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レベルイーター  作者: 亜掛千夜
第五章 呪われた少女編

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第190話 魔物の発生源

 竜郎はまずカルディナと共に、魔弾+爆発+火の混合魔法を作り上げる。

 魔物が今もなお飛び出し続ける左右二段の壁にある三十二の洞穴に向かって、それを順繰りに撃ち込んでいった。

 近くに来た魔物には愛衣とジャンヌ、アテナで防衛線を張る。

 その後ろから奈々は呪魔法で鈍足効果を付与して行軍速度を遅らせ、リアと共に防衛線を抜け出たものを排除して回っていた。

 しかしどんなに減らしても、その魔物の数は減るどころか増える一方で、全く終わりが見えなかった。



「これ、きりがないっすよー!」

「それは解っているが、今のところ倒す以外の方策が見つからないんだ」

「逃げることはできないの? あの正面の壁を越えるとかさ」

「向こう側にも空が続いているように見えるが、実際はあの壁から後ろの壁までが、この階層の範囲なんだ。

 だからあの壁の向こう側はないと思ってくれ!」

「そんなあ…」



 この場に見える全ての魔物を、強力な範囲魔法で一掃することは可能だ。

 しかしたとえそうしたところで、頼んでもいない追加の魔物が延々とデリバリーし続けられるだけ。

 現状は変わらず、余計な消耗を強いられるだけだろう。


 それは愛衣にも解っているからか、先ほどから自身は最低限の行動だけで、魔物の処理は軍荼利明王に任せ最低限の気力だけを消費して後は体力温存している。

 だがいくら省エネで倒していったとしても、昼夜とわず延々とこんなことをされれば、いつかはこちらが押し負けるのは自明の理。


 けれど今までのダンジョンの性質上、攻略できない階層は存在していなかった。

 でなければ、前の層でもわざわざ深海適用の恩恵の時間を延ばす物は用意していなかっただろうから。

 ということは、必ずここにも攻略するための何かがあるはず。

 そんな考えから竜郎は休ませることなく頭を働かせるが、いたずらに時間が過ぎていく。

 《精霊眼》で何か探ろうにも、目の前の魔物の色が邪魔で奥まで見渡せないし、それはリアの目でも同様。

 解魔法も、魔物の反応だけで攻略の糸口になりそうなものは見受けられない。

 あと取れる手と言えば、魔物が落ちてくる左右の洞穴に突っ込んで発生源を探すことぐらいである。

 しかし、確証もないままに強行軍で魔物を蹴散らして突っ込んでいくのはリスクが高い。



(せめてもっと情報が得られれば……待てよ? 《精霊眼》ってのは機能を制限して魔力視と似た視界を得ることが可能だった。

 ってことは、観たい物に絞って見ることはできないだろうか)



「カルディナ、しばらく魔法の制御を頼む」

「ピュィー」



 竜郎は爆発と火魔法の魔力だけを放って魔法の生成はカルディナに一任してから、《精霊眼》を発動して、その視野を制御していく。



(まず、この魔物の色はもう覚えたから見なくてもいい。きえろーきえろー)



 なんだが怪しい毒電波でも出しそうな勢いで、大量にいる魔物の色だけが消えるように念じていると、だんだんと魔物の力の色が薄れていき、その全てが見えなくなった。



(愛衣たちの色も解ってるから、見えなくていい。見えなくなれー見えなくなれー)



 先ほどの制御でなれたのか、魔物の時よりもスムーズに視界から消し去ることに成功した。

 そうすれば真っ暗な世界だけが、目の前に広がっていた。

 だがその中で、洞穴の奥だと思われる位置に薄い膜のような形の色が三十一か所にあるのが見えた。

 そして残り一か所。

 竜郎から見て左側の壁の二段目、左から二つ目の穴の奥だと思われる辺りにだけ、膜ではなく六面体の細長い形をした色が見えた。



(一つだけ違うということは、あそこに何かがあるはずだ)



 竜郎は《精霊眼》を解除し視界を元に戻せば、皆の背中が目に映った。



「皆、この魔物の発生源っぽい物を発見した」

「ほんと? どこどこー」

「左側の二段目、左から二つ目の穴の奥に他とは違う何かがあった」

「それじゃあ、まずはそこに行ってみますの?」

「ああ。だから、今からこいつらを吹き飛ばす。そしたら群がられる前に、一気にそこに突貫しよう。

 その時は愛衣は俺を、奈々はリアを抱えて走ってくれ」

「りょうかーい」「解ったですの!」



 愛衣たちは魔物を処理しながら、直ぐに動けるように向かう場所を意識しておく。

 竜郎はこの場にいる大きなムカデ型の魔物を一掃するために、杖を構え炎と風のドームで自分たちを覆う。

 すると外の炎の層で魔物達は触れば焼かれ近づけなくなるものの、おかまいなしに突っ込んできてドームは黒い炭で覆われていく。

 しかしそれは問題ないので、竜郎は風のドームの内側にもう一層隙間なく風のドームを造り、風と風の層の間にある大気を追い出しそこを真空状態にした。


 そうして自分たちのための魔法を展開し終わったので、今度は滅殺の魔法を展開していく。

 ドームの外側に光と火と風と爆発の混合魔法を展開していき、上空に自分たちのいるドームの位置だけ穴をあけ、あとは地形に添った形の赤光の分厚い板を造りだした。



「一応防音対策をしてはいるが、耳は塞いどいてくれ」

「あたしらは、そういうの効かないと思うんで、とーさんの耳はあたしがふさいどくっす」

「そうか。ありがとう」

「おかーさまは、わたくしがふさいでいますから、直ぐに動けるようにおとーさまを抱えていてくださいですの」

「わかった。ありがとね、奈々ちゃん」



 アテナの人差し指が竜郎の耳に入り、愛衣の耳には《真体化》した奈々の人差し指が入り栓をしてくれた。

 そしてリアは、奈々の近くで自分で同じように耳をふさいだ。



「それじゃあ、行くぞ。魔法が終わったらすぐにこのドームを消すから飛び出して一気に洞穴に突入だ」



 もう一度しっかりと確認した後、竜郎は上空に浮かべた赤光の分厚い板を下の地形に嵌めこむように叩きつけた。

 それが地面に触れた瞬間、ドームの外では大爆発が起こり辺り一面に炎と熱風を撒き散らして洞穴の中にいた魔物たちも一掃していく。

 真空の層で音を軽減していた為ほとんど音は伝わってこなかったが、地面が爆発で揺れていた。

 そうして一瞬この場から魔物が全て去ったその時を狙って竜郎が魔法を解くと、皆が一斉に左側の二段目まで飛んでいき、左から二番目の洞穴に侵入した。


 そして竜郎は鉄のインゴットを出して、入り口からこちらに来られないように魔物が通れないほどの空気穴をあけた鉄の蓋をした。

 そうしてから、光魔法で洞窟内を照らして奥へと急いで突き進んでいく。

 すると奥にいて生存していた魔物と、新たに生み出された魔物の混成群がワラワラとこちらに向かってやってきていた。



「もう出てきた!」

「押し通る!」



 竜郎は杖を向けて洞穴と同じ周囲のレーザーを放ち、薙ぎ払いながらズカズカと二十メートルも行けば段々と上へと傾斜になっていた。

 緩やかな上り坂を、そのままレーザーで魔物を焼き払いながら少し行った所に行き止まりがあり、その壁の上からぼとぼと魔物が落ちてきていた。



「あの行き止まりの上に、魔物が発生する何かがあるはずだ」

「解魔法では解らなかったの?」

「ああ。今も魔物の反応しかないくらいだ」

「何か仕掛けがありそうですね」



 レーザーはそのまま壁に当てながらいき、行き止まりに辿り着けば今度は上に高熱の光の板を張って魔物が落ちてこないように蓋をした。

 すると魔物は、その板に触れた瞬間に焼かれ死んでいく。

 そして溜まらないように、死んだ端から《無限アイテムフィールド》に収納していく。

 そうしながら板を上へと上昇させていき、竜郎が《精霊眼》で見た六面体のすぐ傍まで持っていこうとした時、その魔法が何かを破壊したのか、ガラスが割れるような音がした。

 その途端、魔物を発生させている物体を解魔法でも探知できるようになった。



(探査魔法を阻害する何かがあったのか?

 まあ、もう壊れてしまったみたいだし、考えるのは後にしよう)



 竜郎は行き止まりから、上へ一メートルほどの所で光の壁の上昇を止めた。そのすぐ上が、魔物を発生させている六面体のある場所だからだ。

 これを破壊してもっとひどい状況にされても困るので、熱光の板に穴をあけてそこから解魔法の魔力を侵入させ、カルディナと共に解析していく。

 どうやら魔力が宿った石のようなもので、そこから魔物を発生させるだけの存在。と解析結果が出たので、遠慮なくレーザーで撃ち抜いた。

 するとその六面体の物体は消え去り、魔物の生成も収まったのだった。



「ふう、これでとりあえず魔物の追加は無くなったと思う」

「ごくろーさまー」



 竜郎が魔法を解いて上を見上げれば、上に三十一個の白い円形がグルリと壁に描かれており、その円一つ一つから掃除機のような吸引する風が起こっていた。



「どうやら、あそこで生み出された魔物をあの白い円が吸いこんで、他の洞穴に送り込んでいたようですね」

「送り込んでたって、転移魔法みたいなモノってこと?」

「に近いと思います。おそらく魔物の能力ではなく、ダンジョンの機能を使っているのだと思います」

「確かに、次の階層に行く時も転移魔法と言えなくもないですの」

「相変わらず、何でもアリっすね。ここは~」

「まあ何にしても、これで魔物は増えることが無くなったし、とりあえず外にいる魔物も片付けよう。そうすれば次の階層へ行けるかもしれないし」



 そうして皆がこの場を離れようとした時に、ふと愛衣はうなじの辺りがムズムズする感覚に襲われ、思わず後ろを振り向いた。



《スキル 危機感知 Lv.1 を取得しました。》



「え?」

「どうした愛衣?」

「……まだ、何かある!」



 スキルを覚えたというより、《危機感知》を覚えたことに愛衣は嫌な予感が本当だったと確信した。

 そうして愛衣の視線に促されるように皆が後ろ上方へと振り向くと、先ほどの六面体が一回り大きくなって復活しようとしていた。



「なっ、復活するのかよっ」

「───あれはっ」



 竜郎がレーザーを撃ち込んで破壊しようとすると、そのレーザーが弾かれた。



「おとーさまの攻撃を弾きましたの!」

「皆さんっ、一旦引きましょう! あれをただ壊すだけでは、徒に魔物を強化していくだけです!!」

「どういうこと──って、そんなこと言っている暇はないっすね」

「たつろー。今はリアちゃんの言う通りにしよ!」

「ああ。何か解ったみたいだしな!」



 ただ壊すだけでは不味そうなのは、先ほど弾かれたレーザーからも明らかだった。

 竜郎の解魔法では、ただの魔物発生装置としか出なかったのだが。

 なので竜郎たちは、急いで来た道へと引き返した。

 けれどその際、先ほどは只の一メートル級のムカデといった風体の魔物だったものが、燃えるような赤色の体に変化して生み出され始めた。

 それらは火を噴き、竜郎のレーザーにも耐性が出来上がっているのか、一瞬で焼き払うことができなくなっていた。



「確かにさっきより強化されてるな……」

「火を噴くのは止めてほしいよー!」



 竜郎はカルディナと一緒にアンチ魔法の結界を張っているので焼かれはしないが、その際に発生する温度はどうしようもできないので、洞穴内部が蒸し風呂のようになっていた。

 リアも何も言わないが、玉の汗を額に浮かべている。



「後少しだ。入ってくる時にした蓋の位置まで来たから、向こうの魔物ごと吹っ飛ばすぞ。カルディナ、ジャンヌ!」

「ピュィーー!」「ヒヒーーン!」



 竜郎は風と魔弾の混合魔法を光魔法でブーストして、前方の鉄板の蓋に打ち込んだ。

 すると蓋に着弾した瞬間、風の濁流を洞穴の外へ向かって放出し、そこでたむろしていた魔物たちは吹き飛ばされていった。

 そうして竜郎たちは、魔物のいなくなった場所を通り洞穴から飛び出したのであった。

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― 新着の感想 ―
[一言] ココまでの色んな階層の内容見て、このダンジョンを主人公以外の複数のPTがボスまで行けてるのが疑問(´・ω・`)
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