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レベルイーター  作者: 亜掛千夜
第五章 呪われた少女編
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第191話 解決方法

 竜郎たちが洞穴から出れば、目の前には強化される前の魔物がうじゃうじゃと群がり一斉に牙を剥いてきた。

 こちらはまだ火魔法に耐性はできていないので、竜郎の魔法で一気に焼き払って活路を開く。

 そうして取り囲まれる前に洞穴があいていない方の、つまり魔物が落ちてこない後ろの壁まで走って背後の安全だけは確保しておいた。


 それから代替わりしたNEW火属性ムカデたちが群がりだしたが、竜郎はアンチ魔法と火魔法以外で応戦。

 他の皆は火の心配をせずに、物理で攻撃して倒し防衛線を築きなおした。



「それでリア、そろそろ説明してくれないか」

「はい。実はあの魔物の発生を促していた物体ですが、アレには核となる本体が存在していて、そちらを壊さない限り復活してしまうようです」

「それも、強化されて?」

「はい。あの物体は、自分を壊した最後の攻撃を取り込み、その攻撃に対して耐性を付けます。

 そして、そこから生み出される魔物にもそれを反映させる力も持っています。

 ですので、あそこで何度も壊してしまったら魔物は強化され、こちらの打つ手が減らされるだけでした」

「それで、あれを完全に壊すには、その核とやらを壊せばいいんですの?」

「そうです。その後で先ほどの六面体を破壊できれば、この魔物たちの増殖を止められるはずです」

「核か。けど《精霊眼》を使って見渡した限りでは、そういった類のものは見つけられなかったが」



 あの六面体を見つけてからも、竜郎は念のため他には何もないかと確認していた。

 それでも見つからないということは、まだ何か見落としているということなのだろう。と竜郎は結論付ける。



「しかし、いよいよ解魔法が前ほど役に立たなくなってきたな…。他のパーティは、どうやってこんなの攻略してるんだ?」

「みーんな、リアちゃんみたいなスキルを持ってるとか?」

「というよりも、トライ&エラーの積み重ねだと思います」

「それだけですの? 他のパーティーと、情報共有とかはしないんですの?」

「低レベルダンジョンならいざ知れず、このレベルまで来るとパーティ内だけで情報を占有すると何かの本で読んだことがあります」

「占有ってことは、他には内緒にするってこと?」

「はい」



 国としてはより上質な資源確保のためにもダンジョン内部の情報交換を推奨しているが、危険度の高いダンジョンほどその傾向は薄れていく。

 けれど国は他の国に優秀な冒険者たちが流れてしまわないように、それを無理やり強制させることができない。

 では何故、冒険者たちは情報を占有しようとするかと言えば、お金のためである。

 狩猟場に来る人間を減らし、自分たちがその場所を独占できれば、極端に言えばそこでしか手に入れられない素材は、そのパーティにしか手に入れられないので、相応の価値で売ることができるからだ。

 なので冒険者たちはダンジョンの情報をパーティ内だけで共有、継承していき、何年もかけて出入りを繰り返した末に、ようやく最後まで辿り着ける──というのが普通だった。

 竜郎たちのように、初見で攻略しようなどと考える人間はまずいない。



「じゃあ、入り口にいた奴らもそういうのだったんすかね」

「おそらく、長年ここのダンジョンで活動している人たちだったのだと思います」

「なるほどね。んじゃあ、すっきりしたところでその核とやらを探すとするか」

「どうやって探すの?」

「さっきはああ言ったが、結局は探査魔法に頼るしかないな。

 《精霊眼》だと見落としがある可能性はあるが、こっちなら隙間なく探せるからな」

「それじゃあ、そっちは任せたよ、たつろー。ここは私たちが守るから安心して集中して」

「ありがとな、愛衣。そんじゃあ、俺とカルディナはアンチ魔法と探査に集中するから、その間ここは頼んだ」

「はいよー」「ヒヒーーン」「了解ですの!」「はいっ」「りょーかいっす~」



 そうして竜郎は、カルディナと共に解魔法だけに集中してこの辺一帯を舐めるように精密に探査していく。



「この辺りには、それっぽい物は無いみたいだな。カルディナ、今度は洞穴の中を一つ一つ探っていこう」

「ピュィー」



 竜郎はカルディナと共に、近い所から順に左右にある洞穴の中に探査魔法をかけていく。

 けれど三十二か所その全てにおいて、何も収穫は無かった。



「なら地下だ」

「ピィッ」



 今度は土魔法と解魔法の混合で地中探査の魔法を携えて、今立っている大地の中を調べていく。けれど下は十メートルも行けば行き止まりで、ここにも何も見当たらなかった。



(……どこかにあるはずなんだ。けど他にどこが……──あ)



 竜郎は思考を巡らせながら何となく顔を上に向けると、その目にはどこまでも続く空が映っていた。



「そういえば、こっちはどこまで上に続いているんだ?」

「ピュイ?」

「今度は空を調べてみよう」

「ピィッ!」



 竜郎とカルディナは何も無さそうな上方、空に向かって探査の魔力を伸ばしていく。

 そうして探査の手をドンドン上へ上へと伸ばしていくと、やがて一匹の魔物とそれが何かを持っているのが確認できた。



「見つけたっ。多分、アイツが持ってるのがそうだ!」「ピュィイイ!」

「どこにいるの?」

「ここから左斜め70度──いや、動き出したな。探査したことがばれたか。

 愛衣、心象伝達でイメージを送るから、弓で打ち抜けるか?」

「わかった。やってみる!」



 竜郎とカルディナ、そして愛衣まで防衛線から抜けて他のメンバーの負担は増えるが、それでもまだできないレベルの魔物ではない。

 ジャンヌたちは終りが見えてきたこともあって、余力を少しずつ解放していき持たせてみせる。

 そんな間にも、愛衣は竜郎から魔物がフラフラと上空を飛び回る状況を正確に受け取りながら弓を構えた。



「かなり上だね。このままだと、多分届かないかも。軍ちゃん」



 愛衣が軍荼利明王に呼びかけると何が言いたいのかしっかり理解して、愛衣の番えた弓矢に八本の手の平を向けて、槍を出す分の気力を合わせていく。

 すると巨大で、限りなく実像を持った立派な弓矢が出来あがった。

 それを愛衣は弓先をフラフラと動かしながら、魔物の軌道を追ってタイミングを合わせつつ、限界ギリギリまで弦を引いていく。



「……………………………………今っ!!」

「うおっ」



 近くにいた竜郎に衝撃が伝わるほどの威力で、弓矢が真っ直ぐ空へと飛んでいった。

 上空にいた魔物、それは三センチほどのハエの形をした虫型で、その足には小さな金平糖のようなイガイガの付いた球体が挟まれていた。

 その球体を空に持ち込み、冒険者から逃げるのがこの魔物が与えられたただ一つの役割だった。

 だがそれも、もう終わりのようだ。

 下方から巨大な弓矢が迫り来て、それを見た時には既に体ごと球体を破壊されていた。

 魔物は死んだことに気が付くことも無く、この世界から散っていったのであった。



「よしっ」「当たった!」「ピィーー!」



 竜郎とカルディナは探査魔法で、愛衣は心象伝達で確認してハイタッチをして喜んだ。

 そうとなれば、後はまたあの洞穴に潜って壊すだけである。



「核って奴は、たぶん壊せたはずだ。後はこいつらを蹴散らして、またさっき行った場所に向かおう」

「おとーさま。毒魔法を使って倒してみたいですの」

「毒魔法か。いいけど、それなら事前に俺たちにその毒の解毒魔法を付与してくれ」

「勿論ですの!」



 そうして奈々は即死効果のある毒魔法の解毒魔法を全員に付与していき、竜郎に光魔法でブーストしてもらいながら、辺り一面に毒をばら撒きジャンヌの風でより広範囲に広げてもらった。

 すると魔物たちはドンドン倒れていき、死屍累々の現場が広がった。

 相手が死んでくれれば竜郎の《無限アイテムフィールド》にも収納できるので、魔物たちを残らず回収しつつ足の踏み場を作り上げ、魔物が発生する六面体のある場所まで戻ってきた。



「それじゃあ、壊すぞ」

「はい。もう大丈夫なはずです」



 空色の目で観ていたリアに確認をとれば、ちゃんと核の破壊はなされていることが確認できたようなので、竜郎は奈々の毒魔法で死んで落ちてくる魔物たちを《無限アイテムフィールド》に左手を向けて収納しつつ、もう片方の手で持った杖の先から土魔法で造った土塊を風魔法で吹き飛ばして撃った。

 それが当たると、六面体の物体は粉々に砕けて魔物の生成も止まった。



「ふう。これで一段落っすね。虫ばっかりで気持ち悪かったっす」

「アテナちゃんも、虫系は苦手なの?」

「そうっすねー。動物は怒ってたり、怯えてたりってのが解りやすいっすけど、虫って何考えてるかさっぱり解らないから不気味なんすよ」

「確かに表情が無いから、解りにくいっちゃあ解りにくいよな」

「そうっす。さすがに威嚇とかされれば怒ってるなーくらいは解るっすけど、それでも無表情にしか見えないっすし」



 などと雑談を交わしながら洞穴を出ると、いつの間にか竜郎たちが最初に立っていた辺りに次の階層へと渡る光る溜池が出現していた。

 そしてさらに、洞穴の奥深くにいて毒が届ききらなかった魔物が数十匹蠢いていた。



「せっかくだし、あいつらからSPを貰ってくか」

「うん、そうしよ」



 火魔法に耐性を持つようになり、火を吐く魔法まで身に着けたムカデ型魔物であるが、恐かったのは圧倒的な数による暴力である。

 数体程度がうろついていたところで、なんということも無い。そう思いながら下に降りようとすると、その魔物たちは突然共食いを始めた。



「うげげっ、仲間を食べ始めたよ。気持ちわるーい」

「それはそうなんだが、なんで突然……。さっきまでは、そんな気配すらなかったのに」



 そうこう言っている間にも、共食いは進んでいく。



「あれ? 大きくなってない?」

「ホントですの」



 やがて共食いの末勝ち抜いた一匹が、三メートルほどの個体に成長していた。

 さらに体の外殻がより硬く滑るような光沢を放ち、口元にある鎌のような両顎をガチガチと噛み鳴らしていた。

 そして餌を探すようにキョロキョロ頭を動かし竜郎たちに気が付くと、顔をこちらに向けてきた。



「気が付かれたみたいだな。口元に火属性の魔力が集まってる、火炎放射来るぞ!」

「ピュィーー」



 先ほどと同じ火炎放射の魔法とは限らないので、もう一度しっかりと解析をしてからアンチ魔法の結界を展開する。

 そうして火炎放射を防ぐことに成功はしたが、明らかに出力が跳ね上がっていた。



「見た目同様、強くなっているみたいだな。当然と言えば当然の結果か。

 けどその分、SPはたくさんとれそうだ」 

「そんじゃま、生け捕り─────っと!」



 愛衣が気力の弓矢を、尾の先端部分に向けて撃ち放った。



「ありゃりゃ」

「結構頑丈になってるみたいっすね」



 愛衣の弓矢は当たりはしたものの、外殻に弾かれあさって方向に飛んで行き消え去った。



「なら、出力あげるよー!」



 今度は軍荼利明王の手を四本使って作った大き目の弓矢を造りだし、それを同じ箇所へと撃ち放つ。

 すると今度は弾かれることなく、外殻を貫通し地面に縫いとめた。



「ジィィィィィィィィィィィ」



 電気シェーバーのような音をたてながら、必死で尾の先に刺さった気力の矢を取ろうと身を捻ったところで、愛衣はさらに二射目を放って胸元から入って尻尾に矢を突き刺し、鯖折りに縫いとめた。



「たつろー」

「ああ」



 そこで矢が消える前に、竜郎は《粘着水》の魔法を使用してその形のまま地面に磔にした。

 それから竜郎たちは《レベルイーター》を当てるため、一気に近寄り始めたのであった。

次回、第192話は3月15日(水)更新です。

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