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レベルイーター  作者: 亜掛千夜
第五章 呪われた少女編

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第201話 リアの研究テーマ

 ・試行回数

 空200回。海199回。

 ・戦利品

 空―鉄箱×133、銅箱×61、銀箱×1、金×3、白金×2

 海―鉄箱×117、銅箱×74、銀箱×4、金×3、白金×1

 ・内訳

 羽毛布団×266個、羽毛枕×122個、雲迷彩のファー×1個、羽毛のベッド×6個、風装のネックレス×2個、ドライスーツ×234個、ゴーグル×148個、水迷彩の羽衣×4個、シュノーケル×6個、水鉄砲の拳鍔×1個。



「あー…。自分が言い出しっぺだから、こんなことを言うのは間違っているのかもしれないが…………やりすぎたかな」

「最後はもう無心でやってたから、私はよく覚えてないやー」



 今回の出るまでやる作戦の成果を紙に纏めてみれば、どれほど乱獲してきたのかよく解る。



「それにしても、空の方は一番ドロップ率が低そうな白金の箱は二つも落ちたのに、銀が一個っておかしいですよ」

「俺達の世界ではな、そういう現象を物欲センサーが働いたと言うんだ」

「ぶつよくせんさー? ……ああ。欲しい欲しいと思っているほど、手に入らなくなるとかそんなところですか」

「そんなところだ。うーん。どうせなら、海側の水鉄砲ももう一個ぐらいは欲しかったがしょうがない。

 だが、この大量の羽毛布団やドライスーツはどうしたもんか」



 掛け布団と枕だけでも、合わせて388個。

 その中にある羽毛に至っては、数えきれないほどである。

 売っぱらうなり《無限アイテムフィールド》で消去して複製ポイントの足しや、再資源化で鉄や銅などに変えてしまうのもいいだろう。

 しかし、素材は間違いなく一級品。

 ただそれだけに消費してしまうのは、勿体なくもあるのだ。



「うーん。せっかくだし、それでソファーとか造っちゃえばいいんじゃない?」

「後は座布団とかもできそうだな。ドライスーツは耐水なうえに頑丈だし、いいかも知れないな」

「そういう作業なら、私もお手伝いしますよ」

「わたくしも手伝いますの!」

「あたしはー……、カル姉たちと警戒するっす。

 そういうチマチマした作業してると、うがーってなっちゃうんで」

「愛衣も苦手だよな」

「苦手だけど、たつろーがやるなら私もやるよ!」

「ん、そっか」



 張り切る愛衣の腰を抱き寄せてギュッとして頬に軽くキスをしてから、竜郎は今後の予定を頭で組み立てていった。



「今日一日は小島で裁縫と、リアの武器の増産かな。次のポイントへは明日向かおう」

「助かります。手榴弾ももうちょっとしかないので、補充しておきたかったんです」

「ああ、まさかあんなに長丁場になるとは思ってなかったからな。すまんかった」

「いえいえ。おかげで色んな実験もできましたし、今後の参考になりましたから、お気になさらず」



 そうして竜郎たちは警戒をカルディナ達に任せ、自分たちは作業すべく家を出すことにした。

 今回の地形は小さな小島なので、住居はビル型が望ましい。

 けれどあまり高く伸ばしたところで認識阻害をしても、ドリ鳥が飛行中にぶつかって気付かれるかもしれない。

 なので、高さは程々にピラミッド型に組み立てることにした。

 システムの《無限アイテムフィールド》を開いて結合、分解の機能で組み替えていき、望みの形に整えてから外に出した。

 それから認識阻害の装置を家に付けて起動すれば、視覚的には見えなくなった。

 後はカルディナたちが所定の位置で、どんな魔物が来てもいいように警戒を続けてくれるので、安心して竜郎たちはそれぞれの作業に取り掛かっていった。


 リビングにおくフカフカで立派なソファーや、それぞれのメンバーにあった羽毛の座布団。

 寒い場所用にダウンコートも作ったりと、羽毛とウェットスーツをふんだんに使って色んな物を作っていった。

 さらに竜郎と愛衣、リアが使う羽毛ベッドを改造して、気力や魔力を一々使わなくてもいいように帰還石を動力にするシステムに換装しなおした。

 それが終われば、リアの手榴弾造りを手伝いがてら見学させてもらうことにした。


 まず魔法陣を金属の板にのみで刻んでいき、そこに魔石を加工した物(※この国では魔石の加工自体が犯罪)を使用して、その溝を埋めていった。



「その陣をただ書くだけで、誰でも魔道具を造れるのか?」

「いえ。この陣を刻むときには──例えば」



 リアがそう言いながら、陣の一部を指差した。



「何故ここは曲線なのか、何故ここは直線が重なっているのか、何故円がこの大きさなのか。

 など、全てを正確に認識しながら刻まなければ魔法は発動しないんです」

「「へえー」」



 それから魔法陣の真ん中に一直線に通った溝に通すように、安全装置である9ピンを差し込む。

 そうしてからその魔道具……というより手榴弾を発現させるエネルギー物質である帰還石を、リアお手製のソケットにつないで魔法陣を刻んだ板に繋げていく。

 この作業はリアでなくてもできるので、奈々が慣れた手つきでこなしていく。



「単純にそれに帰還石をたくさんつければ、威力は増すの?」

「そうではないようですの。

 威力によって魔法陣もまた形を変えなければならないので、少なすぎては発現しませんし、多すぎては無駄になってしまうだけですの」

「「へえー」」



 そうして既定の個数の帰還石を繋ぎ終わったら、今度はその板を粘土のようなもので覆っていった。



「それは……。もしかして、前のダンジョンの床か?」

「はい。これはただ帰還石と魔法陣が接触しないように区切るだけなので、その辺の土や床から材料を捻出してるんです」

「「へえー」」



 後は奈々が、その粘土に帰還石がセットされたソケットをくっつけていき、さらに周りにも粘土剤で丸く覆ってしまえば、後は乾いて硬くなるのを待てば完成である。



「一番手間取りそうな陣書きは、リアにしかできないのか。大変そうだな」

「ですね。けど実は、魔法陣を刻む魔道具を作れないか思案中なんです」

「あれ? でもさっき、ちゃんと理解しながら書かないとダメーって言ってたよね? 道具にそれができるの?」

「はい。カルディナさん達や、アイさんの持つグンダリミョウオウさんを観て色々考え付きまして。

 疑似人格といいますか、人工知能と言いますか、そういった意思を持つ物質の創造という研究を暇な時にしているんです。

 もしそれができれば、一個の魔法陣に一機の道具で対応できるかもしれません。

 後はタツロウさん達が使う、武器への転用なんかも考えています」

「なんだかよく解りませんが、楽になることはいいことですの」

「だな。それに他にも色々流用できそうな技術だし、もしリアが表に出て魔道具造りを教えていったら技術革命がおこりそうだな」

「まあ、教えることはできそうにないので、できませんけどね」

「そういえば、そうだっけ」



 リアの目で得た情報は知識レベルが時代の先を行き過ぎていて誰も理解できないのだから、教えるなど不可能だったことを竜郎も愛衣も思い出した。

 そうして竜郎たちは、奈々に混じって素人でもできる部分だけを請け負って手伝っていく。

 そうしてまた、たくさんの危険物がリアの《アイテムボックス》に収納されていくのであった。


 それから食事、風呂を取り、睡眠と相成った。

 勿論今回使うのは戦利品である羽毛のベッドに羽毛の枕、羽毛の掛布団。

 室温は少し高いので、羽毛のベッドに取り付けた帰還石をソケットに十個差し込んで少しだけ冷房を利かせてみた。



「まさか、エアコンが手に入るとは驚きだな」

「うん。それに帰還石で動くようになったから、寝ている間も起動させられるしチョー便利」

「リア様様だな、明日改めて礼を言おう」

「だね!」



 適度に冷房の利いた部屋で、今日も色々あったと二人で一つのベッドに潜り込む。

 すると、お互いの体温と羽毛の包まれるような温かさと柔らかさに直ぐに瞼が重くなり始めた。



「今日は、もう寝ようか」

「うん……。そう……だねー………おや…ふみぃー……ぐぅ」



 何とも寝つきの良いことで。と思いつつ、竜郎自身もいよいよ睡魔に抗えなくなり、愛衣に一度キスしてから。



「おやすみ。愛衣」



 優しく抱き寄せて頭を撫でてから、竜郎も眠りに落ちていった。


 快適な眠りをしたせいか体も頭も、いつもより冴えている気がしていた。

 この日は愛衣も寝起きがよく、ほとんど生魔法の恩恵無しにシャキッと目覚めた。

 それからおはようの挨拶とキスを交わして少しの間二人の時間を過ごした後は、さっと着替えてリビングに降り、食事を取ってカルディナ達への魔力補給を兼ねた触れあいタイム。

 そうして準備も整えば、全員がフル装備でジャンヌの背中に乗り込んだ。



「それじゃあ、あそこの浮遊小島に行ってくれ」

「ヒヒーーン!」



 ジャンヌは意気揚々と飛び出して、次のポイントへと飛び込んでいった。


 どんな敵が不意打ちしてきてもいいように、多属性の結界を張った状態で次の階層にたどり着けば特に敵の反応も無く。とりあえず安全な場所なようだった。

 そこで結界を解いて外を見渡してみれば、十メートル四方の青い壁、青い天井、青い床の真四角な空間。

 そして天井からは明かりもないのに煌々と光が漏れだし、真昼のように明るかった。

 そこは《真体化》した姿では狭いのと、敵もいないようなのでジャンヌは幼体化して竜郎の横にピタリとついた。


 それから改めて周囲を見回してみるが、先に述べたもの以外に何もなく。別の部屋に行くためのドアも通路もなかった。



「何にもない部屋にただ入れられても困るわけだが……。

 何か仕掛けでもあるのか?」

「あっ、あそこの壁にボタンがあるよ! 押せって事かな?」

「かもしれないが、要確認だな」



 愛衣が目ざとく赤く十センチほどの丸いボタンを向かって右側の壁、下から一メートルほどで真ん中よりも少し右にずれた位置に発見した。

 いきなり押すわけにもいかないので、とりあえず解析をしてみるが、ただのボタンとしか解らなかったので最終手段《万象解識眼》に頼むこととなった。



「うーん。これを押すと……何かがこの部屋に出てきて、質問をされるみたいですね。

 それにちゃんと答えられれば次の部屋の扉が出てくると、そんなボタンのようです」

「じゃあ、押してもかまいませんの?」

「はい。危険は無いと思います」

「けど、警戒はしとっくっす」

「だな。それじゃあこっちはいつでも対処できるようにしておくから、愛衣が押してくれ」

「わかったー。ぽちっとな」



 一番押したそうにしていて、どんなことにも即応できる反射神経を持つ愛衣に押してもらえば、部屋の中央部に立て看板がニョキッと生えてきた。

 そしてさらに、その前に細い五十センチ程の高さの柱が四本出てきて、それぞれ赤、黄、緑、青の四種類のボタンが上に設置されていた。



「なんだあれ?」

「見てみよ!」



 たたたーっと軽やかに愛衣が駆け寄ると、立て看板に書かれていた言葉を他の皆にも聞こえるように、そのまま口にだして読み上げた。



「〝ルヤージ〟は、何に反応して襲撃する?

 赤:振動 黄:音 緑:熱 青:光──だって。どゆこと?」

「……四択クイズですの?」

「みたいだな。そのクイズに正解すれば、通してくれるって寸法か」

「けど、間違った場合どうなるっすか? 間違い=即死級のトラップ発動なんかされたらたまらないっす」

「………そういったモノではないみたいですね。

 間違えると、全部引っ込んでまたボタン探しからになるみたいです」

「それだけ? なら適当でいいかな?」

「いやいやいや。ちゃんと考えてからにした方がいいだろ。

 えーと、ルヤージ?とかいうのは知らんが……んー」



(おそらくこのダンジョンと無関係なことを聞いてくるとは思えない。

 ということは、これまでに出会ったことのある魔物である可能性が高い。

 そのうえで何に反応して……からの振動、音、熱、光ときたら──)



「これ、びっくり貝のことじゃないか?」

「あー、言われてみればそうかも。それじゃあ、緑の熱が正解?」

「ですの! わたくしが押してみてもいいですの?」

「ふふっ、いーよ」

「では、ポチッとなですの」



 愛衣のマネをしながら奈々が緑のボタンを押すと、立て看板に書かれた文字が消え、右側の最初にボタンがあった辺りに次の部屋へと続くトンネルが出てきた。



「どうやら正解だったみたいだな。それじゃあ、あっちへ進もう」



 そうして竜郎たちは、ジャンヌを先頭に新たに出てきたトンネルを潜り抜けていったのであった。

次回、第202話は3月29日(水)更新です。

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