りだという事では無いようだ。



「おいおい嘘だろ──超特大の一撃が来るぞ! 全力で防御展開急げっ!!」



 竜郎達の筏の上を追走するかのように、《真体化》したジャンヌよりも大きな雷の槍が出来上がっていく。

 その圧力たるや探査系の力が無い者達でも、肌で感じられるほどであった。

 そんなデカブツと相対すべく、竜郎達は全員で防御を固めていく。

 竜郎、カルディナ、ジャンヌ、奈々、アテナは魔法で、愛衣は盾で、リアは《アイテムボックス》から硬い金属を選んで、鍛冶術における変形と創造でさらに分厚い膜を構築した。

 そんな竜郎達が今できる最大の全力防御層に、強大な威力を誇る超特大雷槍がぶつかった。



「ぐおおっ!」「うぐぐぐ!」「ピィーー!」「ブルルルッ!」「むー!」「──っ!」「がんばるっすー!」



 その雷槍は竜郎達の防御層とせめぎ合いつつ回転までし始めて、何とか突き破り挑戦者を亡き者にせんとする。

 だがそんな事は許容できるわけも無く、竜郎達はさらに気合を入れて押し返していき──それから約十分の間耐え続け、ようやく雷槍が消え失せた。

 すると筏も蛇行をやめて、真っ直ぐのんびり進み始めた。



「はあっ、はあっ──なんとか、なった、かっ──はあっ、はあっ」

「でも。筏がボロボロになっちゃったね……」

「もう少し休憩出来たら、少し補修をした方が良いかもしれません」

「それがいいですの」



 ようやく一心地を突きつつ防御層を取っ払うて足場を見れば、雷に焼かれ焦げたり穴があいたり、砕けたりと散々な状態の筏になっていた。

 このまま放置すれば、いつバラバラになってもおかしくない。なので、少し休憩した後すぐに動いて補修をしていった。


 そんな雷槍騒動が過ぎ去ってからというもの、筏に流されるままに時に魔物を、時にトラップを掻い潜っていった。

 だがその道中で現在、筏は約二十五メートル四方あったはずなのに、一辺十メートルほどに破壊されてしまっていた。

 そんな状況の中、ようやく愛衣の遠見の目に陸地が見えてきた。



「あっちに陸があるよ!」

「なにっ!?」



 竜郎はカルディナと一緒に探査範囲を伸ばして愛衣の指差す方角を調べていけば、確かに陸地があり、さらにそこを少し歩いて行った場所に次の階層へのポイントがある事まで解った。

 そのことを全員に伝えると、ようやく終りが見えた事に喜びの声が上がる。

 だがどうやらその前に、こなさなければならない壁が立ち塞がってくるようだ。

 喜んでいる竜郎達に水を差す様に、前方の陸地の方角から地響きが離れた筏の上まで伝わってきた。



「またデカブツが来るみたいだな……」

「いやー。でも、デカすぎじゃないかなあ……」



 陸地のすぐ手前の水面から、五十メートルは超える岩山が出てきたかと思いきや、その頂上付近には開きっぱなしになった石の平らな歯が並ぶ巨大な口、その上下に縦にならぶ二つの丸い赤い目と。明らかに生物的な器官を有していた。

 そしてさらに───。



「ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ーーーーーーー!!」

「「「「「「「─────っ!?」」」」」」」



 こちらに向かって水面が揺れる程の大音量で叫び始め、まだ距離があるというのに耳を塞ぎたくなるほどだった。

 そしてさらに岩山の魔物の表面が泡立ち始めたかと思えば、その泡状の二メートル近くある岩石を四方八方に飛ばし始めた。

 それはただの岩石でしかないのだが、その勢いは遠く離れたこの場所までしっかりと届き、何千という岩雨が降り注いで来る。



「これは私に任せて!」

「頼んだ!」



 生身で当たれば竜郎などは厳しいが、愛衣やジャンヌは平気で蹴散らせるレベルの攻撃だった。

 なので愛衣は最小限の盾だけを展開し、その全てを受け流して消耗を最小限に抑えた。

 その間にも筏はドンドンと、そのジャンヌですら見上げる程巨大な魔物に近づいて行ってしまう。



「あれとは距離を取っておきたいな……。

 よし。次のポイントも見つかったし、筏は放棄しよう!

 ジャンヌに乗り込んでくれ!」

「ヒヒーーン」

「遂にイカ丸ともお別れかあ。ばいばい、イカ丸!」

「いつの間に名前なんて付けてたんだ……」



 筏に手を振りながら竜郎とリアを抱えた愛衣は、そのままジャンヌの背に飛び乗った。

 するとそこへ奈々とアテナも合流して、しっかりと掴まる。そしてカルディナは、自前の翼で周囲を飛んでいた。

 そうしてジャンヌが飛び立てば、岩雨から守ってくれる主を無くした筏──もといイカ丸は無防備にそれを受けてあっさりと砕け散っていった。

 その姿に愛衣だけが敬礼して見送った。だが、別に悲しみは無いのか直ぐにそれをやめた。



「それで、どうしよっか。

 あいつの後ろに、次の階層へ渡るポイントが有るんだよね?」

「ああそうだ。だが馬鹿正直に近づいて戦うような相手ではないだろうし、ここは遠距離から───っ!?」



 遠距離から倒してしまおうとの提案を出そうとしていたのを遮るように、岩山魔物の一部が盛り上がり始め、細く槍の様に伸びてジャンヌに向かってまっすぐ何本も伸びてきた。



「ヒヒーーン!」



 それをジャンヌは、樹魔法で造った植物の拳に竜力を込めて殴り身を守る。それでも落とせない分は、竜郎達が何とかしていった。



「向こうも遠距離攻撃にバリエーションがあるんすね。

 こりゃ近づいたら、どんな攻撃あるか想像もしたくないっす」

「ですの。やはり、ここから倒してしまうのが最適ですの」

「どうする? また私のロケドラぱんち、いっとく?」

「それでもいいが……うーん……。今回は、魔弾でいこう。

 それなら消費を分散できるし」

「ピュィイ!」



 カルディナが任せて!と元気に鳴き声を上げた。

 という事で、カルディナを主軸に魔法を形成していく。

 竜郎は爆発と火と光をありったけ。ジャンヌは風魔法をありったけ。奈々は魔法力増大の呪魔法を魔法班に最大限までかけていき、アテナは雷魔法をありったけ詰め込んだ。

 そしてカルディナはそれらを纏めて、大きさ一メートルの巨大弾丸を造り上げ、威力を増すために溜めに入っていく。

 その間の岩雨と岩棘は、愛衣とリアが落としていく。



「ピュィーーイ!」

「そろそろ溜めが限界らしいっす!」

「解った。これなら向こうまでしっかりと届くだろうし、食らえば死ななくても大ダメージは必至だろう。

 じゃあ、カルディナ。後は自分のタイミングで撃ってくれ」

「ピュィーー…………──ピュィッ!!」



 岩山魔物の攻撃の一瞬の切れ間を見切って、カルディナは特大の威力が乗った魔弾を射出した。

 すると目にも止まらぬ速さで岩山魔物の元へとかけていった───のだが、そこで開きっぱなしになっていた口から真っ白な粉を大量に吹き出してきた。

 そしてその粉に魔弾が触れた瞬間石化していき、着弾は何とかしたものの魔法としての機能が殆ど残っておらず。

 傷一つ付けられずに、白い岩と化して水面に落ちて沈んでいった。

 例え殺せずとも瀕死くらいには持っていけるつもりで、魔力消費を度外視で放ったその一撃……。

 それが不発に終わってしまったことに、竜郎達は目を見開いて愕然とした。



「魔法が岩にされただと……」

「石化って、生き物以外にも有効なんだ…。

 って事は、私のロケドラぱんでも同じだろうね」

「だと思います。まさか、ここまで強力な石化魔法を使って来るなんて……」

「あれは魔法なんですの?

 でしたら、おとーさまとカルディナおねーさまでアンチできませんの?」

「調べてみよう。カルディナ」

「ピュィイ」



 まだ石化の粉は魔物の周囲に舞っているので、それを調べていく。

 すると、どうやらそれは無属性と土属性の両方を持ち合わせている事が判明した。

 そしてその逆位相を作るには、少なくとも今の竜郎の持つ氷魔法のスキルレベル以上を要求される事も判明した。



「残っているSPを使って、氷魔法を上げるにしてもな…。順番が最後のだから、倍率が高すぎて今のSP量じゃ足りない。

 弱体化くらいならできるかもしれないが、あの硬そうな岩肌を破壊するには足りないだろうな……」

「それじゃあ、どうする? 無視して通り抜けられるかやってみる?」

「石化なんて恐ろしい魔法を使うんだ。できれば近づきたくはないな……」

「一応、回復する手段はあるっすよね?

 前に状態異常回復の薬を手に入れてたっすし」

「ですね。あれなら石化も解除できるはずです。

 まあ、最悪このまま帰ってしまうという手もありますが……。

 利益としては、十分すぎるほどの物を手に入れましたし」



 それぞれの意見を聞きながら、竜郎は最終的な判断を下すために思考を巡らせていくのであった。

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