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レベルイーター  作者: 亜掛千夜
第五章 呪われた少女編

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第197話 ニューウエポン

 今日はこの場で休んでいくと決めた。

 竜郎は《無限アイテムフィールド》から分解、結合を駆使して本日泊まる家の形をパズルのように組み立てていく。

 幸い、あつらえたようにこの場所は広い。

 存分に部屋を出せるということもあり、リビングを起点に浴室と逆サイドにリア用の工房を隣接。

 二階に竜郎と愛衣二人の部屋とリアの部屋も載せて、カルディナたちが警戒しやすいように壁や天井はないものの、椅子など楽な姿勢でいられる空間を周辺に設置するように組み上げた。

 それから最後に、昇降機を両脇に一つずつ取り付ければ完成だ。

 そうしてできた今日の家を、《無限アイテムフィールド》から出現させてこの広い空間の中央に設置した。



「うん。自画自賛するようで面映ゆいが、良い家だな」

「だねー。元の世界で、これくらいの家に住もうと思ったら、いくらかかんのかね?」

「さあねえ」



 などと竜郎と愛衣が家の外観を見ていると、リアは一声かけてから自分の工房へと駆け足で入っていった。

 その後ろ姿は、すぐにでも頭の中の構想を外に出したくてたまらないといった様子だった。



「それじゃあ、俺たちは一先ず休憩するか。歩きっぱなしの上に、さっきの戦闘でそこそこ動いたしな」

「となると、リアちゃんも休んだ方がいいのに大丈夫かな?」

「そっちは、わたくしが見に行きますから大丈夫ですの」

「そう? じゃあ、お願いね奈々ちゃん」

「はいですの!」



 愛衣に頭を撫でられて頬をだらしなく緩ませた後、竜郎の方もじっと見てきた。

 なので竜郎も微笑みながら優しく奈々の頭を撫で魔力補給をしてあげると、喜び勇んでリアの工房に突撃していった。



「これで、あっちは大丈夫そうだな。それじゃあ、家に入ろう」

「うん!」



 そうしてカルディナたちにも魔力を補給しなおし、二人はダンジョン戦での報酬で貰った認識阻害の三角フラッグを取り付け外からは見えなくしてから、一階のリビングへ入っていった。

 カルディナは探査魔法の関係で、密閉空間は効率が悪くなってしまう。

 そのため外に用意されたカルディナ専用スペースに飛んでいき、ジャンヌは外で正面の警戒を、アテナは後ろの警戒へというように移動していった。


 完全に二人きりになったので、まずリビングの椅子に竜郎が腰かけ、その膝の上に向かい合うようにして愛衣が座った。



「ふふ。たつろーたつろー♪」



 自分の名前を連呼しながら顔中にキスをしてくる彼女の腰を抱きながら、こちらからもキスをしかえした。

 そしてお互い飽きることなくいちゃついていると、不意にどちらかの腹の虫が鳴った。

 密着し、キスに夢中になりすぎてどちらなのか解らなかったので、二人で顔を見合わせ笑いあった後、最後にもう一度深いキスを交わしてから料理に取り掛かった。



「取りあえず飯を炊いて肉を焼いて、野菜とフルーツを切ればいいか」

「今日は、あのレモンみたいな味の奴がいいな。あれに蜂蜜付けて食べるのが大好きなの!」

「じゃあ、今日はそれにしよう」



 今や米や野菜、果物に関しては量と種類が豊富にあり、このままこのダンジョンに数十年単位で籠城しても暮らしていけるほどであった。

 そんな《無限アイテムフィールド》から米と竜肉、蜂蜜に野菜、果物を出して雑な料理に取り掛かった。

 新しいキッチンと《無限アイテムフィールド》内での時間操作を駆使して米を炊き、野菜と果物を洗って切って皿に盛る。

 そして最後に、慣れた手つきで肉を焼けばもう完成だ。


 二人はまず、今もなお頑張っているであろうリアの分をトレーに入れて持っていく。

 今回の工房の場所は今いるリビングの左手側に設置してあるので、ノックをしてから返事を聞き入っていく。



「飯を作ったから、空いた時にでも食べてくれ」

「あっ。そういえば、もうそんなに経ちますか。すみません、忘れていました」

「ああいいよ、そのままで。自分のタイミングで食べてよ」



 そう言って今の作業を中断してこちらに来ようとしたリアを制して、二人は食事を近くの台に置いた。



「ありがとうございます」

「それで、その兵器ってのはいくつかできたのか?」

「その横に転がってる、お団子みたいなのがそうなの?」

「はい。試作型ですが、上手くいくと思います。あとで試験運用してみるので、その時またお見せしますね」

「解った、その時は遠慮なく呼んでくれ。俺たちもどんなものか興味があるからな。それと、奈々もご苦労さん」

「はいですの!」



 そうして二人は食事を届け終わると、二人でリビングのテーブルについて食事をとった。

 この時もお互いに食べさせあったり、くっついたりでいつも以上に時間がかかってしまった。

 その後一度リアから帰還石の追加を求められ、腐るほどあるので一万個ほど渡したら目を丸くしていた。


 それからまた暫く時間が過ぎた頃、二人が竜郎が適当に作ったトランプで遊興に及んでいると、奈々とリアがドアを開けてリビングに入ってきた。



「今から試験運用をしたいのですが、見に来られますか?」

「できたのか。勿論見させてもらうよ」

「わたしもー!」



 竜郎と愛衣、奈々とリアは連なって外へ出ると、誰もいない方角に揃って顔を向けた。

 そうしたら何かまとがあったほうが解りやすいだろうと、竜郎は土魔法で雪だるまならぬ土だるまを造って少し離れた場所に設置した。



「では、まず爆発魔法を模したこれからいきます。

 威力はタツロウさんの魔法には及びませんが、音は結構するはずなので気を付けてください」

「解った」「はーい」「はいですのー」



 竜郎と愛衣は魔法と気力の盾でいざという時防御できるように気構えてから、耳に指で栓をした。

 それを見たリアは、楕円形のラグビーボールのような形をした十五センチほどの物体を《アイテムボックス》から取り出して、中心に入っていた9ピンを人差し指にひっかけてスポッと抜くと、本体を土だるまに向かって放り投げた。

 クルクルと回りながら正確な軌道を描いて、着弾。そして小規模な爆発を起こして、土だるまの上の段を吹き飛ばした。



「まるで手榴弾だな。威力はもっと上げられるのか?」

「ええ、できますよ。今はまだその分、質量を大きくする必要がありますが」

「爆発魔法以外もあるんだよね?」

「はい。それじゃあ、今度は火魔法でやってみますね」



 竜郎は土魔法で的を復活させると、リアにOKサインを出した。

 リアは《アイテムボックス》から、火と書かれた先ほどと同じ大きさ形のものを取り出すと、9ピンを抜いてから土だるまに放った。

 すると土だるまの上の段に着弾後、そこで火がぶわっと燃え上がった。



「うわっ、土だるまが火だるまになったよ!」

「誰が上手いことを言えと……。っと、消えたな」



 五秒ほど燃えた後に、魔力を失い自然と火が消えていった。だが、しっかりと土は焼き焦がしていた。



「ええ、あのサイズだと燃焼時間もあんなところですから」

「あっちも、大きくすれば長くなるんですの?」

「はい。もっと言えば、大きさによって燃焼時間を調整できそうですね。それじゃあ、今度はもっと遠くに的を立ててもらえますか?」

「もっと遠く? 解った。………………これくらいか?」

「はい、ばっちりです」



 五メートルほど先にあった土だるまを移動させて、その倍の十メートルほど先にまで持っていった。

 すると今度は水と書かれたものを取り出すと、さらに鉄のワイヤーを編み込んで作りこまれた大きな眼帯のような形をした物を取り出した。

 しかし眼帯と違うのは目を当てる部分が大きく、さらにフックが取り付けられ、紐の部分も長く片方だけ端に丸い指が入りそうな輪っかが付いていた。

 リアはそれのフックに水魔法の投擲体の9ピンを引っ掻けて面の部分に乗せると、紐の両端を右手で持ち、輪っかを人差し指に通し輪の無い方を薬指と小指の間に挟んで垂らした。



「スリング?」

「はい。原始的ですし慣れないと狙いもつけにくいですが、すぐに用意できて遠くに飛ばしやすいですからね」



 竜郎の言葉にそう言いながら、右の手にもった投擲体の乗った紐をグルグル回し始めた。

 そしてよーく遠くの的に狙いを定めながら、ボールを投げる時のように振りかぶって薬指と小指に挟んでいた紐を離すと、フックに引っかけていた9ピンが抜けて、普通に投げるよりもさらに強く発射された。

 そしてちゃんと土だるまにもヒットし、一段目の腹辺りを水で浸した。



「頭を狙ったんですが、逸れましたね。結構難しいです」

「いやいや。当てるだけですごいって、ちょっと貸してくれ」



 竜郎は投擲用のスリングを受け取ると、適当に土魔法で土塊を造ってリアと同じようにして放ってみるが、前には飛んだが土だるまとは全く関係のない方向へと飛んでいった。



「私も私も!」

「アイさんは投擲スキル持ちですから、一撃でいけるかもしれませんね」

「じゃあ、これが玉な」

「ありがと」



 愛衣は土塊を受け取ると、見よう見まねでやってみた。

 不器用が勝つかスキルが勝つか、どっちだろうと竜郎が見守っていると、土塊は寸分たがわず飛んでいき、土だるまの頭を吹き飛ばした。



「威力が半端ないな。適当に造った只の土の塊だぞ」

「アイさんは小細工しないで、その辺の石ころを投げれば余裕で倒せますね」

「いえーい」



 それからも棒に先ほどのスリングを取り付けたスタッフスリングを使って、さらに遠くの的に当ててみたりして何種か投擲体を投げてから、いよいよ最後の試作兵器を取り出した。



「今回一番試したかったのは、これですね」

「「………………何それ?」」



 リアがドヤ顔で出してきたのは、直径三十センチほどの円柱で中が空洞。

 さらにトリガーもつけられており、まるでロケットランチャーのようであった。

 今まで随分原始的な投石具を用いていたので、二人は最初それが何なのか理解するのに時間がかかってしまった。



「えーと、それで撃てるのか?」

「はい。今できる最高の飛び道具をと考えた結果、こうなりました。

 ただ実際にやっていないのでまだ解りませんが、《万象解識眼》では大丈夫でした」

「「へー……」」

「それじゃあ。あの、今度は大きな的をより遠くに設置してくれませんか?」

「あ、ああ。解った」



 竜郎は言われるがままに、ここで倒した巨人に似せた巨大土人形を水の壁ギリギリに設置した。

 そうして竜郎と愛衣、奈々が見守る中、リアはラグビーボールに細長い円柱の棒が付いたような投擲物を取り出した。

 そして棒部分に付いた9ピンを抜くと、それを円柱の中に挿入した。

 それからその円柱を右肩に担いで、照準を合わせてトリガーに人差し指をかけた。



「行きます! 発射!!」



 リアは発射の合図を口にしてから、トリガーを引いた。

 それに連動して、円柱の中にあった小さなハンマーが挿入した棒のお尻を叩く。

 すると棒部分から風魔法が発生し、突風で先端のラグビーボール型の部分を押し出していき、やがて真っ直ぐ筒に沿って飛び出していった。

 そしてさらに加速していき、竜郎が造った土人形まで一気に駆けていく。

 それは見事に着弾して大音量を響かせながら盛大に爆発し、巨大土人形の首から上を吹き飛ばした。



「おいおい、マジでロケットランチャーじゃないか」

「ろけっとらんちゃあ。というものは解りませんが、これならそこそこの耐久力を持った相手にも効くはずです」

「ふえー。過激な武器を造ったもんだねえ」

「けど、おとーさまの魔法の方が威力は上ですの!」



 奈々は内心ちょっとカッコいいと思いつつも、それでも竜郎の方が凄いんだぞ!と誇示していた。

 竜郎は、その子供らしい反応に微笑ましそうに頭を撫で、その光景に愛衣もリアもホッコリしながら見守った。



「そりゃあ、本物の魔法とは比べられませんよ。

 威力もどんな魔法なのかも、最初から決まった状態でやるしかないんですから」

「それに強力にするには、巨大化しなきゃいけないんだもんな。

 確かに魔法の方が良いんだろうが、低レベルのダンジョンならあれだけでボスと渡り合えそうだ」

「まあ、今さっきのは作るのが大変すぎるので、ここぞという時にしか使えませんけどね」

「そうなんだ。ポンポン撃てたら面白そうだったのに」

「あんなのポンポン撃っちゃダメだろ……」



 こうしてリアに、遠距離攻撃が加わったのであった。

次回、第198話は3月23日(木)更新です。

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