表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
レベルイーター  作者: 亜掛千夜
第五章 呪われた少女編
189/634

第188話 そして誰もいなくなった教会で

 家の検分やチェックを終えて問題も無いようなので、竜郎は最後にそれぞれの扉に《施錠魔法》をかけていくことにした。

 《施錠魔法》でかけたロックを解魔法でピッキングされないようにするには、より複雑な魔法としての形を想像する必要がある。

 だが、竜郎の場合鍵魔法に複数の属性を混ぜていくだけで防犯性能はかなり上がる。

 何故なら解魔法を持っていて、さらに何属性も使える人間なぞ竜郎のような特殊なスキルを持っている人間以外にありえないからだ。


 そうして防犯性能と魔法の造りやすさを加味した結果、《施錠魔法》プラス五属性くらいが妥当であろうと、カルディナたちにも手伝ってもらいながら行使していく。

 そして施錠魔法に火、解、風、呪、雷を混ぜ込んで、ピッキングには解、火、生、水、樹の五属性持ちで、さらにその全てが高レベルでないと解除できないという鬼畜仕様の鍵をかけた。

 そして今の鍵を造り直すのに一々最初からやるのは面倒臭いので、レベルが大幅に上がって《複合魔法スキル化》の登録スロットもかなり空きができたのでそちらに登録しておいた。


 こうして扉に鍵をかけたものの、今現在これが解けるのは施錠魔法を使ったマスターキー扱いの竜郎本人だけである。

 なので愛衣たち用に、形ある鍵を作る必要があった。

 やり方は事前にヘルプで調べておいたので、後は鍵の形をイメージして現実に造りだせばいいだけだ。



「ん~~~~。ていっ」

「あ、何かでてきた!」



 竜郎が持った杖の先からぽろっと、一枚の全面ホログラム仕様のカードキーが出来上がった。



「愛衣。ちょっとそれで、この扉を開けてみてくれないか」

「我が家はカードキーなんだね。んで、どうすればいいの?」

「それをドアノブに軽く当てれば開くはずだ」

「わかった、やってみるね」



 そうして愛衣はそのカードキーを手に持って、ドアノブに軽く触れるとガチャっと鍵の機構はどこにもないのに錠が外れる音がした。

 なのでノブを捻ってみれば、何の抵抗も無く開いてくれた。



「かっくいー! 元の世界でもこれがほしいよ」

「ははっ。そうだな。鍵穴なんかないから、最高のピッキング対策だし」



 などと冗談を交えながら竜郎は残り五枚、同じカードを生成してカルディナたちに渡していった。

 皆 《アイテムボックス》持ちなので、そこに入れておけば落とす心配も盗まれる心配も無いだろう。

 それから全てのドアに施錠魔法をかけてからは、武器の整備や食事などをのんびりとしながらやり、新築の家で眠りについた。


 竜郎たちの寝室は、二人でゆったり寝そべられる大き目のベッドをドカンと設置。

 とはいえ、石材で形を整えた上にいつものマットを敷いただけの物なのだが。

 後は、小さな洗面所とトイレ。衣類などを入れた箪笥、本棚などしかなく、まだまだ物が足りていない部屋だった。


 そんな部屋のベッドで目を覚ました竜郎は、愛衣を抱き寄せ生魔法で起こしてリビングに降り、食事を取って外に出ればいよいよ出立の時である。

 だがその前に、せっかくなので安全なうちにSPを消費してしまうことにした。

 

 今現在の竜郎のSPは(267)。ダンジョンとのゲームに勝って+100。巨大ウツボと木の実型の魔物、さらにレベルアップ分が加算されている計算だ。

 ちなみに、ダンジョン戦で上がったレベルにはすでに称号《すごーい!》が適用されているようなので、54~71レベル間で既にSPは4ずつに増えていた。



「思っていた以上にSPが溜まったな。他のみんなも、もうそろそろ使ってもいい頃かもな」

「私はもう少し粘ってみようかな。竜郎みたいに間違えたから、他から取ってこようとかもできないし」

「わたくしも、もう少し自力でやってみますの」

「私はあと数レベルで、《土精の祝福》効果も打ち止めになってくるはずです。

 なので考慮に入ってくる時期ですが、やはり後少し保留といったところですね。

 後はダンジョン攻略中に、SPを要求されるような仕掛けが出てきても困りますし」

「あたしはまだどんな戦闘スタイルにするか決めかねてるっすから、温存っすねー」

「ピュィーー」「ヒヒーーン」



 意外なことに愛衣ですら慎重に使いたいようなので、とりあえず竜郎だけが取ることにした。



「今回は最後の属性、氷魔法を取ってみるつもりだ」

「そっか。それで最後なんだねー。それが全部取れたら、今度は全部上限解放していって」

「それから、重力魔法と時空魔法ですの!」

「重力魔法と時空魔法なんて見たことないですし、ぜひこの目で観てみたいです」

「ああ、任せとけ」



 と竜郎が他のスキルを取るか、氷魔法を多めに取るか悩んでいると、ジャンヌが鼻先でぽむぽむと足をノックしてきた。



「ん? どうしたんだ、ジャンヌ」

「ヒヒーーン。ヒヒーーーーーン、ブルルル」

「ジャン姉は、樹魔法の因子が欲しいみたいっす」

「樹魔法の? 第一属性が風だし、第二は炎とか雷とかの方が相性がいい気もするんだが」

「ヒヒーーン、ヒンッ」

「そっちは、とーさんやあたしがいるから、別の方向性を考えてみた結果らしいっす」

「ジャンヌちゃんなりに、考えた末の選択ってことなんだね」

「ヒヒン!」



 愛衣の言葉にしっかりと頷き、明確な使い方を考えていることを竜郎も悟った。

 ならば娘のためにも、竜郎は今のSP量で取れる限りの樹魔法を取得し、その残りを氷魔法に充てることに決めた。

 それに愛衣も他のみんなも異論は無いようなので、樹魔法をレベル7、氷魔法をレベル1の合計SP(254)消費を選択した。


 今更ながら爆発魔法などを取ってしまったせいで、氷魔法のレートが上がってしまったんじゃないかと心配もしていた。

 けれど何にも属さない無属性魔法であり、なおかつシステムに記載されていない特殊魔法だったのが幸いし、そういうことも無いようで安心した。


 そしてそれは樹魔法を7まで上げ、残ったSPで氷魔法レベル1を取得した時のことだった。



《複合魔法師 より エレメンタラー にクラスチェンジしました。》

《スキル 精霊眼 を取得しましたので、下位スキル 魔力視 と置換されました。》



「は?」

「どったの?」

「クラスチェンジした……」

「え? 今?」

「そう、今。クラス:エレメンタラー。名前的に属性者って意味かな?

 ってことは全属性を取得が条件だったのかもしれない」

「それで、何か変わったの?」

「とりあえず、皆ステータスを見てくれ。その方が早いかもしれない」



 驚いた顔や不思議そうな顔をしている面々は、竜郎のステータスに目を通していく。



 --------------------------------

 名前:タツロウ・ハサミ

 クラス:エレメンタラー

 レベル:71


 気力:160

 魔力:2424

 竜力:100


 筋力:219

 耐久力:222+50

 速力:202+50

 魔法力:2605

 魔法抵抗力:2515

 魔法制御力:2721


 ◆取得スキル◆

 《レベルイーター》《複合魔法スキル化》《精霊眼》

 《陰陽玉》《炎風》《土尖風》

《粘着水》《呪幻視》《施錠魔法:火解風呪雷.タイプ1》

 《光魔法 Lv.10》《闇魔法 Lv.10》《火魔法 Lv.10》

 《水魔法 Lv.10》《生魔法 Lv.8》《土魔法 Lv.10》

 《解魔法 Lv.10》《風魔法 Lv.10》《呪魔法 Lv.10》

 《雷魔法 Lv.10》《樹魔法 Lv.7》《氷魔法 Lv.1》

 《爆発魔法》《施錠魔法》《魔力質上昇 Lv.4》

 《魔力回復速度上昇 Lv.3》《集中 Lv.4》《全言語理解》

 ◆システムスキル◆

 《マップ機能》《無限アイテムフィールド》


 残存スキルポイント:13


 ◆称号◆

 《光を修めし者》《闇を修めし者》《火を修めし者》

 《水を修めし者》《土を修めし者》《解を修めし者》

 《風を修めし者》《呪を修めし者》《雷を修めし者》

 《打ち破る者》《響きあう存在+1》《竜殺し》

 《竜を喰らう者》《収納狂い》《すごーい!》

 --------------------------------



「私のも大概だけど、たつろーのステータスはごっちゃりしてるよね」

「まあなあ。って、そこじゃなくてだな」

「魔力視が、精霊眼というスキルに変わってますの」

「わたしと同じ、目のスキルですか。親近感が湧きますね」

「そうなのか? まあ、避けられるよりはいいわな」



 などと関係ない話題に逸れ始めたので、アテナがそれを修正してくれた。



「それで、とーさん。これはどんなスキルなんすか?」

「ああ。なんでも、世界中の有りとあらゆる力を観る眼ってことらしいな」

「どゆこと?」

「つまり、これを使えば魔力視では解らなかった何の属性の魔法なのかが解ったり、気力とかも見える。

 だからその人物が体術スキル持ちだとか、槍術スキル持ちだとかも観たら解るらしい。

 後はどれくらい魔力があるのか、気力があるのか大雑把に解るから、相手が強さを隠していても大体これくらいの強さというのも解る」

「いっちゃなんだけど、リアちゃんの目の下位互換的な?」

「だなあ。けど、こっちは体力消費もないらしいし、魔力がある限りは延々と観てられる。

 それじゃあ、せっかくだし試しに使ってみるか」



 そうして竜郎は、《精霊眼》を発動させた。

 すると竜郎の目の光彩が虹色へと変化し、視界が真っ暗になった。

 しかし愛衣やカルディナたちのいる場所は、サーモグラフィーを通したように、そこだけその者の形のそれぞれ違った色の光が浮かび上がっていた。

 そして《精霊眼》で愛衣だと思われる人物を注視してみれば、色んな色がごちゃ混ぜで、なおかつすさまじい光を放っていた。

 他の者たちは、それぞれが持つ魔法スキルの色や、魔力の色などが見て取れた。

 さらにそれだけではなく、この目は遮蔽物を無視して、この場所を抜けた先のダンジョンの攻略ルート上にいる魔物の色まで見て取れた。

 そこで竜郎は、自分の本来の目に戻した。

 すると目の色は元の黒に戻り、視界もいつもの景色に戻った。



「これは、生きている者の力だけが見えるのか」

「生きている者の力だけとは、どういうことですの?」

「つまり、ここには床がある。そして天井や教会の扉なんかが見える。

 だけど、この目ではそれは見えない。真っ暗なんだ」

「つまり魔力なり気力なり、何かしら力を持っている存在だけが見える。

 だから《精霊眼》だと壁も天井も無視して、その向こう側にいる力を持つ者が見えるということですよね?」

「そうだな。遮蔽物があって視界が遮られたら使えないリアのスキルとは、そういう所も違うみたいだ」

「それじゃあ、そっちの目だと壁が見えないってこと? それだと歩き回れないね」

「間違いなく、あちこちに体をぶつけるだろうな」



 となると、一つ疑問が出てくる。それを奈々が問いかけてきた。



「けれどそれだと、魔力視はあった方が良かったんじゃありませんの?

 力持つ輩しか見えないのでは、困る状況もある気がしますの」

「そうっす。魔力視だけが必要になる可能性もあるっす。なのに、消しちゃうんすね」

「そこなんだよなあ……。これだと全く違うスキルだし、残してくれても良かったのに」



 などと竜郎が残念そうにぼやいていると、空色の目で竜郎のスキルを発動時から観察していたリアが何故消し去ったのか教えてくれた。



「いえ。どうやら《魔力視》というスキルは、《精霊眼》の機能の一部にしか過ぎないようですね。

 ですので、竜郎さんが上手く制御すれば魔力視だけを再現したり、気力だけを見たり──など必要な物だけを見ることができるはずです」

「そうなのか?」



 竜郎は自分で光魔法の魔力だけを展開しながら、魔力視だけを使おうと試みた。

 すると以前の魔力視の様に視界を暗くすることなく、行使することができた。しかもそれは以前よりもより高度で、光魔法を発動してもいないのに、それが光属性を帯びた魔力だと色で理解できた。

 実は魔力視でも、高レベルまであげればこのくらいは出来たのだ。



「すごいな。ってことは、魔力視とは逆に気力視みたいなこともできるのか」

「そのはずです。《精霊眼》は魔力視、気力視、技能視など、他にもある視覚系スキルが合わさった高位スキルのようですので」

「そう聞くと、凄そうなスキルだね」

「ああ。それにこの目で観れば、まだ自分の魔法に無駄が多いってのがよく解る」



 魔法を実現するのに、不必要な小さな小さな魔力すら見て取れるので、より魔法を精密に行使できるようになりそうだと竜郎は確信した。


 そんな不測の事態がありながらも、他にはダンジョン討伐により上がったレベルやステータスについて軽く触れ、最後はジャンヌに第二の属性、樹魔法の因子を渡した。



「どうだ? 使えそうか?」

「ヒヒーーン」

「いい感じ。だそうですの」



 ジャンヌは何もない所から、ポンと双葉をだして樹魔法を確かめた後、機嫌よく鳴いたのだった。

 それから余らせている植物の種をいくつかジャンヌにねだられたので、それを渡し、ようやくここを出ることになった。

 なので最後に長々と教会内に居座らせてくれたことへの礼もかねて、ダンジョンに呼びかけた。



「それじゃあ、俺たちは行くから。色々、助かったよ。ありがとう」

〔いえいえー。こちらも久々に人と話せて楽しかったですー。

 あっ、ちなみにダンジョンへの入場を規制している輩を倒すのはいつでも大歓迎ですのでー〕

「だからできないって。まあ、偉い人にでも会う機会があったら、それとなく言っておくよ」

〔助かりますー。このままだと、本当にレベルが上がっちゃいそうですしー〕

「あははっ。まあ、私たちにはあんまり関係なさそうだけどねー」

〔…………。はははーそうですよねー。それでは、道中楽しんで攻略していってくださーい。それでは、またいつか〕

「ああ。機会があればまた、な」



 そうして竜郎たちは九日近く滞在した教会と、そこで知り合ったダンジョンと別れ攻略を再開したのだった。




 誰もいなくなった教会の中で、誰に聞かせるわけでもなく、ダンジョンがポツリと呟いた。



〔今まさにレベルが上がってしまいそうなダンジョン内にいるのに、関係ないですかー〕



 と。

 

今日は竜郎以外のものも記したステータス表を別にアップしました。

直接お話には関係ありませんので、興味の無い方はスルーしても問題は無いと思います。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ