第222話 取得物調査
全員無事なのを確認していると、自分たちのいる場所から十メートル程通路を横に行った辺りに次の階層へと渡るポイントが現れた。
それに一度視線をやって正体を確認した後は、さっそく宝の選別に入っていく。
「それじゃあ、全員俺の《無限アイテムフィールド》に送ってくれ。
その間に俺は預かった物の返却をしていくから」
そうして一旦全ての宝を一纏めにしつつ預かり物の返却を終えると、竜郎は大まかにリストを作っていく。
まず、ただの金銀などの解り易い物は個数や量を纏める。
そして何の金属なのか、何の物体か、何のアイテムなのか解らない物は少しずつ出してリアやカルディナに解析していって貰う。
そうして結構な時間と手間をかけて調べていった結果。
大量の白金、金、銀、銅、鉄、軽銀など既に持っている物や、値段がまちまちの大量のコイン。
宝石や見たことも無い希金属や物質、何かの植物や木の幹、数多くの魔物の素材なども沢山あり、リア曰く装備品の素材に使えるものばかりらしく一人興奮していた。
また便利アイテムでいくと、≪遠見 Lv.2≫が魔力や気力で発動できる銀縁の丸メガネ。
見た目は本来の使用法では使えないほど粗悪なものだが、嘘をついている者を映せば赤く染まる鏡。
金の大きめの板につけられた逆L字の金具から、垂れ下がるようにして紐に吊るされたガラスのペン先。
これは魔力を込めながら口にした言葉を、板の上に乗せた紙にメモしていく自動メモ機といった物。
レベル3までの属性魔法を封じこめて、他人が使える指輪が12個。レベル6までの属性魔法を入れられる指輪が1個。
それから火種を造れる石、水をだす壺、魔力を注ぐと小麦をだす麻袋。
などなど雑多なアイテムが他にも色々あったのだが、その中でも特に変わり種だったのが「反転の指輪」とリアが教えてくれた物。
見た目はメビウスの輪の様に緩やかに捻じれた表と裏が黒と白の指輪で、これは武術職と魔術職を反転させるという。
それによって気力や魔力、筋力や魔法力などの値も反転してくれるらしい。
さらに具体的に説明すれば、発動は1日一回。最長持続時間は1時間。
反転した後のスキルの扱いは、自分が所持している武術または魔法スキルの中で一番高いレベルが適応された反対側のスキルがランダムで選ばれる。
そして武術職の身体強化と、魔法職の魔力質上昇を所持している場合。レベルはそのままに相互変換され、後は全て使えなくなるらしい。
なので例えばレベル10の火魔法使いで、レベル5の魔力質上昇を持っていた場合。
レベル10の武術職のスキルからランダムで選ばれた──ここでは体術とすると、レベル10の体術使いで、レベル5の身体強化を持った即席戦士になれるというわけだ。また、その逆も然りである。
これには愛衣が一番喜んでいた。愛衣は魔法を使ってみたいと、常々思っていたからだ。
そして確かにそれが出来るなら、かなり有用だともいえる。
なぜなら莫大な気力を持つ愛衣がそれを使ったとすれば、莫大な魔力を持った魔法使いになれるということになるのだから。
なのでさっそくとばかりに皆に許可を取ってから愛衣はその指輪を嵌めて、起動するように念じてみた。
すると表裏の白と黒が入れ替わった──のだが、強制的に打ち切られて直ぐに元に戻ってしまった。
「ええっ!? どゆことよ!?」
「あー……。どうやらアイさんの《武神》は、それすらも許されないみたいですね」
「げー。頑固なスキルだなあ」
「その分アホみたいに強力なんだから、我慢しような」
「うー……。はーい」
ということで、愛衣並みに有効利用できそうな竜郎が指に嵌めておく事となった。
何故ならカルディナやジャンヌに指輪はそもそも嵌められないし、奈々やアテナでは効果が薄い。
リアに至っては、武術系スキルも魔法系スキルも持っていないので意味がない。
けれど竜郎であれば無制限に武器を所持できるので、どんな武術系スキルが割り振られても問題ない。
もし今使えばレベル12相当の武術系スキルに変化され、愛衣ほどではないが一般的に見れば規格外の魔力が気力に変換され、即席の戦士にしてはかなりの仕事がこなせるであろう。
「気獣技とかは、さすがに無理ですけどね。
けれど気力の斬撃とかくらいなら、練習次第で出来るようになると思います」
「そこはまあ、本職に劣るわな。それにスキルも二個だけになるみたいだし。パッと使って直ぐ戻すって使い方が一番か」
「いーな、いーなー」
「はいはい──」
「──むぐっ」
口を尖らせて拗ねる口に竜郎が自分の口を合わせて押し込めば、愛衣は嬉しそうな顔でご機嫌になった。
さらに抱き寄せて頭をなでると、目がトロンとして指輪の事はどうでもよくなったようだった。
他の変わり種としては、こちらで流用できそうな装備品や竜の素材もあった。
特に竜の素材は鱗に爪、牙や肉など一匹の物ではなく、何種類もの竜の素材が一挙に手に入ったのだ。
「竜の素材も結構あるね。このお肉を食べれば私とたつろーの竜力も増えるかな」
「だと思う。全部で八種類の竜の肉で、低いのからレベル14、28、29、33、54、57、59、64だな」
解魔法で調べてみれば死体だからか割と簡単にレベルを特定できたので、竜郎は低い物から順に並べてみる。
するとちょうどレベルが低い肉ほど塊が大きく、見た目的にも綺麗に並んだ。
その大きさはと言えば、一番巨大なレベル14だと約三メートル。
次に大きな28で二メートルと少し。29で二メートル弱。33で一メートル強。54で約五十センチ。57で約三十センチ。59で二十五センチ。
そして一番レベルの高いレベル64では、十センチ程の肉の切れ端しかなかった。
ちなみに《竜を喰らう者》の称号効果は、竜の肉を食う事で竜力が得られるというものだ。
だがそれは、以前食べた竜よりも強いレベルの竜の肉でないと効果は無い。
なのでもしこれを食べるというのなら、低いレベルから食べた方がより多くの竜力を手に入れられるはず。
「うーん……。どうも俺の貧乏性な性格のせいで、次は2レベルの竜の肉を食べたいんだよなあ」
「まあそんなに竜と出会う機会は無いかもしれないけど、せっかくならねえ」
「レベルですの? それなら、おとーさまの《レベルイーター》で肉のレベルを下げられませんの?」
「もう死んでるっすけど。そんな事出来るんすか?」
「確か《レベルイーター》の説明文には、あらゆるレベルを吸収しって書いてあったな。
ってことは、死んだ魔物の素材にもレベルという概念があるならいけるか?」
「そーゆーときは、やってみよー!」
「だな」
単純明快な愛衣の意見を直ぐに採用した竜郎は、《レベルイーター》を発動させて口の中に出来た黒球をレベル14の竜の肉に当ててみた。
すると──。
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レベル:14
スキル:《腐敗防止》
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「あ、なんか情報が取得できた」
「おおっ。これはもしかして、もしかするかも!」
竜郎は逸る気持ちを抑えながら、冷静にレベルの部分に集中して2レベルまでなるように吸い取っていく。
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レベル:2
スキル:《腐敗防止》
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上手くいった事に思わず拳を握りしめつつ、竜郎は再び口の中に出来た黒球を飲み込んだ。
竜のレベルなので、さぞや沢山経験値を稼いだだろうと思いきや、感覚的に雑魚魔物以下しか糧にできていない様だった。
(思えば倒した時点でその経験値はどっかの誰かが貰ってるんだし、死んでしまえば竜でもこんなものって事か。
それでも死してなおレベルという概念を持ち続けて、さらにスキルがあるって方が凄いのかもな)
そうして解魔法で調べてみてもレベル2の竜肉という判定が出た事も有り、さっそく食べて検証してみることにした。
一応出所不明の食材なので、解魔法で念入りに毒なども含め食べられるのか調べていく。
「よし。食べても大丈夫な奴だ。さっそく焼いてしまおう」
「おー」
ちょうど朝から食べたきりだった事もあって、すきっ腹だったの思い出した竜郎達はせっかくだからご飯休憩も一緒に取ることにした。
だがこの肉に関しては、結果が早く知りたいのでリアと奈々がご飯を作ってくれている間に竜郎が火魔法で適当に炙って調味料を振りかけ、愛衣と二人で食べてみた。
「「んおっ──もぐもぐもぐもぐ……はぁ」」
竜郎と愛衣は、口の中に入っている竜の肉をじっくりと味わった。
「心なしか、レベル1の肉より美味い気がした」
「私も私も!」
「それで、どうっすか。竜力得られたっぽいっすか?」
「アナウンスは特に聞こえなかったが…………どれどれ」
「どれどれ」
竜郎と愛衣はそれぞれ自分のステータス画面を開いて、竜力が得られたかどうか確認してみる。
すると竜力の欄が、『竜力:100』から『竜力:210』と表記が変わっていた。
「竜力が110増えてる。愛衣はどうだ?」
「私も210ってかいてある! 成功だね、たつろー」
「ああ。この手は使えるぞ」
「よかったっすね」
と、ここまで料理をしながらその一部始終を見ていたリアが、こんな事を言いだした。
「あのー。死体の肉からレベルが取れるなら、この肉を分割して《レベルイーター》を当てれば、より沢山竜力をあげられそうじゃないですか?」
「「それだ!」」
極端に言ってしまえば、この竜肉を細切れにして、その一個一個から《レベルイーター》を使って調整していけば一気に数十匹分の竜肉が造り上げられるという寸法だ。
それは良いアイディアだと、さっそく竜郎は次にレベルの低いレベル28の肉を小さく切ってそれに《レベルイーター》を行使してみた。
だが───。
「あれ、おっかしいな。黒球を当てても情報が得られない」
「え? じゃあ、こっちの本体の方は?」
「……………………そっちは取れるな。
もしかして、ある程度大きさがないと死体からは取れないのか?」
そこで竜郎は《無限アイテムフィールド》に切れ端肉と塊肉を放りこんで結合させ、もう一度一つの塊に肉に戻すと今度は先ほどよりも少し大きく分割してからそれを出して《レベルイーター》を使ってみる。
だがそれでも上手くできなかった。
けれど、さっきの小さな肉片よりは微かに情報が取得できそうな感じはあった。
なので何度もそれを繰り返して最少の大きさを調べてく。
「うーん。どうやら98.2センチが限界みたいだな」
「約一メートルかあ。となると、切れるのは28、29、33の三つだけだね」
「ああ。最初の一番デカい14レベルでやらなかったのは痛いな。
もっと早くに、この裏ワザに気が付くべきだった」
「すいません、私ももっと早く言っていれば…」
「ううん。それはリアちゃんのせいじゃないよ。むしろ気が付いてくれて、ありがとね!」
「そうですの。そんな終わった事を言っている余裕があるなら、これを鍋に入れてほしいですの」
「……ですね。貸してください、ナナ」
リアは料理の途中だった事を思いだして、奈々から食材を受け取り作業を再開し始めた。
その一方で、竜郎も作業を再開する。
まず一メートル以上ある残り三種の竜肉を98.2立方センチメートルになる様に、《無限アイテムフィールド》の機能を使って正確に切り分けていく。
そうして出来たのは、28の肉のブロック2つ、切れ端1つ。
29の肉のブロック2つ、切れ端1つ。
33の肉のブロック1つ、切れ端1つ。
となり、計5つの竜力の嵩増しに成功した。
そうして約一メートルのブロックだけを残して、残りの肉は《無限アイテムフィールド》にしまっておく。
それから嵩増しした5つの肉に《レベルイーター》を使ってレベル3、レベル4、レベル5、レベル6、レベル7の肉を制作した。
後はどれくらい食べれば効果が出るのかも検証しつつ、竜郎と愛衣は順番を間違えないように慎重に肉を喰らっていった。
「食べる場合は、ホントに一口軽く齧る程度でいいんだな」
「うん。これで使わなかった切れ端も、ちゃんと利用できるね」
そうして手間暇かけて、コツコツ竜力を増やした結果。
現在の竜郎と愛衣の竜力は、『竜力:910』と表記されるほどまで上がっていた。
「大分増えたな。竜種以外が竜力を使うのは結構難しいみたいだけど、あるにこしたことは無い。
それに気力としても魔力としても使えるのは便利だ」
「だね、これだけあれば実践でも使っていけそう」
「お二人ともー。ご飯出来ましたよー」
「ああ、今行く」「はーい」
そして丁度頃合いも良くリアが呼んでくれたので、二人は竜肉で少し膨れた腹をさらに満たすべく、装備品の検分は後にして料理の待つ所へと急いだのであった。




