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レベルイーター  作者: 亜掛千夜
第五章 呪われた少女編

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第205話 ちょっと寄り道

 散々と近くで人目をはばからず、イチャツキだしたバカップルが落ち着きを取り戻した辺りで、リアは再び竜郎たちに話しかけた。



「それにしても、お二人は本当にどこにいても仲がいいですよね」

「まあね! ラブラブだかんね!」

「それはそれは、お熱いことです。

 それでタツロウさん、さっきはいったい誰のことを考えていたんですか?」

「ああ、竜のことを教えてくれた冒険者たちのことを思いだしていたんだ。まだこのダンジョンにいるのかなってな」

「あの人たちは、ここを拠点にして稼いでいるパーティみたいでしたよね。

 だとしたら、あれから少し潜っただけで帰還したってこともありえますけど、攻略を目指しているのなら案外私たちより速いペースで先に進んでいるかもしれませんね」

「こっちは初見だが、向こうはこのダンジョンのことを調べつくしてそうだしなあ」

「けど別に競争してるわけじゃないし、関係ないよねー」

「だなあ」



 本当になんとなく頭に浮かんだだけなので竜郎も、もうどうでもよくなり話は別の方向へと移っていく。

 ここまで大変ではあったものの、かなり順調に進んできたのと、まともに休める時間が無かったりと、今ほどまったりとした時間が取れなかった。

 そのため七層を抜けて以来、SPを溜める一方で消費できていなかったのだ。



「今現在のSPは……うおっ、いつの間にか(1531)も溜まってるぞ」

「わおっ。やっぱ、凄いねダンジョンって。SPのたからばこや~」

「いやまあ、それはいいんだが、ここまで回収率が高いとちょっと横道に逸れたくなってくるな」

「ほお。と言いますと?」

「ジャンヌがさ。樹魔法の因子を渡したはいいんだけど、なんかまだやりたいと思っていた所に手が届いてないみたいなんだよ」

「ああ、そういえばSP使って、さらに上のレベルにしようか迷ってるって言ってたね」



 ここまでの攻略途中、一度だけ奈々やアテナの通訳を交えて、そんな相談を受けたことがあったのだ。

 今のジャンヌたちの魔力体生物としてのレベルは光闇10で造られたモノなので、第一属性は10レベルまでの因子を与えられる。

 しかし第二属性は第一からマイナス2になってしまうため、現段階では8までしか渡せない。


 だが光魔法と闇魔法を上げて体に入る容量を上げてあげれば、わざわざジャンヌが貴重なSPを使って樹魔法を取らなくても、ただであげられる。

 ひいてはカルディナや奈々、アテナも第二属性をより強化でき、なんなら第三属性も視野に入ってくる。

 さらに初期魔力量も増加するので全体のパワーアップにも繋がり、より今後のダンジョン攻略にも活躍してくれること請け合いである。



「具体的には、どこまで上げてみたいと思ってるの?」

「どうせなら光、闇を12まで。

 そうすれば今、俺が持ってる属性魔法の因子を第二属性も10まで与えられるから、修めシリーズの二個目も手に入れられる。

 だから、そこまで上げればかなりのパワーアップが期待できると思う」

「ちなみに、そこまで上げるのにおいくら万SP?」

「え~と…………(519)だな。

 上限解放取得、11取得、上限解放取得、12取得を×2だから結構高いんだが……。

 なあ、かーさんやー。うちの子たちも欲しいと思うんだよー。

 ちょっと高いが買ってみないかー?」

「うーん。そうねえ……。まだ帰るためのローンが残ってるんだけどー。

 うちの子たちの将来を考えたら、その方が良いのかもねえ」

「……えっと、今お二人はスキル取得の話をしてるんですよね?」

「そうだが?」

「そうだよ?」



 何を突然? と言った風に二人に答えられ、それ以上何も言えなくなったリアは、どうぞお続けくださいとジェスチャーで促して、自分は一言残してお手洗いに向かった。

 バカップルぶりには慣れたものだが、真面目な話から冗談のような言葉のやり取りが混ざる二人の言葉の応酬には、竜郎たちに会うまでの対人関係の希薄さもあって、リアは未だに上手く理解できていなかったのだ。

 そのため、そっとしておこうと席を外したというわけである。

 そんなリアを見送った二人は、直ぐに先ほどの会話を再開する。



「それで、どうかな愛衣。

 結構SPも直ぐ溜まるし、俺も頑張って稼ぐからさあ」

「光魔法の他属性魔法の強化とか、闇魔法の他属性魔法の変質とか。

 そっちの意味でも、強化されるんだよね」

「だな。レーザーの威力も更に増すだろうな」

「あとはカルディナちゃんたちの体のレベルを上げることで、また形が変わっちゃうのかな?

 今のみんなのフォルム、結構気に入ってるんだけど」

「それはあんまりないと思うぞ。

 レベル十の時点で、ほぼほぼ体の形は決まった気がするから。

 多少強化される部分は出てくるかもしれないが」

「そっかあ。……─うん。それなら、取ってみようか!」

「ああ。愛してるぞ、愛衣!」

「何を今更ー。それは、いつものことでしょ?」

「そうだったな。いつもいつでも、俺は愛衣が好きで好きでたまらない」

「───もう。ばか……。

 私も、いつも、いつでも、たつろーのことが大好きなんだから」



 そうして二人は自然と見つめ合い、見えざる力にでも動かされているかの如く、唇同士が重なっていった。

 そんな熱烈なキスシーンが繰り広げられている中……、リアはお手洗いから戻ってきた。

 何故さっきまでスキルの話をしていたのに、こんなことに?──と、心底不思議がりながらも、邪魔しないようそっとリビングの自分用の席へと移動した。



「それじゃあ、取るからな。

 ああ、後ついでに氷魔法の10も取っておこう」

「そうだね。これで、たつろーの修めシリーズも、見納めだ。なんちゃって」

「あー、修めと見納めな。う、うん! 面白いぞ!」

「真面目にうけとるなー!」



 超手加減パンチで頭を小突かれた所で、竜郎は恥ずかしがって顔を赤くする愛衣の頭をよしよしと撫でながら、システムを起動して取得していく。



「じゃあ。まずは光魔法を12レベルまでと──よし、とれた。

 んで、次は闇魔法を12レベルまで─────ん、OKだ。

 それからついでに氷魔法のレベル10をとってーっと」



《エレメンタラー より エレメンタルマスター にクラスチェンジしました。》

《スキル 精霊魔法 を取得しました。》

《称号『創造主・序』を取得しました。》



「創造主って……、俺は神にでもなってしまったのか」

「どったん? 頭でも打った?」

「いや、打ってないよ。

 今クラスが変わって、精霊魔法と創造主・序っていうスキルと称号が手に入った」

「またクラスが変わったの? い~な~。私も早く他のクラスになりたいよー。

 んで、その時に二つのモノが手に入ったと」

「ああ」

「どんなモノなの?」

「えーとだな。なになに……」



 竜郎は自分のステータスの欄から、それぞれの項目を順にタッチして詳しい内容を確かめていった。



 --------------------------------------

 スキル名:精霊魔法

 レアリティ:16

 タイプ:アクティブスキル

 効果:憑代を属性魔法で作成することで、一時的に精霊の意思を持たせることができる。

 --------------------------------------


 --------------------------------------

 称号名:創造主・序

 レアリティ:19

 効果:自己世界の割り込み。

 --------------------------------------



「精霊魔法はまあ、なんとなく解らんでもないが……自己世界の割り込み? どういうことだ?」

「さあ? 解らないなら、ヘルプに聞いてみよー」

「そうだな」



 文章だけでは訳が解らないので、久しぶりにヘルプを立ち上げて問いを投げかけていく。

 すると、その答えが自然と頭に浮かんできた。



「えーと、うん。まあ、言葉のままの意味か」

「どゆこと?」

「やって見せた方が早いと思う」



 そうして竜郎は愛衣を抱き上げて自分の胸元からソファーにおろすと、立ち上がって部屋の中で杖を出した。

 リビングのテーブルでのんびりお茶を飲んでいたリアも、何事かと注目している。



「何かされるんですか?」

「ああ。新しいスキルを使ってみようと思ってな。

 リアも、念のため《万象解識眼》で観ていてくれないか?」

「解りました」

「ねー、それって家の中でやっても大丈夫なスキルなの?」

「ああ。どこでやろうと関係ないから大丈夫だ」



 竜郎は一度呼吸を整えてから、《創造主・序》の称号効果を発動した。

 すると竜郎、愛衣、リアは、何もない平原に立っていた。



「なに……これ?」

「このスキルは強制的に自分の思い通りになる世界を構築して、その中に任意の人間や物体を引きずり込めるみたいなんだ」

「自分の思い通り?」

「ああ、だからこんなこともできる」



 そう言って竜郎はこの世界を造り変え、日本にいた時の地元そっくりの空間を造りだした。

 そして竜郎が念じれば家が出たり消えたりし、燃え上がらせたり凍らせたりと、考えるだけでそれができた。



「すごー。これもう、最強じゃん」

「ああ、そうだ──あ……」

「あ? ─って、たつろーっ!?」



 造り上げた世界が突然消失したかと思えば、竜郎は突然倒れて床に頭をぶつける前に、愛衣に抱きかかえられた。



「たつろーっ? どうしたのっ!?」

「アイさん、心配ないですよ。ただの魔力切れですから」

「魔力切れって、スキル使ってから十秒ぐらいしか経ってないよ?」

「《創造主・序》の称号効果は自己世界を割り込ませるために、膨大な魔力の消耗を強いられるようですね。

 だから今のタツロウさんの場合、魔力が最大の状態で10秒ちょっとが限界なんです」

「そんなにたくさん魔力がいるんだ」

「はい。以前、ここのダンジョンで深海の層がありましたよね?」

「うん、あったね」



 何を突然?と、話の急な切り替わりに、愛衣は訝しげな表情でリアを見つめる。

 その表情にリアはまあまあと言って、続きを話し始めた。



「そこに入る直前にタツロウさんは、結界を張ってましたよね。でも、すぐ壊れてしまった」

「う、うん。水圧に負けたんだよね。

 ──あ。もしかして、これってそれと同じようなものってこと?」

「そうです。圧倒的な質量を持つこの世界の中に、小さな別の世界を割り込ませるんです。

 その状態を維持するだけで、恐ろしいくらいの魔力量を必要とするでしょうね。

 そして魔力が切れれば、自然とこの世界に押し潰されて現実に戻ってくる。そういうことです」

「そうだったんだあ。十秒間だけの自分の世界、強いけど使いどころが難しいね。十秒フルにやっちゃうと、倒れちゃうし」

「それにどうやら、火魔法とか氷魔法とか属性魔法でできる範囲なら、好き勝手にできるようです。

 けれど例えば、物凄い速度で動く物体を急停止させたり、人間を光よりも速く動かしたりなど、基本的な物理法則は無視できないようですね。

 それに魔力が無くなってしまったら、タツロウさんの場合攻撃手段も、身を守る手段も無くなってしまいますから、本当に切り札として使うほかないと思います。

 ああ、でもアイさんとの《響きあう存在+1》を合わせられるのなら、フル状態で二十秒は持つと思います」

「私がくっ付いてればいいんだね。ととっ、たつろー? 起きた?」

「…………ううぅ。頭痛えぇ」



 魔力切れの影響なのか、竜郎が目を覚ますと、頭を万力で締め付けられるような痛みが襲ってきた。

 生魔法で癒そうとするが、魔法を使おうとするだけで余計に痛みが増してきたため、愛衣に抱えられてソファーに寝転んで大人しく休んだ。



「あー……、酷い目にあった」

「もういーの?」

「ああ、ありがとう」



 未だかつてないほど一瞬にして魔力を消費してしまったせいで、竜郎自身魔力が無くなる感覚すら覚える前にぶっ倒れてしまった。

 そのことを自覚し、次の機会があればもっと気を付けようと自戒する。

 そうして愛衣に頭を撫でられながらくっついてもらったおかげで、十分ほどで復調することができた。



「それにしても、愛衣との称号効果を駆使しても二十秒やそこらが限界なのか。

 こりゃ使うならおふざけなしで、三秒から五秒くらいでケリをつける気で行使するスキルだな」

「ねー。でさでさ、それは置いといて。精霊さんの魔法はどんななの?」

「ああ。それじゃあ、こっちもやってみるか」



 竜郎はまだ全回復ではないものの魔法自体は普通に使えるレベルに回復したので、適当に光魔法で光の玉を生み出した。

 そしてそこへ、精霊魔法で光精霊の意思を降ろした。

 すると竜郎が動かしてもいないのに、勝手に家の中をウロウロ移動し始めた。



「おーい。こっちに来てくれ」

「あ、きたよ。可愛いかもっ」



 竜郎の言葉を理解して光の球体は自分からこちらにやってきて、周囲を点滅しながらクルクル回り始めた。

 そしてそのまま外に出ると火の玉を造って、そこに火精霊を降ろす。

 すると火の玉と光の玉が、追いかけっこでもするかのように周囲を飛びまわった。



「二人で協力してレーザーを撃てるか?」



 そう竜郎が指示すると光の玉と火の玉がくっ付いて融合すると、小さな玉に見合った小さなレーザーを数本撃ち出した。

 今は小さな憑代に降ろしているためこんなものだが、もっと大きな憑代を用意してあげれば、戦闘でも自分で意思を持って敵に攻撃してくれるようになりそうだ。

 これは自分で制御しなくてもいいぶん、やってほしいことを伝えないといけないが、それでも十分に強力なスキルだと、竜郎は満足げに頷いたのであった。

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